前回を飛ばした人のために、サチがこの世界に一足早く転生していて、なんやかんやあって仲間に。
そしてなんやかんやあって、魔王を倒した所から始まります(笑)
キリト視点
俺たちは、魔王を倒すことに成功した。
その戦いにおいて、カズマが犠牲になったが、カズマは魔王を倒した際の報酬...
『どんな願いも叶える』を使って再びこの世界に転生してきた。
今、俺の目の前ではカズマ達のパーティーが、カズマの復活と、アクアが戻ってきたことを喜び、抱き合っている。
魔王討伐によって、アクアが天界に戻ったと聞かされたときは、正直焦った。
めぐみんもダクネスも、カズマが二度と蘇生出来ないと知って、顔面を蒼白にしていた。
カズマもアクアも、ここに戻ってきてくれて本当にホッとした。
これで、全て終わった...そう思った時、辺りが突然光り出した。
その一瞬後に、虚空に一人の女性が現れる。
「皆さん。この度は、魔王を討伐していただき、本当に感謝しています。私はエリス。女神エリスです。」
その女性は、自らを女神エリスと名乗った。
アクアやカズマの方を見ると、二人とも頷いた。
つまり、この人?は本当に女神エリスなのだろう。
「本当なら、この戦いに参加した全員に、褒美を差し上げたい所なのですが、それは残念ながらできません。私から褒美を出せるのは、異世界からの転生者であり、最終的に魔王自身との戦いに参加しているものに限られています。本当にごめんなさい。」
そう言って、申し訳なさそうに謝るエリス様。
「構いません。僕はこの戦い...キリト達の足を引っ張っていました。僕のパーティーが力不足なばかりに、キリトのパーティーから回復役のサチさんを借りる事になってしまいましたし...なにより、アクア様の悲願を達成できただけで、僕は満足です。」
ミツルギは、笑いながらエリス様の言葉を受け入れた。
本当に良いヤツだと思う。
「私も、もう一度...生きるチャンスをこの世界で得られただけで満足です。」
サチも同意する。
サチは、本当に強くなったな。
SAOでの生き方を後悔したからこそ、この世界では後悔しない生き方をしようと頑張ってきたサチの表情は、自信に満ちている。
SAOの時とは別人の様だ。
この世界の元々の住人であるゆんゆん達も、エリス様を非難することはなく、皆しっかりと受け入れた。
その事を確認したエリス様は、微笑みながら感謝を伝えると、話を続ける。
「それでは、キリトさん。そしてアスナさん。あなた達に、魔王討伐の褒美を与えます。どんな願いでも、一つだけ叶えて差し上げましょう。」
俺は、その言葉に決戦前夜にアスナと話し合った事を思い出していた。
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ユイは、気を利かせてゆんゆんの部屋で寝ていて部屋には二人だけだ。
「アスナ。明日はいよいよ魔王との決戦だ。怖くないか?」
「怖くないよ。だってキリト君が一緒だもん。でも...絶対に死なないでね?キリト君。」
「ああ...わかってるさ。俺が死んだらアスナも死んじゃうからな。死なないよ...絶対に。それに...」
「うん。ユイちゃんを残していけないもんね。」
「ああ。だから、明日は絶対に勝つぞ。アスナ。」
「うん。」
そんな話をしていたとき、ふと思い出したことがあり、俺は、アスナに訊ねた。
「そう言えば、アスナ。覚えてるか?この世界に転生するとき、天使が言った言葉。」
「えっと、魔王を倒したら願い事を叶えてくれるって言ってた事?」
「ああ。アスナは願い事...決めてあるのか?」
その言葉に、アスナは少し困った顔をして、首を振った。
「ううん。全然。だって...私の願いって、もう叶ってるもの。キリト君と...ユイちゃんと一緒に暮らしていくって願い事。」
俺は、その言葉が嬉しくて仕方なかった。
「アスナ...」
その気持ちを少しでも伝えたくて、アスナを抱き締めた。
「キリト君は、願い事決めてあるの?」
そんな俺に、今度はアスナから訊ねてくる。
俺は...
「俺は、母さんや父さん、直葉、それにリズ達に会いたい...」
俺の言葉に、アスナは何故か不安そうな顔をした。
アスナは家族やリズ達に会いたくないのだろうか?
そう考えていると、アスナが不安そうな表情のまま口を開く。
「キリト君は、向こうの世界に帰りたいの?」
「帰りたいっていうか、皆に会いたいって事だけど...アスナは皆に会いたくないのか?」
「リズ達には会いたいよ?リズ達には酷いことしちゃったし。謝りたい。でも...」
そう言って、アスナは一度言葉を切った。
続いた言葉は否定だった。
「私の家族には会いたくない。あの人たち...ううん、母さんには絶対に。だからあの世界に帰るのは嫌なの。」
「アスナ...お母さんと何かあったのか?」
その質問に、アスナは重い口を開き話してくれた。
ユウキと出会う前の正月に、お見合いもどきをさせられていたこと。俺との交際を否定されていた事。学校の転校の話まで出ていたとの事だった。
何度、自分の思いを伝えても、アスナの母親...確か京子さんと言ったか...京子さんにアスナの思いは届かない。
母親に言いくるめられる自分の弱さを見て、俺に嫌われるかも知れないと、俺に相談も出来なかったそうだ。
流石にそれは、否定した。そんな事で俺は、アスナを嫌いになったりしないと。
「でも、キリト君いつも言ってくれてたよね。アスナは強いなって。キリト君が好きになってくれたのは、『結城明日奈』じゃなくて、『閃光のアスナ』でしょ?だから、怖くて...君に嫌われる事がなにより、怖かったの。」
俺は、その言葉に後悔した。
俺の言葉が、そんなにアスナを追い詰めているとは思っていなかった。
絶対に否定しなきゃならない。『閃光のアスナ』も『結城明日奈』も同じ存在だと、アスナに気付かせてあげなきゃいけない。
どうしたら良い...どうすれば...
ーキリト君...結婚したときに、相手の人の隠れた一面に気づいたとき、君ならどう思う?ー
ふと、そんな言葉が浮かんできた。アスナから聞かれた質問...アレはいつだったか...
俺は、どう答えたんだっけ...
ああ、そうだった。俺は...
「なあ、アスナ。ヨルコさんの事、覚えてるか?」
「え?」
突然の俺の言葉に戸惑うアスナ。何故ここでその名前が出てくるのか...戸惑いながらも答えるアスナ。
「もちろん覚えてるよ。私が、君に恋をしてるって自覚した日にあった事件で出会った人だもん。」
そう言えば、あの時か...。
アスナを昼寝に誘ったの。
「あの事件が解決した後、アスナが俺に聞いた事があっただろ?」
「えっと...あの時は、グリムロックさんが、奥さんの隠れた一面を見て...許せなくてグリセルダさんを...だからキリト君に、キリト君ならどうするか聞いたんだよね。相手の隠れた一面に気付いたとき、キリト君ならどうするか...。あっ!?」
そこまで言って、アスナは思い出したのだろう。
俺が言った言葉を。別にこの事を予想して答えた訳じゃない。なにせ、あの時は俺がアスナと付き合う事になるなんて、思ってなかったしな。
だからこそ、アスナに届く。
アスナは、涙を浮かべながら笑った。
「例え、アスナの弱い一面を見ても、俺はラッキーだったって思うよ。その一面も、きっと好きになるから...」
アスナは、俺の胸に顔を埋めて力一杯抱き締めてきた。
俺も、しっかりと受け止める。
「キリト君。私...キリト君を好きになって良かった。愛しています。これまでも。これからも。」
「俺もだよ。アスナ。」
それにしても、京子さんか...
話を聞く限り、京子さんがアスナの不幸を願っていたとは思えない。
ただ、京子さんはアスナ自身を見ていない。
自分の考えた幸せをアスナに押し付けていたんだろう。
それが、お互いをすれ違わせたんだろうな。
俺は、アスナを幸せにしたい。
だからこそ、出来るなら仲直りさせてやりたいな。
「決めたよ、アスナ。俺の願い。それは...」
俺は、自分の考えをアスナに伝えた。
そうだ、俺の願いは...
「エリス様。俺は、俺と、俺が認めた人を俺の世界に行き来させる事が出来る能力が欲しいです。」