暗殺教室 才能と触手   作:まいまい

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プロローグ
『才能』と『触手』の出会い


 人は努力すれば何にでもなれる。

 

 そんなのは方便だ。

 人は産まれながら不平等である。

 才能が優れている奴が『強者』であり、才能が無いものは『弱者』である。

 ただ、『才能』が欲しかった。どんなことでもいい。

 足が誰よりも速い。喧嘩が強い。頭がいい。飯を沢山食べれる。異性からモテる。人に何かを教えるのが上手い。心霊が見える。ペン回しが上手い。ゲームが強い。寝るのが早い。一日欠伸を何回もする。誰よりも笑いの壺が浅い。今まで笑ったことがない、など。

どんなことでもよかった。

 ただ、誰にも負けない『才能』が欲しかった。

 

「君はいい目をしているね」

 

 そんな時、声をかけられた。

 白い白装束を身に纏い、顔は見えない。だが、一瞬で理解できた。

 目の前の男は何かしらの『才能』があると……。

 羨ましかった。

 だから嫉妬した。

 無意識に憎悪を向けた……けど、彼は言った。

 

「付いておいでよ。君だけの才能をあげよう」

 

『才能』という言葉に思わず飛びついた。地面に座っていたはずの体は気付けば立ち上がっていた。

 声をかけてきた怪しい男に連れられて、付いた場所は研究所のような場所。

 胡散臭いとは思ったが、物は試しと黙って中へと向かう。

 奥の部屋に着き、椅子に腰をかけると一枚の紙を渡された。

 

 は?

 

 これが『才能』? 俺の? ふざけているのか? これは紙だ。何の変哲も無い紙。

コイツを殺してやろうかと殺意が湧いた。

 

「ん? 何か勘違いしているね? その紙にちゃんと目を通しておくれよ。それから君は決めるんだよ」

 

 

 ───『才能』を受け取るか受け取らないか。

 

 

 そう告げられ、喰らいつくように紙に目を通す。

 

 何だ、触手? 人体に移植すれば超人的な力が手に入る。そのかわり、地獄のような苦しみ?

 

「ああ、安心していいよ。ちゃんとメンテナンスすれば苦しみは───」

「───見せてくれ」

「え?」

 

 怪しげな男は言葉を遮られたせいか、間抜けな声をだした。

 

「見せて欲しいんだ、俺の『才能』になるかも知れない。いや、相棒になるかも知れない『触手()』の事を……」

「───ッ」

 

 男は言葉を詰まらせ、少し黙り込むと待っててくれ、と言って部屋から出て行った。

 少し待つと拳銃型の注射器をもって部屋に戻ってきた。

 

「コレだよ、君の言った『触手()』とは……」

 

 それは()と表現するにはあまりにも小さく、不思議な触手。当然、意思など持っているわけがなかった。きっとこの男は俺がコレ(触手)を『彼』と表現して引いたのだろう。

顔は隠れていて見えないが、何となくわかる。

 けど、それを見た瞬間思ったんだ。『触手()』は俺を求めている、と。

 完璧なまでに適合する『才能』を持つ人物を待っていたのだと。

 俺はすぐさま男から注射器を取り上げた。流れるような作業で容赦なく自分の首元へと針を突き刺し、引き金を引く。

 

 ドクンッ、と心臓が弾けそうになった。

 それは喜び。体が歓喜していた。

 ああ、漸く俺のは『才能』を見つけることが出来た。

 それは、

 

 

 ───リスク無く、『触手()』を扱う才能。

 

 

触手()』が俺に聞いてきた。どうなりたか? と……

 

 

 俺は直ぐに返事を出した。

 

 

 ───なりたいモノはない。ただ、『触手()』とずっと一緒にいたいと……

 

 

 


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