switcher!! 作:ちろ
「予選通過は上位44名!次からはいよいよ本選よ!ここからは取材陣も白熱してくるから気張りなさい!さーて、第二種目は……コレ!!」
「騎馬戦……」
ミッドナイトが示した先には騎馬戦の文字。個人競技じゃないのか。
ミッドナイトの説明によると、選手は2~4人のチームを自由に組んで騎馬を作る。基本的には普通の騎馬戦と同じルールだが、一つ異なることがあり、それは第一種目の結果に応じたポイントが各選手に振り当てられること。44位から5ポイントずつ増えていき、なんと1位には1000万ポイント。確実に狙われることだろう。羨ましい!
俺は2位だから215ポイントか。二番目に高いポイントであるはずなのにしょぼく見える。1000万はやりすぎだと思うんです。
制限時間は15分で、振り当てられた合計のポイントが騎馬のポイントとなり騎手はそのポイントが表示されたハチマキをつけ、制限時間終了までハチマキを奪い合う。ハチマキは首から上につけ、更に重要なのはハチマキをとられても騎馬が崩れても失格にはならないということ。ただし個性はアリだが騎馬を崩す目的の攻撃をすると退場となる。
「それじゃ今から15分!チーム決めの交渉タイムスタートよ!」
「須一!」
「うおっ!」
ルールを確認しながら誰と組むか考えていると、交渉タイムスタートと同時にイナサが声をかけてきた。どうした第一種目5位。言っとくが俺は謝らんぞ。
「俺と組もう!」
「え?いいのか?」
「いいのかって?」
イナサの提案に首を傾げ、そんな俺を真似してかイナサも首を傾げる。いやだって。
「ポイント数多いもの同士で組むと、いざハチマキを取られたときに上位になれなくなるぞ」
「取られなきゃいいっス!」
「それもそうだ!」
イナサと肩を組んで笑いあう。まさかこんな天才が雄英にいたとは思いもよらなかった。こいつは俺と張り合うレベルの天才だ。これはもう上位に食い込むのは確定だな?
「それに、こっから先あると思うんスよね!ガチバトル!そこでアンタと戦ってみたいんだ!」
「何?負けたいって?」
「自信満々っスね!でも勝つのは俺だ!」
さて、後は二人か。勝己を誘うのは確定として、後は誰を……。
「須一くん!」
「お?」
とりあえず勝己を探そうときょろきょろしていると、出久が声をかけてきた。やだ、俺モテすぎ?女の子から声がかからないのが気になるところだけど。
「出久にお茶子ちゃん。どったの?」
「チームを組んで欲しいんだ。作戦があるんだけど」
「いやです!!」
「えぇ!?」
作戦を説明しようとした出久を遮って腕でバツを作る。確かに1000万というポイントは魅力的だが、出久とは組みたくない。
「そうだよね……1000万保持するより終盤になって取りに行った方が」
「そうれもそう。でも出久と組みたくないのは第一種目の成績が俺より上だから!俺よりすごいやつと組むのは俺が一番じゃないってことを認めるみたいでいやなんだよ!」
「細かっ!でも一番を取りに行きたいってのはわかるっス!」
これは俺のプライドの話だ。一番にこだわるものとしてそこは譲れない。
「でも須一くんの力があれば確実に次へ進める!というか須一くんじゃないとダメなんだ!どんな状況にも対応できるオールラウンダーで、一番になるなら絶対に欲しい人だ!それに須一くん、一瞬でも一番を譲るのってらしくないんじゃない!?」
一番を譲る。それは騎馬戦開始時点で出久のチームが一番だからってことか。なるほど。でも結果的に一番になればいいんだから別に……。
「乗った!最初から最後まで一番になんぞコラ!!」
「俺アンタの扱い分かってきた気がするっス!単純!」
「ありがとう須一くん!」
「あのあのデクくん。須一くんの後ろにおるごつい人は?」
「え?あ」
今気づいた、と言わんばかりにイナサを見る出久。そこまで俺に夢中だったのか。照れるぜ。
「俺は須一に一足早く声をかけてチームを組ませてもらった夜嵐イナサっていうものっス!個性は『旋風』!風を自在に操ることができて、飛ぶこともできる!」
「すごい!ということは麗日さんの個性で僕らを軽くすれば全員飛ばせたりするの?」
「任せろ!」
「うわぁ、僕と組んでもらうのが申し訳なくなってくるチームだ……」
確かにイナサの個性とお茶子ちゃんの個性は相性抜群といえる。イナサの精密さがあれば軽くなった俺たちを飛ばすことなど造作もないだろう。考えれば考えるほど凄いやつだ。
「それで、騎手を誰がやるかなんだけど」
「俺!」
「俺っス!」
イナサと睨みあう。どういうつもりで騎手をやりたいって言ってんだ?
「いいかイナサ。俺にいい作戦がある。これを聞くとお前も俺に騎手を譲りたくなることだろう」
「ふむふむ」
俺の作戦はこうだ。
「お茶子ちゃんの個性で軽くなった俺をイナサの風で操り、飛び回りながらハチマキを奪いつくす」
「それだ!」
「まってまってまって!」
イナサが俺の作戦に同意して固い握手を交わしたところで出久から待ったが入る。俺の作戦に不満があるのだろうか。こんなに素晴らしく完璧な作戦だというのに。
「僕も須一くんが騎手をやるっていうのには賛成するけど、その作戦は須一くんがほとんど無防備になるからダメだ。基本的には騎馬の状態を保ったまま、危なくなったら夜嵐くんの個性で回避するのが一番いいと思う」
「それ逃げるってことか?」
「もちろん取れると思ったハチマキは取ってほしい。というか、逃げ続けるのって須一くんは我慢できないだろうから」
「んー、まぁこれはチームの勝利を目指すもんだからいいと言えばいいけど、面白くないっていうか」
「いやなんやね」
そういうことですお茶子ちゃん。やっぱり騎馬戦やるなら取りに行かないと。そうした方が観客も盛り上がるだろうし。なんかあれじゃん。逃げ続けるトップって見てて楽しくなくない?
「あとは騎馬をどう組むかだけど、後ろに夜嵐くん。僕と麗日さんのどっちかが前になるけど、それは僕が行くよ」
「イナサが後ろってのは周辺警戒がしやすいからか?」
「そう。あと須一君を飛ばすときに後ろの方がいいと思って」
なるほど。確かにイナサが先頭にいると振り向かなきゃ俺のことが見えないが、後ろにいれば常に俺のことが見える。風で飛ばすときは対象が見えていないよりも断然見えていた方がいいだろう。
「このチームなら確実に第二種目を通過できると思うけど、油断だけはないように。常に警戒していこう!」
いつもおどおどしているかと思えば、ふと気づけば男らしい顔をしている。入試のときも思ったが、本当によくわからないやつだ。
お茶子ちゃんの個性でお茶子ちゃん以外を軽くしてスタンバイする。この時点で俺たちに視線が向いているのは気のせいじゃないだろう。そりゃ1000万以上のポイントを稼げるんだから狙いにくるよな。騎手の俺は責任重大だ。
「基本的には出久が指示出してくれ。危ない時は勝手に動く」
「うん。わかった」
悔しいが、瞬時の状況判断、思考能力なら出久の方が上だろう。それに1000万を背負っているなら勝手に動くなんて真似冗談でもできない。確実にとれるハチマキを取り、後は逃げに徹する。それがチームとして一番になる確実な道だろう。
『よぉーし組み終わったな!準備はいいかなんて聞かねぇぞ!いくぜ!残虐バトルロイヤルカウントダウン!3、2、1!』
「んじゃ、よろしく」
『スタート!!』
「実質
「須一くん頂くよー!」
「夜嵐くん!お願い!」
「オッケーっス!」
スタートと同時に取りに来た二組から逃げるためにイナサが個性を使って俺たちを宙へと運ぶ。今体が軽くなっているからか、まるで風になったかのような気分だ。
「さぁ着地するっスよ!下にいるみなさんお気をつけて!」
二組から逃げ比較的誰もいないところにホバリングの要領で着地する。着地時には周囲に風を巻き上げるため容易に近づくことはできない。まさに無敵の移動要塞である。
「騎馬戦の機動力じゃねーってこれ!」
「すごいよ夜嵐くん!」
「それほどでも!!」
「みんな前!障子くんがきてる……けど、一人!?」
お茶子ちゃんと二人でイナサを褒めていると出久から報告が飛んできた。前を見ると目蔵がこちらに向かって走ってきている。一人に見えるが、あれは恐らく。
「触手腕の中!多分実か梅雨ちゃんがいるぜ!騎馬の三人は足元気を付けてくれ!丸っこいやつが飛んで来たら触らねぇように!」
「この俺の足にくっついてるやつ?」
「バカイナサ!!」
イナサを叱責したのも束の間、目蔵の方から俺のハチマキを狙って何かが伸びてきた。避けながらそれを見てみると、ピンク色の……。
「梅雨ちゃんもか!」
「さすがね須一ちゃん……!」
「ありがとう!イナサ、もういけるか!?」
「いけるっス!さようなら俺の靴!」
「二人とも強いはずやのに、このドタバタ感……」
仕方ない。イナサは実の個性を知らなかったんだし、俺も注意するのが遅れ、出久は気づくのが遅れた。ただこういう状況からでも逃げられるくらいの力を持ってるってことでここは納得してくださらない?
「調子のんなや須一!!」
「その声は!」
このまま悠々と空の旅を楽しもうかと思っていたところに、なぜか懐かしく感じるあの声が。そう、我らがクソヤンキー、勝己その人である。
「組む相手間違えたな!!死ねや!!」
「俺に障害物競走で負けた気分はどうですかぁ?」
「」
あ、キレた。
「須一くん!大丈夫!?」
「おう!イナサ、気にせず頼む!」
「ファイトっス!」
確か、出久が言うには勝己は右の大振りが大好きなんだったか。
「んなっ」
「ビンゴ!スイッチ。モード『power』!」
出久の情報通り右の大振りがきたため、それを掴んでモード『power』にスイッチする。そして勝己の騎馬の頭上目掛けて勢いよく勝己を放り投げた。
「範太!しっかりキャッチしろよ!!」
「マジか」
なるほど。空中で動き回れる勝己が好き勝手取りに行って、範太が回収するっていう感じか。三奈ちゃんがいるのは恐らく焦凍対策で、鋭児郎は根性で選んだのだろうか。勝己はみんなの個性を知らないからちゃんとチームを組めるか心配だったが、みんなの方からアピールしてくれたようで一安心。まぁ勝己は誰とチームでも通過してくるだろうが。
「かっちゃんを投げ飛ばすなんて……」
「出久が勝己のクセ教えてくれたからだぜ。じゃなきゃあんな戦闘センスお化け、不安定な状態で相手できねぇって」
『さぁここで7分経過した現在の順位を見てみよう!……って、あら?A組須一以外パッとしねぇ!!てか爆豪ゼロポイント!?』
「何ッ!?」
「さっきの着地のスキを狙われたんだと思う」
まさか勝己がハチマキを取られるとは。いや、俺のせいかもしれんが。どちらにせよ勝己はハチマキを取り返して上がってくるだろうから気にしなくていいか。むしろあいつの性格上取られたものを取り返しに行くだろうから、しばらくこっちにこなくなってラッキーだ。
「これは逃げ切りがやりやすそうだね。みんな、今まで通り……っていうわけには」
「いかなそうじゃね?」
残り半分を切ってこのまま逃げ切れるかと思えば、俺たちの正面に焦凍のチームがやってきた。どう見ても取る気満々である。
「貰うぞ、それ」
「誰がやるか!大人しく負けてろ!」
やる気満々な焦凍に、俺は迷わず中指を立てた。