ハンターが飛び込んだ先がダンジョンなのは間違っているだろうか? 作:あんこう鍋
少女は灰色気味の白髪と、薄い紫の瞳の儚げな印象とは別に、健康的な程よく日焼けした肌の健康良児の少女だ。幼い頃からそんなに変化の無い体型は“彼女の職業柄を考えれば嬉しい物”だが、平均から見ても低い身長のせいで特定の大物の武器が扱いきれないのが少女の悩みである。そう、この娘。武器を使うのだ。
少女は『大陸』では『ハンター』と呼ばれる者。多種に渡る凶悪なモンスターを狩猟する狩人であり。そのモンスターの驚異から人々を守ったり。時には生態系を守るために密猟者と戦う事もある。《公平たる守護者》が少女の『ハンター』としての立ち位置である。
とはいえ、絶対数の少ないハンター。村などの拠点を守護する。所謂、専属ハンター等の特殊な例ですらも、数多くの危険な依頼や、何故か珍味を納品したり。たまに、やんごとなきお方の依頼でモンスターの卵を抱え込んでせっせと走りながら飛竜に襲われたりとか。
あとは、わがままな第三王女の無茶振りに頭を悩ませたりする。「お前は、村の専属なんだろ? なんでそんなに、あっちこっちに行ってるんだ?」と一般人から“思われないぐらい”多忙なのだ。
無論ハンターである彼女はフリーながら。細かい採取メインの依頼も大型のモンスターの狩猟依頼なども行う。「あれ? 多分このクエスト委託したヒトもう手遅れなような・・・・・・」と思わせる内容もある。
状況としては二体の大型モンスターに襲われてて睡眠状態にされる一歩手前で、どうにかアイルー経由で出した依頼。後日その依頼をだした調査員は無事だったらしいが、恐ろしい強運か・・・・・・もしくは悪運か。彼女がそのクエストを達成し、後にその一報を耳にした時、ポカンとした面持ちで「えっ? あの人無事だったのかな? マジで?」と驚いていた。
とはいえ、素行自体はハンターの業界では比較的普通のハンターであるし【ハンターランク】と呼ばれる【☆】の数も4個。【☆】の数は『ハンター』達を管轄する【ハンターズギルド】への貢献度や、その実力に対して安定したモンスターの狩猟可能レベル。及び、緊急性の高いクエストの達成などで格ハンターに付与されていき、結果的に【☆】の多いハンターはそれだけで格付けが上がっていく仕組みになっている。基本的に【☆】が3つまでが『下位ハンター』。【☆】4からが『上位ハンター』と分けられており。上記の通り少女は上位ハンターに属する。それもなり立てホカホカの新入りだ。
世界には『G級』と呼ばれる最高位のハンターもいるが今の少女にとっては夢のまた夢であった。念願の上位ハンターの仲間入りをしたものの。未だに下位の装備しか持っていない状態だ。上位から受けられるクエストでは勿論の事ながら、狩場の危険度も跳ね上がる。
つまるところ、実力不足のハンターでは、対処できないモンスターの狩猟が解禁される。気を引き締めて適切な対処をしないと即、先人の仲間入りになってしまうのがこの業界の常識だ、上位の強力なモンスターの狩猟を安定させる為の、早めの装備の新調は必須なのだが。素材の入手方法といえば、結局の所「ひと狩り行こうぜ!」と言う奴だ。この辺りは全てのハンター共通である。
少女は勇猛よりも安全を取るタイプの『堅実なハンター』である。
若い者にありがちな猪突猛進な部分もなく、二手、三手先を見据える狩りの仕方は、同僚のハンター達の中でも一目置かれている。
少女が臨時のパーティーを組むだけで、狩りの成功率が飛躍的に上がるのでハンター達をまとめる【ハンターズギルド】も重宝する存在であるし、彼女自身が声をかければ、喜んで共に狩りに同行するハンターも多い。
雪の土地の村にいる専属ハンターとか。温泉で有名な村の専属ハンターとか。一部の熱狂的なファンもいてるぐらいだ。しかし、そんな事は彼女は自覚していない。
さて、そんな少女を説明する上で欠かせない情報がある。実は二つ悪癖があるのだ。一つは、コンプレックスでもある「身長」の話題をすると、ひどく喧嘩早くなる・・・・・・短気になるというもの。そしてもう一つ、これが問題だ。その悪癖の前に。ハンターの狩場と呼ばれるいくつかの土地を調査する『王国の地質調査員』の存在から語らねばなるまい。
彼の仕事は『ハンター』の狩場の調査とレポートをハンター御用達の雑誌に掲載することだ。問題なのは、その独特な説明文「だが、決して気を抜くんじゃねえ。何故なら、ここが○○だからだ!」から始まり。最後のその土地に一つはあるであろう、ジャンプポイントと呼ばれる存在の説明、というよりも毎回飛び降りる所でレポートが締められているのだ。彼は一体何を目指しているのだろう? などと思うハンターも少なくはない。
無論。まったく無駄な情報ではない。ハンターの狩りに置いて狩りの対象が体制を立て直す為や、瀕死の状態から回復のために移動する事がある。コレが飛龍と呼ばれる空を移動できるモンスターだと実に厄介だ。何分、地を走ることしか出来ない、人の身でしかないハンターにとって追いかけるのも一苦労でもある。そんな時に知っておけば得。程度の情報なのがジャンプポイントだ。とはいえ地形とモンスターの生態を完璧に熟知できての荒業であり、移動時間短縮にも繋がるが、正直、正気の沙汰ではない。
話が若干ズレたが少女の悪癖というのはこのジャンプポイントを見ると、とにかく、飛び込みたくなるというものだ。安定とは掛け離れた、スリルのあるハンターという職に就くだけあって。そういう刹那的な快感は誰もが大小関わらず持っている。安全第一を掲げる彼女もそのハンターの業からは抜けることはできないようであった。というよりもその条件において彼女はかなりの狂気的な行いをする類の人間である・・・・・・まぁ、何が言いたいかと言えば“この話の主役の少女は変わり者である”という事だ。
そんな“変わり者”の少女は決して、“英雄的な素質のある主人公”ではない。むしろ、ヘタレにして能天気。どこまでも、どこにでも居てる、ちょっとばかり、狩りに対して保身の強いだけの『ハンター』でしかない。
彼女の名前は。【パイ・ルフィル】ハンター歴3年目の見た目はチビッ子。狩り方は堅実。(主に変)人達に好かれる今年で16歳の可哀想なぐらいに、『落ち込む』事が多い。巻き込まれ体質な少女。これは、そんな少女『ハンター』の摩訶不思議な狩人の冒険譚である。
―――――――
パイ・ルフィルは不機嫌であった。その可愛らしい顔を最大限顰め、パイは現在、目の前にあるクエストカウンターを睨んでいた。そんな彼女の心境とは別に。太陽はその輝きを地上へと満遍なくふらせている。南から吹く風も湿気を含まない爽やかな物で、気温こそ高いが不快ではない。
周りには通り過ぎる人々。活気にあふれ所々の露天からは食品や、工芸品なども販売されており、威勢のいい声が響いている。道行く人々の表情も明るく、この場所が平和なのがその光景だけでわかるであろう。
そんな中での顰めっ面の少女。『上位ハンター』の仲間入りという祝い事の後にする表情ではないが、それには訳があった。
「くぬぅ、なかなかに、いいクエストないかな・・・・・・なんで、ウラガンキンのクエストばっかなのかな?」
私はあのアゴモンスターは嫌いだ。よく動くし縦長だし。転がってくるし。なんであんなモンスターの依頼が多いのか・・・・・。 皆、嫌がって『受けないから』残っているんだ。わかっていたかな。あのアゴ。皆嫌いだもんね
わかるとも
「かな」と言う少々特徴的な語尾をつける少女。パイは数々の強敵との戦いで溜まったストレスからの。止めの【緊急クエスト】で、少女のジャンプしたい欲が爆発したのだ。小女の現在の拠点である【バルバレ】は砂漠の真ん中にある都市である。
数多くの砂漠を渡る船で溢れかえる貿易都市だ。少女の睨む先は数々のクエストを貼り付けられてる。クエストカウンターと呼ばれる物で。【ハンターズギルド】が管轄する依頼を受けるためには、必ず通さなければいけない行程でもある。
【我らの団】と呼ばれる“変わり者の多い”キャラバン所属の受付嬢からクエストを受けようと考えていいたがピンとくるものがなく、溜まったフラストレーションのはけ口を探しているパイ。そんなパイに空気を読むことなく語りかける【旅団の受付嬢】。
「あっ、そうそう。聞いてくださいよ。トビ子さん。この間なんですけどね。特注のクエストをハンターさんに受けてもらったんです。けどね、ウチのハンターさんすごいんですよ!」
「アゴ滅するべし・・・・・って、どんな、クエストだったのかな?」
おおっと、いけない、いけない。アゴの事を考えてて一瞬意識が飛んでいた。私はアゴの事を頭から話して友人に振り返る。
受付嬢から話しかけられた事で、顰めっ面から素の表情に戻ったパイ。呼ばれた“トビ子”とはパイの愛称であり、“ハンター”と呼ばれたのは【我らの団】所属の『専属ハンター』の事で、パイとは新人時代からの長い付き合いの『新人時代からの同期』である。
「はい! 実はですね この間の事なんですが、武具を使わずにモンスターを倒せるのか? って聞いたらパンツ一丁で行って。なんとキックだけであの青熊獣《アオアシラ》を狩猟しちゃったんですよ! もう悔しくて悔しくて・・・く・や・し・い! って感じです」
「・・・・・・ん? ちょっと待ってくれるかな。貴女、何させてんのかな?」
想定していた無理難題より酷い内容だ。私は目の前の緑色の彼女の『本当に心の底から悔しそうな顔』に呆れてしまう
【バルバレ】では【我らの団】の旅団に属する受付嬢である彼女から。基本的に依頼を受注するので、こうした他愛のない会話はよくする間柄でもある。ちなみに【我らの団】は『専属のハンター』とその相棒の『筆頭オトモ』『大柄の竜人』と『小柄なヒューマン』の鍛冶師二人と『竜人商人』と『アイルーの料理人』。そして最後に『団長』・・・・・・計7名のキャラバンである。そんなキャラバンの受付嬢というよりは、受付嬢は総じて話し好きである。
「いや。『最上位ハンター』の【☆】7つのハンター相手に、そんな変な事させるって。貴女も相当に鬼畜かな? 彼。優しいからそんな依頼でも受けるんだろうけど、普通はしないかな? 私? しないよ? フリじゃないよ?」
だって。怖いじゃない? あれ、ぶっちゃけ熊であるし。
「でも。トビ子さんなら、アオアシラの抱きつき行動もすり抜けられるんじゃないですか?」
「ねぇ、さりげなく身長が低いって言いたいのかな? 私も怒るんだよ? 武器で切りつけたりしないけど、【アレ】。投げつけるよ?」
「・・・・・・ごめんなさい。クエストカウンターが大惨事になっちゃうんで。やめてください」
さりげない受付嬢の毒舌に対してパイ特性の【アレ】・・・・・・モンスターに拘束された時などにお世話になる【アレ】で脅す。チラつかされたモノに顔を青ざめる受付嬢。しかも、会話の内容からしても“大陸でも最上位の戦力であるハンター”にえげつない事をやらせている。決して強力なモンスターなどではないアオアシラでもそれはハンターの命とも言える武器があってのこと。
間違っても“パンツいっちょ・・・・・・”インナーだけで行くものではない。
しかし。パイは思い出す。彼のハンターは人々から、“パンツ一丁でなんでもできる。まつげの長いハンターである”と評されている事を。一体何故。そのような評価を受けることになったのか・・・・・・気にならないといえば嘘になる。
するとギルドの集会所の方からその話題の『パンツのハンター』・・・・・・もとい、『我らの団ハンター』が歩いてきた。黒髪の高身長の・・・・・・パイと比べれば正しく大人と子供だ。その青年は前に見た頃に比べ、より精悍になっており。経験を積んだ者特有の余裕を感じさせる。
彼は、かつて伝説の古龍の『天廻龍《シャガルマガラ》』を当時。殆ど情報もない状態で討伐し。ドントルマでは特殊個体の『鋼龍《クシャルダオラ》』を『筆頭ハンター』達と迎撃している。それ以外にも色々と困難に打ち勝ってきた狩人であり。パイとはハンターの新人時代からの付き合いだが、これほど差があくとは。
「やぁ、トビ子ちゃん。久しぶり、元気だった・・・っと昇格試験に受かったんだよね? おめでとう!」
会話の中にある愛嬌から青年は人に好かれる人物である。我らの団のハンターも今でこそ。最上位のハンターではあるが。新人の時は同期だったパイと、臨時のパーティーを組むことも多く。我らの団ハンターも“彼女から学ぶことは多かった”と語るぐらいに知識豊富な少女との狩りでの経験が、右も左も分からない我らの団ハンターを強くしたとキャラバンのすべてのメンバーが認識している。
そんな評価を受けているとは毛ほどにも思っていないのがパイであるが、そんな彼女のジャンプポイントからの飛び癖と、今だに少数ながらも、『ハンターズギルド』からの情報共有によって技術が確立しつつある。【スタイル】と呼ばれる技能。その中で【エリアル】と呼ばれる踏める台があれば、それを踏み台にして対象を高い位置からの強襲や、それに伴う背中に乗る事に特化した戦闘スタイルである。
それは、その新人時代の相方でもある、【太刀】と呼ばれる獲物を好んで使っていた青年。当時の我らの団ハンターの邪魔にならないように考えついた。パイなりの狩りの方法でもあるが、それを目撃したほかのハンターからは。“見ていて気持ちの悪くなるぐらい、回転しながら飛び回っている変な女ハンターがいる”という噂から彼女の本名よりも愛称のトビ子の方が有名になってしまった。
「久しぶりかな? そしてありがとね。今、君の所の受付嬢から青熊獣を蹴りだけで倒したって聞いたんだけど。君、仕事を選んだほうがいいと思うよ? まぁ、純粋にすごいとは思うかな?」
そんな少女の言葉に。愉快そうに笑う、我らの団のハンター。その笑顔も子供みたいに無邪気で、どことなく此処の『団長』の笑い方に似てきている。ついつい、つられて笑うパイ。一通り笑ったあとパイは本来の目的を思いだし目の前の同僚に尋ねる事にする。
「所で。いつもの『気晴らし』に行こうと思うんだけど、君的に何処かオススメとかあるかな?」
我らの団のハンターは顎を手でさすり。しばし考えるように首を捻るが、すぐに左手の手の平を右手で叩きこう返す。
「それなら、今の時期が一番綺麗な【渓流】とかどうかな? 僕もやったけどあそこのはいいよ。水辺にたどり着くから比較的安全だしね」
「なるほど。【渓流】ね・・・ユクモ村にも長いこと行ってなかったし、そうしようかな?」
我らの団のハンターに言われて目的地が決まったので。受付嬢に『渓流の採取ツアー』のクエストを受注する旨を伝え準備する。
「ああ、そうだ。そこに例のジャンプしに行くのは分かったけど採取とかもしに行くのかい?」
我らの団のハンターのその質問に違和感を感じたパイは少し考えてから、返事を返す。
「『ドキドキノコ』が在庫がないからそれぐらいだけど。どうしてかな?」
「実は、後日正式に【ハンターズギルド】から通達があるんだけど。最近各地の狩場で行方不明になる『ハンター』が出ているらしいんだ」
「そうなの? 神隠し的な・・・あるいは。ハンターズギルドの感知できていないモンスターの仕業とかかな?」
我らの団ハンターの穏やかではない話に、少女の声に小さな警戒の色が出る。狩場の状況が不安定な場合。目的のモンスター以外の厄介なモンスターの乱入なども警戒しなければならない。コレは成たての上位のハンターの軽視しがちなミスの一つで、下位と同じような気持ちで準備を怠った結果、予想外の強敵にであい死亡する事件も多い。。まぁ、大概はあのワニ野郎に食われるのだが。
「それは、わからない。行方不明と言っても毎年何件かはあるだろ? ただ、その共通点の多くがそのハンターの実力では危険の少ないであろう、採取関連のクエストや小型モンスターの狩猟。【ハンターズギルド】でも狩場は安定しているのは確認済。もちろん、万が一があるのがこの業界だけどね」
「・・・・・・わからないという事自体が、重要であり問題ってことかな? 確かに、ギルドも何が原因か調べる必要があるけど・・・もしかしてさっきギルドの集会所から出てきたのってその案件なのかな?」
「察しがいいね。まだ決まったわけじゃないけど、もし動くときは最悪の可能性を考慮して僕も行く事になるだろうし、多分。ヘルブラザーズや、ポッケ村とユクモ村のハンターとかも声が掛かるだろうね」
最近はドントルマの方でクエストを受けることも多い我らの団ハンターが。なぜここの【ハンターズギルド】から出てきたのかその疑問が解消された。
「なんでか、大半の最上位のハンターって専属の所が多いものね。そういえば、ユクモの姉さんも依頼で飛び回ってて、ユクモの温泉が恋しいって言ってたかな?」
「ははは。あの人も相変わらずだね。とにかく、怖がらせるつもりじゃないけど。行くなら装備とか整えて行ったほうがいいよ。トビ子ちゃんがジャンプ以外に危険な事をしないってわかってるけどね」
昔から。自分の事なら迷わず突き進むのに。人ごとになると心配性になる彼の心遣いにこそばゆい物を感じながらもパイは頷く。
「わかったよ。ありがとかな。でも、そういう君達だって原因が分かって、もしも正体不明のモンスターならその前に立つ事になるんだよ?」
「うん。今のうちにいつでも動けるように準備を怠らないようにしておくよ。それじゃ、これで失礼するね」
挨拶を残して。キャラバンのマイルームへと向かう我らの団のハンターと受付嬢と別れ。少女も拠点である借り家へと戻る。昨日から何故かぐったりとしている少女のオトモのアイルー。名前は『シロ』である。そのシロが帰宅した『ご主人』に、うつ伏せの状態から片手を上げて挨拶しようとするがそれも叶わず力尽きる。一体こいつの身になにがあったのか? 現状話が出来そうな状態でも無さそうなので、一旦意識から外してアイテムの整理をしようと少女がアイテムボックスを開けた瞬間――
「トォォォォビィ子ちゅあぁぁぁぁぁぁん!! お姉さん、待ってたよー!!」
――突然、女性がアイテムボックスから飛び出してきた。驚き尻餅をつくパイは驚きながらも、現れた人物を見て直ぐに冷静になる。
「うおっ、ビックリしたかな・・・・・・!? って、ユクモの姉さん。どこから出てくるのかな」
アイテムボックスの中から飛び出してきた女性は。『ドッキリ大成功』と書かれた木の立札を掲げて得意げに胸をそらす。先程の話に出てきた“ユクモ村の専属ハンター”のまさかの出現と変わらぬ姿に少女は苦笑いを浮かべる。
「とりあえず先に、上位ハンター昇格おめでとう! トビ子ちゃんの頑張りはお姉さんも知ってるから、大丈夫だと思ってたけどね」
「あー、ありがとかな。姉さん。所でうちのシロがぐったりしてるんだけど、ねぇさん、何か知ってるかな?」
「うん、知ってるよ。というかお姉さんが原因だよ?」
「・・・・・・どういうことかな?」
少女の問いに対して堂々と“自分がやりました”と告げる先輩でみある姉貴分にジト目になるのを自覚しながらも続きを促す。
「実はね。トビ子ちゃんが緊急クエストを無事にクリアしたって聞いたときにね。お姉さん思ったの。可愛い妹分になにかプレゼントとかできないかなって? でも素材って基本的にギルドの決まりで譲渡できないじゃない? だから逆に考えたの。トビ子ちゃんの関係者なら素材を取得しても問題がないってね?」
「まぁ、確かにそうかな。えっと、それで?」
「だから、留守番中のシロ君を、強制的に私のところの相棒と組ませて、【☆】4から受けれる、闘技場クエストを・・・・・・ぶっとうしで10回させた。これが、不思議なぐらいにコインでなくてさー。相変わらず怖いね。『物欲センサー』は。まぁドス系二体の狩猟だから大丈夫、大丈夫」
「鬼かな、あんたは!? そりゃ普通はブッ倒れちゃうよ!」
少女が考えている以上にえぐい事になっていたようだ。あはは、と笑う姉貴分に対して疲れた頭をさすり、少しの間オトモに休みを与えようと考える。
「でも、なんで闘技場に? あそこって確かコイン系の素材ぐらいしかもらえないよね・・・・・・」
「うん、これ作るためだよ。お姉さんからのトビ子ちゃんへのプレゼントはね・・・・・・このヘアバンドだぁ!」
アイテムボックスから取り出した装備を見た少女の表情が消えた。その反応にニタリと笑う姉貴分。数分後、パイの拠点から猫のような悲鳴と共に暴れる音が聞こえたが。それも直に収まったのであった。
――――――――――――――
「トビ子のやつが上位に昇進になったんだって?」
マイルームでオトモと共にアイテムボックスの整理件補充をしていた我らの団のハンターは、背後からの声に振り返ると、そこには我らの団の団長が酒瓶を手に立っていた。ちなみに今は真昼間である。
「ええ、団長も聞いたので?トビ子ちゃんの実力から考えたら、ちょっと遅い気もしますけど。おめでたい話です」
「誰もが、お前さんみたいに行ける訳じゃない。まぁ、あの時のど素人だったお前さんと同期だからな。一方は最上位ハンターで片方はやっと『上位ハンター』だ。それでもその上位に行けるのがどれだけ居てるかって話だけどなぁ」
「懐かしいですね。まだ『ハンター』のいろはも解らない頃にトビ子ちゃんに出会ってなければ、きっと僕はここまで来ることはできなかった」
懐かしむように微笑む、我らの団ハンター。実際に彼女の狩りの方法は堅実かつ、効率的。肉体への消耗もできるだけ減らすことで長期にわたって狩人として現状を維持できる。
並のハンターのように武器だけを振り回し、強行突破するだけの素人では、強くなる前に何かしらの怪我が原因で、引退している可能性だって大いにあっただろう。
「ギルドマネージャーもトビ子の奴には期待しているらしくてな。これで上位の依頼も片付けられると喜んでたぞ。トビ子ほどなら教官としても十二分にやっていけそうだしな」
「ウチの受付嬢も喜びますね。数少ないモンスター談話のできる同性の友人ですし」
「あれは。面白い話なのか・・・・・・? 一度だけアイツのスケッチブックを見たが・・・・・・なぁ?」
【旅団の受付嬢】。彼女はモンスターの生態を独自に調べ独特なイラストと共にスケッチブックに書き記している。あくまで趣味の範囲なので誰も深くは突っ込まないし。我らの団ハンターなどは独創的なあの雰囲気が好きなので、モンスターの狩猟から帰還するとよく、旅団の受付嬢にその時の狩りの様子などを話している。
「ところで、団長の要件はそれではないでしょう?」
我らの団ハンターはアイテムボックスから手を離し団長の数歩前まで近づく、ハンターの言葉に、団長はその眼を険しくし懐から羊皮紙を出して我らの団ハンターに手渡す。
「・・・・・・これは、準備を急ぐ必要がありますね・・・・・・」
それは報告書が書かれた羊皮紙であり。その内容は以下の物だ。
『ー先日。下位のハンターの三名が孤島で素材を採取している最中。『青熊獣《アオアシラ》』の乱入を監査用の気球が確認した。三名の内二名がその狩猟に参加し無事に狩猟を完了させたが。そこから離れた場所で採取していた一名の『ハンター』の行方がわからなくなる事件が起こった。
観測船と気球による捜索虚しく、狩場の制限時間経過のため、残りの『下位ハンター』二名は帰還。飛龍などの大型の生物は確認されておらず。戦闘の痕跡も確認できず。血痕等の負傷の跡も確認されていない。
【ハンターズギルド】はこの異常事態に強固なモンスターの特殊発生を視野に入れた大規模捜索を決行することを議会で可決した。
それにより、我らの団の団長及び、我らの団専属ハンターの出頭を要請する。緊急クエストとしてコレを発令するものとする。』
「こんなきな臭い依頼は初めてだが。これ以上【ハンターズギルド】の信用を落とす訳にはいくまい。何が出てくるか判らんが、大丈夫だ、お前さんならできる! できる!」
いつもの団長の発破に苦笑いを浮かべる我らの団ハンターと酒を飲みながら笑う団長。
しかし、彼らが知るのはもう少し後になるが、この翌日にとある一人の『上位ハンター』が【渓流】で採取中に行方不明になることになる。
そのハンターは女性の狩人で渓流の採取ツアーに向かう手続きをしているのが、【バルバレ】の『我らの団の受付嬢』からの報告で上がる。
彼女の名は『パイ・ルフィル』通称トビ子と呼ばれる期待の新たなる『上位ハンター』であった・・・・・・。
~あとがき~
作者はね、思うんですよ。
『MHに出てくるハンターってかなり愉快な奴らじゃね?』っと。
意思表示の方法が出せないハンター(歴代主人公)とかは置いといて、ゲーム中に逢うハンター達は結構楽観的な部分が見えるんですよね?
故にーー今回のオリ主は本気で(体格以外)趣味に走りました。いつ死んでもおかしくない狩りの世界で生きるたくましさと、後悔しない生き方をしている彼女の異世界英雄譚がどのようになるのか・・・・・・、
生暖かい視線で見守ってくれれば嬉しいです。