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まだまだ書き始めたばかりなのに、ここまでたくさんの方々に支えてもらえて、私は本当に幸せ者です…!
この恩を小説で返せるように頑張ります!
1秒前の過去の自分から決意を受け取った俺は自分が変わるために、変わらないいつも通りを取り戻すために、ドアを大きく開けた
本当に人がいるとは思えないほど静寂が空間を貫いていた
目に見えるのは、空いている窓から吹く風にゆらゆら揺れるカーテン、そして
ひとつだけ、カーテンが閉まっているベッドがある
保健室のドアを開けるときみたいな躊躇はなく、受け取った決意のままに、ゆっくりとカーテンを開けた
「これは調子狂うなぁ……」
そこには知っている彼女が寝ていた
わけではなく、綺麗なベッドが置いてあるだけだった
まさか授業が終わってから来たのにまだ来ていないのか?いやそもそも保健室に来たって確証も無いのに自分が来ただけか?
そんな後悔に似たものを感じていたが、自分の嗅覚が良く働き、考えることは一転した
懐かしい香りがした、どんなことでも包み込んでくれるような優しい香り
自分は物覚えも良くないし過去のことだってそこまで覚えていない
だが燐子のことになると自分はよく覚えている
それはこの前咄嗟に感じた既視感が教えてくれた
それは必然なことでもなく、俺が忘れなかったし、忘れようとしなかったからだろう。
結局のところ、奇跡的な再会も頭の片隅で考えていたのかもしれない。
上手くいくことばっかり考え過ぎていたから、もしもの事が頭になかった、そんな事実に少しがっかりしながら保健室を出るためにドアを引いた。
はずだったんだがドアの窪みに触れようとしたところでドアが自動的に動き出した
もちろんうちの学校の保健室は自動ドアではない、自分が動かしていないドアが自分一人しかいない空間で開くなんて考えられないのだ
もし、ドアの向こうに誰もいなかったらそう言えたかも知れない
顔を上げる前からもう誰がドアを動かしたか確信がついていた
1メートル以内で感じるこの香り
そしてさっき感じた懐かしい香り
全てが一緒だからだ。
「「あっ」」
もちろん顔を上げれば自分が自然と求めていた白金燐子がいた。
だがこんなに近くで見るのはとても久しぶりで……離れてみるより何倍も美しかった。
そんな美しくなった彼女を前に、恥ずかしさと、どう話し始めたらいいかという迷いが混ざって、言葉が詰まってしまった
無論。彼女も感じていることは同じようで、少し下を向きながら小さく左右をキョロキョロしている
今この状況をどうにかしなければならないのは勿論だ。
なのに俺の脳はまた別のことを考えていて、妙に冷静だ。
俺が彼女に再会した時、息を詰まらせて言葉を続けなかった。
彼女が俺に再会した時、息を詰まらせて言葉を続けなかった。
そして
いま、もう一度会った時俺は相手より先に話そうと思った
いま、もう一度会った時彼女は相手より先に話そうと思っただろう
俺と燐子は、昔は感じなかったけど、案外似た者同士なのかもしれない。
自分はこう、考えて時を過ごしていて、彼女もきっと、何かを考えて時を過ごしているだろう。
でも、実際には空虚な空間に静寂が続いているだけだ。
覚悟をしたのに、いざ彼女を前にするとこの静寂を破る勇気さえ無いのだと、変われない自分に少し苛立ちを覚えている。
「と、とりあえず……中に入って……話しませんか?」
意外にも、この静寂を破ったのは燐子の方だった
「は、はい、そうですね」
昔は何のためらいもなく話せていた相手と固い言葉を使って話していることに少し寂しさを覚えた。
燐子自身、人と話すことは昔からあまり得意ではなくて、今の状況も7年ぶりなのだから当たり前のようなことなのに本当の寂しさを感じてやまない
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保健室に燐子と二人で長椅子に座っている、二人の間には感情の壁とも言えるような人が一人分座れる間が空いている
「あの……どうしてここに?」
また燐子のほうから静寂の破って話しかけてきてくれた。
久しぶりに会った彼女は自分の知っている彼女より本当により美く、強くなっているんだなと、自分とは違って変われている彼女に少し劣等感に似たものを覚えた。
「教室から見てて、転んだから大丈夫かと思って、来てみました……」
どこの誰がみても、幼馴染の会話には見えないような暗すぎるトーンで会話は始まった。
自分に馴れ馴れしく話しかけていい権利なんてあるはずもなく、そもそも話してくれたことだけでも奇跡のようなものなんだ。
いつかは治したいと思って、ゆっくり会話していこうと思ったところで、本当に強くなった彼女が、一番気にしていた質問をしてきた。
「あの……品崎和士くんで……あってますよね?」
そう来たので俺からもすかさず、
「あってますよ。白金燐子さんであってますか?」
「はい…!やっぱり、そうだったんだ……!」
俺が彼女が予想していた本人だと知った彼女の顔は、何故か幸せそうな表情を浮かべていた。
自分からしたら、そんなことは今はどうでもよくて、ここに来るまである程度決めてきた話す段取りにのっとって、一番伝えたいことを伝える。それが今俺が一番しなくてはならないことだ。
「昔は、凄く仲がよくて、よく遊んでたの、覚えてますか?」
言葉が詰まりに詰まったまま自分から踏み出した始めの一歩とも言える言葉、この言葉の返答で、ここからのすべてが決まってくる。
「うん……覚えてるよ。本当に楽しかったよね。あと、"幼馴染"なんだから敬語じゃなくても…………いいよ」
いつからこんなに俺は弱くなったんだ……。いや、こんなこと言われたら普通こうなるに決まってる、そう考えていた俺の頰には一筋の静かが流れている。
自分は幼馴染という関係に戻るためにこの話をしようと決意をした。
そうしようとした相手の口から"幼馴染なんだから"という言葉が出てきた。予想外すぎる上に、嬉しすぎて、その上こんなに優しい笑顔で…
「ううっ……うわぁぁぁ……」
「かっ、和士くん……?大丈夫?私また傷つくようなこと……」
「ううん……俺さ、あんな酷いこと言って、幼馴染って関係終わらせちゃってさ、それを取り戻したくて…頑張って話そうと思ってさ、今日来たんだよね……。」
「私も同じ。これまでに二回和士君は私のこと助けてくれたよね…。そこまでしてくれるのに何もできないで私の発言で壊しちゃった関係を元に戻したいって思ってたんだけど、何も出来なくて……」
「燐子は何も悪くないのに……俺が酷いこと言って別れちゃったのに、どうして幼馴染ってまた言ってくれるのかなぁって…っ、思って耐えられなくてさ……」
彼女はこんなに自分の気持ちや意思を胸を張って言葉に出すことが出来るのに、自分は弱音ばかり吐いてて本当にダメなんだなぁって思わされてる。だから俺から
「「あのっ!」」
いこうとしたが被ってしまった
「先にいいよ和士君……和士君の気持ち、聞かせてほしいな」
「うん、ありがとう。あの時……燐子が人生をかけて頑張ってたことを、他人の俺が否定するような発言をして、本当にごめん……。あんなこと言って、今更急に許してほしいだなんて虫が良すぎる話だけど、ゆっくりでもいいから、昔みたいな関係に戻りたいって思ってる。」
「和士君の気持ち……聞かせてくれてありがとう。でもあの出来事は私が感情的になって、 全部を突き放すように言っちゃったから……だから「あれは俺が、悪いんだ、だから今は謝らせてくれ」わかった。私は大丈夫だよ。でも、その気持ちは私も同じ、確かにあの時の突き放そうと思った事と言ったことは本当だよ?それでも……私って分かってなくても二回も助けてくれて……優しい和士君のままでいてくれてるんだなって思えて……私ももう一度戻りたいなって思ってる」
「本当にありがとう。燐子、こんな俺をもう一度受け入れてくれて。」
「ううん、こっちこそ忘れないでいてくれて……ありがとう!」
「「じゃあ、これからもよろしくね」」
「「あっ」」
二回も言葉が被った後に、燐子がこう言う
「私たちって……似た者同士なのかもね」
「そうだな」
こんな会話をしていると、少し神秘的なことが起こった
いつのまにか空いた窓から入り込んでいた綺麗な色をしていた蝶が、蛍光灯に止まっていた
広げた羽から透けてくる光は、とても綺麗な色だった。
白燐に煌めく光の下で、俺たち二人は顔を見合わせながら少し微笑んだ
そして、昼の授業に向かうために、保健室から出た
刺客は予想外の方向から
なんか最終話みたいな書き方だなって自分でも思いましたが、最後の一文にもある通り、まだまだ続きます。
今回もこの場を借りて高評価をつけて下さった方を紹介させていただきます!
評価10という最高評価をつけてくださった猫鮪さん!!
評価9という高評価をつけてくださった長瀬楓さん!!
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