switcher!!   作:ちろ

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第11話 迫る体育祭

 USJでの事件が終わって。

 

 家に帰ったら無事でよかったと母さんに手をとられぶんぶんされ、父さんによくやったと褒められた。父さん、仮にもプロヒーローなら危険な行動を注意した方がいいと思うんだけど。え?それはもう他の人がやってくれただろって?やはり父さんは天才らしい。オールマイトを追い抜く日は近い。

 

 あんなことがあったので翌日は臨時休校。家でじっとするのは性に合わないから外に出ようとしたら、母さんに止められてしまった。色々言われたが、「考えなさすぎだろカス」的なことを言われた気がする。ごもっともです。俺まだ学生だもんね。大人しくしておきます。

 

 そんなこんなで。

 

「みんなー!!朝のホームルームが始まる!席につけー!!」

 

「フルスロットルだな天哉」

 

「全員座ってるから意味ねぇけどな」

 

 みんなの前に立って席につくよう注意する天哉だが、勝己の言うようにもうみんな座っている。なんせ雄英はエリートが集まる学校だからな。朝のホームルーム前に座らないやつなんていないだろう。中学の頃はむしろ立っていることの方が多かったけど。

 

「おはよう」

 

「相澤先生じゃん」

 

「ミイラみてぇ」

 

 朝のホームルームの時間。USJのアレでこっぴどくやられたらしい相澤先生はこないかと思ったが、全身に包帯を巻いたミイラのような姿で教室に現れた。そんなひどい状態ならお休みを貰えばいいのに。もしかして休ませてもらえないとか?俺は今日本の闇を見た。

 

「さて諸君。俺が無事なのを見て安心しているようだが」

 

「無事じゃなくね?」

 

 思ったことをポロリとこぼせば、いつも通り先生に睨まれてしまった。なんだ、無事じゃん。

 

「戦いはまだ終わっていない」

 

「戦い?」

 

「敵か!?」

 

「雄英体育祭が迫っている!」

 

「オラァ勝己ブチ負かしたらぁ!!」

 

「上等だ!完膚なきまでにブチのめして床を舐めるだけの道具にしたるわ!!」

 

 ちょっと、喧嘩売ったのはこっちだけどヒーロー志望としてその言葉遣いどうなの?自分らしさを貫きすぎじゃない?

 

「敵に侵入されたばかりなのに、と思うかもしれないが逆に開催することで雄英の危機管理体制をアピールするって考えらしい。警備は例年の5倍にするそうだ」

 

 日本においてかつてのオリンピックに代わるものが雄英体育祭。中継も入り、プロヒーローも見にくるこの行事は俺たちにとって最大のチャンスと言える。体育祭でトップヒーローに見込まれれば明るい未来が待っているということだ。

 

「年に一回、計三回だけのチャンス。無駄にするなよ」

 

 じゃ、とふらつきながら相澤先生は教室を出て行った。限界だったのかな?

 

 

 

 

 その日の放課後。

 

「うーん、今ここで勝己をブチのめせば優勝ってことでいいんじゃね?」

 

「テメェみたいなザコブチのめしても優勝にはなんねぇから、俺にメリットねぇだろ」

 

「俺知ってるぞ。そうやって見下した相手に倒されて後で泣くんだ」

 

「お?」

 

「はぁん?」

 

 体育祭が近いと告げられた日の放課後。まさに優勝決定戦が繰り広げられようとしていた。もちろん俺が世界一なので俺が勝つに決まっているが、勝己の戦闘センスはピカイチ。まったく油断はできない。

 

 まぁ、こんなところでやるわけないが。

 

「チッ、帰るぞ」

 

「おう。いやぁ楽しみだな体育祭。俺イベントめちゃくちゃ好きなんだよな」

 

「あぁ、そんな気してたわ。バカだし」

 

「イベント好き=バカって言ったのか?俺の父さんをバカにしやがって!」

 

「親子かよ」

 

 親子だが。勝己は何をわかりきったことを言っているのだろうか。

 

「つか、何アレ?」

 

「敵情視察だろ。敵の襲撃を耐え抜いた連中のツラ見に来たんじゃねぇの」

 

 放課後になって少し経ってから教室の前に人が群がり始めたのでずっと気になっていたが、なるべく触れないようにしていてもずっといるので我慢できずにそのことについて触れると、勝己から納得のいく返事がきた。体育祭の敵情視察ね。なるほど。

 

「それって個性使ってるとこ見ないと意味なくね?」

 

「性格見るってのも一つの手だろ。例えばバカはハメやすいからチェックしとくとかな」

 

「あれ、それ俺のこと?」

 

「あとアホ面もな」

 

「うぇ!?」

 

 唐突な流れ弾の直撃に電気がアホ面と呼ばれるにふさわしい反応をする。電気何もわるいことしてないのに。俺も悪いことしてないけど。

 

「まぁどっちにしろ意味ねぇからどけ。モブども」

 

「言い方」

 

 勝己はなぜこうも誰に対してでもひどい態度を貫けるのだろうか。俺は怖くてできないね。俺が口悪くなるのはムカつく相手と勝己に対してだけだ。ムカついたら口が悪くなるのもダメな気がするけど。

 

「どんなもんかと見に来たが随分と偉そうだなぁ」

 

 そんな勝己の発言に耐えかねたのか、人ごみの中から一人の男子生徒がぬっと出てきた。不健康そうな目をしたやつ。B組の人かな?

 

「ヒーロー科のやつはみんなこんななのか?」

 

「いや、こいつだけ」

 

「テメェも十分偉そうだぞ」

 

 そんなことないけどなぁ。俺は世界一世界一とうるさいだけで。そう、自分でうるさいという自覚があるから偉そうではないのだ。まったく筋の通っていない理屈だがそこは気にしない。

 

「他の科ってヒーロー科落ちたから入ったってやつ結構いるんだ、知ってた?」

 

「知らなかった……」

 

「そういうバカなとこ見られてんだぞ。気を付けろ」

 

 人のことバカバカって。これが俺なんだからいいじゃん。

 

「体育祭のリザルトによってはヒーロー科への編入も検討してくれるらしい。その逆もまた然り」

 

「あ、ってことはヒーロー科じゃないってことか」

 

「……それが?」

 

「いや、なんも」

 

 まさかヒーロー科以外が堂々と喧嘩売りにくるとはって思っただけだ。よほど自分の個性に自信があるらしい。

 

「さっき敵情視察って言ってたけど少なくとも俺は、調子乗ってると足元ごっそり掬っちまうぞっつー宣戦布告をしにきたつもり」

 

「カッコいい……」

 

「おい」

 

 いやこれカッコいいだろ。これで本選出場してヒーロー科倒したってなったらめちゃくちゃカッコいいじゃん。油断しないようにしないと。こういうイベントでのジャイアントキリングって本当にあるからな。ジャイアントキリングって言うと失礼か?

 

「いたー!!」

 

「あ?」

 

 宣戦布告してきた男子生徒のカッコよさに震えていると、また宣戦布告しにきたのだろうか、人ごみをかき分けて背の高い男子生徒が現れた。悔しいが俺より高い。もうすぐ2メートルはいくんじゃないか?

 

「俺、B組の夜嵐イナサっス!A組の1番ってアンタらか!?」

 

「俺はA組どころか世界で一番の須一一成!こいつは俺の次にすごい爆豪勝己だ!」

 

「世界で一番!それは負けられないっスね!」

 

「うるせぇのが増えやがった……」

 

 ずいぶん気のいいやつだ。こういうやつがいるって知っていたらもう少し早く友だちになったのに。あとうるせぇのって、俺そんなにうるさくなくない?

 

「ってかなんで俺が一番だって知ってたんだ?」

 

「俺が一番だろが、コラ」

 

「世界一世界一うるさいって有名なんで!」

 

 どうやら俺はうるさいらしい。そんなことより有名であることを喜ぶべきか。英雄というのは学生時代から多くの偉業を成し遂げるって聞くし、これもその一部だろう。入学して少しで有名になる男。なんてすごそうな男だろうか。

 

「体育祭、お互い頑張ろう!」

 

「俺が一番だ!」

 

「けっ」

 

 差し出された大きな手をがっしりと握る。こういうやつとは体育祭後半でやりあいたいな。そっちの方が燃える。実力未知数なライバルってそれだけで燃えるし。俺が勝つに決まってるんだけどね?

 

「さぁバクゴーも!」

 

「しねぇよ。煽られてぇのか」

 

 俺との握手をやめて今度は勝己に差し出すが、勝己はその手をとらず人ごみをかき分けて行ってしまった。ったく、あいつは言葉足らずなところがあるからいけない。ここは俺がフォローしておいてやろう。

 

「悪いな。アイツ自分が一番になるに決まってるって思ってるから。俺が一番に決まってるのに」

 

「それで煽られてぇのかって……よぉし!絶対俺が一番になるっス!」

 

「んだと!?俺が一番に決まってんだろ!」

 

「いいや、俺っス!」

 

「俺だ!!」

 

「俺に決まってんだろが!!」

 

 一番になると叶いもしない夢を語りだしたイナサと言いあっていると、遠くから勝己の声が聞こえた。君一番への執着凄すぎじゃない?

 

 とりあえず勝己が俺たちの話を聞いていたということは俺を待っているということなのでイナサと途中からぽけーっとし始めた宣戦布告くんに別れを告げ、勝己を追いかけて行った。隣に並んだ瞬間「俺が一番だ」と言いやがったこいつに、「あほか」と返すと再び喧嘩に。どうして俺たちはこうなのだろうか。

 

 

 

 

 体育祭の準備。体育祭が年に一回のチャンスである以上、これをしっかりしないやつなんていないだろう。頭がぶどうみたいになっている実でさえ、「表彰台に立つ練習したぜ!」と言っていたのだ。みんなやる気は十分だと言える。

 

 さて、俺はと言えば。

 

「根性が足らん!根性が!」

 

 プロヒーローである父さんにしごかれる毎日を送っていた。

 

「いいか!お前の『スイッチ』は使う度に負担が増えていく!ということはお前に必要なものはその負担に耐えうる肉体及びスタミナ、精神力!つまり根性だ!お前には根性が足らん!」

 

「助けて……」

 

 体育祭あるから特訓付き合ってくれない?と言ったのは俺だが、この人根性根性とうるさい。根性しか言わない。いや、突き詰めていけば最後は精神論にはなるが、俺は突き詰める段階まで至っていないわけで。なんか個性が成長するヒントとかさ。そういうのない?

 

「だから俺はこう考えた!等間隔でスイッチしながら筋トレを行い持久力を向上させる!そうすれば負担に慣れるだろう!危ないなぁと思ったら止めるから安心してやるといい!モード『power』から!せーの」

 

「脳と体がっ、死ぬっ!」

 

 父さんに特訓を頼んだその次の日から、俺は体をバキバキに、脳をボロボロにしながら学校に通う毎日が続いた。これで手ごたえがなければ文句を言ってやるのだが、不思議と手ごたえがあるので何も言えないのである。流石世界一の父親。でももう二度と特訓は頼まない。

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