『アスナ、いいか。気をしっかりもって、落ち着いて聞いてくれ。 今日、キリトが...下校途中にトラックに跳ねられて...30分ほど前に...息をひきとった...』
「えっ!」
イマ、ナンテイッタノ?キリト君ガ、シンダ???
エギルさんから告げられた言葉に、私は、直ぐに反応する事が出来なかった。
『アスナ、キリトの奴は...死んじまったんだ...』
エギルさんは、同じ事をまた言ってきた。
嘘だ、だって今日の放課後、私はキリト君と『またね』って言って別れたんだ。
今度、デートしようって約束した。
キリト君が、私との約束を破るはずがない。
「嘘。エギルさん。いくらエギルさんでも、言って良い冗談と悪い冗談がありますよ?いくら、私でも、そんな冗談言われたら、本気で怒りますよ。」
私は、知らず知らずの内に、声を荒げてエギルさんに言った。
『俺が、こんな冗談言う訳無いだろう。』
エギルさんの、怒鳴るような声。
『スマン。でも、冗談なんかじゃねぇ。キリトは...死んだんだ...』
直ぐに、謝ってくれたけど、その先の言葉は、私の心を深く抉った...
信じない、信じたくない。
そうだ、私のスマホにはキリト君が組んでくれた、キリト君のバイタル情報を見るアプリがあるじゃないか。
それを見れば、こんなタチの悪い冗談、直ぐにバレるんだから。
私は、エギルさんに電話を切る旨を伝えると、アプリを起動した。
そこに、写し出されたのは、見慣れた数字ではなく、バイタル情報errorの文字。
嘘だ...嘘だ...嘘だ...
恐慌に駆られ、身体の震えが止まらない...
少しすると、リズから電話が掛かってきた。
震える手で、通話ボタンを押すと、リズの落ち込んだ、あるいは放心したような、いつもの元気な彼女とは思えない声が聞こえてきた。
『アスナ、ごめんね。電話してくれたのに出れなくて。ちょっと...電話に出る元気も無くて...』
「リズ。エギルさんがキリト君が死んだ...なんて、悪い冗談を言ってくるの。そんなの嘘だよね?リズからも、エギルさんに怒って。」
私は、そんな事を言ったけど、本当はわかってた...
『アスナ。冗談なんかじゃないの。皆、キリトのいる病院にいるんだよ。さっき、キリトは...キリトは...』
シンジャッタ...
あぁっ...ああっ...あああああああぁぁぁっ
「キリト君は、キリト君はどこにいるの?皆どこの病院にいるの?ねぇ?リズ。答えて。」
私は、早口で捲し立てた。
『川越の○○病院だけど、今、アスナは自宅でしょ?今から来ても、中には入れないよ?私達も、これから家に戻る様に言われてるから。家族以外は、病院に泊まるのは、規則で禁止されてるって、さっき看護師さんに説明されたわ。』
そんなの、関係無い。私はキリト君の所へ行かないと行けない。
そう思ったけど、
『明日、川越の自宅に送るそうだから、学校の帰りに寄ったら良いでしょ。』
リズの言葉に納得するしかなかった...
ーリズさん、アスナさんからですか?代わって下さいー
直葉ちゃんの声がすると、直葉ちゃんが電話に出た。
『せっかくの、好意ですが、アスナさんの訪問は遠慮して下さい。』
直葉ちゃんの言葉は、私の訪問への拒絶だった。
「どうして?私は、キリト君の恋人だよ?私が行くのは当然の権利じゃない。」
そう言うと、直葉ちゃんは、
『その恋人さんは、今日何をしていたんですか?お兄ちゃん、今日はアスナさんとデートだって言ってました。なのに、なんであんなに早く、お兄ちゃんは帰宅しようとしてたんですか?』
その言葉に、私は口が開けなかった。そうだった。今日、本当なら私はキリト君とデートをしていたはずだ。
そういたら、その時間、その場所にキリト君が居合わせることもなかった。
『それだけじゃない。お兄ちゃん。病院に搬送された後、しばらくは生きてたんです。死に抗って...お医者さんが言ってました。お兄ちゃんを生に繋ぎ止めてるのは、意志の強さだろうって。お兄ちゃんの大切な人達の応援する声が、今は一番必要なんだって。私、それを聞いて、皆に連絡しました。皆、直ぐに来てくれたんです。クラインさんやエギルさんなんて、仕事を早退や、お店を閉めてまで、駆けつけてくれました。なのに...』
『お兄ちゃんにとって、一番大切な人であるはずの貴方だけが、連絡がつかなかった。お兄ちゃんが、必死にがんばっているときに、貴方は一体何をしていたんですか?』
『夜9時頃、お兄ちゃんの容態が悪化して、皆で貴方に電話しました。せめて電話ごしででも、貴方の声を届けられたらって。でも、貴方が連絡してきたのは、全てが手遅れになってから...』
『私は、貴方をお兄ちゃんの恋人だなんて認めない。恋人が大変な時に側寄り添うこともしない人なんて認めない。訪問も、弔問も必要ありません。もう、私達には関わらないで下さい。』
直葉ちゃんは、そう言うと電話を切ってしまった。
私は、しばらく動くことも出来なかった。直葉ちゃんの言った事は正しい。私は...私には、キリト君を助ける機会が少なくとも2度あった。
一度目は、デートに誘った時。2度目は、キリト君の呼ぶ声に、パーティーを中座して落ちようとした時。
どちらも、状況に流されて自分の意思を曲げて、ユウキ達に付き合った。
その、状況に流される自分は、SAOに捕らわれる前の、母のいいなりになっていた自分と何も変わらない。
過去の自分には、戻りたくない...
そう、思っていたはずなのに...
私は、あの城で変わったはずだったのに...
その、流される考えが、自分にとって一番大切な物を失わせてしまった。
うぅっ...ううっ...うああああああ...
その夜、私はずっと泣き続けた...
処女作品とはいえ、よくこんなの書けたな...
今は書けないと思う(笑)