switcher!!   作:ちろ

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第6話 第二戦、VS轟焦凍

 戦闘訓練開始直後の奇襲。それに対応する出久。見ていてアツいが、訓練というよりただの喧嘩に見えた。出久は個性を一切使わないし、対応し続けるのも難しいだろう。見たところ勝己は反射神経がエグイ。見てから反応できる神経と見てから対処できる個性、それに勝己自身の戦闘センスが加わり、とても手を付けられる状態ではなくなっていた。

 

 俺ならどうするか。モード『speed』は速くなっても倒せるだけの力がでず、モード『power』では勝己を捉えることができない。かといってモード『speed』でつめてモード『power』にスイッチしようとしても、その隙をつかれてやられる未来が見える。

 

 つまり、今のままでは勝己に勝つことは難しい。個性把握テストでは勝てたが戦闘では別と言うことか。敵ポイント77は伊達ではない。

 

 そして。

 

「うっわ、殺す気かよアイツ」

 

 大規模な爆発が起き、ビルの一部を粉砕した。アレが当たれば無事では済まないだろう。モード『hard』でも耐えきれるかどうかわからない。一番安全なのはモード『speed』からモード『jump』で逃げることか。俺さっきから勝己と戦ったときのことばっか考えてない?

 

 モニターの中の勝己は、どこか余裕がなさそうに見える。焦っている?何に?ダメだ。考えるのは得意じゃないからまったく読めない。とりあえずわかったことは勝己と出久は両方強いってことだ。

 

「お」

 

 考えている間に訓練が終わった。ヒーローチームの勝ち。出久が核のある部屋まで天井をぶち抜き、それを利用してお茶子ちゃんが核を確保という流れだ。別にタイマンで勝つ必要はないから正しいと言えば正しいのだが、ふむ。

 

 出久は勝己の最後の一撃を左腕で防いでみせ、右腕で天井をぶち抜いた。それを勝己に向けていたらどうなっていただろうか。よく考えなくてもわかる。つまり、勝己の負けだ。これ今日勝己に話しかけない方がいいかもしんない。

 

 帰ってきた勝己は抜け殻のようになっていた。あの勝己が自分が負けていたということに気づかないわけがない。それを認めたくなくてデカいショックを受けているのだろう。もしかしたら認めた上でのアレかもしれないが、出会ってまだ日が浅いのでそこまでわからない。ただ、勝己のケアは誰がするのかという話で。

 

「さぁ気を取り直して第二戦だ!組み合わせは、Bチームがヒーロー!Iチームが敵だ!須一少年!」

 

 Bチームは推薦組の焦凍に、腕がいっぱいある目蔵。Iチームは尻尾がある猿夫に、透明人間の透ちゃん。

 

「Iチームがいいです!確か焦凍って推薦入学者だよな!」

 

「あぁ」

 

 めちゃくちゃクールだ。「あぁ」って。もうちょっと若々しい反応できないの?

 

「敵チームか。これはヒーローチームが不利だからできればヒーローチームに入ってほしいのだが」

 

「別にいいですよ。何人いても関係ないですし」

 

「あ、潰しまーす。カチンときちゃいました」

 

 個性把握テストの成績が俺より高くて推薦組だからって調子乗りやがって!俺が敢えて推薦を貰わなかったということを思い知らせてやる!

 

「……まぁいいか!よし、場所を移して第二戦開始だ!」

 

 あ、勝己が壊しちゃったもんね。俺は気を付けよう。「いつも喧嘩してるあの二人ヤバくない?近づかないようにしよ」なんて思われたらいやだし。

 

 俺たちは敵チームなので先に入り、核を好きな部屋に置いて待ち構えることになる。相手の二人は個性を見ると一気に上の階に行く方法はなさそうなので一番上の階に核を置いた。もし氷を伸ばしてきても丸わかりだし問題ない。

 

「さて、どうするか。先に言っておくが俺は考えることが苦手だ!」

 

「俺たちが向こうとやりあってる間に、透明人間の葉隠さんが確保っていうのが普通だろうね」

 

「よっし!じゃあ全部脱いじゃお!本気モード!」

 

「見えねぇけどそっち見るのが悪い気してくるな……」

 

 ぽいぽいと手袋とブーツを脱ぎ、こちらからは見えないが全裸になる透ちゃん。華の女子高生がそんな簡単に裸になっていいものか。間違ってぶつからないようにしないと、俺が変態扱いされてしまう。

 

「なら俺たちもブーツは脱いでおこう。確か目蔵は音を聞いて索敵ができたはずだから、ちょっとは攪乱になるだろ」

 

 言いつつ、ブーツを脱ぐ。昨日コミュニケーション取っておいてよかった。個性の情報があるだけでこうも違う。

 

「んで、個性的に奇襲は速度が一番ある俺がやるわ」

 

「うん、頼んだ」

 

「しっかりね!」

 

「あぁ後、タイミング難しいだろうけど訓練開始直後はジャンプするよう心掛けた方がいいかも。焦凍は氷使うはずだし、程度は分からないけど開幕氷結は警戒しておいて損はない」

 

「……ほんとに考えること苦手なの?」

 

「考えてるわけじゃないからな」

 

 ただ知っている事実からこうなるだろうなっていうのを予測してるだけだ。本当に考えることが得意なやつってのはゼロから考えることができる。つまり俺は考えるのが苦手。わかった?

 

 核を置いた部屋に猿夫を残し、俺は奇襲するために二階へ、透ちゃんは核を置いている階と同じ階にある部屋で待機。

 

 基本的には数の有利があるのに1対2になりに行くのは愚策だろう。数の有利でごり押せばいいのだから当然である。しかし、相手が相手だ。焦凍は推薦組だから、最大限警戒しておいて損はない。何を言いたいのかと言うと、俺はもしもの時の囮だ。

 

『それではスタート!』

 

「スイッチ。モード『ear』」

 

 モード『ear』。このモードは超絶耳がよくなる。代わりに他の感覚が激烈に低下し、目でいえばほとんど見えない。

 

 耳をすますと、一階から声が聞こえてくる。どうやら目蔵が索敵をし、位置を割り出したようだ。俺はスタートから動いていないので足音もまったくないはずだから場所はわからないのだろう。『四階』というワードだけ聞こえる。

 

「外出てろ、危ねぇから。向こうは防衛戦のつもりだろうが……」

 

 くる。目蔵が焦凍の言う通りビルの外から出て行ったタイミングを見計らって、小型無線を使って連絡する。

 

「ジャンプ!」

 

 合図とほぼ同時。

 

 ビル全体が氷に包まれた。俺はジャンプに失敗して足が凍らされてしまった。嘘やん。

 

「スイッチ。モード『normal』」

 

 モード『normal』。いつもの自分の姿だ。モード『ear』のままではどうしようもできないので元に戻っておく。

 

「猿夫、透ちゃん。そっちは大丈夫か?」

 

『なんとか』

 

『こっちもおっけー!』

 

「よし。二人とも、下の階にきてくれ。今なら焦凍を数の暴力で抑え込める」

 

 なんと、失敗したのは俺だけか。ダセェ。合図送るのに夢中で自分が失敗するとは、なんたる失態。

 

「お」

 

「あ」

 

 そして足が凍らされたまま焦凍と対峙してしまった。どうしよう。足の皮はがせば抜けられるけど、痛いもんなぁ。

 

「悪ぃな。後で溶かしてやる」

 

 わりぃな?

 

 おい、なんだその見下した言い方。この俺を見下す?世界一のこの俺を?ふふ、そうか。なら思い知らせてやろう。そういえばオールマイトは敵の思考を学べと言っていた。そうだ、敵ならこういうときどうする?答えは簡単。味方の援護を待つより不意打ち上等の突貫。

 

 階段を上がっていく焦凍を睨みながら、ボソッと呟いた。

 

「スイッチ。モード『power』」

 

 そして、力任せに氷をはがし、瞬時にスイッチ。モード『speed』。

 

「その首置いてけやヒーロー!!」

 

「なっ」

 

 そしてスイッチ。モード『power』。

 

「おおおおおぉぉぉぉぉおおおお!!」

 

 振り向きざまの氷結を無視して、俺は焦凍の頭を掴んだ。体が凍っていくが、構わずギリギリと締め上げる。

 

「ハハァ、どうだ?格下と舐めてたやつに苦しめられる気分はよぉ?ヒーロー」

 

 体が凍り切る前に空いた手で拳を作り、焦凍の腹を殴る。思い切りやるととんでもないことになりかねないので少し加減して。

 

「ぐふっ」

 

「テメェが俺の右手凍らせてっからテメェの顔から離れねぇな。もう一発!」

 

「やら、せねぇ!」

 

 もう一発ぶち込む前に、体を凍らされた。これが凍るという感覚。感覚がなくなって気持ちが悪い。だが、やるのが一瞬遅かった。

 

『轟少年確保!』

 

「何?」

 

「油断したね!」

 

 俺に集中している今、背後を気にしている余裕がなかったのだろう。俺を行動不能にしたのはいいが、周りに目を向けられないようじゃまだまだである。これはチーム戦ですよー?

 

「待っててね須一くん!障子くん捕まえてくるから!」

 

 できれば早くしてね。死んじゃうから。

 

「……」

 

「ぉ?」

 

 なんか眠たくなってきたなぁと思っていたら、焦凍が溶かしてくれた。まだ訓練終わってないのに。

 

「死なれても困るからな」

 

「おーさんきゅ。かせいにはいかないからあんしんしろ」

 

 うまく舌が回らない。幼児みたいになってる。このままでは女子から可愛いと人気になってしまうこと間違いない。参ったな、俺はカッコいいで売ってるのに。

 

「次」

 

「?」

 

 焦凍は自分に巻かれた確保テープを見て一瞬眉間に皺を寄せると、俺を見た。

 

「次は負けねぇ」

 

「まけ、ねぇ?」

 

 負けないだと?俺が凍らされて、透ちゃんがこなかったらそのままだったのに?どうみてもタイマンの勝負は焦凍が勝ってたのに?

 

「喧嘩売ってんのか!」

 

「なんでそうなる」

 

「タイマンは俺の負けだったろうが!チームとしては勝ったかもしれねぇが、そもそも不意打ちが決まったからで正面から行けばテメェは無傷だった!それで『次は負けねぇ』だ?ふざけんな!俺はこれを勝ちだと認めねぇぞ!」

 

『敵チームWIN!!』

 

「勝ったってよ」

 

「……納得してねぇ!!」

 

 舐めたことを抜かす焦凍を置いて俺は下の階に下りて行った。感覚がまだなかったから転げ落ちてしまった。肩を貸してくれた焦凍には素直にお礼を言おうと思う。ごめんね、口汚い言葉使って。いいやつなのに。

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