勝利とは見抜くこと   作:ライアン

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なんか続いてしまったが着地点とはとくに考えてないし、思い付きからのネタなのでどこまで続くかは不明。
原作にはない独自設定やらが出てきます。当然中央で統制とるところ位あるよなって感じで。
シロウ君は「才能」で言えばギルベルトに比肩しうるレベルでした。

ただご存知の通り奴は呼吸同然に努力をする光の亡者なのに対してシロウ君は我が身を削るとか阿保らしいなのでその辺で差がついてます。でも間違いなく有能。そんな奴です。


ムラサメ

 私の名前はシロウ・暁・アマツ。

軍事帝国アドラーの名門暁家の新当主にして帝国軍中将にして統帥本部次長を務める相応に優秀な男だ。最も今や前者の肩書というものは然程意味を持たないものになったが、まあ兎にも角にもそこらの凡愚とは比較にならぬ存在だと認識してくれればそれでいい。最も本物の怪物達には遠く及ばぬ程度のではあるがね。

 さて無知な者であっても私の中将という階級から相応の高官であることは理解しただろう。しかし、同時に統帥本部次長という役職とは何ぞや?と思ったものも居るだろう。無敵の帝国軍を構成しているのは天に輝く十二の星座たる黄道十二星座部隊(ゾディアック)であり、そのような名前の組織は聞いたことはないと。まあそれも無理からぬことではあるだろう、何せ統帥本部に勤務できる者は軍の中枢を担うことを期待された私のような士官学校を優等な成績で卒業したトップエリートばかり。例え驚異の人間兵器の資質がある者だろうとも無知な阿呆では生涯勤務する事はない場所なのだから。

 端的に言えば、統帥本部とは帝国軍の最高作戦機関だ。国防方針の選定、侵攻計画の策定、作戦計画の立案、兵站の管理ーーーそうした腕っぷしが立つだけの馬鹿では決して出来ぬ帝国軍の頭脳が集う場所だ。士官学校を優等な成績で卒業した者は基本的に比較的安全な西部辺りで数年前線勤務の経験を積んでから此処に配属される事となる。---私の代の首席は何とも奇特なことに激戦区たる東部戦線を志望したが、まあこれはある種の例外と言っていいだろう。アレは真実本気で公正な社会を築こうとしていた傑物(変態)であったが故に。例証には甚だ不適な男だ。

 

 話を戻すとしよう私はそんな帝国軍の中枢における次長ーーーすなわちNO2の座へと就いている。

 頂点たる総長を務めているのは我らアドラーの偉大なる英雄たる麗しの総統閣下であり、私の上司は総統閣下のみであると説明すれば一体私の地位がどれほど高位かわかって貰えるだろうか?そう実戦部隊こそ掌握していないものの私の地位は決してゾディアックの隊長達に劣るわけではない。むしろある種上位に居ると言っても過言ではないだろう。何せこちらは監査役を送る側であり、向こうは送られる側なのだから。

 

 いつの世も前線で戦っている部隊が軍閥化して中央の統制を離れるというのは為政者にとっての悪夢だ。だからといってそれを警戒してほいほいと部隊のトップを変えて居てはそのまま敵に付け入る隙を与える事になる。ではどうすればいいか?簡単なことだと指揮官の補佐役を中央の息がかかったものにすればいい。

 どれほど優秀であろうと人間単騎で出来ることというのはたかが知れている。数十人程度の規模ならばともかく一軍辺り数万を超える規模となるゾディアックの隊長ともなれば、自身の手足となって働く者のみなら自分の耳となり目となり情報を収集し、分析し、補佐するものがどうしたって必要不可欠であり、当然ながらそれが務まるのは士官学校で高度な教育を受けた者だけだ。参謀と呼ばれる部隊の頭脳ーーーそれを個々人の適性を考慮して各部隊へと配属するのもまた統帥本部の役目だ。これはある種特殊な立ち位置にある特務部隊裁剣天秤(ライブラ)であろうと例外ではないのだ。

 

 その気になればいくらでも甘い汁を吸える美味しい地位ではあるのだが、残念ながら当面の間は真面目に職務に精励する以外にないだろう。何せ我が上司は滅私奉公を絵にかいたような英雄であり、臆面もなく「この身はみなを幸福にするためにある」などと宣言できてしまう異常者なのだから。国家に対する有益性というものを私は示し続けなければならないのだ。……正直、かなり息苦しくはあるがまあやむえないだろう。人間とは社会と折り合いをつけることなくして生きてはいけぬ代物なのだから。せいぜい今の世を生きるのに適した仮面(英雄信者)を被って上手く立ち回るとしよう。

 

 ーーーそう、時代は変わったのだ。

 アマツというだけで尊ばれる時代は終わり、今やそうした血統や縁故を抜きにした個人としての価値というものを示さなければならぬ時代。

 なればこそ血縁だからという理由のみで罪人を庇うような行為は自分の首を絞める結果にしかならず

 

「お呼び出しに従い、クロウ・ムラサメ参上致しました」

 

「ああ、よく来てくれたね」

 

 重要機密の国外持ち出し等を図ろうとしている親類等もはや私にとっては百害あって一利なしの害悪でしかないのだ。

 

・・・

 

 クロウ・ムラサメ……それはかつてシロウ・暁・アマツが最も重用した宝剣の名であった。

 何せその実力は文句なしの最高峰。こと剣技に於いて彼を上回る実力者というのはまず存在しえなかった。

 そして実力よりも何よりもシロウが重宝したのはその人格だった。クロウ・ムラサメという男は自身が主の道具足ることを自らに課し、そらにはそれを誇りに思う筋金入りの“ムラサメ”であったのだ。

 なればこそシロウ・暁・アマツは実家を飛び出す際に多大な労苦を果たしてまでこの男を引き抜いたのだから。それはシロウにとって十二分に払った労苦に釣り合うだけのリターンが得られる割に合う(・・・・)苦労のはずであった。

 何せクロウ・ムラサメはシロウ・暁・アマツが知る限り文句なしに最強の男であったが故に。

 この上驚異の人間兵器たるエスペラントになれば、それは間違いなくシロウ・暁・アマツにとって最強の剣となるはずであったーーーそう見込んでいた。

 しかし、そんなシロウの思惑は崩れ去る。なんとクロウ・ムラサメは次世代の主力兵器たる資格を有していなかったのだ。

 これはシロウをして完全に想定外であった。何せアマツ血統の者はエスペラントとして高い適正を有しているものばかり。ムラサメが分家筋とはいえ、順当にいけばエスペラントになるものだとシロウは踏んでいたのだがーーー甚だ残念なことに彼はその資格を有していなかったのだ。

 

 シロウにしてみれば完全なる計算外であった。

 卓越した剣技を誇る彼がエスペラントという超人と化せばそれはまさしく究極の剣。

 加えてまず裏切らないと信用(・・)も出来るとなればこれほど重宝することはない。

 この世に於いて最も大切な自分の身を守る道具(・・)としてこの上ない物となるはずだったのだがーーー蓋を開けてみれば慮外の事態。

 実家から苦労して持ち出した最強の断刃(ムラサメ)となる存在は時代遅れの骨董品と化してしまったのだからさすがにこれは笑うしかない。

 

 だがしかし、それでも彼は中々に有用であった。

 エスペラントなぞ何するものぞと言わんばかりに血統派と改革派の抗争の真っただ中に於いてシロウの敵を討ち果たし大いに役立ってくれた。

 かのアストレアのお気に入りからもその実力を高く評価されたようで、ちょくちょく向こうから貸し出しの依頼がかかり、裁剣天秤(ライブラ)とのコネクションを深めるのになかなかに役立ってくれた。

 故にシロウ・暁・アマツの彼への評価はそこまで低くない。まあ期待は外れたが、苦労に見合う程度には働いてくれた無ければ無いで別段構わないが、あるに越したことはないそこそこ(・・・・)有用な道具。

 そんな程度の認識だ。

 

「以上が今回の貴官の任務となる。帝国最大機密たるエスペラント技術の持ち出し、これは国益の観点から何としても阻止せねばならん。残酷なようだが一人であろうと逃がすな。それが例え子供であろうとだ」

 

 だからこそこうして汚れ仕事を任せる。

 何せエスペラントでない彼では護衛というどうしたって後手を踏む立場には向いてない。

 いざというときにその身を挺してでも自分を守る献身さという点では申し分ないが、生身である彼ではそこで終わってしまうのだから。ならばこそ研ぎ澄まされた刃は守りよりも攻撃に用いるに限る。

 そしてそれを向ける対象が奏の家というシロウ・暁・アマツの実母の生家であろうと彼には躊躇いなど存在しない。むしろ親類なればこそ、クロウ・ムラサメというそれなりに重用している手札を送ることで自身の清廉さをシロウは周囲に示さなければならないのだ。

 なぜならばシロウ・暁・アマツは英雄と出会ったことで目覚めた愛国の士にして忠臣なのだから。多少血が繋がっているだけの他人(・・)を切り捨てることで自身の立場の強化に繋がるのならば喜んでするというものだ。

 

 計画の担い手足る商国のホライゾンなる商人は相応に優秀だったのだろう、この段階まで計画を隠していたのだから。

 だが哀しいかな、相手が悪かった。英雄閣下の魔性とでも称すべき魅力を見誤っていた。

 万が一にも裏切ることはないと信じていた古くから奏の家に仕えていた従者、それが主君の企みを知らせて来たのだ。

 保身のためではない、偏にクリストファー・ヴァルゼライドという男のあまりにもまばゆい輝きに目を焼かれ、自分も私心を殺し国家に尽くさねばならぬとそんな呪いじみた思いに駆られて。

 ---あるいはそう見せかけているだけの自分の同類かとも思ったのだが、どうにもそういうわけではなくそれが真実なのだから相手にしてみれば悪夢としか言いようがないだろう。

 だがまあそんな事情はシロウにとってみればどうでも良いことであった。

 シロウ・暁・アマツにとって大事なのはそれによって如何にして自らが利益を手に入れられるか?あるいは手に入れるにはどのように立ち回れば良いのかというその点に尽きるのだから。

 そしてその答えがこれであった。ムラサメという相応に自分が重宝していると評判の道具を送る事でより自身の仮面を強固なものにする。私心なく国家のためとあれば例え親類であろうと斬り捨てるという姿勢を示すわけだ。

 

 その上で冷酷だという印象を与えぬようにさも断腸の思いで行ったようにでも演じて見せればいい。

 叔父と義叔母、そして従妹のために相応に立派な墓を立ててやり、涙の一つでも流しながら墓前で「すまない、だがこれも祖国のためだったんだ。許してくれとはいわん、だがどうかわかってくれ」とでも言えばまあ十分だろう。多少懐は痛むが、それは必要経費というものだ。

 

「さようなら、ナギサ・奏・アマツ。君は悪くはなかったが君のご両親がいけないのだよ。まあ子は親を選べないものだからな、悪いがあきらめてくれたまえ」

 

 自業自得とは言い難い従妹の少女。

 それに対してのみほんの少しだけ哀悼をシロウ・暁。アマツは捧げる。

 そしてそれっきり。愛らしい笑顔を浮かべていた、決して嫌いではなかった従妹の存在を過去のものへと変える。

 相応に有用だと思っていた自らの道具にとうの昔に致命的な亀裂が入っていたと気づかぬままに……

 

 




ムラサメ教官はどこのアマツに仕えていたかは明言されていなかったのでじゃあせっかくだからの精神。
ギルベルトのところに行ったのはギルベルトが士官学校時代の付き合いで「エスペラントの新兵を鍛える教官役に適任の兵士を知らないかな?」と言われてじゃあこいつ貸してあげる(そこそこ有用程度なので手元から離しても惜しくはなくてギルベルトに貸し作れるならいいやの精神)で貸し出ししたからという想定。

当然ナギサちゃんが生きていてしかも極晃奏者とかいうやべぇ存在(粛清されたはずのホライゾン家の子息)とラブラブになっていたと知ったときは「げぇ!?」ってなりました。その後アッシュが話し合いを重んじる極めて社会的な英雄であることを知って心の底から安堵しました。
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