ハンターが飛び込んだ先がダンジョンなのは間違っているだろうか?   作:あんこう鍋

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どんどん。原作へと近づいています。
今回はとある【ファミリア】団長さんと個人的に好きなキャラが被害にあいます。

タグに「モンスターハンター」を追加しました。

4/26改修


『お酒を飲んでも呑まれるな。とは言うけれど、つい呑まれちゃうかな?』

 あれから二日の時間が経った。【ソーマ・ファミリア】半壊の一件から、オラリオの中での【ファミリア】間の緊張感が高まり、町の住人も表にこそ出さないが、機敏に空気の変化を感じていた。

 

 嘗てのオラリオの暗黒時代。世代の若い者ですらも記憶にあるぐらいの事件である。【闇派閥】の活動はなりを潜め沈静化し、ひと時の平和な時代に慣れてきた頃だ。人々が不安に思うのは仕方のないことであった。

 

 そして、その“元凶”はと言うと……。

 

「おばちゃーん。じゃが丸君、うす塩味3つ頂戴ー!」

 

「おや、パイちゃんじゃないか! また来てくれたのかい? ハイよ、一個おまけしとくよ」

 

「いいのかな! ありがとうなのかな!」

 

 随分と馴染んでいた。神の恩恵が無い人間であるパイはこのオラリオでは一般人でしかない。まさか冒険者の蔓延る本拠を短時間で半壊させるなどと、神々でさえ解るわけもなく“架空”の冒険者、又は闇派閥の関与が囁かれていた。

 

 

―――――――――

 

 

 【ロキ・ファミリア】の団長。フィン・ディムナはその頭脳を駆使し、先日の事件を思い返していた。

 

 【ソーマ・ファミリア】は決して強い【ファミリア】では無い。精々がLv.2が数名。他はLv.1。しかも、その時はそのLv.1も多数はダンジョンに潜っていたらしい。

 

 そんな、【ファミリア】を半壊させるだけで終わらせる目的。それがどうも引っ掛かり、考える事を、終わらせることが出来なくなっていた。まさしく釈然としない。

 

「フィン。少し休んだらどうだ?」

 

「リヴェリア……ガレスも・・・・・・もう、こんな時間かいけないな。考えても仕方ないのはわかっているんだが」

 

 嘆息がもれる。不快感を隠すことなく、頭皮を掻く。そんな小人族の団長の姿に苦笑いを浮かべる副団長のエルフの女性、リヴェリア・リヨス・アールヴはその端整な顔を凛と引き締め一歩前に出る。

 

「フィン。私から一つ報告が、この二日で起きた細細ではあるが、事件の件でひとつ。気になる事がある」

 

「へぇ・・・・・・それは、どういう物だい?」

 

「ああ・・・・・・それはな、今回の犯人の起こした事件は『死者が出ていないこと』そして

『何らかの糞便を使っている』という事だ」

 

「・・・・・・うん? 一つ目はよく聞こえたんだけど、二つ目はなんだって? 僕の聞き間違いじゃないならば。『糞便を使っている』なんて、日頃の君から絶対に聞かないような言葉が出たと思うんだけど」

 

「安心せい、フィン。ワシにもそう聞こえた」

 

「ふむ・・・・・・私も、正直耳を疑った。それに出来ればこんな事も言いたくはなかったが、【ソーマ・ファミリア】の獣人の数名が二回にかけて・・・・・・『悲惨な事』になったそうだ。その、例の【ヤツ】でな」

 

「まさしく。『妖怪フン投げ』というべきかの、今回は『闇派閥』とかは関係ないのではないか? むしろ、そんな事するのに関わり合いたくないしの」

 

 リヴェリアのサッパリ理解できない報告と、ガレスの呆れたような声に、先程まで悩んでいた事が馬鹿らしく思えてくる。

 

「まぁ、確かにね・・・・・・。とはいえ、何もしないというのも【ロキ・ファミリア】としても。【オラリオ】に対してもそれなりの体制は取らないとね。夕飯の後にラウルと一緒に見回りに行ってくるよ」

 

「ラウルと? 二人で大丈夫か?」

 

「彼も実力はともかく、経験さえ積ませればいい指揮官になれる素質がある。まぁ、今回は息抜きの度合いも大きいけどね」

 

 心配そうなリヴェリアの言葉に彼女が以前からロキに、ママと比喩されている姿を思いだし苦笑する。そして食堂へと向かうための執務室の椅子から腰を上げるのだった。

 

 

―――――――――

 

 

 闇が深くなると【オラリオ】の街の魔石を利用し街灯がその明かりで照らしてくれる。これも、魔石の原産地でもあるダンジョンの恩恵で栄えた街である、【オラリオ】だからこその光景であろう。

 

 街の住民は明日の生活のために灯りを消す所も多く、主に活気に溢れるのは冒険者を相手する酒屋の類いが多くなる。

 

 いつ終わりが来るかわからない、排他的な生活に少しでも活を入れたい故の行動であろうが、このような情緒ある光景は昔から見ているフィンとしても気持ちのいいものであった。

 

「えっ? 『妖怪フン投げ』っすか? あの、団長はどう考えてるんすか?」

 

「そうだね、正直よくわからないかな? 情報が少なすぎるのと、【ソーマ・ファミリア】も必要以上に騒いでいない事も謎だ」

 

「それは、変な話っすね。普通【ファミリア】に被害が出ているのを隠すわけでもなく、放置するなんて・・・・・・どういうことっすかね?」

 

「ふふ・・・・・・それを考えるのも、必要なことだよ・・・・・・」

 

 現在、フィンとラウルはオラリオの街の北の方面を見回り中である。

 

 こういった活動は主に【ガネーシャ・ファミリア】の十八番ではある。だが、別にお互いに邪魔にならなければいいだけであるし。お互いに人手がある事に越したことはない。

 

 【ファミリア】の団長自らが、この様な行動に出るというのはいささか軽率な気もするが、こちらには頼りになる副団長もいる。

 

 それに、『団長』自らが民衆の為に行動を起こす。という【ロキ・ファミリア】としての顔見せの意味もある。一種のデモンストレーションと言う奴だ。

 

「考える・・・・・・っすか。もしかして、今回の俺が呼ばれた理由も、何かしらの意味があるって事っすか?」

 

「どうだろうね? 少なくとも換金所での一件以外では、僕はラウル。君を信用しているつもりだけどね」

 

「・・・・・・もう、あれで懲りたっすよ・・・・・・では、団長の期待を裏切らないように頑張るっすよ・・・・・・団長・・・・・・!?」

 

「ああ。気づいているよ」

 

 何かしらの成果があればいい。その程度の認識で始めた『見回り』だったが、どうやらフィンの運が良かったのか彼の口元が自然に笑みを作る。

 

 それは何故かって? 

 

 ソコには紙袋を被った、見るからに怪しい人物がフラフラとこちらへと歩いていたからだ。

 

 なんで紙袋? しかもご丁寧に目の部分は穴を開けてはいるが顔色もわからず。不気味でしかない。

 

 もしかしたら極度の酔っているだけの一般人かもしれない。しかし、村娘のような格好に似つかわしくないポーチをそれも、全身に取り付ける一般人など聞いたこともない。

 

 なにより―――その左のポーチに視線を向けた瞬間、自らの今までの窮地を助けてくれた“親指”に強い痛みを感じる。これを疼きと評するには問題がある。そう思わせる何かが目の前の人物にはあった。

 

 格好からすれば女性だろう、あまり言いたくはないが凹凸の少ない体型に髪すらも隠すように深く被った紙袋で顔は視認できない。

 

 もしかしたら、女装をした男性の可能性も捨てきれない。

 

「ふふ・・・・・・ラウル。気をつけろ。僕の勘が告げてる。“あれはやばい”っと」

 

「勘って・・・・・・団長の“うずうず”っすか・・・・・・?」

 

「そうだね・・・・・・強いて言うとすれば。“熱された鉄の針を親指の関節に打ち込まれた”ような痛み・・・・・・っ、痛ったー・・・・・・」

 

「すごく痛そうっすけど大丈夫っすか!? ってか、それは最早拷問っすよね!?」

 

 ラウルのツッコミを聞き流しながら、フィンは友好的な態度で目の前の人物にコンタクトを取ることにした。

 

「やぁ、こんばんは。僕は【ロキ・ファミリア】のフィン・ディムナ。こんな夜更けにどうしたんだい? しかもそんな酔狂な格好をして・・・・・・さ」

 

「・・・・・・ん~? もしかして、私にいってるのかな~?」

 

 紙袋のせいかくぐもって耳に届いた声は何処か中性的でこれだけでは性別を判断できなさそうだ。それよりもだ・・・・・・。

 

 そんな紙袋かぶってるんだから、そうに決まってるだろ! ツッコミたい衝動を抑えつつもフィンは少し冷静に考えてみる。

 

 実は僕の勘は気のせいで「ひょっとしなくてもこの人は普通に酔っているだけでは?」っと。

 

「実はね、僕たちは今、ある【ファミリア】が半壊した事件を追っているんだ。君は見たところ冒険者のように見えないし。小人族《パゥルム》が一人でこんな所にいるのも感心しないし、なにかある前に家に変えることをおすすめするよ」

 

 少し。カマをかけてみる。すると明らかに目の前の人物が一瞬、本当に一瞬だが硬直したのを確認した。

 

 隣のラウルに視線を向けると、彼も即座に小さく頷く。どうやら、“当たり”のようだ。

 

「ん~。今さ、なんて言ったのかな?」

 

 目の前の“容疑者候補”が確認を込めた質問を返してくる。気のせいでもなく、その声音には明らかな害意が見える。

 

「それは「ある【ファミリア】が半壊した事件を追っている」・・・・・・の所かい?」

 

「あ~、そこじゃないかな?」

 

「? 「君は見たところ冒険者のように見えないし」って所かい?」

 

「・・・・・・その後・・・・・・かな?」

 

「?? ひょっとして「小人族《パゥルム》が一人でこんな所にいるのも感心しない」って所・・・・・・かい」

 

「だれが、パゥルム並みにちっこいって!? 流石に怒るかな!! ゲキ怒なのかな!!」

 

「えっ・・・・・・ええっ!? 君、ひょっとして「ヒューマン」だったとか・・・・・・いや、それは済まなかった。てっきり背丈も・・・・・・あ」

 

 予想外の切り返しに混乱した上に更なる失態を重ねてしまった事に気づいたフィンは、マヌケにも数瞬の間その身を無防備に晒す結果となった。

 

 目の前の人物が腰の左のポーチに手を入れた瞬間。親指から激痛が走る。

 

「ぬがー! これでも喰らうかな!」

 

「危ないっす!? 団長!」

 

 その声と共に投げつけられた物を不覚・・・・・・としか言えないぐらいに呆然としか見ている事しかできなかったフィンを救ったのは。ラウルだった。

 

 フィンの小柄な身体を引っ張るようにして、自らの背後へと回しながら前に出ることでその投げられた物をその身で受ける。

 

 しかも体制が若干前かがみ気味だったせいで不幸にも投げつけられた物がラウルの“顔面”に直撃する。

 

「!? んはっ!!?」

 

 弾け、飛び散った【ソレ】がラウルの顔を染め上げ、そして、息の詰まったような悲鳴を上げるラウル。

 

 【ソレ】は、その凄まじい臭気を巻き散らかしてゆく。そして、ラウルの身体が力なく膝から崩れ落ちるのをフィンはただ呆然と見ているだけしか出来なかった。

 

「ラ・・・・・・ラウルゥゥゥゥ!!? きっ・・・・・・貴様ぁ!!」

 

 なにが、【団長】だ。この体たらくは弁明の出来ない物であることは明確。警戒してなお先手を取られた事実に、フィンは自らをの不甲斐なさを叱責する。

 目の前の人物の投げた物を見た瞬間、こいつがお目当ての『妖怪フン投げ』である事は確定した。

 

「フッ~・・・・・・フ~・・・・・・・ツギハ、オマエカナ?」

 

 こいつ・・・・・・先程の酔っているだけと思っていた人物は、紙袋の奥から怪しく光る双方を紅く染めて、なにやら禍々しいオーラを立ち込めさせている。

 

 冗談抜きで本当に妖怪じみてきた相手にフィンも、「今のままでは」確実な勝利を勝ち取れないと確信する。それに“今は指揮を気にする状況ではない”。

 

「ここで、確実に倒す・・・・・・」

 

 余程の事がない限り使う事のない詠唱を小さく紡ぐ――指先に生まれた【ソレ】を額に埋め込んだ瞬間――世界が紅へと染まる。

 

 ~ヘル・フィネガス~

 

 形式は『高揚魔法』。効果は、戦闘意欲が引き出され全能力が超高強化される。

 しかし、そんな便利な物がなんの副作用もなく使える訳もない。代償として『発動中はまともな判断能力を失う』。

 

 フィンの指揮官としての立ち位置とは反対の単体戦力としてしか使えない、正しく、フィン自身の『切り札』だ。

 

 【オラリオ】の闇に輝く双方の“紅”は残像を残す勢いでぶつかる。

 

「はぁぁぁぁ・・・・・・ふっ!!」

 

 槍の突きから即座に薙ぎ払う。振るう軸を限りなく内側にする事で独楽が回るように連続で振るわれる刺突と斬撃の嵐が、『妖怪フン投げ』へと殺到する。

 

 Lv.6の身体能力と小人族という種族的弱点を補い、血の滲むようななんて事が生ぬるく感じる鍛錬と、試練を超えた先で手に入れた“力”。

 

 しかし、これが気持ちのいいぐらい当たらない。というか。気持ちの悪くなるぐらい意味不明な動きで避け続ける目の前のナニカ。

 

 (こいつ本当に人間か?)

 

 ふとそんな事も思いながらも攻撃を仕掛け続けるフィン。風を切るなんて到底言えないような音がオラリオの街並みに響く。

 

 しかし、流石にそんな攻防も長く続かず、紙袋の怪人も息を切らせ始める。

 

 ここで、仕留める――そのつもりで踏み出そうとした瞬間の事だ。

 

 不意を突いたようなタイミングで『妖怪フン投げ』が何かを投げてくる。先程の【モノ】を警戒してとっさに距離を取る。

 

 いくら肉体的に影響の少ないモノだとは理解していても、受けることはしない。

 

 きっと、精神衛生上、無事では済まないとも理解しているからだ。

 

 だが、これが悪手である事が次の瞬間には即座に理解できた。

 

 闇を切り裂くような閃光。“指の疼き”が強くなった瞬間、瞬時に防御に回ったのが幸いし、視力を阻害されることは無かった物の、一瞬の隙に逃げられてしまったようだ。

 

 シン・・・・・・と静まる、オラリオの街で忌々しげに舌打ちをする。“魔法”を解除し、少しだるさは残るものの、直ぐに気持ちを切り替えて、放置していたラウルの元へと駆け寄る。

 

「ラウル・・・・・・んっ、臭っ・・・・・・その、大丈夫か?」

 

「・・・・・・多分、命に別状はないっす・・・・・・社会的と精神的に酷いダメージを負ったっす・・・・・・あと、自分でもわかってるんで無理に近くに来なくてもいいっすよ・・・・・・」

 

「すまない・・・・・・アレは僕のミスだ」

 

「あー、あれは仕方ないっすよ。所でこの時間に洗える所ってあるっすかね? 流石にこの格好で本拠に帰りたくないっす・・・・・・」

 

「バベルに・・・・・・いこうか、その、ちゃんとフォローするからさ」

 

 哀れな期待の団員を連れて、バベルへと向かう。

 

 幸い他の冒険者に逢うことなく身は綺麗にできたものの、服の方はどうにもならず。衣類店が開く時間まで待ってフィンの手持ちから詫びの意味も込めて購入した。

 

 本拠に戻ったフィン達を少し怒った表情のリヴェリアが門で待っていた。『見回り』の予定時間を大きく超えていたので心配をかけてしまった。事情を説明すると哀れな者を見る目でラウルを見る。

 

「すまないが、もうラウルを休ませたい。ラウル、今日は助かったよ。今日はゆっくり休んでくれ」

 

「すいません、団長・・・・・・お先に休ませてもらうっす・・・・・・」

 

 哀愁の漂う背中を見送る。ラウルの姿が見えなくなったのを確認してから、リヴェリアに向きあう。彼女もフィンの視線での要件を察知したのか。「三時間後にロキとガレスとそちらに向かう。その時に方針を決めよう」とだけ告げて本拠の中へと戻っていく。

 

「さて、次はこちらの番だ・・・・・・覚悟しろよ『妖怪フン投げ』め」

 

 そう呟くフィンを高く登った太陽が照らすのであった。

 

 そして、会議は開かれ『妖怪フン投げ』の対策がなされたものの、それが実行になることは・・・・・・なかった。

 

 

――――――――――――――

 

 

パイ・ルフィルは現在説教を受けていた。

 

「それで、もう一度改めて聞くわね? パイ。これはどういう事かしら?」

 

 ここはヴェルフの工房。

 

 『【ロキ・ファミリア】の【勇者】街中で【ソーマファミリア】半壊の実行犯『妖怪フン投げ』を取り逃がす!』

 

 それは号外であった。その記事を青筋を立てながらパイの目の前につきつけるヘファイストスと、それを後ろから眺めているヴェルフも呆れ顔を浮かべており、“個人としてもやり過ぎたと”思っていた矢先の事であった。

 

 【ソーマ・ファミリア】での事は二人には話している。

 

 ヘファイストスも『実害』と『改善』の報を聞いてしぶしぶながら納得はしてくれた。勿論、やり方に関しては褒められなかった。無論、それは「運が良かっただけでしかない」それぐらいの、理解はある。はっきりいえば。反省はしている。

 “後悔はまったくないけどね”しかし、今回の件はまったくもって別物である。

 

「はい。どういうも何も、昨日。街で泥醉一歩手前になるまでお酒を飲んで、売り言葉に買い言葉で街の中で喧嘩をしてしまいました」

 

 目の前の神様の笑顔に何時もの調子も出ずつい敬語になってしまう。「まずい、やりすぎた」が今回のパイの寝起きの、第一声だ。

 

 昨日は、散策しながら夜更けまで街を散策していたのが悪かった。

 

『ん? おーい、そこの白いの! よかったら一杯付き合わないか?』

 

 そう声を掛けられたのが初めだ。話を聞いてみると、どこかの【ファミリア】の主神らしき男神に呼び止められ、プチ神々の飲み会の席に入ったのはいい。

 

 そして、そのパイの『飲みっぷり』を見て気を良くした神達はさらに酒を勧め、気を良くしたパイもテンションを上げていった。

 

 そして――

 

「天下の【ロキ・ファミリア】に・・・・・・それも、団長に喧嘩を売るって・・・・・・知らなかったといえど、なにをやっているのよ」

 

 ――そして・・・・・・この騒ぎである――そう、知っての通り【ロキ・ファミリア】の【勇者】事、フィン・ディムナに喧嘩を売った『妖怪フン投げ』とはパイの事だ。

 

「しかし、こうなったらトビ子がココに居続けるのも難しくなるな」

 

 ヴェルフの言葉に神妙に頷く。はっきり言って『犯罪者』一歩手前の扱いだ。昨日は一発芸の『怪しげな医者のモノマネ』で使った紙袋のおかげで、顔と髪の色は特定されてはいないが声は聞かれている。

 

「私もそう思うかな、少なくとも数日中に【オラリオ】を離れようかな・・・・・・とは考えているかな」

 

「貴女はそう言うけど、アテはあるの? 貴方にとってはこの世界は【異世界】に近いわよ?」

 

「俺もヘファイストス様の意見に同意だ。せめて、道案内になる人物を見つけてからの方がいいと思うぞ」

 

「あー。確かにそうかな。今日、明日じゃないし少しだけそういうのも当たってみるかな。ここには迷惑かからないようには注意するから、そこは安心して欲しいかな・・・・・・」

 

「今は下手に動くと悪手よ。私にも伝があるからそっちからあたってみるわ。パイはおとなしくしていなさい」

 

「ううぅ、本当にごめんなさい・・・・・・ヘファイストスさん、お願いするかな。あっ、それとヴェルフには個人的にお願いしたい事があるかな」

 

「ん? 無理難題でないなら、構わないが・・・・・・なんだ?」

 

 パイは臨時のポーチから【ある物】を取り出しヴェルフの前に並べる。そして、鍛冶師として【制作依頼】を頼むのであった。

 

 

――――――――――――――

 

 

 リリルカ・アーデは多忙の日々を送っていた。

 

 “多忙の日々”とは言えど日数にして三日ほど、【ソーマ・ファミリア】の再構築に頭を悩ませる日々ではあるが、それでも充実な日常ではあった。

 

 そんなリリルカの下に嫌に威圧感のある巨大な物を持ってきたのは、私の恩人でもある『ハンター』のパイ・ルフィル「様」・・・・・・否、「さん」であった。

 

 どうも様呼びをすると、ひどくそわそわするので訳を聞いてみたら、大概の人は彼女の事を「ハンターさん」と呼ばれるらしく呼ばれ慣れていないのでこそばゆいらしい。

 

 まぁ、それはともかく。

 

「随分と“派手に”やらかしたみたいですね。パイさん?」

 

 そのリリルカの一言に心当たりがあるのだろう「うへぇ」と言いたげに、顔を歪ませる『恩人』にイタズラっぽく笑うリリルカは「三日ぶりですね」と挨拶する。

 

「そうなるかな。まぁ、そりゃあリリの耳にも入るかな・・・・・・っとソーマさんは元気かな?」

 

「ええ、今も『例の物』を育てるのに張り切っていますよ。所で後ろのそれは?」

 

「それはよかったかな。ああ【コレ】はリリにプレゼントしようと思って持って来たかな」

 

 今度は何を持ってきたのか? 封を開けてみるとソコには『異様にデカイハンマー』がその姿を現した。

 

「・・・・・・なんです? コレは?」

 

「ん? リリの武器だよ?」

 

 事なげに言葉を返す『恩人』の言葉に『こんな馬鹿げた物を渡されても・・・・・・』と、頭が痛くなるのを感じながら持ってみることに・・・・・・しかし

 

「あれ? 思った以上に“軽い”ですね」

 

「あー、やっぱり、“リリには軽い”かな?」

 

 なにやら含みのある言い方な気もするが、あまり気にせずお礼を伝える。すると、なにやら悪巧みの成功したような笑顔が帰ってくる。不審に思いながらもリリルカはそのハンマーを壁に立てかけパイに向き直る。

 

「どうしたのですか? 何か。面白いことでも?」

 

「いや、なんでもないかな? ああ、そうだ。大事な事を言い忘れてたんだけど、もう少ししたら、この【オラリオ】を去ろうと思うんだ」

 

「・・・・・・!? そう、ですか。あの・・・・・・もう、ここには」

 

「ああ、大丈夫だよ。少しかかるとは思うけど、ちゃんと戻ってくるかな。実は“同郷”の人たちが居るかもしれないから探しに行こうと思ってね」

 

「同郷・・・・・・ですか?」

 

「うん、だからちょっと行ってくるかな」

 

 『同郷』。なんとなくではあるがパイのいう言葉の意味が“私達とは違う”響きがあったのをリリルカは心の何処かで嫉妬していた。

 

 本当に短い付き合いではあるが、パイ・ルフィルという人間性を見て。きっとそれは、リリルカの考えているような物ではないであろう。

 

 それでも何処かで、自分勝手な“期待をしている”自分がいるのをリリルカ自身が自覚しているのも確かであった。

 

「あの、パイさん・・・・・・その旅に・・・・・・」

 

「ん? リリ、なに? どうしたかな?」

 

「・・・・・・いえ、なんでもないです。お土産話ぐらいは期待してもいいですよね?」

 

「うん! 任せるといいかな!」

 

 “リリもその旅に着いて行ってもいいですか?”その言葉を飲み込む。彼女には彼女の。私には私のやる事がある。リリルカは己の欲を飲み込んで笑顔を浮かべる。

 

 それに、また逢えるのだ。ならば、胸を張って逢えるようにしよう。そう決意を胸に、『サポーター』のリリルカ・アーデと『ハンター』のパイ・ルフィルは軽い挨拶をして別れたのであった。

 

 

――――――――――――――

 

 

 パイ・ルフィルは最終確認をしていた。

 

 今日は、この【オラリオ】から旅立つ日だ。

 

 道案内の人はヘファイストスが見繕ってくれた。本当にこの神様には頭が上がらない。その案内人とはオラリオの外門で合流する形になるので今はまだ出会ってはいない。

 

 目の前には、ヘファイストスとヘスティアそして、何か細長い包をもったヴェルフの姿がある。今回の事で見送ってくれる三人に一先ずお礼を言う。

 

 ヘファイストスにはしっかりとお礼を伝えるパイ。そして、【オラリオ】へ帰ってきて目処が経てば借りていた路銀を返す『約束』を交わす。それを、ヘスティアは複雑そうに眉を八の字にしてみていた。

 

 乳もとい。ヘスティアはこの一週間会うたびに下らない喧嘩をしていたが。それでも見送りに来てくれた事に感謝する。パイと彼女は今まで散々とお互いに『ボロクソ』にいいあった仲だ、短い言葉を交わすだけではあるが笑顔で別れる。

 

 最後にヴェルフがその手に持つ包みを手渡してくれた。それは、少し無骨ではあるが重さも造りもしっかりしている双剣であった。

 

「トビ子の持っている剣の変わり・・・・・・は無理だが。人前で使うならそっちのほうがいいだろう・・・・・・気をつけてな」

 

「ありがとかな、ヴェルフ。短い間だったけどいろいろ助けてくれてありがとうね」

 

「気にするな、旅の安全を祈ってるぞ」

 

 そして、今だ朝日の登りきっていない街を歩き出す。雲一つない空はあと少しすれば群青から蒼天へと変わるだろう。そして、空から視線を戻すと、前からフードを深く被った人物が歩いてくる。

 

 【ロキ・ファミリア】かもと、警戒をするが何事もなく通り過ぎる・・・・・・しかし――

 

「ふふ、“また、逢いましょう”」

 

 ――美しい声が耳に残る。視線だけ振り返りそのフードを被った“女性”を視界から居なくなるまで見送る。

 

 少し疑問にこそ思ったが。あまり考えずにその後は特に問題もなく外門へとたどり着く。

 

 そこには、二つの影があり近づくと一人は金髪の胡散臭そうな『緑』の男と、美しい美貌と蒼い髪をもつ娘がそこにいた。

 

「おや、君がパイ君だね、ヘファイストスからは話を聞いているよ。僕が『案内人』のヘルメス。そして隣にいるのはアスフィだ。」

 

「よろしくおねがいします。アスフィ・アル・アンドロメダと申します。コレは胡散臭いですが一応神ですよ」

 

「はっはっは。辛辣だねぇ・・・・・・えっ。ひょっとして本気で言ってる?」

 

「パイ・ルフィルだよ。よろしくね、ヘルメス。アスフィさん」

 

「あれ? 俺にたいしては敬称はないの?」

 

「「えっ? いります?」」

 

「ああっ!? すごく辛辣ぅ!?」

 

 こうして三人の旅が始まった。とはいえ、せいぜいが二週間程度ではあったが。

 その間で【オラリオ】や主な【ファミリア】の事、そして、この世界での常識を聞く機会も多くあった。

 

 やはり生の声は違う、などと思いながらもパイは二人と打ち解けてゆく。旅の最後の方になるとアスフィの愚痴を聞くほどにまで仲が良くなった。

 

 聞けば、彼女の所属する【ヘルメス・ファミリア】は探索系&郵送業もしているとか・・・・・・いつかお世話になるかもしれない。

 

「俺達の目的地はここさ」

 

 オラリオから西の方角・・・・・・らしい、にある小さな村。そこがヘルメスの目的地らしい、その中の一軒家に立ち寄ると戸を叩く。

 

「うん・・・・・・誰じゃ・・・・・・っとなんじゃ、ヘルメスか。それと、そちらの方は初めてましてじゃな」

 

 家の中から出てきたのは年を感じさせたない体つきのごついお爺さんであった。そして、その後ろに隠れるようにいる少年と目が合う。

 

 まるで。白うさぎのような儚さをもった少年との出会いが・・・・・・彼の運命を変えてしまうとはその時の『ハンター』にはこれっぽっちも考えていなかった。




ラウルさんごめん。汚れ役をやらせてしまいました。
作者はチキンなハートの持ち主ですが。想像してたより高評価でびっくりしています。
これからもちょくちょく更新していきますのでよろしくお願いします。
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