魔法先生ネギま ~なんか違うネギせんせー~   作:アリアンロッド=アバター

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一話 麻帆良へ

「ここが……麻帆良学園か」

 

 卒業式から一か月、僕は日本に来ていた。

 

 この一か月間は結構忙しかった。教職を務めるための勉強に、日本語の勉強。この辺は魔法の補助もあり、そこまで時間をかけることなく終えることが出来た。

 

 時間がかかったのは、これまでお世話になった人たちへの挨拶と、これまで行った研究成果の保存と隠蔽。お世話になった人たちは、魔法世界の方にもかなりの数がいたし、中には消息が分からなくなっている人もいた。特にあの筋肉ダルマは……全く、どこをほっつき歩いているんだか。とりあえず、傭兵組合に手紙を渡すように頼んでおいたが……届くかなぁ。不安である。

 

 そして、研究成果の方。僕は力を求める過程で、精霊や悪魔といった存在との接触、禁術指定されている魔法術式の解読、違法魔法薬エトセトラエトセトラ。とてもじゃないが表に出せないような研究をいくつも行ってきた。そのことについて今更どうとも思わないけど、バレたらまずいことになるのは分かっている。なので、それらを全て亜空間に放り込み、厳重に封印と隠蔽をかけて、万が一にもバレないようにする。特に、タカミチとかにバレたら最悪だ。タカミチはあの筋肉ダルマと違って真面目で良識のある大人である。そんな彼にこれらの研究がバレたらどうなるか……感卦法全開でボッコボコにされるかもしれない。タカミチの無音拳、痛いからなァ……絶対にバレないようにしなきゃ。

 

「おーい、ネギくーん!」

 

 と、僕が心の中で不純な誓いを立てていると、上の方からそんな声が聞こえてきた。今まさに考えていた人物の声だったため、驚いて肩が跳ねてしまった。

 

 それを誤魔化すように、慌てて上を見上げると、校舎の三階くらいの高さにある窓から、タカミチ――高畑・T・タカミチが顔を覗かせていた。僕に向かって笑顔で手を振っている。僕も、同じように笑みを浮かべ、ぶんぶんと大きく手を振った。

 

「タカミチー! 久しぶりー!」

「久しぶりだね、ネギくん。今、そっちに行くから、ちょっと待っててくれるかな?」

「んー、いや。僕がそこに行くよ。タカミチは動かないで」

 

 タカミチにそういい、僕は周囲を見渡した。うーんと、人影はないし、気配を探っても誰もいない。魔法で探査したところ、この周囲には人はおらず、校舎の中に数名いるくらいのようだ。広大な麻帆良学園の敷地内には、それこそ無数の人間が存在しているが、今、この場を見ているのは僕とタカミチだけ。

 

 けれど、念には念を入れて、認識阻害魔法を発動。同時に光学系魔法でカメラなどに自分が映らないようにした。そこまで準備をするのにかけた時間は、一秒にも満たない。日頃の鍛練の成果。魔法を戦闘運用するにあたって、発動速度を早くするのは必須。この程度の簡単な魔法なら、ひと呼吸の間もなく発動できる。

 

 これで、僕がどれだけ非常識なことをしようと、周囲の人間に気取られることはない。

 

「ネ、ネギくん?」

「タカミチー、行くよー!」

 

 そう声をかけ、僕は体に気を巡らせる。身体能力を強化。足裏に気を集中させ、爆ぜさせる――!

 

 瞬動。そう呼ばれる移動法だ。気を爆発させ、その勢いで加速。着地の時も気を使い、大地を掴む。僕はそれを使い、タカミチのいる窓の窓枠まで、一瞬で移動した。

 

 瞬きもしない間に目の前に現れた僕に、タカミチは驚きと呆れの混じったような視線を向け、苦笑した。

 

「やれやれ、また腕を上げたようだね、ネギくん。今の瞬動、『入り』も『掴み』もほぼ完璧……縮地法と呼んでもなんら差しさわりの無いものだったよ」

「タカミチにそう言われると、自信がつくよ。ちなみに、虚空瞬動や連瞬動も精度を落とさずに出来るようにしてるよ」

「ははは! それは凄い! ネギくん、君は魔法使いじゃなかったのかい?」

「魔法使いだから近接戦闘が出来ません、なんて言ってたら死ぬからね。実戦じゃなくて、修行の段階で死ぬ。……特に、あの筋肉ダルマとの修行とか、ね」

「あ、あははは……ネギくん、大丈夫かい?」

「大丈夫大丈夫。……大丈夫、です」

 

 瞬動だけじゃない。杖を使った戦闘術、魔法と近接戦闘を組み合わせた魔闘法、気による身体強化。それら全てを揃えてやっと、彼に訓練を付けてもらえる『最低ライン』に立てる。それ以下だと、真面目に訓練中に死ぬからね。あの筋肉ダルマ、僕が十歳の子供だとか全然気にしないし。……思い出したら、頭が痛くなってきた。

 

「……はぁ、タカミチ。とりあえず学園長のところに連れてってくれる? 挨拶ついでに盛大に文句言うから」

「分かった……って、文句もあるんだね」

「当たり前だよ。修行をすることに文句はないけど、内容が学校の先生っていうのが論外。大体、どこの世界に十歳の子供に教師をさせる学校があるって言うのさ。魔法世界の辺境の民族だってそんなことしないよ。確かに、僕は知識だけ見ればただの大人なんて歯牙にもかけないよ? けれど、人にものを教えるって言うのは、ただ知識があるだけじゃダメなんだよ。いい選手がいい教育者になれるとは限らないって言うのはこの国の言葉だったかな。いい言葉だし、その通りだと思うよ。あの筋肉ダルマがいい例だよ。選手としては超一流、けれど人にものを教えるのはド三流。見て感じて己のモノにして見せろってそれ教えるって言わないから。理論的な説明を求めて『気合』って返事が返って来たときは真面目に殺意を抱いたよというか思いだしたらなんかイライラしてきたねぇタカミチ今から魔法世界行ってあの筋肉ダルマ一発殴ってきていい?」

「ネ、ネギくん! 落ち着いて落ち着いて!」

 

 おっと、筋肉ダルマへの恨みつらみで精神が暗黒面に落ちそうになってしまった。いけないいけない。僕の持つ力の中で、もっとも強力でもっとも扱いが難しい力は、己の精神にとても影響されやすいモノだ。そんなことにならないように訓練してきたけど、万が一が無いとも限らない。

 タカミチに言われて心を落ち着かせた僕は、未だに窓枠に立ったままだったのを思い出して、そくささと中に入った。

 

「ふぅ、何とか落ち着いたよ。ごめんね、タカミチ」

「別に構わないよ。気持ちはよぉく分かるから。さっ、学園長のところに行こうか」

「うん。……さぁて、なんて言ってやろうかな」

 

 待ってろ学園長。十歳の子供に先生をやらせようとするような輩だ。当然、ボロクソに言われることも覚悟しているんだろうな。

 

 決まったことだから、先生をやるやらないでぐだぐだ言う気はないが……。その分、文句は盛大に言わせてもらうからね! 

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