黒子のアメフト   作:ゆまる

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「わかりやすいあだ名ですね」

 

 

恋ヶ浜との試合の翌朝。

ヒル魔のスパルタトレーニングで狂犬ケルベロスに追われ、ガジガジと頭をかじられるセナ。

そこに「寝てんじゃねーぞ」と、ヒル魔がセナに向けて銃を乱射するシーンを、セナの幼馴染、まもりが目撃してしまった。まもりは「セナをいじめないで!!」とセナをかばうが、ヒル魔がそこでピンと閃き口を開く。「誰かマネージャーがいればセナくんの負担も減り、お仕置きする必要もなくなるなぁ〜」と。

まもりはヒル魔の思惑通り、セナを守るためにアメフト部のマネージャーになったのだった。

 

「姉崎さんも入ってくれたし、デビルバッツ初勝利も収めたし、こりゃ今年はいけるぞ〜!!ホワイトナイツみたいな強いところと当たらなきゃ……」

 

「次はどこと戦うんですか?」

 

「ホワイトナイツ」

 

「「ほぎゃーーー!?」」

 

さらりと答えるヒル魔に白目を剥く栗田とセナ。

しかし黒子は、何かを思い出すようにその目を空へと向けた。

 

「ホワイトナイツは、たしか……」

 

✳︎

 

王城ホワイトナイツとの試合日。

デビルバッツが試合会場へと入ったのと同じタイミングで、王城ホワイトナイツも会場に到着する。

ゾロゾロとホワイトナイツのメンバーが続くなか、眼鏡をかけた長身緑髪の男子が、黒子の姿を見て立ち止まった。

 

「……黒子」「緑間、くん」

 

「ん?知り合いか?」

 

ホワイトナイツの巨体のライン、大田原が緑間と呼ばれた男の横からひょこりと顔を出す。

しかし彼はフン、と鼻を鳴らすと、テーピングされている左手の指で眼鏡を上げ、顔を背けた。

 

「……いえ、知りません。人違いでした」

 

「そうか!ドンマイ!」

 

大田原とともに振り返ることなく立ち去る緑間。

その後ろ姿を眺める黒子に、セナが首を傾げた。

 

「えっと……知り合いじゃないの?」

 

「彼は──キセキの世代の一人です」

 

「ええっ!!?」

 

栗田とセナが目を見張りながら、首がねじ切れんばかりの勢いで緑間が行った方向と黒子を交互に見た。

 

「緑間真太郎。全ての能力が高い次元で完成されてる、中学ナンバーワンクォーターバック……っつーのが中学最後の評価だな」

 

「……彼らは、成長速度も普通の人の比じゃないです。今、どれほどの強さになってるかは、わかりません」

 

「そ、そ、そんなぁ〜!どうしよう!ヤバイよヒル魔〜!」

 

「……ま、王城が最初から緑間を使ってくるなら、な」

 

ヒル魔が王城のベンチを横目で見ながら、呟くように言った。

 

✳︎

 

 

「クォーターバックは高見でいく。いいな?」

 

ホワイトナイツの監督、庄司軍平が有無を言わさぬ威圧感を出しながらそう言った。高見は三年生で、ホワイトナイツの正クォーターバック、()()()男だ。

 

「……温存ですか」

 

「当然だ。泥門なんぞに緑間を使ってデータを晒すわけがあるか。……神龍寺も来とるしな」

 

「わかりました。負けそうになったらすぐ交代させてください」

 

緑間の物言いに、庄司監督のこめかみがピクリと動く。

 

「……そんなことが、あり得ると?」

 

「監督。どんな相手だろうと、敗北の可能性は存在します」

 

去年、練習試合でホワイトナイツがデビルバッツと戦った時のスコアは99ー0で圧勝だった。そこからたかだか一年足らずで、関東最強候補のこのホワイトナイツとまともに戦えるようになるはずがない。その発言はこのチームと自分への侮辱だ。そう感じた庄司監督は緑間に対し声を荒げかけたが、進の言葉で冷静さを取り戻す。

ちなみに進はこの前のデビルバッツの試合のビデオを取れなかった責任を負い、この試合のスタメンから落ちている。

 

「ああ、わかってる。だが仮に、仮に危なくなったとしてもまず進から投入する。緑間は出来れば準決勝以降まで他チームに見せたくはない」

 

「わかりました」

 

淡々と頭を下げる緑間を見て、庄司監督は鼻で大きく息をついた。

礼儀を知らないわけではないが、ところどころでプライドの高さというか、不遜さが目立つ。中学で無敗だった故にある程度は仕方ない面もあるだろうが……。そんな欠点を補ってなお余りありすぎるほどの能力の高さがあるのだ。

 

「……ところで緑間、なぜカップ麺を持っているんだ?」

 

「食わねーなら貰ってやるぞ!」

 

「食べないでください。これは今日のおは朝のラッキーアイテムです」

 

「……他の奴になら、フィールドに余計な物を持ち込むなと怒鳴るところなんだがな」

 

以前も緑間が練習にプリンを持ってきたのでそれを「たるんどる!」と咎めて捨てさせたところ、その後の練習内容が散々なものになった。ラッキーアイテムなんぞに頼る精神性では云々と庄司監督も最初は言っていたが、何故か尽く壊れていく練習道具、突然の雷雨、練習場に迷い込んだ凶暴過ぎる犬etc……精神だけではどうにもならない事象が続き、試しに緑間にプリンを買い渡した途端にピタリと災いが止んだため、例外として緑間のラッキーアイテムだけは見逃すことになったのだった。

 

✳︎

 

「騎士の誇りにかけて勝利を誓う。そう我々は敵と闘いに来たのではない。倒しに来たんだ!」

 

「俺らは敵を倒しに来たんじゃねぇ。殺しに来たんだ!」

 

「「「Glory on the Kingdom!」」」

「「「ぶっ こ ろす!yeah!」」」

 

 

 

「さぁエース桜庭くん率いる王城ホワイトナイツとなんとかデビルバッツの試合が始まります!果たして何点差つけてくれるんでしょうか!」

 

桜庭目当てのテレビスタッフが、桜庭へとマイクをぶんぶん振っている。それを見た桜庭がその表情を暗くした。

 

観客席にいた、関東最強の高校・神龍寺高校の選手たちが、王城のスターティングメンバーを見て不平の声を漏らす。

 

「はぁー?進も緑間もベンチかよ!来た意味ねー!」

 

「まぁ泥門相手だしなー。それでも余裕だろ」

 

「噂のキセキの世代ってのを拝みたかったんだがな」

 

「ま、ウチにも一人いるだろ。アイツと同格なのがあと四人いるとか、想像したくねーな」

 

✳︎

 

会場全体が消化試合のようなムードになっている中、ヒル魔が笑みを浮かべる。

 

「ケケケ、奴ら完全にこっちを舐めてやがる。おありがてぇこった。

ファッキンチビ!!」

 

「は、はいぃ!?」

 

「一発目からぶちかませ!!」

 

「えぇえ!?」

 

 

 

「SET!HUT!」

 

セナがボールを渡され、敵陣へと走り出す。

その頭の中では、昨日の黒子との練習が思い出されていた。

 

✳︎

 

「小早川くん、ちょっとだけ練習しませんか?」

 

「練習?」

 

「はい。例えばボールの持ち方とか、ちょっとした走り方とか……知っているだけで、だいぶ違ってくると思います」

 

「う、うん。じゃあお願いします」

 

「まず、ボールはこう持って、脇に挟み込む。これが基本です」

 

「こう?」

 

「はい。この状態で空いている腕で相手を押しのけられたらいいんですけど、まだ難しいかもしれません。なので、こう抱き抱えるように持ってみてください。

「ボールは何より大事です。相手に叩き落とされたり、奪われたりすることを一番に防がなくてはいけません。このことを念頭に置いておいてください。

「走り方は、敵を大きく躱すよりも味方を盾と思ったほうがいいです。

盾を使って防御するイメージで────

「ボールをキャッチするときは────

 

「ちょ、ちょっと待って、休憩を……」

 

✳︎

 

(ボールががっちり、鎧で守られているみたいだ……!スパイクも足が全然滑らない!それに皆が盾になってくれるなら……)

 

アイシールドがフィールドの端を駆ける。

 

(逃げるよりも……盾!)

 

「な、んだぁ!?はえぇ!!」

 

味方選手のほうに向かい相手を誘導。味方がブロックした瞬間を狙って切り返し前へ進む。

予想外のスピードにホワイトナイツのディフェンスはついていけない。

止まり。ロケットスタート。左に大きく跳んで。味方がブロック。敵の間を抜け。もう目の前には誰もいない。

 

 

「タッチダウーン!!」

 

 

「し、試合開始1プレイ目……。信じられないことが起こりました!先制点は泥門デビルバッツ!!」

 

「うおおぉぉぉぉ!!?」

 

 

庄司監督と進もその目を見開き驚愕の表情を浮かべていた。

 

「な、んだとぉ!!?」

 

「40ヤード4秒6ほどと思われるスピードに、超人的な曲がり(カット)……。彼はおそらく、長期にわたり特殊な走力訓練を施されているものと思われます……!」

 

「俊足のランニングバック、か……。緑間が懸念していたのは、この選手のことか……?」

 

確かに計算外ではあった。だが多少速いランニングバック一人でホワイトナイツが負けると思われているのなら、見くびりすぎだと言うほかない。

だが庄司監督のその感想は、的外れ。ホワイトナイツでただ一人、緑間だけが「弱小チームにランニングバックが一人増えただけ」でないことを、知っている。

しかし緑間は黙ったまま、カップラーメンを手の平で転がした。

 

✳︎

 

攻守交代、デビルバッツの守備。

デビルバッツは選手たちの配置が中央へと偏ったフォーメーションだ。

 

「いきなり、ゴールラインディフェンス……!?」

 

ゴールラインディフェンスは、主にランを止めるためのフォーメーションだ。その名の通りゴール前でランの力押しを防ぐために使われることが多い。だが今は、ゴールまで50ヤード以上残っている。

 

「こんなもんパス投げりゃしまいじゃねーか」

 

さっきのは俊足のランナーが運良くタッチダウンしただけで、デビルバッツはやはり弱小の雑魚チームか。会場が小さな嘲笑に包まれる。

 

(パスは投げる前に潰そうって魂胆かい?だがそう上手くいくかな)

 

デビルバッツのラインが高見へと突撃しようとするが、尽く止められている。唯一栗田だけが大田原を仰向けに押し倒すが、そこまでだ。

 

高見は落ち着いて、その目で空いているパスターゲットを見つける。

 

(桜庭がフリー!)

 

「待て高見ッ……」

 

高見がボールを投げた瞬間、桜庭の手前にいきなりデビルバッツの選手が現れた。少なくとも、高見にはそう見えた。

高見の死角にいた黒子だ。高見は桜庭のほうに投げたのではない、投げさせられたのだ。

 

桜庭の前で黒子が視界を塞ぐように跳ぶ。

 

(う、ボールが、見えな───!)

 

「やめてー!桜庭くんの邪魔しないでー!」「邪魔よ地味男ー!」「頑張ってエース桜庭くん!」

 

桜庭ファンの女たちが悲鳴をあげるが黒子はどこ吹く風だ。目の前のボールに集中し切っている。

逆に桜庭はその応援のせいで集中出来ずにいた。「俺はエースじゃない」と自虐し、反射的に体が縮こまる。

さらに言えば、黒子と桜庭で身長差はあるものの、桜庭にはジャンプしながらのキャッチを確実に成功させる技術がない。

黒子が、手の中で跳ねさせながらもそのボールを取った。

 

「インターセプトだぁぁぁ!!」

 

インターセプト。敵チームのパスを空中でぶん取るという守備のビッグプレーだ。成功すれば攻撃側の攻撃権がいくつ残っていようがその場で攻守交代になる。

 

そしてまだ、ボールは黒子の手の中だ。

黒子が横へとトスをすると、そこにいたセナがボールを受け取る。

 

また先程の焼き直しのように、セナが王城の選手たちを抜いていく。いや、先程よりも王城は混乱している。通ったと思ったパスが相手に奪われたのだ。さらに言えばこの展開はヒル魔の計算通り。デビルバッツの他の選手は黒子のインターセプト前提で動いていた。想定外の攻守交代によって混乱したホワイトナイツと、計算通りの攻守交代でそれぞれが指示されたターゲットをブロックしているデビルバッツ。大きすぎる隙間を、アイシールド21は面白いように抜けていく。

 

「タッチダウン!!」

 

10秒足らず。桜庭と黒子がいた位置からゴールラインへとアイシールド21が駆け抜けた時間だ。唖然としていた観客たちが遅れて歓声を出す。

 

「……う、おぉぉぉおぉぉ!!すげぇあのアイシールド!!」「はっやはやい!!」「王城からアッサリ2タッチダウン!!」

 

「ん……なアホな……」

 

12対0。

ホワイトナイツどころか、この会場の誰もが予想しえなかった点数。

デビルバッツという新進の弱小チームが、関東最強格のホワイトナイツから開始5分以内で2タッチダウンを奪ったという現実を、まだ誰も認識できずにいた。

 

「すみ、ません監督。桜庭が、フリーに見えてしまって……」

 

「監督。どうしますか?」

 

高見が俯きながら帰ってきた。緑間が庄司監督へと目を向ける。皆、監督が怒声を撒き散らすと予測し身構える。しかし監督は腕を組み一瞬の間考えて、すぐに口を開いた。

 

「……次の守備から進を出す。緑間はまだ温存だ。だがもう1回タッチダウンを取られたならすぐに出す」

 

庄司監督の顔つきが変わった。さっきまではまだ心のどこかで油断していたのだ。タッチダウンこそされたが、それは選手たちの心に隙があったからだと。だが2回目ともなれば、相手を認めるしかない。

今、デビルバッツはホワイトナイツの『敵』として、認められた。

 

 

✳︎

 

高見は黒子のインターセプトを警戒しているのか、100%通る短いパスと力押しのランを連発。実力がハッキリ出る確実なプレー相手では、泥門が隙をつく余裕はなかった。

 

「チッ、出来ればもう一発くらい奪いたかったが、さすがにそこまで甘かねぇな」

 

「攻撃に転じること前提の守備なんて初めて見ました」

 

「あたりめぇだ!アメフトってのは99点とられても100点とりゃ勝つんだよ。攻めて攻めて攻めまくるのがデビルバッツだ」

 

「なるほど」

 

このチームのことが分かってきました、と黒子は頷いた。

 

✳︎

 

「タッチダーウン!」

 

結局王城の攻撃を止めることは出来ず、タッチダウンされてしまう。

王城が得点後のキックも決め、12対7。

 

 

そして次は、泥門の攻撃。王城の守備は、一人だけメンバーが変わった。それだけでホワイトナイツが剣呑で引き締まった雰囲気へと変化していく。

神龍寺の面々がガタリと席から立ち上がり双眼鏡とビデオを取り出す。

 

「おっおっ、きたきた進だ!!」

 

ヒル魔が顔を歪めるのと同時、桜庭ファン以外の観客がざわつく。

 

「出てきやがったか……」

 

「進だ……!」「撮れ撮れ!」「高校最速……」

「日本史上最強のラインバッカー……進清十郎!」

 

 

「警戒すべきはあのアイシールドのラン。他に目ぼしい奴はおらん、ランに集中して守れ」

 

監督がそう指示を出したが、進はその目を黒子へと向ける。

 

(確かにあの15番の肉体に、目を引くものはない……。

が、さっきのインターセプトは……偶然、か……?)

 

直接対面した者しか感じ得ないはずの違和感を、進が感じ取る。

しかし逆に言えば、進ですらも初見で看破することは不可能だったということである。

 

 

「ケケケ、奴らウチの攻撃がアイシールドだけだと思ってやがる。もう一発サプライズだ!」

 

「SET!HUT!」

 

「また21番のランだ!止めろ!」

 

セナが走り出すが、それはフェイク。ヒル魔の渡すフリである。

ボールはまだヒル魔の手の中にある。

 

「違う、21番はボール持ってない!!」

 

ヒル魔はフリーの黒子へとボールを投げ込み、易々とパスを成功させた。

 

「んなーっ!?」

 

「なんだアイツ!あんな奴いたか!?」

 

ランを重点的に守るといっても、当然パスを放置しているわけではない。特に黒子は先程()()()()()()インターセプトを決めたのだ。なのでホワイトナイツのコーナーバック、井口が黒子をマークしていたのだが、()()()井口は黒子から遠く離れた位置で目を見開きながら辺りを見回していた。庄司監督から怒号が飛ぶ。

 

 

「よし、もう一発だ。連中がただの偶然、守備の怠慢だと思ってるうちに進めるだけ進む」

 

ヒル魔の言葉通り、王城は井口のミスだと判断し特に対策を講じることはしなかった。黒子は井口の視線を外し、悠々とパスをキャッチする。

 

「え、なんで、また──!!」

 

「泥門パス成功!25ヤード前進!」

 

残り十数ヤード。

王城が思わずタイムアウトをとった。井口が絶望した表情でベンチへと戻っていく。

 

「なぁにをやっとるかぁぁぁぁあ!!」

 

「ひぇっ」

 

戻った井口を、監督が給水用のタンクを拳で叩き潰しながら怒鳴りつけた。

 

「競り合ってから取られるならまだしも、突っ立ったままでホイホイパスを決められて!!やる気がないか!?帰りたいか!!?ん!?」

 

「ち、違うんです監督、ホントに、ホントに!なんか目の前からフッて消えて、気づいたらパスが通されてて!」

 

「そんな言い訳が通じると────」

 

「監督」

 

緑間が監督の言葉を切るように声を発した。

 

「井口先輩は嘘をついていませんよ。そういう芸当が出来る者が、向こうのチームにいるだけです」

 

 

王城のベンチを見ていたヒル魔がその目を吊り立てドリンクボトルを握り潰した。

 

「チッ、あのファッキングリーン、ネタバラシしてやがるな」

 

(ファッキングリーン!?)

 

「わかりやすいあだ名ですね。緑間くんが聞いたら激怒しそうですけど」

 

✳︎

 

「元帝光中学!?」「しかもレギュラー!?」

 

「ま、マジかよ、なんで泥門なんて超弱小校にそんなのが……」

 

緑間が、泥門に元帝光中の選手がいることを伝えると王城の選手たちがざわめく。

 

「緑間。何故言わなかった?」

 

「聞かれませんでしたから。それに泥門程度なら勝てるとおっしゃったので」

 

悪びれる様子もなく、しれっと緑間が答える。緑間は王城高校に入ってまだ一ヶ月も経っていない。公式の試合は初めてだ。緑間はつまり言外にこう言っているのだ。『これで負けるようならその程度の高校なんだろう』と。

自分の入った高校が、敵に新戦力が入っていることを想定もせずに舐めきって、それで無様な姿を晒すようなら即やめて別の高校に行くつもりでいた。『人事を尽くして天命を待つ』。緑間が信条としている言葉だ。

さすがに無実の先輩がスタメンを下ろされかけるのは良心が痛んだので声をかけてしまったが。

 

「少なくとも黒子()は、並の選手では1対1で敵わないでしょう」

 

俊足のランニングバックと消えるレシーバー。

二人増えただけで、もはや去年のデビルバッツとは完全に別物だ。

だが、それだけだ。

 

「泥門の攻撃の要はあのアイシールドと15番のレシーバー。そこさえ抑えればあちらに攻撃の術はなくなる」

 

「あの15番を重点的にマークしてください。

アイシールドは……自分が止める」

 

進がその引き締まりつつも筋肉質の腕をゴキリと鳴らす。

ホワイトナイツの選手たちの顔つきが、変わった。

 

✳︎

 

黒子に三人のマークがつく。一人の視線をミスディレクションで外しても、残りが黒子を追ってしまう。注目された状態で三人同時にミスディレクションを決めるのは、不可能に近い。

 

「これは、さすがにちょっと……!」

 

黒子に投げられないことを悟ったのか、ヒル魔がボールをセナへと渡す。

セナがそのままボールを持って外側へと走り込んだ。

 

しかしそこにはすでに進が待ち構えている。

 

「エース対決だッ」

 

セナが、進の伸ばした手を横っ飛びで躱したかのように見えた。

しかし次の瞬間には進の腕がセナの腹部へと、突き刺さっていた。

セナの息が一瞬止まり、痛みがせりあがる。骨がきしむような感覚を味わいながら、セナは進に引き倒された。

 

「スピアタックルが決まったー!!」

 

 

(痛い……そうだ、これが痛いだ……。痛い!!)

 

痛いことから逃げ続けてきたセナが感じた久しぶりの痛み。

その痛みは、セナに進への恐怖を植え付けるには十分すぎるほどだった。

 

✳︎

 

「また止められたー!!」

 

セナの走はことごとく進に止められる。

黒子へのパスは囲まれていて出来ない。

王城の読み通り、デビルバッツにはもう攻め手がなくなっていた。

 

「ククク、ちょっと速いだけのチビと、地味〜なレシーバーだけ。進が入った以上、ラッキーパンチももう起きねえよ」

 

神龍寺の選手たちが嘲笑う。

あわや下克上なるか、と騒いでいた会場も段々と盛り下がってきていた。

 

王城は少しでもボールを奪われる危険があるプレーはもうしない。

着実に、確実に、泥門を倒しにきていた。

 

 

「前半終了ー!!21対12でホワイトナイツの優勢です!」





オマケ

「ファッキングリーンなのだよ!」
「ファッキンブルー」
「ファッキンパープル〜」
「ファッキンイエローっス!」
「ファッキンレッド!五人合わせて」

「キセキレンジャー!!」どかーん


「…………ふ」

「黒子くん?どうしたの?」

「いえ、ちょっと考え事を」

【tips!】
姉崎さんを忘れていたからとりあえず無理やり詰め込んだわけではないぞ!ホント忘れてないから!ホント!

【tips!】
早く関東大会まで行きたいので、ところどころ雑にカットするかもしれません。ご容赦を。
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