ハンターが飛び込んだ先がダンジョンなのは間違っているだろうか?   作:あんこう鍋

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やっと、一年前に関与したキャラに再会できました。
パイの冒険はまだまだ続く!


『武器強化はハンターの醍醐味かな?』

 ヘスティアは土下座していた。

 

 それはもう、素晴らしいぐらいに見事な土下座であった。もし世に『正しい土下座の仕方』なんて本があれば、彼女の今の姿はその見本になっていることであろう。

 

 そんな、下らない事を考えながらも職務に務めるヘファイストスは、いい加減に視界に入る友神の強情な態度に何度目になるか分からない溜息をつく。

 

「ヘスティア。何度でも言うけど、私は貴女の眷属に武器を作らないわよ」

 

「そこをなんとか、お願いするよ! ヘファイストス!」

 

 この様な会話もあれこれと五十回は超えただろうか、本当に強情である。しかし、そういう真っ直ぐな所がこの友神の良き所である事も知っている。

 

 そもそも、神々は地上に降りた時から“本来の神としての力を封じられている”それを忘れているわけではない。

 

「私は、自らの【ファミリア】のブランドに自信と誇りを持っているわ。貴女の眷属がかわいいのもわかるわ・・・・・・でもね」

 

「ヘファイストスさんー! お久しぶりかなぁー」

 

 突然、ノックの音と懐かしい声にヘファイストスの言葉は途切れ、意識はドアの方向へと向くと、ドアが開きそこには・・・・・・膨大なドロップアイテムを担いだ誰かであった。

 

「・・・・・・パイ?」

 

 久方ぶりの客人にヘファイストスは怪訝そうに尋ねる。なにしろ重なった物で顔が見えないのだ。背丈が以前のパイと同じぐらいなのでほぼ、彼女であることはわかるが。これは一体?

 

「お金を返しにきたのと、ちょっと色々あって《ギルド》を経由できなくてね。直接交渉にきたかな!」

 

 取引だー! 取引だー! っと騒ぐパイに、頭痛を覚えるヘファイストス。この娘。一年も【オラリオ】の外に出ていて全く変わっていない。ヘスティアから聞いていたので、現在のパイの状況も耳には入っていたヘファイストスだが、相変わらずの自由人なパイであった。

 

「所で、なんでヘスティアが土下座しているのかな?」

 

「もう・・・・・・正直、困っているのよ」

 

 そこでようやくヘスティアの存在に気づき、疲れたように話し始めたヘファイストスの言葉を、最後まで聞いたパイはとても渋い顔をする。

 

「ヘスティアの言い分はよーくわかるけど、それをヘファイストスさんにするのはちょっと違うんじゃないかなー」

 

「うぅ・・・・・・トビ子君までそういうのかい? でもベル君は言ったんだ・・・・・・どこぞかの『ハンター』に連れて行かれた適正Lv以上の場所に連れて行かれてボコボコに・・・・・・顔も認識できないような姿で帰ってきて・・・・・・二日ほど「強くなりたい・・・・・・」「ミノタウロス・・・・・・うっ、頭が・・・・・・」ってつぶやくんだ・・・・・・主神として何かしてやりたいと思うのは普通じゃないのかい!」

 

「そんなもん! ベルにダンジョンでドロップアイテム取らせて持ち前の剣を強化すればいいかな!」

 

「ちくしょう! 元凶に良心なんてなかったのか・・・・・・ごめんよ、ベル君! ボクは駄目な神だ!」

 

「「そんなの、昔からじゃないの?」」

 

「ああ!? 最近この辛辣な対応にも慣れてきたぁ!」

 

 そんな、会話をしながらも、パイの持って来たドロップアイテムを鑑定してゆくヘファイストスは明らかに毛色の違う素材に気がつく。

 

「ねぇ。パイ・・・・・・私の記憶が間違いじゃないなら・・・・・・コレ、『ブルークラブの鋼殻』よね?」

 

「ああ、あのヤオザミもどきね。うんそうかな?」

 

「貴女、まさか一人で、二十五層まで降りたんじゃないでしょうね!?」

 

「そうなのかな・・・・・・大きな滝があったからそこから飛び込んで。大きな龍がいたから面倒だったし、早々に帰ってきた時に狩った奴だから・・・・・・正直階層までは覚えてないかな」

 

「とっ!? 飛び込んだ・・・・・・? 『巨蒼の滝』を? 貴女、死に急いでいるのかしら・・・・・・?」

 

「はっはっは。やだなぁ、ヘファイストスさん! そんな訳ないかな・・・・・・所で、そのドロップアイテムはどうかな?」

 

「・・・・・・うちで使えそうなの物を幾つか買い取るけど、流石に全部は無理ね。所で、パイのLv.は?」

 

「ああ、私はLv.1かな。しかも、“低ステイタス”の冒険者かな?」

 

「なるほど、ミアハが胃を抑えながら買い出ししている訳ね?」

 

 良心的な神であるミアハも災難な事だ。ヘファイストスは苦笑いを浮かべながら目の前の非常識の塊を見る。いくら、技能などでLv.だけでは埋まらない差が起こり得るのが人間と言えど、パイをそのまま人間のカテゴライズに入れていい物か・・・・・・。

 

 本人の発言通りであるならば、“低ステイタスのLv.1の冒険者”がLv.2のパーティー推薦の場所にソロで行って無傷で帰ってくるだけではなく。ドロップアイテムを大量に入手してくるなど、どれほどの幸運を持っているのか。確実に他の神々に知られれば【ミアハ・ファミリア】がこの【オラリオ】から消えてでもパイを欲す者も出てくるであろう。

 

 せめて、身近な場所だけでもこの子の居場所であってほしい。ヘファイストスは優しげに目を細めて、下らない言い合いを始めた、パイとヘスティアを眺めるのであった。

 

――――――――――――――

 

 

ベル・クラネルは状況の把握に勤めていた。

 

「おい! この剣を何処で手に入れたんだ!」

 

 なにやら、眼光の鋭い赤毛の青年に肩を掴まれ問いただされているベルは呆気に取られ、なぜこうなったかを思い出す。

 

 前回のミノタウロスにフルボッコにされて、うなされながら寝ていた二日間。処置が良かったのか後遺症もなく復帰できたものの、あんまりな自身の紙みたいな装甲に涙が出そうになった。

 

 アドバイザーのエイナに相談した所。それならっと――その次の日に休みのエイナと共にバベルへと向かった。聞けば、高級ブランドの【ヘファイストス・ファミリア】でも駆け出しと呼ばれる鍛冶師は存在し、“ブランドの銘”は付かないが、自信ある作品を展示できるスペースがあるという事で、その一角に向かうとそこには金銭が乏しい駆け出しでも十分に手が届きそうな品物が多くあった。

 

 そんな中で、エイナと離れ、お互いに良い物を探していると、ふと赤毛の青年が持って来た軽鎧がベルの目に入る。なにか惹かれる物を感じて、声をかけると、少し無愛想で男らしい顔つきの青年が振り返る。

 

「ん? なんだ?」

 

「あっ、すいません。あの、その鎧は売り物ですか?」

 

「・・・・・・ああ、すまん、すまん。そうだ。これは売り物だ・・・・・・ん!?」

 

「? どうしました?」

 

 だが、青年は木箱を落としてそんな事にも気を止めずにベルの肩を掴み・・・・・・そう、どこにも悪い点などない。ベルの少し怯えた表情に、ハッ――っと正気に戻った青年は手を離して謝る。

 

「すっ、すまねぇ。なぁ、その腰に差している剣なんだが・・・・・・見せてくれないか?」

 

「あっ。はい。いいですよ」

 

 ベルから手渡された剣を見て、「間違いねぇ・・・・・・」っと呟く、青年にベルはいつか、パイが話していたこの剣を打った職人の名を思い出す。

 

「あの、もしかしてヴェルフ・クロッゾさんですか? その剣を打った鍛冶師の・・・・・・」

 

「ああ・・・・・・そうだが?」

 

「やっぱり! パイさんから聞いていた通りの人だから直ぐにわかりました!」

 

「お前・・・・・・トビ子、いやパイの知り合いか?」

 

「はい! パイさんは僕の師匠です。この剣はその修行の最後に記念に貰いました。今はパイさんも【オラリオ】に戻ってきていますよ?」

 

「あんにゃろ・・・・・・俺の作った剣を断りもなく渡しやがって・・・・・・とはいえ、ふむ・・・・・・とても使い込まれているが、不器用な使い方はされてないな」

 

「ははは、そりゃそうですよ。パイさんからも「友人の打った大事な剣だから、変な使い方したら・・・・・・【アレ】口に突っ込むかな?」って言われてましたからね」

 

「【アレ】をか? おっ・・・・・・おう。悪かった・・・・・・しかし、それでも、こいつはそろそろ限界だな・・・・・・いや、お前が悪いんじゃない、純粋に寿命だ・・・・・・」

「なっ・・・・・・なんとか、なりませんか?」

 

「ならば、強化しかないかな!」

 

「「うぉっ!? どこから湧いて出た!?」」

 

 通路の真ん中で話していたベルとヴェルフの間からヌッと出てきたパイに。驚き、飛び引く二人の対応にしてやったりと『うなづく』パイ。

 

「驚いた・・・・・・しかし、久しぶりだなトビ子。それでその“強化”っていうのは?」

 

「あんだけ、異質な登場の仕方をしたのに反応はそれだけなんですね・・・・・・どこからきたんです?」

 

「まぁまぁ。ここでヘファイストスさんに挨拶してから、ついでだとおもって散策してたらベルとヴェルフを見かけたのかな。んで、強化ってのは素材をつかって元の武器を強くしていくのかな!」

 

「元の武器を? 新しく打つのでも、修繕でもなくか? 修繕ならこの剣は無理だぞ・・・・・・やっても直ぐにガタがくる」

 

「とりあえず、ダメもとでやってみないかな?」

 

「・・・・・・俺はいいぞ? お前は? もしかしたらその武器を失う可能性もあるが・・・・・・」

 

「クロッゾさんは先程、この剣もガタが来ているといってましたし。それなら可能性がある方に賭けたいと思います」

 

「・・・・・・わかった、なら明日俺の工房に来てくれ・・・・・・トビ子は場所は覚えているか?」

 

「大丈夫かな! 【オラリオ】は散々迷ったからある程度は地理もばっちりかな!」

 

「不安しかねぇ・・・・・・ちょっと待ってろ、簡単な地図書くから・・・・・・っと、俺とした事が、なぁ・・・・・・俺の名前は知ってるだろうが、改めて、ヴェルフ・クロッゾだ。ヴェルフでいいぞ?」

 

「僕は、ベル。ベル・クラネル。僕もベルでいいですよ?」

 

「おう、よろしくな! ベル。さて、じゃあその時にでもこいつ・・・・・・【兎鎧『ピョンキチ』】の調整するか」

 

「「ええ・・・・・・?」」

 

 ベルとパイの“コレそんな名前なの? ないわぁ”という言葉こそ飲み込んだものの表情に出ている。そんな二人を怪訝そうに見つめるヴェルフであった。

 

・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 その後、パイとヴェルフと別れ。エイナと合流したベルは彼女からエメラルドの腕に嵌めるプロテクターをプレゼントとして貰い。えらく、上機嫌で帰っていた。

 

 その彼の視界・・・・・・裏路地に繋がる通路に何かが駆ける姿がチラリっと映り・・・・・・それを追いかける影も見えた。なによりその追いかけられている人物に覚えもあった。

 

(あれ? 今のリリ?)

 

 思考が状況の確認を要求する。直ぐにベルも駆け出し、路地裏へと入ってゆく。少し走ると先ほどの追いかけている方の人物。男の背が見える。怒声混じりに追いかけているので、色恋沙汰である事は少ないだろう。

 

 陽光の少ない薄暗い路地をベルが地を蹴り。壁を蹴りながら飛ぶ。難なく逃走者と追跡者の中間へと着地する。逃走劇に突然現れた乱入者に空気が固まる。

 

「あ、ベル様?」

 

「やっぱり、リリだったんだね。えっと、どうして追いかけられているの?」

 

 人違いじゃなくて良かったと、ベルが安心するも直ぐに目の前の男性に意識を集中させる。男性は怒り心頭なのか、顔を真っ赤に染めてリリルカを睨めつけ・・・・・・そして――

 

「リリルカ! お前だけ逃げ出すなんて俺は許さんぞ!」

 

「嫌ですよ! チャンドラさんも十分に書類仕事できるようになったじゃないですか!

 全部リリに押し付けないでくださいよ!」

 

「お前が、処理した方が見やすいんだよ! 資金なら他の団員が稼いでくれるし【解呪酒】の稼ぎだってあるだろ!? わざわざダンジョンに逃げ込まなくてもいいだろ!?」

 

「・・・・・・何の事ですか? リリ。さっぱりです」

 

「ええ? えっと、ひょっとしなくても僕・・・・・・邪魔?」

 

「聞いてくれよ。そこの白いの、こいつ酷いんだぞ! 俺が常に書類仕事でヒーヒー言ってるのに、呑気にダンジョンに潜ってるんだぞ!」

 

「人聞きの悪い事を言わないでください! 貴方は団長でしょ? 団長なら書類仕事の一つや二つ簡単に済ませてください!」

 

「その一つや二つが百や二百になってるから、こうやって連れ戻そうとしてるんだろうが!」

 

 団長自らが団員を連れ戻そうとしている異質な状況。しかも、内容が内容だ。ベルはそそくさとその場から離れる。夫婦喧嘩は犬も食わないと聞くが、こういう話も他人が関わる必要も無い。

 

 ギャーギャー騒ぐ二人を背にベルは駆け出す。少年はこの瞬間一つ、大人の階段を上ったのだった。

 

 次の日――天気は快晴。『青の薬舗』にパイを迎えに来たベルは迎えついでに『ポーション』を補充しに来ていた。

 

 玄関横の『便利屋』専用ポストにはきっと色々な雑用が書かれた依頼書が入っているだろう。そのポストを横目に店内へと入店すると、いつもの眠たげな表情のナァーザが店内の整理をしている所であった。

 

「あっ・・・・・・いらっしゃい。ベル。この間、パイのせいでミノタウロスにタコ殴りにあったって、ミアハ様から聞いてたけど・・・・・・大丈夫?」

 

「おはようございます。ナァーザさん! 大丈夫ですよ! 『耐久』がものすごく上がったぐらいですよ。そう、『耐久』がね・・・・・・フフフ・・・・・・」

 

「うん。わかった。察した・・・・・・だから瞳に光を戻して、今のベルはちょっと怖い」

 

 堕ちかけている少年の瞳と壊れかけた笑みにナァーザはそっと目を逸らす。あえて『耐久』を強調するあたりが涙を誘う。

 

「おはようかなーベル。あれ? どうしたのナァーザさん?」

 

「なんでもない、パイは少しでもベルに優しくするべき」

 

「ん?? よくわからないけど、気をつけるかな?」

 

 そこで、瞳に光を取り戻したベルもパイに挨拶を返す。ポーションを購入している間にパイは届いた依頼書を確認している。パイの確認作業が終わると二人は、ヴェルフの工場へと向かう。

 

 指定された時間にヴェルフの工場へとついた二人は、大きな音を立ててノックをし。ドアを開けて中へと入る。ヴェルフからノックしても反応がないなら勝手に入ってくれと断りを貰っている。

 

 中に入ると、少し気温が上がったように感じる、炉の熱が部屋全体を温めているのだろう。作業場にたどり着くとそこには、半袖で頭にねじったタオルを撒いているヴェルフが槌の確認をしている所であった。

 

「おはようかな。ヴェルフ」

 

「おはようございます。今日はよろしくお願いします。ヴェルフさん」

 

「おお――、おはよう二人共。じゃあ、早速やるか・・・・・・まずは鎧の調整だな」

 

 上着を脱いで、黒地のインナーとパンツ姿になったベルに手馴れた手付きで兎鎧を装着してゆく――しかし、そこでベルが気づく、鎧の腕を守る部分が昨日とは形状が違う事に。

 

「おっ? 気づいたか? なに、前のもあるけど少し遊び心が出ちまってな。ちょっと試してくれないか?」

 

 そう言って、ベルの武器を腕に取り付ける。そこでようやくベルはこれが武器の収納できる部分のかわりであると認識する。

 

「ふむ、どうだ? それだと最低限の攻撃力を維持した状態で両手が空くように考えたんだが」

 

 ヴェルフの言葉にベルは少し考えて、外に出ることを提案する。実際に振ってみない事には使用感も分からない。それを伝えるとヴェルフもパイも納得の表情で頷く。

 

 外にでて、近くに人が居ない事を確認して、ベルはフックを打つように腕を振る。今までの剣を握って振るというよりも殴り込む感覚に一瞬、違和感を覚えるがベルは即座に“剣を振る”から“体術による格闘”へと身体の使い方を変更する。

 

 腕を振こみ、時には蹴りを織り交ぜ、ベルなりの最善を探す。しばしの演舞を行い、納得したのか・・・・・・うん。っと頷く。

 

「いいですね・・・・・・これなら、慣れていけば十分に使えそうです」

 

「うん。ベルは体術もしなやかにこなせるから十分戦力になるかな、強いて言うなら刃がむき身なのが若干怖いぐらいかな?」

 

「そのあたりは、ベルに気をつけてもらうしかないな・・・・・・さて、じゃあ今度こそ本来の目的の方だが・・・・・・ベル、材料は用意してるのか?」

 

「あっ。うん。これなんですけど」

 

 そう言ってベルはカバンからウォーシャドウの『ウォーシャドウの指刃』を差し出す。ヴェルフもそれを手にしばし考える。

 

「質はいいが、これだけじゃ一本いけるかどうか・・・・・・」

 

「なら、あと何本あればいいのかな?」

 

「いや、トビ子。出来ればこれ以外の素材も合わせた方がいい・・・・・・って何やってるんだ? トビ子」

 

「ドロップアイテムなら私に任せるかなー!」

 

 そう言うと怒涛の勢いでアイテムポーチから大量のドロップアイテムを取り出すパイ、その量に呆気に取られるベルとヴェルフだが、ヴェルフは鍛冶師の性が刺激されたのか、いくつかの素材を手に考えに没頭する。

 

 時間にして半刻ほど、イメージが固まったのか、ヴェルフは炉の熱を上げ準備してゆく。使うのは『ウォーシャドウの指刃』と『デッドリーホーネットの強殻』ちゃっかりといい素材を使うあたり抜け目無い。

 

「じゃあ、始めるぞ」

 

 その一声からヴェルフは作業を開始する。熱っされた素材と剣を合わせてゆく、ヴェルフにとっては初めての作業であるがその動きに淀みはない。

 

 槌の打つ音が作業場に響く、誰も口を開かずただ、じっとその工程を見つめる・・・・・・以外にも最初に声を出したのはヴェルフであった。

 

「・・・・・・なぁ、トビ子、ベル・・・・・・お前ら、『魔剣』ってどう思う?」

 

「魔剣? あのびっくり武器かな?」

 

「パイさんみたいな捉え方する人初めてみましたよ・・・・・・そうですね・・・・・・あれば便利ぐらいですかね?」

 

「あれば便利か・・・・・・ベル、どうしてそう思ったんだ?」

 

「回数制限ありですが強力な攻撃手段だからですよ。それ以上でもそれ以下でもないですね。しかも、安定性もないから正直に言えば、身を任せられない道具ですね」

 

「なるほど、お前は魔剣を欲しいか?」

 

「いやいや、特には欲しいとか思いませんね。過ぎた力を持つ趣味もないですし。なによりそんなのに頼っていたら腕が訛っちゃいますよ」

 

「ベルはそういうの欲しがると思っていたから、ちょっと意外かな?」

 

「きっと、前の僕なら少しは思ったかもしれませんね・・・・・・んー、なんだろう。“魔剣を使う僕が想像つかない”んですよね?」

 

「・・・・・・っぷ・・・・・・っくく・・・・・・よくわかった。すまねぇな変なこと聞いてよ」

 

「?? ええ、大丈夫ですよ?」

 

 突然笑うヴェルフにベルは戸惑いの表情を浮かべる。そして、長い時間をかけて、ベルの剣は生まれ変わる。

 

「完成だ・・・・・・トビ子の時は名前すらつけてやれなかったからな・・・・・・コイツの名前は【影刀《エイスケ》】にしよう」

 

((素直にカゲトウとかつけられないのかな・・・・・・))

 

 ヴェルフのセンスにツッコミたい衝動にかられるベルとパイだったが頼んだ以上それは野暮と思い口を紡ぐ。

 

 【影刀】は前回の直剣ではなく、若干の反りのある刀状の黒い刀身の刀であった。以前に比べると厚みが薄く、若干長さが伸びている。持ち手はそこまでの変更はないがバランスが変化している。

 

 ベルは受け取った新たなる相棒を手に、再度外へ出た。大まかな調整をしようと軽く振ってみると違和感の無いことに違和感を覚える。

 

「あれ?」

 

「どうしたのかな? ベル」

 

「振ってみて、違和感がないだろ? 前回の剣にできるだけ近い扱いをできるように重量のバランスを取ったからな。以前と変わらず振れるはずだ」

 

「すごい! 初めてなのに全然馴染んでる! すごいよヴェルフ!!」

 

 ベルは長くなった分の間合いを確かめながら剣を振り、小手に装着すれば体術のバランスを確かめてゆく・・・・・・その姿に満足げに笑うヴェルフ。

 

「おっ? ベル、お前、初めて俺の事『ヴェルフさん』って呼ばなかったな」

 

「あっ!? すいません・・・・・・気に触りましたか?」

 

 そして、思い出したかのように告げる、ヴェルフに謝るベルだったがヴェルフも手の平を前に出して、大丈夫だっと告げる。

 

「いや、むしろそういう気の使い方は苦手だ、友人に接するぐらいで頼む・・・・・・そんでだ、二つほどお願いがあるんだが、いいか?」

 

「うん、ヴェルフがそれでいいなら・・・・・・お願いって?」

 

「俺はLv.1の鍛冶師なんだが、【ランクアップ】をする為の臨時のパーティーを組みたい。その相棒になってくれないかっというのと、俺と専属契約を交わさないか?」

 

「おおっ? よかったじゃないベル。ヴェルフは信用できる鍛冶師かな」

 

「そうですね、わかったよ。どちらも喜んで受ける。これからよろしく、ヴェルフ!」

 

 二人は握手を交わす。その姿を見ながら『うなずく』パイの姿、三人の若者を夕日が照らすのであった。

 

 

――――――――――――――

 

 

 我らの団ハンターは『遺跡平原』の中に居た。

 

 目の前の大猪。『ドスファンゴ』へと駆ける。彼の持つ『ストライカー』の『スタイル』は狩技を多様できる『スタイル』である。そして、その真価を発揮する為の布石を彼はもう配置し終えていた。

 

 地を踏みつけ突進してくるドスファンゴの巨体を背負った刀を抜き払いながら、円を書くように切り払われる。その振るわれた刀がその遠心力を利用し、振るわれた刀身がドスファンゴの皮膚を傷つけるのと同時に、ハンターが横に移動した為にドスファンゴは一時的に相手の姿を見失う。

 

 その隙だらけのドスファンゴへと、気合の篭った眼光が獲物に向く。

 

「さて・・・・・・やるぞ・・・・・・セイッ!!」

 

 【桜花気刃斬】。一歩後ろへと下がり、距離を調整すると、ハンターはその身の急速に加速させ、やや回転気味に放たれた剛刃がドスファンゴの身を切り裂く。

 

 身を捩らせ苦痛の声を上げるドスファンゴで、更なる追い討ちをかけるハンターは唐竹割りのような斬撃をドスファンゴへと落とすが、危険を感じて無理やり位置を変えたドスファンゴに避けられる。

 

 決死の突撃をハンターへ向けるドスファンゴと刀を構え対峙するハンター。

 

 ドスファンゴの突撃がハンターに当たる瞬間――神速の斬撃がドスファンゴの頭部を骨すらも切り裂く。

 

 【鏡花の構え】。ハンターの切り札的技である。相手の攻撃のタイミングにあわせて。最も相手のスキの大きくなる刹那の一瞬に最高の斬撃をぶつける荒技である。

 

 決死の特攻でさえも叶わなかったドスファンゴの巨体が地に伏す。

 

 一息をついて、刀を納刀すると空にある気球へと手を振るハンター。クエストの狩猟対象を狩猟した事をサインで伝えると。気球側から予期せぬ反応が帰ってきた。

 

 『乱入してきた敵影有り。』さらに詳細を確認すると相手は。『青熊獣《アオアシラ》』らしい。

 

 無視しても問題はないが、どのみち近くの村の驚異にはなる。ついでだと、ハンターは駆け出すが――彼はそのあとアオアシラの痕跡を見つける事はできなかった・・・・・・。

 

 その『遺跡平原』より遥か彼方には紅く光る何かがあったが・・・・・・それに気がついたものはソコには居なかった・・・・・・。




ベル君。武器を一段階強化しました。
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