ハンターが飛び込んだ先がダンジョンなのは間違っているだろうか?   作:あんこう鍋

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MHXXでスキル構成見ながら作ってみた装備が想像以上に『痛くて』即採用になった。


『ジャンプした先は。摩訶不思議な洞窟でした・・・・・・ここ、ドコかな?』

パイ・ルフィルはノリノリで歩いていた。場所は【渓流】紅く紅葉した木々と、時に舞い落ちる葉が、水面のせせらぎと共に風情を醸し出している。そんな中を“数多くのポーチを体中に取り付けて”歩いていた。

 

 パイという少女は『ハンター』という職業上の仕来りを守り。自然と調和する。実に狩人としての理想の在り方だが。狩人としての基本から少しばかり離れていた。

 

 本来ならば身体能力のパフォーマンスを最大限発揮する為に、敢えて持ち物を制限するのが『ハンター』としての基本である。

 

 しかし、彼女は違った。身体に着けられるなら着けれるだけのアイテムポーチを装備し、それらを駆使してモンスターを追い込むのが彼女の狩り方だ。

 

 着地地点の『大タル爆弾』配置や定期的な目印である『ペイントボール』の効果が切れる前にぶつけるのは当たり前だし。周りに煙幕を張る為のアイテム。『けむり玉』での奇襲や、嫌らしい配置での『罠肉(モンスターに不利になる細工をした生肉)』、強烈な光を生み出す『閃光玉』で戦局を調整し。聴力の高いモンスターには高周波を巻き散らかす『音爆弾』で感覚を狂わせ。相手を消耗させる。

 

 最後は満身創痍のモンスターが眠りに落ちたその足元に『落とし穴』や『シビレ罠』等の罠を設置し、弱った上に寝起きにいきなり罠での地面に沈めると言う鬼畜な所業の後――麻酔の薬品で眠らせる。こうして確実に狩猟するのが、彼女の基本スタイルである。割と容赦がない・・・・・・。

 

 おまけに、体力を回復させる『回復剤』やその上位の『回復剤グレード』。長期の戦闘に備えたこんがりと焼いた『こんがり肉』や毒を扱うモンスター用に『解毒薬』やられ状態を回復する『ウチケシの実』保険の為の『ハチミツ』と緊急時の帰還アイテム。摩訶不思議な『モドリ玉』などを常時用意している。

 

 ちなみにモンスターに拘束された時用にもっているとある物は専用のポーチに入れている。【アレ】と同じところに入っている『回復剤』等の物に口をつけたくはないし、万が一【アレ】が割れたりしたら大惨事である。それほどの物なのだ。それもたくさん持ってきている。大概は使うことなく終わるが・・・・・・。

 

 直接、武器を使って戦う事もあるが、怪我などのリスクも高くなる為に「殴れるときに殴る」を基礎としている若干のヘタレ気質と回避と攻撃を同時にできる戦闘スタイルは実にパイの気質にマッチしていた。

 

「けーりゅー♪ けーりゅー♪ ガーヴァのフン~♪ ジャンプポイントにゃ、タケノコ採取~♪」

 

 そんな彼女は現在、変な歌を歌いながらも、いつものようにお気に入りの装備とは違う“とある方のコーディネートされた”装備を纏っていた。その装備で《渓流》へと赴いていた。彼女の装備は白色を主にした若干のツギハギ感が感じる装備で。ハンター界では古来のモンスターの名前と取って【キメラ装備】と呼ばれる。同種のモンスターの素材ではなく、違うモンスターの素材を使って作り上げた各パーツを合わせて、多種のスキルを発動させる為の装備であり、妙なこだわりの『ハンター』が好んで作りたがる。ある意味オーダーメイドな一品ともいえるだろう。彼女の装備も頭部の新品の上位素材で造られた以外は以前からある下位装備でコーディネートされている。上から順に

 

頭装備 アイルーヘアバンド《白》

 

体装備 パピメルペット《白》S2(罠師珠)(狩人珠)

 

腕装備 ファルメルマート《白》S1(狩人珠)

 

腰装備 ルドロスフォールド《白》S1(罠師珠)

 

足装備 ハントグリーブ《白》S2(狩人珠×2)

 

御守り 闘士の護石《気力回復+3》S1(罠師珠)

 

発動スキル

『スタミナ急速回復』『罠師』『ハンター生活』の三つのスキルが発動している。武器は双剣の一段階強化されたオーダーレイピアである。

 

「見た目は小柄で力はつよい~♪てっきを乗り越えくるくるまわる~♪」

 

 パイは光を失った瞳で歌い続ける。見た目が実にイタイ事になっている。ハンター仲間から真顔で「そんな装備(見た目)で大丈夫か?」と聞かれたのでパイは死んだ目で「大丈夫だ(スキル的には)問題ない」と答える場面がギルド集会所であったとか。

 

 特殊なコインで造られた頭装備。【アイルーへバンド】と一見《スキル》重視のように見える装備のコーディネート。これは、ユクモ村の専属ハンターに着せ替え人形にされて行き着いた装備ではあるが。見た目に関しては確実に、ユクモのハンター好みの“自分には似合わない可愛い・・・・・・ファンシー系装備であり”パイとしても、スキル構成的には問題ないのも確かであるので、若干の躊躇もあったしなんだか、してやられた感が半端なかった。

 

 冬の手前であり紅く色づいた葉やひんやりとした空気が、山から吹き川辺には魚影と水面から跳ねる姿が見られる。だが。そのひんやりした空気とは違う、寒気に一瞬身をすくませるパイ。ここは夜の砂漠や、雪山ではない。ホットドリンクは必要ないはずだ。先日の強行軍でテンションダダ下がりの、相棒のアイルーを連れてこなかったが。こんな事ならば気晴らしも兼ねてアイルーキッチンで弁当でも作ってもらって一緒に来れば良かった。などと一瞬感じた恐怖を忘れるために別のことを考えながらも“気前のいいお爺さんから貰ったピッケルグレート”で鉱石を掘りながらも、例のジャンプポイントがあるエリアへとたどり着く。

 

 草と土の香り湿度の高い場所特有の匂いとなって。パイの鼻腔を刺激する。使い古され立て付けの悪いハシゴを上り、竹林の中である物を探す。こういうコツコツと採取するのもハンター生活の醍醐味である。

 

「たっけのこ採取でポイント集め~♪今日のご飯はタケノコごは・・・ぶほぅ!? けっ、ケツがぁぁ!」

 

 のんきに特産タケノコを採取していたパイの臀部に鋭い痛みが発する。歌の最中かつ大型のモンスターが来ることのない狭い場所であったので。油断していたからか、女性らしくない悲鳴が上がる。

 

「ぬぉぉぉ・・・!一体なにが・・・メラルー・・・・・・またお前かな、今回は許すまじ!」

 

 そこにはニャーニャーと小躍りしている。アイルーによく似た二足歩行できるネコモドキがいた。アイルーは性格も温厚でハンター戦闘時のサポートや、料理。装備加工などの専門の職につき、人間のよき隣人としての立場があるが。こいつは違う。こいつはメラルーと呼ばれるイタズラ好きで、手癖も悪く、よくハンターの手持ちのアイテムから何かを抜き去っていく。そして、卵の運搬時とかの落としたらダメな物を持っている時とかになんでか、嬉々として狙ってくる。悪意の塊のような奴である。

 

 そんなハンターの嫌いなモンスターの上位に属する。メラルーはパイが武器を構えるよりも早く、地中へと潜っていった。こうなったら盗まれた物が帰ってくる可能性はほぼないであろう。ちなみにハンターの嫌いなモンスターの一位は個体名ではなく。通称

「ホーミング生肉」と呼ばれる【ファンゴ】と【アプケノス】と【リノピロス】の三種類で生肉をはぎ取れて“大型モンスターにとって”ベストなタイミングでハンターを吹っ飛ばしたり体制を崩してきたりする。厄介者である。パイもクエスト中に尻に何回も突撃を受けている。

 

「今回は一体何を盗まれて・・・・・・『モドリ玉』かぁ、なんでこんな時に限って、嫌なもの盗まれるのかな」

 

 『モドリ玉』とは特殊なキノコから調合できるアイテムだ。使うと何故か安全地帯であるベースキャンプへと移動できる。その特殊なキノコ【ドキドキノコ】は、少し前にギルドの急募の依頼で孤立した、調査員の脱出の為に、ドキドキノコの納品依頼のがあり。それの為に倉庫の中のを全部納品してしまったのだ。パイも今回作っておいた最後の『モドリ玉』を持ってきたのだが。

 

「なんか、一気にテンション下がった・・・もう飛び込んで、さっさとキノコ採取でもしようかな」

 

 気が落ち込んだら、つい独り言が漏れてしまう。せめて本来の目的を果たそうと、巨大な植物の弦で出来た自然の橋を危なげなく歩んでく。そこからの遥か下は雲がかかっており。それがどれほどの高さなのか想像もつかない。常人であれば恐怖で足がすくんでも不思議では無いし、はっきり言って足場も良くない。高所恐怖症などあれば絶対に近づきたくない類の場所である。

 

 そんな場所に立ちながらもパイのテンションは上がっていた。最高潮まで上がっていた。その場で『ステップ』しちゃうぐらいテンションが上がっていた。そして空を見た瞬間気づく。遥か彼方に赤い光の点がある事に、しかしその赤い光はしばらく眺めて

いると消えてしまう。

 

 なんだったのかな? パイの中で疑問は浮かぶがものの。特に気にするような事ではないと思い直し。パイは眼前に広がる雲海に視線を戻す。

 

 もう我慢の限界だ! パイは『イェーイ』っとポーズを決めて。ヤッホーイとバカみたいなセリフと共に愉快げに飛び出した。

 

 それはもう、躊躇なく飛んだ。それも彼女のこだわりの前方に一回転をしながら飛び出した。その時に彼女の運命は決まったのだ。

 

 もし、その時飛び込まずに、先にキノコを採取しに行っていれば?

 

 そもそも、飛び込むこともなく帰っていれば?

 

 もしくは。『行方不明のハンターの一件』での『我らの団ハンター』の忠告を『正体不明のモンスターが、直接関与した可能性』と決め付けていなければ?

 

 パイが橋から飛び出し、視線を足元に向ける。今だ雲まで遠く瞬間のスリルを楽しもうとした瞬間、彼女が落ちていくその先に突如として黒い穴が出現した。

 

 ちょっとなにかな!? 驚愕に開かれるパイの瞳に映る光景は現実的とはかけ離れていて、それが逆に恐怖を駆り立てる。

 

 だが翼のない身では姿勢を変えるぐらいしかできず自由落下の勢いのまま。パイは空間に突如として生まれた穴へと落ちていった。

 

 

―――――――

 

 

 我らの団ハンター(以下ハンター)は、旅団の受付嬢からの突拍子のない報告に、一瞬思考が止まった。

 

 ハンターがその知らせを受けたのは、トビ子事。パイ・ルフィルと別れて3日経った昼間の事だった。自身が知っている何処か飄々としながらも、何回も無茶を言ってくれる旅団の受付嬢が、慌てふためきながら支離滅裂な説明を行う。その説明の意味を理解した瞬間、ハンターは周りの音がひどく遠くなったような感覚に陥り、それとは別に、回転だけが早くなる頭の脳裏に、三日前にあった彼女の顔

が浮かぶ――

 

「・・・・・・ターさん! ・・・・・・ハンターさん!」

 

 ――呼ばれた事で、思考が戻る。落ち着いて考えてみると『あの娘がただでどうにかなるとはおもえないよね・・・・・・』ハンター・・・・・・は小さく呼吸を整え。受付嬢の肩に手を載せて頷く。安心させるように。落ち着かせるように。

 

「トビ子ちゃんが例の行方不明の被害に遭ったんだよね? それなら、すぐにギルドにいこう。【渓流】の依頼だった事とか説明した方がギルドの動きも早くなる・・・・・・」

 

「残念だが、我らの団ハンターよ。今回は確実だ。先程、観察用気球の観察員から報告があった。トビ子が【渓流】の橋から飛び出した瞬間に、その姿を消したと。観測船は飛龍及び、大型のモンスターの存在も確認されていない上に、雲に紛れる前だったから見間違いではないそうだ。そして捜索も保留になった・・・・・・」

 

「・・・・・・えっ、嘘でしょう? トビ子ちゃん・・・・・・運悪すぎ・・・・・・」

 

「ちょっとまて。お前さん・・・・・・ショックを受けてないのか?」

 

 受付嬢の背後、ハンターのマイルームに入ってきた、カウボーイハットの大柄な男、【我らの団】の団長がこれまでに見たことのない真剣な表情で語りかけてきたが、ハンターの様子と言葉をきいて呆れていた。他の団員も初めは心配そうではあったが、ハンターのあっけらかんとした様子に全員が顔に疑問符を貼り付ける。

 

 七人も入ると手狭に感じるマイルーム。そのベッドの近くにいるハンターから「じゃあ、みんなに聞くけど。あの『トビ子』ちゃんがみすみすとモンスターにやられると思うかい?」そう言うハンターに、団長を含めた6人は納得するように頷く。「確かにあの娘のしぶとさは『G級』並みだしね」と顔に書いてあった。

 

 しばしの沈黙が流れ・・・・・・「あー」などと、取り繕うように唸ったあと、団長は【ハンターズギルド】の意向を語りだす。

 

「ギルドは今回の一件で、事件の方向性の誤りを修正した。コレまでのように、【古龍】のような確認の取れていない、モンスターの被害であるならば、ギルドは戦力を向けてこれに当たった・・・・・・。当たれたのだが。今回のような例でハンターを動かすのは危険すぎる。ミイラ取りがミイラになってしまうなんて、笑い話にもならん。わかるだろ?」

 

 【ハンターズギルド】の意思を改めて聞くが、確かに、例のない珍事件である事は確かだ、実際『穴に落ちた者』が無事である保証はない。それがメンバーの全員に伝わり、俯く。しかし、なぜだろうか? あのチビっこがそう言う結果に終わる光景だけがなぜか浮かんでこないのは・・・・・・。

 

「・・・・・・確かに話はわかった。しかし、これでタダで終わらせないんだろ? 団長?」

 

 我らの団の団長の長年の親友である旅団の加工屋の力強い言葉がマイルームに響く。旅団の加工屋はその瞳を信頼を載せて所属する団の団長に向け。その意思に受けて、団長も力強く頷く。

 

「ああ、【我らの団】はこれから、ギルドの意思を関係なく。クエストの条件の追加を我らの団ハンターに頼もうと思う」

 

「団長さん。それってどういう事ニャル?」

 

 旅団の料理長のアイルーが確認の為に詳しく詳細を求める。

 

「各クエスト時にギルドの依頼内容とは別に、このクエストを我らの団のハンターにギルドに無許可のクエストを受注してもらう。内容は『【正体不明の現象】の調査。及び、トビ子こと【パイ・ルフィル】を含めた被害者の捜索』だ、これからは忙しくなる! 危険なクエストだが、お前さんよ・・・・・・やってくれるか?」

 

 団長はギルドの意思を無視。所属するハンターの危険を承知の上で、旅団のハンターに確認を取る。旅団のハンターがコレを承認し、もしギルドにバレるようなことになれば・・・・・・団の存続やソレを受けた旅団のハンターのギルドの信用すら堕ちるだろう。

 

「ええ、やらせてもらいます。」

 

 ハンターの力強い返事に笑みを強くする団長。、さらに活気に包まれる我らの団のメンバー。

 

「ならば、俺にできるのは装備の強化だな。お前が素材を狩ってくる限り、最高の物を作ろう」 

 

 旅団の加工屋が男らしい笑を浮かべ、拳を軽く突き出す。

 

「なら。私もハンターさんがもっと活躍できるように。一杯デコってあげるね! よーし、頑張るぞー」

 

 旅団の加工屋の娘が、手を振りながら意気込み。

 

「ニャラば、私は旦那を料理でサポートするニャル! 絶対に行く時は私の料理食べていくニャルよ」

 

 旅団の屋台の料理長が、愛用のオタマをもって飛び跳ねる。

 

「わしも商人だ。あんたさんの居ない間にアイテムをもっと増やせるようにやってみるよ。気にすることなく使っていきなさい」

 

 旅団の竜人商人が、軽快に笑いながら商売のルートを考え。

 

「ハンターさん。私、自分に出来ることをしながら信じてます。トビ子ちゃんと一緒に帰ってくるって。クエストを用意して待ってます。だから、ハンターさんも頑張ってください」

 

 手を合わせて、微笑む旅団の看板娘。

 

「世の中は未知がいっぱいだ。それに立ち向かう姿を俺達はいままで見てきた、そしていつだってここに帰ってきた! 我らの団ハンターよ未知に挑み、成すことを成してこい! ハッハッ! お前さんならできる! できる!」

 

 団長の豪快な笑いが響く。

 

「旦那、旦那。トビ子はこの筆頭オトモの仲間ニャ! 前も言ったけど筆頭オトモは仲間の危機を見捨てないニャ! 筆頭オトモと旦那は最高のコンビニャ!」

 

 筆頭オトモの闘志に、我らの団ハンターもその精悍な顔と瞳に決意を滾らせる。必ず原因を見つけ出す。その思いを胸に彼らは動き出す。強大な道に向かってその足で一歩を踏み込む。力をつけなければならない。今よりも高みに・・・・・・その、想いが彼を更なる高みへと登ることになる。上位ハンターを超える存在。【G級ハンター】への頂へと・・・・・・。

 

 

――――――

 

 

 パイ・ルフィルは混乱していた。

 

 黒い穴に入って困惑していたパイはというと、黒い穴に入って時間にして数秒ぐらいか・・・・・・体感時間なので正確ではないが、そのぐらい過ぎた頃、唐突に暗闇を抜けて真っ黒の世界から、その色を戻した景色は先程の四季折々の自然豊かな場所とは真逆の、薄暗い程度の開けた洞窟の中、その天井近く。瞬時に体制を整え敢えて転がるように衝撃を殺しながら着地を成功させたパイ。立ち上がり。周りを確認するがその景色に心当たりがなく。少なくとも《渓流》の知っている場所ではない。

 

 即座に背中のエモノを抜き払い構えながらも全方位に警戒を行う。《スキル》【ハンター生活】の地図の開示が発動し、自分の今立っている場所の大まかの情報が頭に入ってくる。方向感覚に自信のないパイはこの《スキル》がないと、たまに迷うことがある。よく行く狩場ででそうなるのだから。彼女は結構な方向音痴なのだ。

 

「・・・・・・? ここはどこかな、空から落ちたら洞窟にいるって、なんだか摩訶不思議かな」

 

 興味深く周りを観察するが、特に変わり映えのしない景色が広がるだけ。洞窟というのが最も正しいだろう。だが、不意に何かが割れるよう不快な音が背後から聞こえ一

瞬うろたえる。背後を振り返ると異常な事に洞窟の壁から【カンタロス】を大きくしたような昆虫型のモンスターがはい出てくるところであった。

 

「なに、壁から出てくるなんて。はっ! コレが噂に聞く異次元タックルの真相かな!?」

 

 かつての狩りで噂されていた。【雌火竜《リオレイア》】が壁をすり抜けて突撃してくるとか、明らかに2M離れてるのに攻撃に巻き込まれたりなど、理不尽な事があったとか。

 

 かつての、古株のハンターから聞いたことのあるパイはひどく狼狽する。目の前にモンスターは小型だが、あそこからいきなり大型のモンスターが突撃してくるとか。考えただけでゾッとする。

 

 しかし、獲物を見つけた未確認のモンスターの突撃に反射的に戦闘体制を取る。パイは低く前に向かい飛び出す。相手の上を取るように回転を加えた対空移動を行う。丁度未確認のモンスターの真上を位置取り、左手のオーダーレイピアをモンスターの尾から胴体に向けて切り裂く。背中から腹の先まで切り裂かれ、悲鳴を上げるモンスター。その少し離れた背後に着地し、モンスターの様子を伺う。弱っているのか鳴くだけで襲いかかる様子でもないので、パイは武器を仕舞おうとした瞬間――

 

「バカ野郎!瀕死のキラーアントを放っておいて武器をしまうんじゃねぇ」

 

 そこに、赤毛の青年がモンスター。【キラーアント】とよばれたモンスターの首を背負った太刀で叩きつけるように切断すると。直ぐに腰のナイフで胴を切り裂きモンスターの中から石を取り出し、即座に周りを警戒し出す。剥ぎ取りをするということは彼はハンターなのだろうか?

 

 しかし、獲物横取りはいただけない。

 

「赤毛のハンターさん。いきなり出てきて何するかな、って、あれ? なんで、モンスターが灰になってるのかな?」

 

 石を剥ぎ取られたモンスターが灰になるのを目の前にして。パイは一つの可能性に行き着く。若干、不機嫌そうな赤毛の青年に向かい合うと、出来ればあたって欲しくない予想を恐る恐る、声に出す。

 

「あのー、私はバルバレのハンターでパイって名前なの。貴方はどこのハンターかな? そこのモンスターも初めて見たけど・・・・・・あと、なんでモンスターが灰になったのかな?」

 

「何言ってるんだ? モンスターの倒したら、灰になるのは常識だろう? まさか、そこまで無知な新人がここまで来たのか・・・・・・? っと、すまん。俺の名前はヴェルフ・・・・・・俺は鍛冶師で冒険者だが・・・・・・ハンターってのはなんなんだ?」

 

 本気でわからないのか、困惑した表情を浮かべる赤毛の青年。ヴェルフの返事にパイはハンター生活で久方ぶりに途方に頭を抱えることになる。どうやら。此方の常識が通じない場所に来てしまったようだ。

 

 パイは【落ち込む】地面に膝と手をついて明らかな落胆を体現する、そんな、パイの姿に赤毛の青年も混乱するのであった・・・・・・。




『ステップ』『イェーイ』『落ち込む』はアクションです。ゲーム内の動作をそのまましていると思ってください。彼女の奇行はつづく。
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