「大勢の出迎えご苦労。俺はデュラハンのベルディア。貴様らに間抜けな倒され方をしたベルディアだ。魔王様のお力で、貴様らに地獄を味あわせるため、こうして蘇ってきた。さあ、それでは始めようか。俺の復讐を!!!」
そう言って俺たちの方を睨むベルディア。
おかしい...あの時は街の皆、総出でベルディアを討伐したハズだ。
俺たちだけが睨まれる謂われははない。
そりゃあ、ダクネスは変態性を存分に発揮してたし、勝負を楽しもうとした動かないベルディアにすら攻撃を外すしで、ガッカリさせてた。
めぐみんは、言うまでもなく城に爆裂魔法を撃ち続けて嫌がらせしてたか...。
アクアもそれに付き合ってたんだよな。
俺は...ベルディアの頭をスティールしてサッカーしたっけ...
............。
うん。これは仕方ないか。そりゃあ怒るよね。コレ...
だが、黙ってやられる訳にはいかない。
先ずは、本当に水の弱点を克服したのか見極める。
『クリエイトウォーター!!』
俺の不意討ちによる、水魔法がベルディアに炸裂する。
以前のベルディアなら大袈裟に避けるそぶりを見せていたそれを、避けるどころか、動くそぶりも見せず、まともに食らうベルディア。
「ふん。バカめ。弱点をそのまま残していると思ったか?水への対策は万全だ。」
くっ、やっぱり対策してきてたのか...
んっ?今なんか引っ掛かる事を言ってたな。
水への対策は万全だ...
水への対策は万全...
「水」への対策は...
「アクア、浄化魔法だ。」
「わかったわ。セイクリッドターンアンデッド!」
「ひあああああああああっ!!!」
悲鳴を挙げて転がり回るベルディア。
やっぱり...
前回も、かなり効いてたもんなぁ。
「くっ、やはりあのアークプリーストは危険だ。アンデッドナイトども、あのアークプリーストを狙え!」
ベルディアが引き連れてきていたアンデッドに命令を下す。
「嫌ぁ。またこの展開ぃ~!」
アクアがまたアンデッドに追いかけ回される。
だが、今回もベルディアに対し、ダメージを最も与えられるのはアクアだ。
なんとかしないと...。
こうなったら前回と同じ作戦でめぐみんに...
「そう言えば頭のおかしいそこの魔法使い。確かめぐみんと言ったか。あの時は爆裂魔法を撃ったが、今回は撃たんのか?まあ、前回も俺に大したダメージは与えられなかったものな?」
マズイ。これはあからさまな挑発だ。俺たちにとって切り札と言って良い爆裂魔法を先に潰す気だ。
「乗るなめぐみん。ただの挑発だ!!」
大声で叫ぶが遅かった...
「良いでしょう、私とてあの時よりレベルも上がり、爆裂魔法の威力も上がっています。私の魔法が上か、貴方の耐久力が上か...勝負です!」
そう言って、爆裂魔法の詠唱に入るめぐみん。
俺の声は、華麗に無視された...
『エクスプロージョン!!!!』
爆裂魔法が、炸裂した。
大爆発がベルディアを中心に起こる...
「あぅ。」
魔力を使い果たし倒れるめぐみん。
あんなあからさまな挑発をしてきた位だ...きっと何かある...杞憂であってくれれば良いが...
煙が晴れると...そこには無傷のベルディアが立っていた。
「なっ!?」
無傷?
いくらなんでもそれは、おかしい。
あの機動要塞デストロイヤーをも破壊しためぐみんの爆裂魔法を受けて、耐えるどころか無傷なんてありえない。
こいつ...何しやがった。
「不思議そうだな。」
ベルディアが持つ頭がニヤリと笑った。
「種明かしをしてやろう。『インヴィジブル』と言うスキルを知っているか?日に一度、10秒間だけ無敵になれるというものなんだが...」
こいつ汚ねぇ。
「おい、ベルディア。いくらなんでも卑怯だろ。今のはめぐみんの魔法をお前が耐えるシーンだろ。それでも元騎士か。」
「『元』騎士だ。なんとでも言うが良い。貴様らを殲滅するのに騎士の矜持など邪魔なのでな。...どうせ俺を満足させられるヤツもおらん。さて、これで爆裂娘は無力化した。あのアークプリーストもアンデッドどもとの追いかけっこの真っ最中。さて、サトウカズマ。どうする?」
クソっ。策で完全に上を行かれた。
「待て、ベルディア。まだ私がいる。」
そう言って、前に出るダクネス。
「...お前の相手はせん。どうせ攻撃しても当たらんだろ。相手をするだけ無駄だ。」
ダクネスを無視するベルディア。
「ほ、放置プレイ。どうしよう、カズマ。あのデュラハン、いつの間にかそんな高等テクニックを身につけてる。前回は私を痛め付けるだけだったのに...」
嬉々として、ヨダレを垂らしながら俺に言ってくるダクネス。
お前は、いい加減時と場所を考えた発言をしろ。
「さて、これで終わるのもつまらんな。もう少し余興を楽しもうか。」
ベルディアがそう言うと、ベルディアの回りから大量のアンデッドが召喚される。
まだ戦力を残していたのか...
アンデッド達は散り散りになって、アクセルの街に侵入しようと試みる。
他の冒険者達が応戦するが、数が多い。
クソっ、どうすれば...
「ライトオブセイバー!」
俺が焦る中、アンデッドの群れの一角が吹き飛んだ。
あの魔法は、ゆんゆんか。
「ここは、誰も通さない。キリトさん達は、私が守る!」
「ベルディア。貴方に弱点が無いなら、物量で責めるだけ。見なさい、特訓で編み出した上級魔法の多重機動。その名も...」
『スペルオブボンバー!!』
炎が雷が氷が竜巻が...とにかくとんでもない数の魔法がベルディアに降り注ぐ...
アレ、範囲はともかく威力だけなら、めぐみんのエクスプロージョンに匹敵するんじゃ...
ベルディアは膝をついていたが、まだ戦えそうだ。
「くっ、やってくれるでは無いか。この間とは見違えたぞ...」
魔力を使い果たしたのか、ふらふらのゆんゆん。それでも倒れないゆんゆんに、ベルディアが話しかける。
「名を...聞いておこうか。」
「我が名はゆんゆん!...アークウィザードにして、上級魔法を操るもの。そして、キリトさんのパーティーメンバー!」
高らかに宣言するゆんゆん。
正直、少しカッコいい。
「そうか。ゆんゆんとやら。お前の強さに敬意を表し、騎士として止めをさしてやろう。」
ベルディアは大剣を構え、ゆんゆんに向かい歩き出す。
マズイ。ゆんゆんはもうふらふらだ。
「逃げろ、ゆんゆん!」
「逃げてください!」
焦る俺たち。
俺は、めぐみんを守る為に動けない。
他の冒険者もアンデッドの相手で精一杯。クソっ、どうすれば...
「さらばだ、ゆんゆん!」
ベルディアが大剣を降り下ろす。
「そうはさせんぞ。ベルディア、お前の相手はこの私だ。攻撃は当たらずとも、この身を盾に貴様の攻撃を受けてみせよう!」
ダクネスが間に入り、ベルディアの剣を止めた。
ナイスだ、ダクネス。
「邪魔だ。お前のような半人前に用はない。」
ベルディアはそう言うと大剣を横に凪いで、ダクネスを遠くへ吹き飛ばす。
な、ダクネスが一撃で...
もう、ゆんゆんとベルディアを隔てるものはいない。
「さて、仕切り直しだ。何か言っておくことはあるか?ゆんゆん。」
「...んは...私が...る。」
「キリトさんは、私が守る。」
瞳を紅く輝かせたゆんゆんがベルディアに殴りかかった。
無茶だ。いくらなんでも魔法使いがフルプレートの敵に殴りかかるなんて...
ゆんゆんの拳がベルディアに直撃する。
パンッと言う音が響き、そして...
ベルディアの鎧に亀裂が出来た...
「ば、バカな。貴様何をした!」
「私が特訓で編み出したもうひとつの技。自分の魔力を拳に宿して打ち付ける。『スペルナックル』よ。」
「だが、俺の鎧を殴った貴様の拳の骨もボロボロだろう。どうするつもりだ?」
「拳なら、もうひとつあるわ…!」
「くらえ。ベルディ...あっ」
倒れるゆんゆん。今度こそ魔力が切れたか。
「なんで、後ちょっとなのに...なんで倒れてるのよ、私は。」
悔し涙を流すゆんゆん。
「ふっ、本当に驚かせてくれる。だが...ここまでのようだな。何、ここまで手こずらせてくれた礼だ。痛みもなく送ってやる。」
「や、やめてぇぇぇ!!」
めぐみんが叫ぶ...
ベルディアの大剣が、ゆんゆんに突き刺さるその刹那...
二つの影が、ベルディアに向かい、ベルディアを吹き飛ばした。
「よく頑張ったなゆんゆん。あとは...俺たちに任せてくれ。」
そこに...二本の剣...一本は真っ黒な刀身。もう一本は水晶よように美しい刀身を持った黒ずくめの剣士と、一本の荘厳な細剣を持った白い女剣士が立っていた。