ハンターが飛び込んだ先がダンジョンなのは間違っているだろうか?   作:あんこう鍋

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『白兎を鍛えるのは間違っているかな?~実戦編~』

 『実戦』。いままでの“安全の確保された訓練”ではない。油断のできない一瞬はその綻びを見つけると即座にその身を屍へと変えるだろう。慢心など以ての外である。それをするのは余程の馬鹿かお調子者であるだろう。

 

 そして、その重い空気の中、ベル・クラネルは目の前の因縁の相手と対峙していた。それも四体とである。

 

 『ゴブリン』。それはダンジョンにおいて最弱と呼ばれるモンスター『神の恩恵』を受けてさえいれば余程の状況かミスを重ねない限り負けることはないであろうが、それは恩恵を受けている事が前提である。

 

 ベル・クラネルは恩恵を受けていない少年である。彼の後方ではいつでも動けるように背中の剣を抜いているパイが居る。即死さえしなければ問題などない。ベルはそう思うことで気持ちを切り替え剣を構える。

 

 その瞬間――ベルは地を蹴りゴブリンへと駆ける。壁のように横一列に並んだ最も距離の近い個体へと狙いを定めるとその足を切りつける。

 

 綺麗に関節を狙った斬撃は紅の色を残しながらもゴブリンの足を切り落とす、足の痛みよりも先に体勢を崩した事に驚いたゴブリンは咄嗟に伸ばした手が左右の仲間を掴む。

 

 掴まれた事で意識が仲間のゴブリンに向けられた瞬間――ベルは双剣を水平の構えて腰の捻りながら回転を加えゴブリンの中心で廻り剣線を幾重にも描いてゆき、油断していた二匹のゴブリンの首を切断する。  

 

「――あと二体!」

 

 いきなり仲間が二体失ったことに戸惑うゴブリンの背後を取るように側面を素早く取ったベルはポケットから小石を取り出して草むらに投げる。ガサッっと揺れる音に意識をそちらに向ける。

 

 そして、四体のなかで唯一五体満足であったゴブリンはその首から生えたベルによって突き込まれた刃を驚愕に彩られた瞳で見ながらも絶命した。

 

「・・・・・・はぁ――!」

 

 最後に足を引きずりながら逃げようとしていた最初に切りつけたゴブリンの首をはねて終わらせる。戦闘が終わりベルが感じた違和感は徐々に達成感と共にある種の恐怖を与えた。

 

(これを・・・・・・僕がやった?)

 

 ゆっくりと周りを見渡すベルの視界に映ったものは首を切断された三体のゴブリンの死骸と首を突かれ絶命しているゴブリン・・・・・・鮮やかな手並みとそれを無意識のうち取った行動・・・・・・そこに嘗てのトラウマに打ち勝ったという喜びはなかった。

 

 否――ひょっとすれば、一対一で恩恵でも貰って戦っていれば浮き上がった心のまま誰かにそれを伝えていたかもしれない。

 

 しかし、ここには戦った自分しかいない。そして、そのゴブリン共の生を終わらせたのも自分だ。奪った感覚だけがベルの中で残る。

 

「ふむ・・・・・・ここのゴブリンは畑の農作物とか盗んでいくらしいから農家さんには感謝される。そう思うかな?」

 

「ああ・・・・・・そうなんですか? そうですか・・・・・・それはよかった」

 

 何処か気のない返事を返すベル。

 

「んで、嘗ての因縁の相手を倒した感想はどうかな?」

 

「そうですね・・・・・・正直わかりません。それに、変な言い方になりますけど、簡単に終わりすぎて」

 

「まぁ、それなら後で考えてみるといいよ。とにかく、害獣の駆除としてなら大成功かな!」

 

 そう言って笑うパイを眺めながらベルはその時は綽然としないものを感じていた。

 

 それからと言うもの外で独自の生態系を作っている元々はダンジョンにいたというモンスター達を狩る訓練は続いた。ベルの動きは変な癖のつく前から鍛えていたので迷いなく、相手の急所へと切り込んでゆく。小賢しくも自分の身を守るために、細かな罠や相手の意識を外す技能など狩猟の本分をしっかりと利用し戦ってゆく。

 

 その様な戦いと修行が二ヶ月も続くとベルの精神にある変化が起こり始めた。ぶっちゃっけ慢心し始めたのだ。

 

 この実践訓練が始まった当初はといえば。

 

「僕にできるかな・・・・・・」

 

 などと弱気な事を言っていた少年であったが。流石に数をこなして慣れてくれば・・・・・・それが無傷の圧勝が続けばどうなるか

 

「モンスター? 別に倒してしまっても構わないんだろう?」

 

 そんな今までのキャラを捨て去ってしまう程の変貌を遂げていた。気のせいか何時もの兎のような白髪も逆だっているような気もする。

 

 背さえ高ければ、赤いコートが似合いそうな感じに変貌してしまったベルに『かけごえ』をするパイは特に弟子の増長を止める気もなさそうだ。その理由は確かに彼女の中にあった。

 

 モンスター? ふふん、余裕ですよ? なんていうぐらいの感覚も必要な時もある。そしてそんなプライドを粉砕する必要がある事もパイはしっかりと考慮していた。

 

 そして・・・・・・その“プライドを破壊する方法とはなにか?”そう、それは・・・・・・。

 

 

――――――――――――――

 

 

 ベルは走っていた。

 

 それも、かなり必死に走っていた。なにも知らない第三者がその姿だけを見ればその走りっぷりを誉めていただろうと言えるだけの走りを見せていた。

 

 しかし、それは仕方なきこと。だって、そんな必死に涙と鼻から液体を出している少年の背後には彼を喰らおうとする為に追跡している巨大な影があるのだから。

 

「ちくしょおおおお!! ひっ卑怯だぞぉぉぉ!?」

 

 『ブラッドサウルス』。現在、少年をモグモグしようと追いかけている巨大な影の正体だ。ベルの「なにが卑怯なのか」わからない叫びと共にブラッドサウルスの足音と、どこからか聞こえる笛の音を確かに耳にしながらもベルは思った。

 

 『こんな事になるとわかっていたらしっかり勉強しておけばよかった!』などと考えながらも数日前の事を思い出す。

 

 

――――――――――――――

 

 

「ベル、いままでよく私のシゴキに耐えてきたかな! っというわけで明日最終試験を行おうと思うかな!」

 

 最終試験。そのパイの言葉にベルは無意識に獰猛な笑みを浮かべる。そんな変わり果てた孫を心配そうに眺めるベルの祖父の視線を感じながらもパイはそちらに軽いウインクを飛ばす。

 

「この紙に戦う相手の事が書いてるから“しっかりと”見ておくんだよ? 出発は明後日かなココから西東の方角にむけて移動するよ」

 

「了解――別にいままでと変わらんのさ、打ち倒すのみ・・・・・・では、先に休ませて貰おう」

 

 いや、お前誰だよ!? という祖父の視線を背中に受けながらベルはキッチンから私室へと戻ってゆくドアの閉まる音を確認してからパイの方を向いたベルの祖父は後悔することになる。

 

 なぜなら、そこにいるのは“物凄い悪巧みが成功したような狂気の笑みを浮かべた鬼畜”がいたからである。

 

 今まであえて、少年を実践慣れさせるために選んでいた『弱い』獲物たち、きっと慢心した今のベルでは渡された資料など見ないだろう、見たとしても実物を前にしてどこまでできるか・・・・・・。 

 

「楽しくなってきかなぁ・・・・・・」

 

 そう言って、嗤うパイの姿のベルの祖父は顔面蒼白になりながら震えるしかなかったのであった。

 

 そして・・・・・・

 

 

――――――――――――――

 

 

 少年――ベル・クラネルの悲鳴とも言える叫びが青空の下に響いている。

 

 ベルの背後には数Mはあろう巨体を疾走させながら咆哮を上げる姿が。そして、そんな光景を少し離れた高台から遠目に眺める少女。パイも微笑みを浮かべながら笛を吹く。かつては自分も通った道でもある。先輩ハンターの『自分を基準にした』最終試験は本当に鬼畜であった。

 

 「「俺(私)の教えを守ったらきっとできる!」」と言いながら。ドスガレオス以外の、ドスが付くモンスター達を閉じ込めた闘技場に放り込まれたのだ。

 

 『ドスランポス』『ドスギアノス』『ドスゲネポス』『ドスイーオス』『ドスジャギィ』そして『ドスファンゴ』よくもあそこまで鬼畜な事をしたものだ。毒にはなるし麻痺はするし尻に突撃されるし。まさか、後にアイルーがよく言う「モンスターに噛まれたお尻が痛い」状態になるとは夢にも思わなかった。

 

 そうそう、あんな感じに闘技場の端から端まで助けを求めたり訳の分からないことを叫んで走っていたなぁ・・・・・・その時の自分の姿を弟子に重ねながらも、弟子に向けて笛を吹いていた。これはパイなりの優しさであった。

 

 ・・・・・・プヒュロロ~・・・・・・

 

 ・・・・・・プヒュロロ~・・・・・・

 

 なんとも気の抜けた音が荒野に響く。それこそ第三者が見れば狂気をその光景に見るであろう。

 

 少なくとも笛を吹く前に少年を助けなくともいいのか? と常識的思考を持つ人物であれば大なり小なり、現在進行形で命の危険に晒されている少年――ベル・クラネルを心配するであろう。

 

 だが、ここにいるのはそんな常識人ではない。『ハンター』である。ブラッドサウルスに追いかけられている少年と遠くから奏でられる笛の音を奏でる間の抜けた旋律のみは風に乗って、そして散った。

 

 その時、ベルが躓き勢い良く滑りながら転けた。

 

 ようやく動きを止めた獲物に速度を落としながら近づいてくるブラッドサウルスから逃げようとするが、逃げ切れるなら等の昔に逃げれていると冷静に考え、撃退する方向に思考を変える。

 

「やってやる!やってやるぞ!!」

 

 自らを鼓舞するように声を張り上げ、ベルは腰から剣を抜き払い構え眼前の怪物を睨み付ける。

 

「よし、こ・・・・・・い?」

 

 凛々しい表情から一転して間抜けな表情を浮かべるベル・・・・・・彼の視界には、今まで死角であった壁の先からひょっこりと顔を覗きこむ、もう一体のブラッドサウルスの姿があった。

 

(面白そうだから途中参加してもいい?)

 

 ベルの中で新たに現れたブラッドサウルスがそんな事を聞いてきたような気がした・・・・・・無論幻聴なのだがそんな気がしたのだ。

 

「二体同時とは卑怯なり!!」

 

 ベルは即座に踵を返して逃げ出した。全然楽しくない鬼ごっこが再開されたが先程とは違う一面もあった。

 

 それは、パイが隣に併走してくれている光景であった。

 

「ベルー」

 

 その師匠の姿にベルは感激した。こんな状況に置いていった張本人でがあるが、そこまで鬼畜ではないらしい・・・・・・しかし、現実は甘くなかった。

 

「ちゃんと笛の音は届いてたかな~」

 

「今この状況で聞く内容ではないでしょうがぁぁぁ!!」

 

 パイの場違いな確認に対し、ベルの怒声が響く。なんでこの人は! と強く思うが思えば過去にもそういう所があったとベルは遠い目をする。

 

「所で、さっきから逃げてるけど三日前に資料渡したでしょ? あれ、みなかったのかな?」

 

「ごめんなさい! 謝ります! 調子に乗ってました! 全て僕が悪いんです! 資料も机に置きっぱなしです!」

 

「まぁ、見たところでサイズ的にこうなってたと思うかな」

 

「ちくしょおおおお!? そうだと思ってたけど、やっぱりかぁぁぁ!!」

 

「まぁまぁ。私の見立てだと一対一なら十分にベルでも勝機はある相手を見繕ってきてるから・・・・・・多分、大丈夫かな?」

 

 何処か自信なさげに言葉を締めくくる師匠に「マジかよコイツ」的な視線を送るベルは、後ろをちらりと見るが今までとは全然違う相手に竦む心をどうにか平常に戻そうと試みる。

 

「もー。仕方ないかなーベル太君はぁ」

 

 流石にブラッドサウルス二体は厳しいと、パイは新しい方の個体へと反転して突撃する。相手の直前で跳躍しさらに相手の顎を踏み台にしてブラッドサウルスの頭上へと舞い上がる。そして、頭骨を抜いた『オーダーレイピア』で難なく貫き絶命させる。

 

 急所を突かれ倒れこむブラッドサウルス。固まる、初めからベルを追いかけていたブラッドサウルスとベルは顔を見合わせる。

 

 そして、最初の一匹はベルに倒させる予定だったのでパイは何事もなくそそくさと微妙な距離感を保ちつつ笛を吹く作業を続ける。そんな不思議な行動をとるハンターを異物を見るような目で見るベルとブラッドサウルス。

 

 そこで、これ以上の支援はないと気づいたベル。そして絶望した無駄だと思いながらも表情と視線で助けを求める、もちろん無視され、気の抜けそうな音を立てながら笛を吹き続ける。

 

 そんな、パイの態度に諦めたように無表情になったベルは、無表情で嗤うと言う器用な事をしながらもお互いに気を取り直したブラッドサウルスに突撃した。

 

「ちくしょー! 死んだら、呪ってやるぅぅぅ!!?」

 

 そう呪詛を巻きながら剣を振りかぶるのであった。

 

・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

「ははっ、生きてる。僕、生きてる? おうちどこ? おうちかえうー」

 

「おーい、ベルー? ああダメだ。これはやり過ぎたかな?」

 

 真っ白だった髪を含めた体の至るところに血、泥、土、草の汚れがこびりつき、焦点のあっていない瞳は虚ろに虚空を見つめている。

 

 時折、意味をなさない言葉を紡ぐが、パイがベルの顔の前で手のひらを振って見せても瞳孔の動きすら反応しない。

 

 やりすぎた・・・・・・しかし後悔はしていない。

 

 そもそも、パイ自身が受けた最終試験は本当に鬼畜だったのだ。規定のアイテムの詰め込まれたポーチを装着され貸し出された装備・・・・・・のサイズが合わないので急遽作った。その時の加工屋の「嬢ちゃんはチビだから素材が少なくて助かるぜ」という本人からすれば悪意のない褒め言葉が当時のパイの胸にささった。

 

 とにかく、先ほどのとおりドスと名のつくモンスター達の巣窟にたたき出されたのだ。それはもう悲惨な有様だった。しかも、例え力尽きてもアイルー達に救助され、その足で再挑戦・・・・・・結局、試験はクリアできたものの七回ほど力尽きてアイルー達にお世話になった。

 

 とはいえ、なんだかんだで三十分ほどブラッドサウルスと死闘を演じていたのだ、突撃などの大振りな一撃を貰う事なく勝利を収めたが一歩間違えばその身を牙やあの巨体で潰されていたかもしれない。それにベル自身は無我夢中だったが出来る範囲で『ブシドー』の奥義。ジャスト回避を使っていたので十分な成果を上げたといえよう。

 

「よーし、最低でも二体を同時に相手できるくらいには育てるかな」

 

 ベルの体が一瞬跳ねたような気がしたが見なかった事にして馬車を走らせ帰路につくのであった。

 

・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 そして最後の調整を終え、パイがこの村に来てから約九ヶ月が過ぎた頃。

 

 

――――――――――――――

 

 

 パイ・ルフィルは愛弟子を見送っていた。

 

 愛弟子とは勿論、ベルの事である。

 

 ベル・クラネル。とても純粋な少年ではあるし、泣き虫ではあるけど芯の強さは感心するほどだ。

 

 まさか、“あそこまで鍛えてしまうとは”嬉しい誤算についつい笑顔になってしまう。

 

 季節も冬になっている、旅立ちの季節としてはいい時期ではないが。弟子の心意気を邪魔するほど無粋ではない。

 

「お爺ちゃん、パイさん。お世話になりました。お爺ちゃん、オラリオについたら手紙送るね。パイさんもまた後で逢いましょう・・・・・・。じゃあ、いってきます!」

 

 この九ヶ月で成長した少年は自分の実力を試す為に、“本来の目的を果たすために”オラリオへと旅立った。

 

 その姿を見送るパイとベルの祖父は、ベルの姿が見えなくなるまで手を振って見送った。

 

「さて、おじいさんや、ベルも行っちゃったし、ちょっと聞きたい事があるんだけどいいかな?」

 

「なんじゃ? わしの交友関係は女子にはちときついぞ?」

 

「はは、馬鹿なこと言うかな? なんで、おじいさんから“ヘファイストス”さんや、ロリニート巨・・・・・・じゃない“ヘスティア”と同じような感じがするのかな? もしかして知人とか?」

 

 その二柱の名が出た瞬間、爺の表情が凍りつく。どっと冷や汗が吹き出し、露骨に視線をそらす。「な、なんのことかのう?」震え声ながらもシラを切ろうとするが、この爺さん。さすがに嘘が下手すぎる。

 

「あー。じゃあもう少し他のところブラブラしてからオラリオに帰ったら、ロリニートとヘファさんに聞いてみようかな、“貴女達の関係者で女好きのおじいちゃんでハーレム願望があって、オラリオの外に居てる可能性がある”神物に心当たりがあるかどうか。」

 

「本当に勘弁してください! わしの色々な計画がばれちゃうぅ!」

 

 パイの脅・・・・・・オハナシに瞬時に土下座し謝る爺。それに対して、うんうんと頷く。「この娘は鬼じゃあ・・・・・・」という老人から彼、自身の状況と名前を聞き出すのであった。

 

 そして、その二ヶ月後。パイもまた懐かしの【オラリオ】の地に戻る事になるのだが、それは少だけ先のお話である。

 

 

――――――――――――――

 

 

 ベル・クラネルは世間の冷たい風に震えていた。

 

「お前みたいなひょっこい奴はお断りだ! さっさと田舎に帰るんだな!」

 

 その言葉と共に最後に訪れようと思っていた【ファミリア】の門が大きな音を立てて閉じられた。オラリオにたどり着いてから早二ヶ月。

 

 オラリオに来て理解した。この見た目がどれだけ損であることを。

 

 【ファミリア】入団を断られ続けて三十件。路銀の方は今は大丈夫ではあるが流石にこれ以上は宿となると厳しい。

 

 落ち着く為に一旦地面に座り込むが一月の寒気で冷やされた地面は僕の臀部と背から体温を奪ってゆく。

 

 思わず、小さくため息が漏れる。白くなった息が四散し、それが余計に侘しさを生んだ。

 

 それでも、その瞳には影はない。

 

 よし。と気合を込めて立ち上がり歩みだす。最悪は門番をぶっ飛ばして実力を示すのもアリだろうなどと、物騒な思考を自然にしながらしばらく歩きだす。

 

 住宅が少なくなり。ふと視線を上げると、そこには古びた教会が建っていた。

 

 天井は崩れ。廃墟じみているが。何かが、ベルの中で引っかかる。

 

「ごめんくださいーどなたかおられますか?」

 教会の扉を半分開いて声をかけるが。当たり前の話だが、こんな廃墟一歩手前の場所に住んでいる人がいるとは思えない。

 

 返事はないので風を避けるために、ベルは礼儀正しく“お邪魔します”と断りをいれて入る。

 

 教会の椅子を眺め、自分がココしばらくまともに寝ていない事を思い出す。そして、眠気を自覚すると堪らない睡魔がベルを襲う。

 

「ごめんなさい・・・・・・すこし、休ませてください」

 

 風の当たらなくて日差しの差し込む場所で、横になるベル。直に意識は暗転し眠りにつく。起きてからの事を夢見ながら。

 

 ・・・・・・み・・・・・・  ・・・・・・き・・・・・・み・・・・・・ ・・・・・・君・・・・・・大丈夫かい・・・・・・

 

「ちょっと、君。大丈夫かい!?」

 

 目の前に美少女が居た。青みのかかった美しい黒髪をツインテールにしている。

 

 この寒空のしたコートの下は下薄いワンピースタイプの服装で実に寒そうである。

 

 ベルが目を開けると、そこは天国でなく暗くはなってきているが昼に寝た教会であった。

 

 こんな時間のこんな廃墟みたいな所でなぜ?

 

 そう思うがそこで寝ている自分も、人のことを言えないな・・・・・・と自嘲するが直ぐに少女に向き直り一礼する。

 

「・・・・・・すいません、ちょっと眠たくなって、ここで休ませてもらってたんですか。ひょっとしてこちらの方ですか?」

 

「やっと、起きてくれた。君、なんでこんな所で寝てたんだい? ボクが言うのもなんだけど。ここ廃墟だぜ?」

 

 ええ、よく存じてます。でも大丈夫ですよ。そういう訳にも行かず。力なく笑うベル。

 

 その様子に感じるものがあったのか、少女はベルの隣に座る。

 

「で、こんな所で寝ているぐらいだから、何か事情があるんじゃないかい?」 

 

 少女の言葉に、ベル自身も思うところもあった。語れば何かが変わるわけでもない。いつもならそう思ったかもしれない。

 

 だけど、その時は不思議とそう言った考えがうかばなかった。「情けない話なんですけどね?」と前置きをして語りだす。

 

 この【オラリオ】に《冒険者》になるために来た物の見た目の事もあって、入団の試験すら受けれずに門前払いされた事を。

 

「きー、なんなんだい、それは! トビ子君の言葉も酷かったけど君の環境もひどいじゃないか!」

 

 そういって、ウネウネ動くツインテールで怒りを表す少女に。ついつい微笑んでしまう。

 

「そもそも、君だってそこでやられてばっかじゃダメじゃないか! えー。えーっと」

 

 そこで、名乗りを忘れていた事に気づいたベルは立ち上がり少女に名乗る。

 

「そういえば、名乗っていませんでしたね僕は、ベル・クラネルです・・・・・・えっと」

 

「あっ。ボクもだ・・・・・・へへへ、ボクはヘスティア。こう見えても神の一人だよ。しかし、案外僕たち似たもの同士かもね!」

 

「え、ヘスティア様って神様だったのですか!? そうとは知らずに、失礼しました!」

 

 畏まるベルに、いいよーっと笑うヘスティア。

 

「ちょっと前に。知り合いの所を追い出されちゃった。ダメダメ女神だしね。トビ子君・・・・・・ああ、知り合いなんだけどね。あの子の言うとおり。なかなか上手くいかないものだね」

 

 星の光が指す教会で佇む女神の姿に、その微笑みにベルは心に溢れた思いを告げる。きっとこの出会いは運命だと思うから。だから――

 

(僕は【英雄】になれるか分からずとも、目の前の人を笑顔にしたい。最初はそれでいい・・・・・・だって僕の目指す英雄像とは・・・・・・)

 

 

「ヘスティア様・・・・・・いえ神様! 僕を眷属にしてくれませんか?」

 

「へ!? ベル君・・・・・・いいのかい? その貧乏だよ? 君以外団員もいないし、きっと苦労するよ?」

 

「大丈夫です。きっと、僕は神様の眷属になる為にここに来た。今はそう思えるんです」

 

 どこかの出会いとは違う、出会いをする二人から始まる【眷属の物語】は廃墟の教会から始まる。

 

 それは【誰よりも優しい存在】になりたい少年の【眷属の物語】

 

 しかし、この少年はとある事情により、自分が異常だと気づいていないぐらい純朴だったのだった。

 

「なんじゃ、こりゃーー!?」

 

 後日。彼女の拘りによって。初めての契約を行う場所として使わせてもらっている。本屋の二階で神様の悲鳴が轟く。

 

 本当の意味で、初めての眷属を迎え入れたその日から、ヘスティアは悩むことになるのだった。

 

 その原因は――

 

 

ベル・クラネル

 

Lv1

 

 

力  :I 0

 

耐久 :I 0

 

器用 :I 0

 

敏捷 :I 0

 

魔力 :I 0

 

 

 

《スキル》

 

【狩人之心《ヒト狩リ行コウゼ》】

 

 ・モンスターとの戦闘時の【経験値】の取得上昇。

 

 ・パーティを組む事でステイタスの上昇。

 

 ・笛を吹くと体力を微量回復することが出来る。

 

 

【狩猟】

 

 ・ドロップアイテムをモンスター死亡時一定時間以内“剥ぎ取る”事ができる。

 

【調合】

 

 ・素材と素材を組み合わせることで別の物を作ることができる。

 

 ・一定の確率で【もえないゴミ】を生成する。

 

 

 どこぞの『ハンター』が調子にのった結果なのであった。




物欲センサー怖いです。友人もXXを買いなおして二人でやってます。下位ガルルが装備を作りたいと友人が言いました。そして、12体のガルルガを狩りました。
きっと友人は、前世でガルルガの甲殻を虐めていたのでしょう。全然出ません、
他の素材だけがアイテムボックスに貯まる中でつい聞いてしまいました。
「おまえ・・・・・・前世でイャンガルルガの甲殻虐めてただろ?」っと
すると、友は言いました。「いや、なにいってんの?」と・・・・・・ですよねー
当分の間、紫を見たくなくなりました。

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