時間はベルディアとの対決時の話になります。
キリト達が亡くなってから二月以上が経った。
皆、二人の思い出を引きずってるけれど、前を向いて歩き始めている。
それでも、ALOだけは皆、足が遠のいていた。
キリト達を一番思い出してしまうものだから。
唯一クラインだけは、未だに後ろ向きだけど、クラインはあれで、かなり人情家だから、仕方ないのかな。
少し心配だけど、エギルは、
「あいつも、一応大人の男だ。いつか自分で折り合いをつけるさ。」
ーだから、心配するなー
そう言っていた。私たちの中で一番大人の人の意見だし、私はその言葉を信じた。
その日、いつものように学校へ向かった。
そして、アスナが亡くなってから、まるでアスナの代わりとでも言うように、私に言い寄る男どもをスルーして帰宅した私は、疲れからか着替えもせずにベッドに横になると、いつの間にか眠ってしまった。
不思議な夢を見た。
キリトとアスナが、SAOにいた時の格好をして、どこか中世を思わせる雰囲気の町並みにいた。
夢の中で、二人は街を救うために戦場に向かおうとしていた。
キリトは、ALOで皆の協力で得た黄金の剣...エクスキャリバーを装備する筋力が足りない事に焦っていた。
天使の手助けでエクスキャリバーを、あのアインクラッドで、私がキリトのために作った...私の最高傑作...ダークリパルサーにコンバートすることにしたキリトは、シノンに謝ったあと、私に対して、
"力を貸してくれ"
そう言った。
私は、自然と声を出していた。
「頑張りなさい。キリト。でも、アスナを不幸にしたら許さないからね。」
その言葉に、キリトは頷くと私の魂の籠った剣...ダークリパルサーを抜き放ち、アスナと共に駆けていった...
そこで、私は目を覚ました。
なんだったんだろう...今の夢は...
でも...久しぶりにキリト達を見れて、嬉しかったな...
ちょっとした仮眠になって、スッキリした私は、夜に向けてお風呂に入り、着替えをした。
その日の夜は、久しぶりにダイシーカフェに私たちは集まる事になっていたのだ。
一応、近況を話すためではあるけれど、やっぱり、皆寂しいんだと思う。
私は、シリカやシノンと待ち合わせをして、三人でダイシーカフェに向かった。
「久しぶりね。リズ、シリカ。」
「おひさしぶりです。シノンさん。」
「久しぶり~。」
私たちは、お互い久しぶりの再会を喜んだ。
そして、ダイシーカフェにて...
「そう...まだクラインのやつは引きずってるのね。」
シノンがクラインの近況を知って、少し暗い声を出した。
ちなみにクラインは、今回の会には参加していない。
"ワリィ...あいつらが死んで、まだ二月しか経ってないのに、飲み会なんて出れねえ"
なんとも、らしい断り方だった。
「大丈夫だ。クラインのヤツだって、わかってる。いつまでも引きずっていられない事はな。情に厚いヤツだから、立ち直るのに時間が掛かってるだけだ。アイツを信じてやれ。」
エギルがそう言って、私たちを安心させてくれた。
私は、暗くなった雰囲気を変えようと、さっき見た夢の話をすることにした。
「え~。良いな...リズさん。例え夢でも、私もキリトさん達に会いたいです。」
シリカは、羨ましそうにしていた。
「.........。」
シノンは、少し考えていた。
「私も、似たような夢を見たわよ?」
そう言って、シノンはゆっくりと話し出した。
シノンも、学校帰りに少しうたた寝をしたのだそうで、そこで夢を見たそうだ。
キリトとアスナの夢を。
エクスキャリバーをコンバートするときに、シノンに謝ったキリトに対して、
「全く...しょうがないわね。これは貸しよ?返しに来ないと承知しないからね?」
そう声を掛けたのだそうだ。
「キリト達は、私が見たことの無い格好だったわ...キリトはまあ、ALOの時の装備に良く似てたけど、アスナは白と赤のコントラストを持った服に胸当てを装備してたわね。」
「それ...多分SAO時代の二人の装備よ?私の夢でも同じだったし...」
シノンが見た二人の姿をSAO時代の物だと、私は断言した。
「不思議ね...私はSAO時代の二人の姿なんて知らないのに...」
本当に不思議だ...
「と言うより、二人がお互いに同じ夢を...それも、そんな具体的な夢を見たことの方が俺は不思議だがな...」
エギルが、ツッコミを入れてくる。
「案外、本当の事だったりするかもしれませんよ?」
シリカがそんな事を言ってきた。
「「「えっ?」」」
「キリトさんとアスナさんは、確かに亡くなったけど、どこか別の世界に生まれ変わって、二人で今も幸せに暮らしてる...そう考えると、素敵じゃないですか?」
シリカの言った事は、妄想の世界の話だ...
でも...
「そうね...そう考えたら、確かにロマンチックかもね。」
「非現実的たけどね...」
「良いじゃないですか。考えるだけなら自由なんですから。二人は今も異世界で幸せに暮らしてるんです。」
「ふっ...そうだと良いな...本当に...」
私たちは、そんなあり得ない話で盛り上がった。
そして...
「そろそろ、時間だ。遅くなる前に帰るんだぞ?」
私たちは、ダイシーカフェを出て駅に向かって歩いている。
「ねぇ、二人とも...久しぶりにALOにログインしない?」
「あ、良いですね。」
「良いわよ?」
私たちは、あれほど忌避していたALOにすんなりログインする約束をした。
あの二人が異世界で幸せに暮らしてる...
他愛の無い作り話でも、私たちの心は少し軽くなった気がする。
さて...いっちょ頑張りますか...
なお、これから数年後、この妄想が実は本当の事だと知ることになるのだが、それはまた別の話である。