「あの...もしよろしければ、私たちに指導してもらえませんか?」
私は、二人にお願いをした。
正直、自分でもびっくりする行動だと思う。
ゲームの中とはいえ、初対面の人にこんなこと頼むなんてね。
それも、さっきあんなことがあったばかりなのだ。
普通なら、身内以外信用しないか、このゲームをやめるか。
そんな選択肢になると思う。
でも、私はこの世界が好きだった。このゲームを辞めたいとは思えない。
それに...キリトさんの事ももっと知りたいと思ってたし。
そんな私の考えもあって、頼んだのだけれど、キリトさんは困った顔をして答えた。
「うーん...俺たちは事情があって週に一度しかログインできないんだ。だからあまり、初心者を指導するのには向いてないんだよ。君たちは同じシルフみたいだし、シルフ領でベテランプレイヤーを捕まえて指導をお願いした方が良いと思うよ?」
「で、でも、キリトさんたちはアレだけ強いんだし、トッププレイヤーなんですよね。そんな人たちに教えてもらう機会なんてそう無いと思いますし。」
リリーの援護が入る。
うん、まあリリーも多分私と同じ理由なんだろうなぁ...
「ハァ...キリト君...二人が週一でも良いって言ってるんだから、良いじゃない。」
ため息を付きながらも、アスナさんがキリトさんを取りなしてくれる。
「いや、けどなぁ...」
「どうせ、来週にはゆんゆん達も戻ってくるし、きっと二人もやるって言うわよ。そしたら二人にも指導しなきゃならないんだし、その時に一緒にやれば良いでしょ?それに...」
そこで、一旦止めたアスナさん...次には笑顔で、
「こうなったのはキリト君のせいだからね。少し位付き合って上げなさい。」
そう言ってくれた。
...あの...アスナさん...取りなしてくれるのはありがたいのですが...目が笑っていないんですけど...
「いや、俺のせいって...俺はただ、あいつらから助けただけで他は何も...」
「キリト君?」
「いえ、なんでもないです。」
キリトさんはアスナさんには逆らえないようです。
「と、言うことだから二人とも、来週の日曜日、10時にここに集合で良いかな?」
「「サー、イエッサー」」
私たちの心は一つだ...
私たちは、キリトさんたちとお互いに自己紹介したあと、フレンド登録を済ませて解散となった。
自己紹介の時に、キリトさんのプライベートピクシーを紹介されたときは、びっくりしたなぁ。
受け答えも自然だし、感情表現も豊かで、まるで本当に生きているみたいだった。
ユイちゃんがキリトさん達をパパ、ママと読んだ時の衝撃はもっと驚いたけど...
もしかして、二人は恋人を通り越して結婚してるんだろうか?
こっそり、後ろを覗くとキリトさんが正座をさせられてアスナさんに説教を受けていた。
なんだか、一級フラグ建築士とか言う単語が出てきてたけど、なんの事だろう?
とにかく、これで来週もキリトさんに会える。
ああ、早く来週にならないかなぁ...
そして、約束の日...
私たちは集合時間より前に集まってキリトさん達を待った。
ただ指導を受けるだけなのも申し訳ないので、この日までに出来るだけレベルも上げたし、魔法も少しは使えるようになった。
まだ、補助コントローラー無しでの飛行は上手く出来ないけど、戦闘はそこそここなせるようになったと思う。
リリーと他愛ない会話をしながらキリトさん達を待っていると、キリトさんたちが空からやって来た。
アレ?なんだか人数が多いような...
そう言えば、他にも教える人がいるって言ってたっけ。
キリトさんとアスナさんは、残りの二人のスピードに合わせてゆっくり近づいてきた。
「やあ、セシルにリリー。待たせたかな?」
「いえ、大丈夫です。それよりそちらの二人は?」
私は、キリトさんが連れてきた残りの二名(女性)が気になって紹介を促した。
「ああ、二人は他のVRゲームからコンバートしてきたプレイヤーでサチとゆんゆんだ。二人もこのゲームは初めてなんで一緒に教えようと思ってな。迷惑だったかな?」
「いえ、私たちも教えてもらう立場ですし、迷惑なんて事は無いですよ。」
「そうか。よかったよ。」
そう言ってニッコリ笑うキリトさんに、私もリリーも心を撃ち抜かれた。
しばらくポーっとしていたと思う。
そこに、今日初めて会う、確かサチと呼ばれた女性が苦笑しながら声をかけてきた。
「はじめまして。セシル、リリー。私は、サチ。種族はケットシーだよ?前の所ではヒーラーをやっていたんだけど、ウンディーネはアスナさんがいるしね。折角だから別の事をやってみようかと思ってね。宜しく。」
「はい。宜しくお願いします。」
「私は、ゆんゆんです。種族はお二人と同じシルフを選択しました。空を飛ぶのに憧れていまして。夢が叶って感動しています。宜しくお願いします。」
「宜しくお願いします。ゆんゆんさん...ってどうしたんですか?」
ゆんゆんさんは泣いていた。そこまで感動したのかぁ。
感受性の高い人なんだなぁ。
(今の私は、紅魔族では無くシルフ。つまり掟もない。普通に自己紹介が出来る日が来るなんて...それに、私の名前もここでは目立たない。あぁ、ゲームって良いなぁ。)
「こ、この子の事は置いておこうか。次は二人が自己紹介してくれるか?」
キリトさんが促しました。
私たちは互いに自己紹介を済ませると、いよいよキリトさんたちの指導が始まります。
最初は、補助コントローラー無しでの随意飛行を練習するように言われた。
このALOでは飛行しながらの戦闘も、当たり前に行われていて、その時にコントローラーで片手が塞がってしまうのは致命的なのだそうだ。
最初に出来るようになったのはサチさんだった。
悔しいなぁ。サチさんはコンバートしたてで、今日が初めての飛行なのにあっという間に飛行出来るようになっていた。
次は、私、その次にリリーが飛べるようになった。
ゆんゆんさんは、なかなか上手く行かず、キリトさんがマンツーマンで指導した。
ゆんゆんさんの手を引っ張って飛行するキリトさんを見て、最初こそ羨ましいと思ったけど、だんだんスピードが上がっていって、とんでもないスピードで飛行を始めるキリトさん。
なに...あれ。スプリガンってあんなに早く飛べるの?
飛行はシルフの方が得意って聞いてたんだけど...
半泣きで絶叫するゆんゆんさんを見て、考えを改めた。
アレは恐ろしい。自分で飛べるようになって本当に良かった。
結局、そのスピードでの飛行を体験してコツを掴んだのか、ゆんゆんさんも最後は随意飛行が出来るようになっていた。
そこで、その日は終わり。
二回目の指導は、アスナさんとユイちゃんを中心に魔法の勉強会となった。
ガリ勉女子の私としては、全く苦にならなかったんだけど、リリーとキリトさんが音を挙げていた。
まさか、キリトさんも魔法が苦手だとは思わなかったな。
この授業で一番適性があったのはゆんゆんさん。次いで私、サチさん。
リリーとキリトさんは同着のビリね...
三回目は剣の指導。
キリトさんとアスナさんが中心で行いました。
これは以外にもリリーが適性があったみたい。
流石に、キリトさんやアスナさんと比べるのは問題外だけど、経験者だと言っていたサチさんには一歩譲るが、それでも何とか付いていけるようになっていたのだから驚きだ。
最後にソードスキルの基本技をいくつか教わり、解散となった。
次は、また一週間後。
次回はソードスキルのおさらいと、キリトさんたちのデュエルを見せてくれるそうだ。
楽しみだ。
それまでに、しっかり復習しておかないとなぁ。
私たちは、次の日練習が終わるとシルフ領にある食事処で話をしていた。
「ああ、早く日曜日にならないかなぁ。」
「そうだねー。私、教えてもらったソードスキルはもう完璧に使いこなせるようになったんだ。見てもらわないとねえ。」
くっ。リリーめ...羨ましい。
「いいなぁ。私は『バーチカル・アーク』がまだ上手く出来ないんだよねぇ。」
私だって練習してるんたけど...
「それにしても...キリトさん達...もう少し時間取れればいいんだけどな。」
「仕方ないでしょう。キリトさんもアスナさんも、事情があって週一でしかログイン出来ないって言ってたじゃない。」
「だってー。キリトさんに会いたいんだもん...」
私たちが、そんな会話をしていると、突然声をかけて来た人がいた。
その人は、キリトさんのように、全身を黒い装束で身を包んだ、正直シルフには見えないような女性だった。
「ねえ、貴方たち。今の話に出てきた『キリト』と『アスナ』って人について教えてもらえない?」
突然、話しかけられてビックリしてしまった私たち。
「えっと、貴方は?」
なんとか気を取り直して、その人物に私は、聞いた。
「そう言えば、自己紹介してなかったね。私は、リーファ。『黒の絶剣士』とも呼ばれてるわ。宜しくね。」
その女性は、そう名乗ったのだった。
リーファ登場。
黒の絶剣士については、マザロザifの外伝2 ユウキを読んで下さい。