珍しくシリアス。
「ほお。ここまでやってくる冒険者がいるとはな。なんとも嬉しい話じゃないか...」
今、私たちの目の前には、自分の首を片手に持ったデュラハンがいます。
「き、君はデュラハンのベルディア。何で君が...君は前にアクセルの街に侵攻してきた時に、カズマ達に討伐されたハズ。」
クリスさんが、驚きながら問いかけました。
と言うことは、この人?はやはり魔王の幹部と言うことになります。
「確かに、俺はあの時倒された。だが...倒し方が不味かったな...」
「どういう意味かな?」
クリスさん達の会話は続いています。
多分、クリスさんはできるだけ相手の情報を引き出す気なんだと思います...
「俺は、デュラハン。上級のアンデッドナイトと言っても良いかもな。アンデッドとは、この世に未練を残した死者が、その存在を歪めてでも生き永らえようとした者だ。」
「かつて...俺がまだ生者であったころ...主君は謀によって暗殺され、俺はその罪を擦り付けられた上で、処刑されたのだからな。己の死の瞬間、俺は思った。騎士として、この命尽き果てるまで、主君の為に戦い、強き者の手によって散りたかった...とな。そんな俺の強い未練が形となったのがこの姿よ。」
ベルディアは、過去の事を思い返しているのか、悔しそうに首を持つ手を震わせていた。
「さて、盗賊の娘よ。前回のお前達の戦いが、俺の未練を断ち切るものだったと...本当に思うかな?」
私は、その戦いに参加していないのでわかりませんが、クリスさんが沈黙してしまいました。
「で、でも君はアクアせ...アクアさんの浄化魔法で消滅したんだよ?どれだけ強い未練を残していたアンデッドだとしても、復活できるなんて...」
「そこは、魔王様のお力のお陰だ。俺の強い未練を感知し、地獄の底から掬い上げて下さったのだ。それでも力を取り戻すのにここまでかかったのだから、あのアークプリーストの力は恐るべきものだがな。」
「君は、なぜまたこの城に戻ってきたの?」
「知れたことよ...サトウカズマ...あやつのパーティーに復讐するためよ。」
「だいたいな?あいつらがもっとまともに俺を倒してくれていたなら復活なんてすることも無かったんだぞ?
それが、あの頭のおかしい紅魔族は、一日に一発しか魔法が撃てないとわかったり、クルセイダーの小娘は攻撃が当たらない上にただのド変態。サトウカズマは人の頭を盗んだ挙げ句にボールと称して蹴る外道。俺に止めを刺したアークプリーストは頭のおかしいアクシズ教徒...」
「これを地獄で知った時の俺の嘆きがわかるか?わからんだろう?ああ、未練だらけだとも。あいつら...必ず復讐してやるぞ!クソがー!」
ベルディアさんは、かなりお怒りの様子です...
ふと、視線を感じて見るとキリトさんが私を見ています。
あれは魔法詠唱の合図。でも、何を唱えれば...
「あんたの話はわかったよ、ベルディアさん。でも、ハイそうですかと、あの街に侵攻させるわけにはいかない。」
そう言って、キリトさんとアスナさんが前に出ました。
いつもと違って、どの魔法を使うと言われていない私は混乱しています。
「ゆんゆんさん。テレポートの準備です。パパ達は、ここであのデュラハンを倒すつもりはありません。と言うよりできません。準備が足りていないんです。もともと、ここに来た目的は異変の調査。目的を終えている以上離脱することが賢明です。」
いつの間にか、私の頭に移っていたユイちゃんが、キリトさんの意図を教えてくれました。
私は、慌てて詠唱を始めます。
「行くぞ。ベルディア。」
キリトさんがベルディアに向かっていきます。
いつもの様に剣が光ったと思ったら物凄い早さで突進していきます。
確かアレは...ソニックリープ。
ベルディアは反応できなかったのか、防御もできず攻撃に身体を晒しました。
「!?」
キリトさんは、直ぐにその場を離れます。
次いで、アスナさんのリニアーが炸裂しました...
でも...
アスナさんの細剣は、衝撃に耐えきれず、半ばまで折れてしまいました...
見ると、キリトさんの剣も刃こぼれしているようでした...
「見事な剣技だ。とても駆け出しの冒険者とは思えんな。だが...その武器では俺の身体にダメージを負わせるのは無理だな。精々、鎧に傷を付けるのが精一杯だ...」
今のキリトさん達の武器は、アクセルの街にやって来たときに買った安物の武器。
確かに、あの鎧にダメージを与えるのは難しい...。
「キリトさん、テレポートの詠唱は終わっています。撤退しましょう!」
私は、焦りから大声で叫んでから、しまったと思った。
ベルディアさんが、キリトさん達に攻撃を仕掛けていなかったのは、私の魔法を警戒してたのもあったはず
現に、ベルディアは目の色を変えて、体勢を変えた。
「ほぉ。逃げるのか?構わんぞ。だが、せっかく来たんだ。土産を持っていくがいい。」
ベルディアはそう言うと、持っていた大剣を掲げ、キリトさんに降り下ろした。
キリトさんは、その剣に反応し、自身の剣で防ごうとした。でも、ベルディアの大剣は、キリトさんの剣ごとキリトさんの身体を切り裂いた...
「ぐはっ!」
倒れるキリトさん...
「い、嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ...!」
「パパー!」
アスナさんとユイちゃんが悲鳴を挙げる。
アスナさんは、狂ったようにヒールをキリトさんに掛けるが効果が薄い。これはアンデッドによる呪いが発動している為か...
私は...呆然としていた。
嘘...キリトさんが...キリトさんがやられるなんて...
私たちが恐慌をきたす中、一人冷静なクリスさんが指示を出す。
「ゆんゆん、私がキリトとアスナを回収する。そしたらテレポートを使うんだ。良いね。」
私は、その言葉に反応出来なかった。
「ゆんゆん。キリトはまだ死んじゃいない。街に戻って、アクアさんに回復魔法を掛けて貰えば助けられる。今、キリトを救えるのは君だけなんだ。」
キリトさんを助ける...その言葉にようやく意識がはっきりする。
「クリスさん、お願いします!」
「帰るなら、街の連中に伝えて貰おうか。一週間後、もう一度アクセルの街に行ってやる。首を洗って待っているがいい。それと、サトウカズマ一行が逃げないようにしておけ?もしいなければ、街の連中は皆殺しにするとな。」
私は、ベルディアを睨みつけたあと頷くと、キリトさん達を回収したクリスさんを伴ってテレポートを行った。
ベルディアの未練は捏造です。
復活もね。