俺たちの目の前に、女神アクア様が降臨なされた...
「カ、カ、カ、カズマ。アクアが壊れました。」
めぐみんが、俺に掴みかからんと言う勢いで詰め寄ってくる。
心なしか、身体が震えているようだ。
ああ、そう言えば...めぐみんは昨日、ゆんゆんに絡んでいたから、このアクアを見てないんだったな。
その気持ちはよくわかるぞ。
目撃するのが二度目の俺でさえ、正直気味が悪い位だ。
初見の衝撃は凄まじいものがあるだろう。
「落ち着け、めぐみん。アクアにも体裁を整えたい相手がいるんだとさ。俺たちは、生暖かぁい目で、アクアの奇行を見守ってやろうじゃないか。」
「な、なるほど...。」
俺がそう言ってやると、少し落ち着きを取り戻すめぐみん。
「お前たち...」
呆れているような眼差しを、俺たちに向けてくるダクネス。
でも、知ってるんだぞ?
お前が今、笑いを堪えてるのは丸見えだ...
そんな俺たちのやり取りを他所に、キリトが真面目な顔をして俺に話しかけてきた。
「それで、今日はどう言った用件で来たんだ?正直、アクア...さんはともかく、君達とは初対面だよな?まさか自己紹介に来ただけでも無いだろうし、何か用事があったんだろ?」
あれ?そう言えば、なんで来たんだっけ???
女神アクア様の降臨の衝撃で、忘れたわ...
えーっと...確か今朝、アクアと口論になって...
ああ、そうだ。
キリトたちの戦いを見学しに来たんだった。
さて、どう説明しようか...
お前らが凄いかどうか見に来た...なんて言ったら怒られそうだ...
俺は、頭をフル回転させて、
「...うちのアクアが、キリト達の事を気に掛けているみたいだったからな。キリト達は、まだ冒険者登録したばかりの新人だろ?心配だから危なくないか見守ろうって話になったんだ...」
ふっ。これなら問題あるまい。
先輩冒険者として見守るって話なら、断りにくいだろう。我ながら完璧な言い訳だ。
「へぇ、そうなんだ。」
アクアが台無しにさえしなければ...
「や、やだなぁ。アクア。今朝、お前が言い出したんだろ?」
「え?私じゃなくて、カズマが...」
お前はもうしゃべるな...
ダクネスが慌ててアクアの口を塞ぐ。
「???。まあ、良いか。いざってときの保険は多いに越したことは無いからな。」
多少、疑問の表情を浮かべたキリトだが、直ぐに切り替えたようで、俺たちの同行を了承した。
ギルドを出た俺たちは、街の外に移動した。
「さて、もうすぐ目的地だな。皆、用意は良いか?」
キリトが切り出すも、俺は疑問点があり、キリトに話しかけた。
「一つ良いか?キリトとアスナ...二人とも、なんで木刀なんて装備してるんだ?ジァイアントトードに打撃はほとんど効果が無いぞ?」
そう、移動中に気づいたんだが、二人とも真剣の他に木刀を持ってきていたのだ。
はっきり言って、ジァイアントトード戦にはなんの役にも立たないだろう。
俺が指摘すると、
「ああ、これか?これは、直ぐに倒さない為に用意したんだ。はっきり言って、俺たちのステータスなら、ジァイアントトードは、簡単に倒せる。でも、それじゃあ、連携プレイの練習にならないからなぁ。」
「俺たちは、昨日パーティーを組んだばかりだ。俺とアスナはともかく、そこにゆんゆんが加われば、咄嗟の時に上手く連携が取れない可能性がある。まだ敵が弱くて、直ぐにフォローが出来る今のうちに、身に付けて置かないとマズイからな。」
............この自信は何だろう?
俺なんて、ジァイアントトードに食われ掛けたのは、一度や二度じゃ無いと言うのに...
アクアやめぐみんは、実際に何度か食われたが...
幸い、人を捕食中のジャイアントトードは無防備になるので、なんとかなったんだが...
まあ良い。捕食されかけたら、その時は俺がいつものように助け出せば良いだろう。
そうすれば、キリトは俺を尊敬するだろうし、もしかしたら、アスナは俺に惚れるかもしれないしな。
おまけにアクアの目が節穴だと、一生からかえるだろう。正に一石二鳥いや三鳥だ。
そんな事を考えていると、目標が現れた。
いきなり三体も同時に...
これは詰んだな。
そう思っていたが...
「ゆんゆん、泥沼魔法の準備。俺の合図で仕掛けてくれ。いくぞ、アスナ。」
「了解」
「わかりました。」
キリトが指示を飛ばす。ゆんゆんはともかく、アスナには具体的に何も指示してないようだけど良いのか?
そう思っていると、アスナがキリトを追い越して真ん中のカエルに仕掛けた。
ものすごいスピードで突きを繰り出す。
何故か木刀が光っていたような...
しかし、ジァイアントトードには打撃は効果が薄い。
何しろ、女神パワーの成せる技か、ステータスがカンストしているアクアの攻撃すら、あまり堪えた様子がなかった程だ。
案の定、大したダメージは受けずアスナを捕食しようとするジャイアントトード。
こんなものか...やはりアクアの目なんて節穴だな...
そう思った時、アスナの右側からキリトが飛び出し、ジャイアントトードの横っ面を木刀で薙いだ。
やはり、木刀が光って見えたが、そこにどれ程の力が込められていたのか...巨大なジャイアントトードの身体を吹き飛ばし、左側にいたもう一体のジャイアントトードと激突した。
「ゆんゆん。2体に泥沼魔法。」
「はい。『ボトムレス・スワンプ』」
カエル2体の足元が泥沼に変わる。
「よし、アスナ。まず一体目だ。」
キリトがそう言って飛び出す。
とんでもない速さで木刀を振るキリト。
キリトの攻撃の隙を埋めるようにアスナが攻撃を繰り出す。
そしてアスナの攻撃の隙を埋めるように、またキリトが攻撃する。
その連携は正に一心同体。まるで次にお互いが繰り出す攻撃が解るかのようだ。
そんな事を何度も繰り返す。
どんな集中力だ...
だが、ジャイアントトードもやられてばかりではない。
舌を使ってキリトを攻撃しようと試みる。
だが、キリトは恐るべき反射速度で舌を迎撃した。
そして何度目かのアスナの攻撃がジァイアントトードに当たった時、ジァイアントトードは倒れた...
うっそーん。ジァイアントトードって打撃で倒せるものなの?
これヤバくない?キリト達、実は本当に凄いんじゃ...
一体が倒れたとき、泥沼から残りの2体が這い出て来た。
「ゆんゆん、迎撃。」
「はい。『ライトニング』」
カミナリの中級魔法が一体に炸裂。
それだけで、カエルは絶命した。
「よし、残りは一体だ。いくぞ。」
そして、今度はキリトに止めを刺され倒れるカエル...
その後、ノルマの残り2体を危なげなく倒すキリト達。
もう、言葉も無かった...
めぐみんもダクネスも空いた口がふさがらないようだった...
アクアは、どや顔で俺を見ている。
「ふふーん。どう?カズマ。私が言った通り、彼らは凄いでしょう?さてと、今日はいっぱい高いお酒が飲めるわね~。」
くっ。あの横顔を張り倒したい...でもそんな事したら、あのキリト達を敵に回すかもしれん...そんな事になったら...
俺は、キリト達に蹂躙されたジャイアントトードを見て身体を震わせた。
「さて、これで依頼は達成だな。カズマ。これが、俺たちの戦いなんだけど...どうだろうか?」
キリトが俺に言ってくる。
俺はその問いに対し、
「...ナマ言ってすいませんでしたぁ。」
綺麗な、土下座を敢行した。
その夜...アクアにシコタマ酒を奢らされた...
畜生...今日はさんざんだ...