switcher!!   作:ちろ

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第5話 初のヒーロー基礎学

「はぁー白黒ハッキリした後は気分がいいなぁ!?」

 

「クッソが……!!」

 

 あの後残りの三種目をこなし、いよいよ誰が除籍されるのかとなった時。先生から「除籍は嘘でーす」という合理的虚偽が告げられ、安心して順位を見ることができるというわけだ。自己紹介したのにすぐ除籍なんて悲しいからな。

 

 そして順位を見てみると、俺は三位で勝己は四位。なんで俺が一番じゃないの?と首が痛くなるくらい首を傾げたが、勝己には勝っている。いやぁ、持久走のときにスイッチのし過ぎで体力がなくなってずたずただったから正直不安だったが、勝ててよかった。

 

「ねぇ勝己くん?」

 

「っるせぇ!成績で言えば実技で俺が一勝、個性把握テストでテメェが一勝!白黒ハッキリはしてねぇぞ!」

 

「まぁそういうことにしておいてやろう。ところで何食べたい?財布大丈夫?」

 

「余裕だカス!なんでも食えや!」

 

 体操着から着替えながら煽っていると、勝己からとても太っ腹なお言葉。そうか、なんでもか。何にしよう。寿司にしようかな?俺好きなんだよな寿司。色んな種類食えて尚且つうまい。回らない寿司は確かにうまいが、俺は回らない寿司の方が好きだったりする。アレ楽しいもの。

 

「回転寿司行こうぜ回転寿司。安いし財布にも優しいだろ」

 

「んな心配しなくても金なら余るほどあるわ!舐めんな!」

 

「みんな!余るほど金のある勝己が回転寿司奢ってくれるらしいぜ!行こう!」

 

「っざけんな!テメェだけだボケ!」

 

 お前だけ、あなただけ、というセリフはみんな一度なら言われてみたいセリフだと思っていたが、ここまで色気がないものだとは。おい、女に生まれ変わってもう一度そのセリフを言え。

 

「お、マジ?見た目コエーのに太っ腹なんだな」

 

「俺もいいか?金は自分で払うからよ」

 

 俺の声に釣られてか、見るからにチャラそうな電気と赤くカチカチの髪をした鋭児郎がやってきた。電気は明るくチャラい、鋭児郎は硬派というイメージだ。一つ言えることは二人ともいいやつだということである。

 

「おうおう。勝己は人に奢りたくて仕方なくなるタイプなんだ。存分に食べてくれ」

 

「んなタイプあるか!テメェらは自分で払えよ!」

 

「言われなくても払うって」

 

「つかついていくのはいいのか」

 

 なぜかイライラしている勝己を先頭に、俺たちは教室を出た。今日名前を知ったみんなに手を振るのも忘れない。

 

「須一って初対面でもグイグイいくよな。全員下の名前で呼んでるし」

 

「ん?フレンドリーな方がいいだろ?同じクラスなんだし」

 

「つっても爆豪とは今日会ったばっかなんだろ?普通あそこまで調子乗った発言できねぇよ」

 

「話がわかるな、クソ髪」

 

「切島な。切島鋭児郎」

 

 勝己は俺のことが嫌いなのだろうか。ありえる。寿司を食わせて油断したところを爆破するつもりなのかもしれない。敵みたいな顔してるし。冗談だけど。ヒーロー志望に敵みたいは最大の侮辱だろう。でも敵っぽいヒーローランキングの上位に食い込みそうだよね。

 

「そんなにグイグイいけて顔もいいなら彼女の一人や二人いたんじゃねぇの?」

 

「いや、いないぞ?」

 

 何かを期待するような目で聞いてくる電気に否定で返すときょとんとされてしまった。そんなはずはないと顔に書いている。俺が彼女できたことないのがそんなに不思議なのだろうか。

 

「顔が濃すぎてキモいって言われてたんだろ」

 

「残念バレンタインデーめちゃくちゃもらってましたー。何せ俺、カッコいいから?」

 

「うぜぇ」

 

「そんなに貰ってたのに彼女いなかったのか」

 

 うーん、バレンタインデーにチョコをいっぱい貰っていたら彼女ができるというのは、少し決めつけが過ぎるというか。

 

「ほら、俺雄英に入りたかったし。個性伸ばすために体鍛えたり筆記通るために勉強したりでそんな暇なかったから」

 

「意外にストイック」

 

「男らしいな!いいと思うぜ、そういうの!」

 

 いやぁ照れる。実はカップルを見てめちゃくちゃ羨ましがってたっていうのはばらさないでおこう。だって楽しそうなんだぜ?男女で幸せそうにいちゃいちゃして、見せつけるように体を寄せ合って。俺も高校に入ったら……とは思っていたが、雄英でそんな暇があるのだろうか。なさそう。

 

「テメェの個性、詳しく教えろ」

 

 照れていると、前を歩いていた勝己が前を向いたままそう言った。「個性伸ばすために」の部分だけ聞いて興味を持ったのだろうか。恐らく個性を知って対策し、俺を負かしてやろうという魂胆だろう。勝ちに貪欲な勝己らしい。

 

「そういや気になるな。ゴリゴリになったりスリムになったり」

 

「結構万能っぽかったけど」

 

 やはり周りから見ると俺の体型が変わるのは気になるらしい。俺もいきなり体がゴリゴリになったりスリムになったりする人がいたらめちゃくちゃ気になるから、それも当然と言えるだろう。

 

「俺の個性はあらゆるモードにスイッチして、そのモードに合わせた力を発揮する。例えばモード『power』なら力が強く、モード『speed』なら速くなる。でも自分の本来の力を超えた力を使うから、どうしても体に負担がかかるんだ」

 

「それで持久走のときはヘボかったのか」

 

 ヘボって言うな。

 

「んで、元の体を鍛えておくと個性の限界も伸びて、更に負担も減る。ちなみにモードはまだ見せてないのがいくつかあるが、それはその時のお楽しみ!」

 

「選択肢が多そうでいいな」

 

「モードの組み合わせとかはできねぇの?『power』と『speed』とか」

 

「それをすると体がイカれる。特訓中だ」

 

「ザコ」

 

「なに?」

 

「やんのか?」

 

 勝己の挑発から始まった口喧嘩は回転寿司にたどり着くまで続いた。初めは止めに入っていた二人も徐々に呆れ初め、俺たちをスマホで撮る始末。舐めとんのか。

 

 とはいえ、いい高校生活のスタートを切れた。雄英は愉快なやつが多そうだ。

 

 

 

 

 翌日、ヒーロー基礎学。

 

「わーたーしーがー!!普通にドアから来た!!」

 

 オールマイトが教師をやるとは聞いていたが、実際にその授業を受けるとなると何か変な気分になる。なにせNo.1ヒーローなのだ。そんな人が教師なんて違和感がないわけがない。あと普通にって言ってるけどドアのふちに手をかけて身を乗り出す入り方は全然普通じゃない。普通を学びなおせ。

 

「ヒーロー基礎学はヒーローの素地を作るために様々な訓練を行う課目だ!!今日は早速戦闘訓練!」

 

「戦闘……!」

 

「勝己めちゃくちゃ嬉しそうだな」

 

 顔がヒーローのそれではない。今すぐ何かを壊したくてたまらないといった風な顔をしている。子どもに人気でないぞ、それ。一部はカッコいいと思うかもしれないけど。

 

「そしてこれが君たち待望の、入学前に送ってもらった個性届と要望に沿ってあつらえたコスチュームだ!!」

 

 オールマイトの紹介とともに壁が動き、中からコスチュームを入れたトランク?が現れた。振ってある番号は出席番号だろう。俺は13番だ。13は3を消すと1になるから好きだ。

 

「着替えたら順次グランドβに集まること!いいね?」

 

 はい、と返事をして各々自分のコスチュームを取りに行く。俺のコスチュームは至ってシンプルで、体がどんなに変形してもいいように伸縮性のある素材を使い、モード『speed』のときに攻撃をくらっても耐えられるように衝撃に強い作りをしたシンプルなものだ。上は前を開けた青を基調に黒い線が入ったジャケット、肌着に赤い「一」の文字が入った黒のシャツ。下は灰色のカーゴパンツに似た見た目のものを。あとはブーツとグローブをつけて完成である。

 

「かっちょええ」

 

「呆けんな。行くぞ」

 

 せっかくヒーローらしくなったのに、勝己は何の感動もなく行ってしまった。少しは感動させてくれてもいいのに。いいもん。誰が何と言おうと俺はカッコいいし。

 

 グラウンドβに向かうと、大体全員揃っていた。それぞれ個性的なコスチュームで見ていて楽しい。あと百ちゃん過激すぎない?個性上そうなるのはわかるんだけど。

 

「さて、始めようか有精卵ども!今回は屋内での対人戦闘訓練だ!」

 

「屋内」

 

「そう!目にする機会は屋外の方が圧倒的に多いが、実は凶悪敵の出現率は屋内の方が圧倒的に多い!これから君たちには敵組とヒーロー組に分かれて2対2、あるいは2対3の屋内戦を行ってもらう!」

 

 クラス全員で21人だから、そうなるのか。3人のチーム有利じゃない?

 

 この後オールマイトから伝えられた状況設定はこうだ。

 

 敵がアジトに核兵器を隠しており、ヒーローはそれを処理しようとしている。ヒーローは15分の制限時間内に敵を捕まえるか、核兵器を回収すること。敵は制限時間まで核兵器を守るかヒーローを捕まえることが勝利条件となる。捕まえたかどうかの判断材料は確保テープ。確保テープを巻きつけることで捕らえた証明となる。

 

「チーム及び対戦相手はくじで決めるよ!」

 

「お、勝己とは別がいいな」

 

「殺してやらぁ」

 

 物騒なことを言いつつくじを引いていく。殺すて。訓練ですよこれ。

 

「ありゃ」

 

 引いたくじには「すけっと!」と書かれていた。なにこれ。

 

「須一少年!それは三人目の証!君が対戦相手を見て好きなチームに入ればいい!」

 

「パワーバランス的なアレはどうするんですか?」

 

「もちろん私が判断するさ!とはいっても君はバランスが崩れるようなことはしないだろう?」

 

 しない、とは思う。恐らく。

 

「さぁ最初の対戦相手は……Aチームがヒーロー!Dチームが敵だ!」

 

 Aチームは出久とお茶子ちゃん。Dチームは勝己と天哉だったか。ふむ。勝己と戦いたいからここはAチームに、と行きたいところだけど。

 

 勝己の様子を見ると、どうも邪魔されたくない様子。出久に何かしらの用があるらしい。となるとここで入れば後でブチ切れられること間違いなしだ。ほんと面倒くさいやつである。

 

「須一少年、どうする?」

 

「見送りで」

 

「オッケー!じゃあ始めようか!敵チームは先に入ってセッティングを!Dチームは敵の思考をよく学ぶんだぞ!」

 

 戦闘するチーム以外はモニターで観戦。なんか怖くて見れない気がする。勝己なんかどす黒いオーラ出てたし。アレろくなことしないぞ。

 

 俺は少しの不安を抱えながら、地下モニタールームへ移動した。

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