魔法先生ネギま ~なんか違うネギせんせー~   作:アリアンロッド=アバター

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始まりの日

 ――僕は、その背中に憧れなかった。

 

 颯爽と現れて、絶望に暮れる僕を救ってくれた、一人の男。僕と同じ赤毛と、僕に似た顔をした彼は、僕の父さんだった。

 

 僕を襲おうとした悪魔を一撃で屠り、複雑な感情が混じり合った瞳で僕を見つめていた父さん。その背中は、それまで父親というモノを知らなかった僕でさえ、「ああ、これが『父さん』なんだ」ということが分かるくらい、多いく、頼りがいがあるモノだった。

 

 けれど、僕の視線は、そんな父さんの背中ではなく……父さんが悪魔を屠った一撃に注がれていた。後で《雷の斧》という魔法だということを知るその魔法。その絶対的な力に、僕はどうしようもなく魅せられていた。

 

 その後、父さんが一言二言僕に声をかけて、使っていた杖を渡してくれたけど、僕の意識はずっと瞳に焼き付いた『力』だけを映していた。

 

 ――力が、欲しい。

 

 村を襲い、村人たちを石に変えた悪魔。そんな悪魔を殺した父さん。

 

 彼らのような力が欲しかった。見るモノに恐怖と絶望を、そして安心と希望を与える。そんな力が。

 

 だから僕は、それを求めたんだ。村の生き残りであるネカネお姉ちゃんに引き取られた後も、タカミチと知り合った後も、魔法学園に入学した後も、ただひたすらに力を求め続けた。

 

 ありとあらゆる魔法を調べ、覚えようとした。身体も鍛え、魔法以外の戦闘術も学んだ。実戦も経験した。けれど、それだけじゃあ僕の求める力を手に入れることは叶わなかった。もっと別の手段がいるという結論にたどり着いた僕は、その手段を求めてありとあらゆる手を使った。

 

 そんな過程の中で、どうにか石化してしまった村の人たちをどうにかできないかと思ったんだけど……僕には、治療系統の才能がこれっぽっちもなく、石化を直すことは叶わなかった。

 

 そんな風に、力を求める日々を続けること、約五年……。

 

「メルディアナ魔法学園、首席卒業! ネギ・スプリングフィールド!」

「はい」

 

 メルディアナ魔法学園の、卒業式。と言っても、たった半年しかいなかったこの学園に大した思い入れはない。研究に必要な魔導書が収められている図書館があり、閲覧するには生徒になるしかないというわけで入学した。ここで習うことは、全て力を手に入れるための過程で身に着けていたので、卒業するために必要な単位をとれたのは入学してすぐのこと。その後は自分の研究に打ち込んでいたため、学園には知り合いすら皆無だ。首席が僕だということを知らなかった生徒がほとんどのようで、会場は困惑のざわめきに満ちていた。

 

 けれど、そんなことは僕には関係ない。学園長の前に立ち、卒業証書を受け取る。そんな僕の背中に、少しばかり負の感情が籠った視線が突き刺さる。これは……嫉妬? ……まぁ、ここにいる卒業生たちは、僕と違って純粋なここの生徒なんだろう。まっとうにここに通い、まっとうに卒業しようと努力を重ねてきた者たち。当然、首席の座を志していた人だっているはずだ。そんな彼らからしたら、僕はいきなり現れて首席をかっさらっていった盗人……ってとこかな? まぁ、当たらずとも遠からずってとこだろう。彼らに配慮して、首席の座は他の人にするよう、学園長に直談判するべきだったかな? ……まっ、考えても仕方ないか。もう過ぎちゃったことだし。

 

「さて、学園を卒業した者は、魔法使いとしてさらなる高みに至るため、この地を離れて『修行』をしてもらうことになっている。それは、覚えているね?」

「……はぁ、まぁ」

 

 修行……ねぇ。一体何をやらされるんだか。僕としては、実戦経験をもっと付けたいし、魔法世界の紛争地帯とか、魔獣の住む森とか、そう言うところがいいんだけど……。

 そんなことを思いながら受け取った、僕が修行を行う場所が書かれた巻物。それを開くと、ここにはこんなことが書かれていた。

 

 ――『日本で、学校の先生をすること』

 

「……はぁ?」

 

 しばし、呆然。だって、当たり前だ。

 学校の先生? 僕はまだ数えで十歳だぞ? 教師になんてなれるわけがない。日本と言うと、陰陽師とか忍者とか侍とか、東洋魔術の使い手がいる国だったか? あの国では、十歳の子供が先生になれるのか? なんだその適当極まりない国は。

 だが、この学園に入り卒業したからには、この修行は絶対にこなさなくてはならない。無視することもできるが、そうするといろいろと面倒なことになってしまう。

 

 こうして、本人はまるで納得していないが、僕の日本行きが決定したのである。それに、学校の先生になるなんて言う厄介事もおまけで。

 

 ……はぁ、これから、どうなるんだろう? 僕はただ、『力』が欲しいだけなのに。

 

 不安でいっぱいなため息を吐きながら、僕はもう一度修行内容が書かれた紙をにらみつける。そんなことをしても、書かれていることが変わるはずもなく、ぐっしゃぐしゃにして燃やしてやりたい気持ちをぐっとこらえ、僕はそれをそっと懐に納めた。

 

 さて……とりあえず、日本語の勉強をしなきゃいけないな。

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