「「「リンクスタート」」」
そう言って俺たちは戻ってきた。
再びあの世界へ...
目を開けた俺は、まだ家の中にいることに一瞬失敗したのかと思った。
「キリト君、外を見て。」
だが、アスナの声に窓の外を見ると、そこに慣れ親しんだアクセルの街並みは無く、思い出にあるアインクラッド二十二層の森と湖が広がっていた。
俺たちは、互いに身を寄せて、その景色を楽しんだ。
ああ、やっと帰ってこれたんだな...
まだ、現実世界に行けるようになった訳じゃない。
それでも、俺たちはこの世界に戻って来れたんだ。
「あ、キリト君。姿がスプリガンのアバターに変わってるよ?」
言われて、気づいた。
「アスナもウンディーネのアバターになってるな。この家もそうだけど、ALOの俺たちのアカウントをそのまま使えてるって事なのか?」
俺は今の状況について、ユイに探ってもらう事にした。
「えっと...ちょっと待ってくださいね。調べてみます。」
ユイの検索作業を待つこと数分...。
「間違いないです。これはALOでのパパとママのアカウントです。」
「やっぱりか。アスナ、ステータスとかはどうなってる?」
そう言って、俺も自分のステータスを確認する。
ん?ステータスは...俺の記憶と一致しないな。
と言うか、これって魔王を討伐したときの俺のステータスだよな。
職業ソードマスターってあるし、ALOに職業なんてなかったはず。
「アスナ?」
アスナを見ると、向こうも同じ状態のようだった。
「これって不正アクセス扱いで、マズイ事になるんじゃないか?」
俺は、冷や汗を書きながら呟く。
「いえ、それは大丈夫だと思います。パパ達のアバターは確かにパパ達本来のアカウントを使用していますが、ログイン状態は確認されていません。あくまで、そのアバターは異世界からのアクセスなので、システムが拾えていないんだと思います。ですから、例え不正を確認されても、パパ達を特定することはできません。簡単に言えば、このゲームが存在している限りにおいて、パパ達のデータに介入することはGMにも不可能でしょう。」
「そ、そうなのか。」
うーむ...いくらなんでもチート過ぎるな...
真剣にこのゲームをやっている皆に失礼だよなぁ。
とは言え、一週間に一日しかログイン出来ない俺たちは、この世界でのスキル上げもままならないから仕方ないのかも知れないけど...
「とりあえず、あまり目立たないようにしよう。いくらGMに特定されないって言っても、噂が立つといろいろ動きにくくなるし、この世界に存在しないスキルは、なるべく使わないようにしよう。」
二刀流スキルを見ながら、アスナ達にも同意を求める。
「わかったよ。」
「はい、パパ。」
二人の同意を得て、改めてシステムウィンドウを操作する。
アイテムは...装備してたエリュシデータとダークリパルサー、それにコートオブミッドナイトだけしかない。
やっぱり、エクスキャリバーは無いかぁ。
とりあえず、コートと二本の剣を装備する。
アスナも血盟騎士団の服とランベントライトを装備した。
「アスナ。フレンドリストはどうなってる?」
そう言いながら、自分のリストを確認したが、そこにはアスナしか登録されていなかった。
アスナを見たが、首を横に振る。
そうか...フレンドはリセットされているんだな。
「フレンドリストが残ってればメールを送ることもできたんだけどな。」
「うん。でも死んだはずの人物からメールが来ても気味が悪がられてスルーされちゃうんじゃないかな?」
「あ...それもそうだな。」
そうだった。この世界に来ることばかりに考えが行ってたけど、俺もアスナも、この世界じゃ死んだはずの人間だ。例え会っても、信じてもらえるかどうか...
「今、考えても仕方ないよ。とりあえず、今はここへ戻って来れた事を喜ぼうよ。」
アスナの言葉に思考を切り替えた俺は、
「そうだな...よし、とりあえず外に出るか。久しぶりに二十二層を見て回ろう。」
そう言って、外へ行くことを提案した。
その提案に、アスナも同意するが、
「あ、それならお弁当持ってピクニックしよう...と思ったけど、お金もアイテムも無いんじゃ、お弁当作れないや...」
あからさまにガッカリするアスナ。
「少し回ったらモンスター狩りでもするか。時間制限があるからできる範囲でだけど。」
そう言ってアスナを慰める。
「そうだね。」
アスナの返事を受け改めて告げる。
「よし、じゃあ出発しよう。」
懐かしい22層の景色は、俺たちの思い出と変わらずそこにあった。
魚釣りをした湖も、アスナと散歩した道も、そしてユイと出会った森も。
俺たちは思い出話に花を咲かせた。
一通り散歩を楽しんだ俺たちは、モンスター狩りにアインクラッドを出て、久しぶりの空中散歩を楽しみながら、モンスターがPOPする場所を目指した。
その久しぶりの感覚に、気分が高揚した俺は、アスナに勝負を持ち掛ける。
「なあ、アスナ。久しぶりに空を飛ぶんだし、折角だから競争しようか。ゴールはあの遠くにある岩山な。」
「え?そんなのキリト君に勝てるわけないよ。キリト君と勝負になるのなんてリーファちゃん位なんだから。」
「まあ、そう言うなって。遊びだよ、遊び。それじゃ行くぞ。よーいドン。」
そう言って、アスナの返事も聞かずに俺は飛び出した。
「あ~、ちょっとキリト君ずるいよー。」
後ろでアスナが抗議の声を挙げる。
「ハハハ。早く来ないと置いてくぞ~。」
その声を聞きながらも、俺はスピードを上げていった。
「パパ。今のは流石にズルいと思いますよ。後で、ママに謝ってください。」
ポケットからユイも抗議してきた。
「はい。ごめんなさい。」
愛娘の説教に、意気消沈する。
ゴールまでもう少しと言うところで、ユイが何かに気付き、声をかけてきた。
「パパ。向こうを見てください。プレイヤー同士が争っているようです。」
言われた方向を見ると、女性プレイヤーの二人組がサラマンダーの男性プレイヤー10名位の集団に囲まれていた。
「プレイヤー狩りか?でも、あの女性プレイヤーの装備を見る限り、まだ初心者みたいだけど...まさか初心者狩りか?」
いや、女性プレイヤーを襲ってる所を見ると、もっと悪質なことをしようとしてる可能性もあるな。
脅してリアルの情報を聞き出すとか、マヒ毒を使って、R指定のような事をしようとしてるとか。
どうせ、ろくなことじゃ無さそうだ。
そう考えた俺は腹を決めた。
「ユイ。助けに行くぞ。」
「パパならそう言うと思ってました。」
そう言って微笑むユイに一つ頷くと、俺はプレイヤー同士が争っている現場に猛スピードで突っ込んでいった。
ドーンと言う大きな音と共に、俺はその場に乱入した。
結論から言うと着地に失敗したのだが...
久しぶりの飛行だったのを忘れて全力飛行してしまい、勢い殺せず突っ込み過ぎたのだ。
「っててててて。うーん、失敗、失敗。」
愛想笑いを浮かべてお茶を濁そうとしたが、周りの人たちは俺の突然の乱入に驚き固まっていた。
仕方ない。このまま進めようか。
「やあ、サラマンダーの人たち。男が大勢で二人の女の子を襲うなんて、ちょっと格好悪いんじゃないか?」
「うるさい。突然乱入してきやがって。何様だ、てめぇ。」
サラマンダーの一人が激昂して剣を片手に突っ込んで来る。
俺は、エリュシデータを抜くと男の剣をいなして、一刀のもとに切り伏せる。
そいつはあっさりHPバーをゼロにして、命の残り火となった。もうしばらくすると、そのまま死亡となりデスペナルティを受ける事となる。
「あんたらじゃ、俺には勝てないよ。今すぐ解散するなら良し。そうでないなら...全員切り伏せさせてもらうぜ?」
俺は、そう言って男達を威嚇した。
目立たずに行動するとは一体...