私たちが、魔王を討伐してから一週間が経った。
エリス様からは、まだ連絡は来ていない。
でも、私たちもそれどころじゃなかったから、丁度良かったかもしれない。
まず、私たちの二つ名がグレードアップした。
キリト君は「黒の勇者」...
私は「閃光の姫騎士」...
ゆんゆんは「天魔の大魔導師」
サチは「救世の聖女」と呼ばれる様になっていた。
何故かカズマ達には二つ名は付いて来ないないんだよね。
カズマ達だって、魔王討伐に貢献したパーティーなのに。
キリト君とゆんゆん、サチはともかく、私は姫でも騎士でも無いんだけど...
私たちは、魔王を討伐したパーティーとして、各国から呼び出しを受けては晩餐会に出席させられていた。
正直、私としては遠慮したいところなんだよね。
そう言う所に出席すると、どうしても結城本家に顔を出す時を思い出して、嫌な気分になるし...
それに、そう言う場に出ると必ずと言って良いほど、求婚をしてくるお貴族様がいて、本当に勘弁して欲しい...
昨日なんて、王子様自ら、結婚を申し出てきて、ウンザリだった。
まあ、その度にキリト君が間に入ってくれて、
「アスナは俺のだ。」
って格好良く言ってくれるのを見れるのは嬉しいんだけど...
そう言うキリト君にも縁談の話が絶えない。
この国のお姫様のアイリス様も候補に挙がっているらしい。
でも、アイリス様はカズマに好意があるようだから、心配は無いと思う...
どの国も、魔王を討伐した私たちとの繋がりが欲しいんだろうってキリト君は言ってたけど、それでも良い気はしない。
今日は、流石にオフにしてもらっているから良いけど、明日からはまた予定がビッチリ入っている。
「ハァ...」
私は、今日何度目かのため息を着いた。
キリト君が苦笑している。
いけない。折角今日は一日オフにしてもらったんだから、今は気持ちを切り換えて楽しまないとね。
ちなみに、ゆんゆんは実家に戻っていて今はいない。
サチも、今日はレジスタンス活動をしていた仲間の所に行っていて、今日はいない。
今日は、私たち家族水入らずで過ごせる。
そう考えて、キリト君に話しかけようとすると、メールの通知音が鳴った。
この世界に来て、システムウインドウでメールのやり取りが出来るのはキリト君と私だけ。
キリト君は目の前にいるし、メールを出す必要はない。
一体どうなっているんだろう...
そう思いながらウインドウを操作すると、
エリス様からのメッセージだった。
アスナさんへ。
連絡が遅れてごめんなさい。貴方の願い事を叶える為に、一応貴方の希望したものの確認作業をしていました。
なにしろ、向こうの世界の物...それも現実世界にないものなので、こっちの世界で再現する前に、色々不具合が無いか検証する必要があったのです。
ですが、検証は全て終わりました。必要な機能も付与できましたので、貴方のアイテムウインドウに贈ります。
それにしても、このシステムウインドウって便利ですね。
この世界でも使える様にしたいです。
エリス様は、かなり慎重な方のようね。
これがアクアだったら、
「はい。用意したわよ。内装とかは適当に自分達で揃えてね。ところで土地とかどうするの?」
とか言って終わりそう...
.........この世界の担当女神がエリス様で良かったわ...
「アスナ?誰からのメールだった?」
「あ、うん。エリス様からだよ。ホームの用意が出来たって。」
「本当ですか?また、あの家にパパとママと暮らせるんですね。」
ユイちゃんが、真っ先に飛び付いてきた。
「そっか。そう言えば機能を追加するとか言ってたけど、その辺は書いてあるか?」
キリト君の言葉に、私はメールを読み進める。
ホームに関しては、ALOの方を再現することになるようだ。
内装も、そのままにしてあるとの事なので、家具に関しては当面買い揃える必要もないかな。
それから、追加した機能について、
1.トイレに関して。
そ、そうだった...そう言えば、VRだと排泄をする事が無いから、ホームにトイレは無いんだった...
エリス様、ありがとうございます。
2.お風呂について
この世界でも有数の温泉がある所から、一部空間を曲げて、ホームのお風呂に注がれるそうだ。
これで毎日が温泉三昧ですね...byエリス
お風呂好きの私としては嬉しい限りだ。
ありがとうございます。
3.破壊不能
これは、あれね。ALOの破壊不能オブジェクト機能をそのまま使ったって事だよね。
つまり、この家は誰にも壊せないし劣化もしない。
4.認証機能
これもALOにあるものだ。所有者以外の人間は、所有者が登録した人間、所有者が招いた人間以外はこの家に入ることは出来ないと言うもの。
防犯対策として、これ以上のものも無いだろう。
5.一番の目玉機能、ホーム収納。
私のアイテムウインドウに、ホームごと収納出来るように調整してくれたらしい。
......え?つまりこれってクエストとかで、遠出した時とかに、この家を出して泊まれるってこと?
とんでもなく豪華なテントになるって事だよね。
この家の機能かあれば、見張りもいらないし...。
うわぁ、旅事情が一変するなぁ。
まあ、家のパーティーにはテレポートが使えるゆんゆんがいるから、そうそう使う機会も無いかも知れないけど、次の街までまだ遠いって所で野宿する必要が無いし、お風呂に入れて、柔らかいベッドで眠れる。
本当にありがとうございます、エリス様。
ここまでの説明で、キリト君も唖然としていた。
「機能を追加するって言ってたけど、ALO の機能だけでも現実に再現すると、とんでもないな。正直、この家に逃げ込めばとりあえず、どんな危機もやり過ごせるってことだもんなぁ。これ、もう家って言うより、要塞...いや、神器だな。」
「もう、私たちの思い出の家なんだから、そんな身も蓋もない言い方しないでよね。」
「あ、ああ、悪い。」
キリト君を軽く嗜めつつ、メールの残りを見る。
「あれ?まだ機能があるみたい...」
私は、残りの文章を読んで、顔を真っ赤にして固まった...
「アスナ?どうかしたのか?」
不振に思ったキリト君が、私のメールを読もうとしたので、慌てて止めると、残りの機能を告げた。
「な、な、な、何でも無いよ?...6つ目は、拡張機能だって。家の大きさの三倍位まで中の空間を広げて部屋を追加出来るんだって。」
「へぇ、それは凄いな。」
キリト君は、多少怪しんでいたけど、なんとか話に食いついてくれた。
良かった...
これで、いつでも家族を増やせますよ。
頑張って下さいね。アスナさん。
...気を回しすぎです。エリス様。
でも...ありがとうございます。
私たちは、早速この家を出せるだけの広さの土地を購入した。資金は、魔王討伐で得た報酬で、正直使いきれない位あるから見晴らしのいい土地を一括購入した。
私は、キリト君を見る。キリト君も私を見て頷く。
私は、キリト君の手を握りながらシステムウインドウを操作し、ホームをオブジェクト化した。
一瞬辺りが光に包まれると、次の瞬間には私たちの思い出の、あの家がそこにあった。
思えば、この二年以上の間、この世界で得た資金で家を買おうとすれば、その機会は何度もあった。
最初はそれを、ホームを持つことを目標にしてた位だし。
それでも私は、いざその時になると、なんとなく乗り気になれず、結局今日まで宿暮らしだった。
その理由が、今はっきりわかった。
私は、無意識にこの家を求めていたんだ。
キリト君と結婚して暮らした二週間の思い出は、それだけ私にとって大きいものだった...。
「アスナ...」
キリト君の指が私の頬に触れる。
私は、いつの間にか泣いていたようだ。
「ママ...」
ユイちゃんも、人間形態をとって私を待っている。
私は、手の中にある鍵を使い、家の扉を開く。
そして、三人で手を繋いで同時に中に入った。
「「「ただいま。」」」
私たちは、帰ってきたのだ。私たちの家に。