この素晴らしいキリアスに祝福を!完結   作:アーク1

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リーファ視点


再会の兄妹

お兄ちゃんが亡くなって、もう2年半が経った。

 

あの後私は、『黒の剣士』の名前だけでも残したいと、『絶剣』のユウキに弟子入りして、その技を受け継ぎ、今では二人の名前を合わせた『黒の絶剣士』として、このALOにおいて最強のプレイヤーとして名を馳せている。

 

容姿も、黒の絶剣士を広めるため、黒の装束に身を包み、シルフ特有の緑がかった金髪を隠すため、黒のターバンを頭に巻いている。

 

デュエル統一トーナメントでは2年連続の優勝を果たして殿堂入りをし、ユウキにならって辻デュエルをしては連勝を続けていった。

 

でも...黒の絶剣士の名前が広まれば広まるほど、私のこのゲームへの関心は薄くなっていった。

 

理由は、わかっている。私にとって、このゲームはもはや娯楽ではなく、お兄ちゃんが生きていた証を残すと言う使命感でプレイしているからだ。

 

娯楽で無くなったゲームを、目的が達成した後も続けるのは難しいだろうと思う。

 

それ以外にも、リズさんたちがあまりログインしていないのも大きい。

 

もともと、リズさんやシリカはお兄ちゃんやアスナさんがこのゲームをやっていたからこそ、一緒にプレイしていたんだと思う。

 

その中心の二人がいない今のALOに、魅力を感じないのだろう。

 

それでも、私を心配して時々でもログインしてくれるのは、私にとってとても嬉しい事だった。

 

シノンさんは、GGOの方をメインに相変わらず活動している。

 

シノンさんは、リズさんたちよりは多くこちらにも来てくれていて、たまに高難度のクエストを一緒に行ったりしている。

 

クラインさんは、しばらく落ち込んでいたけれど、いつの間にか吹っ切ったようで、風林火山のグループを率いて、今も精力的に活動している。

 

時々、クエストにも誘われるけど、正直サラマンダーの種族の人と私が一緒に行動するのは、いまのALOでは好ましいとは言えないので遠慮させてもらっている。

 

と言うのも、お兄ちゃんが亡くなって以来、各種族関係なく対等に話していたお兄ちゃんの勢力がいなくなり、昔ほどでは無いにしろ種族間の関係が悪化しているのだ。

 

特に、サラマンダーはその種族特性上、粗暴なプレイヤーが多く、時に犯罪まがいの行いをするものまでいることから嫌っているものが多い。

 

そんなサラマンダーの種族のクラインさんと、最強のプレイヤーたる私が一緒に行動するのは、周りの目を考えれば良いこととは言えないのだ。

 

エギルさんは、相変わらずマイペースにログインしてる。

たまに、奥さんと一緒にログインしたりしているらしい。

 

 

今日も、挑戦者を10人抜きして終わらせシルフ領に戻ってきた。

 

ホームに入ると、ベッドに横たわりため息をつく。

 

「ハァ...疲れたな。私、なんのためにALOに残ってるんだろ...」

 

もう良いよね...お兄ちゃん。

私、十分頑張ったよね...

 

今度、行われる小規模のデュエル大会を終えたら引退しよう...

 

そう考えて、その日はログアウトした。

 

そして、大会当日...小規模とあってか、大したプレイヤーはおらずあっさり優勝を決めた私は、その場を後にしようとした。

 

その時に、ある噂を聞いてしまった。

 

それは、黒の絶剣士の弟子がサラマンダーのプレイヤーのグループをあっという間に倒したと言うものだった。

 

騙りか...と思いつつも、

 

詳しく聞くと、どうもそのサラマンダー達は、中堅プレイヤーで初心者の女の子にセクハラまがいの事をする悪質な連中なのだそうだ。

 

今回もシルフの女の子の二人組を狙っていたようだが、どこからか現れた黒ずくめのスプリガンの男性プレイヤーに全員一刀のもとに切り伏せられたのだそうだ。

 

話を聞く限り、良い人みたいだし放置しても構わないかもと思ったが、そのプレイヤーの名前を聞いて思い直した。

 

『キリト』...そう名乗ったそうだ。

そのスプリガンは...。

 

...ふざけるな。その名前は...

私...いや...私たちにとって、特別な名前なのだ。

 

そいつは黒の絶剣士の弟子を名乗っているんじゃない。

『黒の剣士キリト』の真似をしているニセモノなのだ。

 

私は、犯罪まがいの行いをしたサラマンダーの連中より、この『ニセキリト』に怒りを感じた。

 

許せない。許しちゃいけない。

 

今日で引退するつもりだったけど、取り止めだ。

 

このニセキリトを叩き潰す。

 

私は、それからと言うものこのニセキリトについて情報収集を行っていた。

 

でも、全く話に上がってこない。

 

おかしい。サラマンダーの連中を一蹴出来るほどのトッププレイヤーなら、もっと話題になっても良いはずだし、何よりわざわざ黒の剣士の真似事をしているのだから、自己主張にしろ、なにか目的があるにしろ、もっと目立った行動をとっても良いハズだ。

 

当初の目論見では簡単に見つかるだろうと思っていたが、全く情報が掴めなかった。

 

それから一月近く経ったころ...

 

「ハァ...今日も空振りかぁ。ニセキリトは一体どこにいるんだろう?もしかして、噂が間違ってた...なんて事は無いよね...」

 

疲れが溜まっていた私は、シルフ領に戻り休憩も兼ねてシルフ領の飲食店を訪れた。

 

そこで、初心者らしい装備の女性プレイヤーが二人で会話をしていた。

 

何気なく聞いていると、信じられない話をしていた。

 

「ああ、早く日曜日にならないかなぁ。」

 

「そうだねー。私、教えてもらったソードスキルはもう完璧に使いこなせるようになったんだ。見てもらわないとね。」

 

「いいなぁ。私は、『バーチカルスクエア』がまだ上手く出来ないんだよねぇ。」

 

へぇ、ソードスキルを教わってるのかぁ。

 

あれを教えるのって結構難しいんだよね。

体感的なものだから。

 

「それにしても...キリトさん達...もう少し時間取れればいいんだけどな。」

 

はっ?今、キリトって言わなかった?

 

「仕方ないでしょう。キリトさんもアスナさんも、事情があって週1でしかログイン出来ないって言ってたじゃない。」

 

えっ?お兄ちゃんのニセモノだけじゃなくてアスナさんのニセモノもいるの?

 

その人たち、本当に何が目的なの???

 

「だってー。キリトさんに会いたいんだもん...」

 

動揺してる場合じゃないよね。

 

とにかく折角見つけた手掛かり。

逃す訳には行かない。

 

私は、二人に近づくと声をかけた。

 

「ねえ、貴方たち。今の話に出てきた『キリト』と『アスナ』って人について教えてもらえない?」

 

突然、話しかけられて二人はビックリして固まっていたが、一人が意を決して尋ねてくる。

 

「えっと、貴方は?」

 

「そう言えば、自己紹介してなかったわね。私は、リーファ。『黒の絶剣士』とも呼ばれてるわ。宜しくね。」

 

「え?黒の絶剣士って...」

 

「ALO最強って噂の黒の絶剣士ですか?お会い出来て光栄です。私はセシルって言います。」

 

「私はリリーです。」

 

私が自己紹介をすると、二人は直ぐに思い至ったのか、笑顔で挨拶してくる。

 

「宜しく、セシル。リリー。それでさっきの話なんだけど...」

 

セシル達の話は、私の聞いた内容とだいたい変わらなかった。

 

と言うより、どうも助けられた当事者だったようで、詳しく教えてくれた。

 

まさか、アスナさんのニセモノまでいるとは思わなかった。

 

そこまで徹底して、この人物たちは何がしたいのだろう?

 

話を聞く限り、どうしても名前を騙るような人物に見えない。

 

初心者を助けて、頼まれて指導までしているらしい。

 

そんな、いい人を演じるなら、人の名前を騙る必要はないだろう。

 

やはり、私の目で確認する必要がある。

セシル達は、毎週日曜日に指導を受けているようなので、同伴させてもらうことにした。

 

そして、その日はやって来た。

 

待ち合わせの場所へ行くと、既にその人物たちは到着していた。

 

私の知らない人が二人。

セシルたちが、言っていたコンバート組だろう。

 

そして...残りの二人を見たとき...私の中で、何かが切れた。

 

その二人は、あまりにもソックリだった。

容姿だけじゃない。雰囲気も...何もかも。

 

まるで、私の大切な人たちとの思い出を踏みにじられている気分だった。

 

気が付いた時、私はニセキリトに向かって飛び出し、斬りかかっていた。

 

「キリト君、危ない!」

 

私の突進に気づいたニセアスナが叫ぶ。

 

構うものか...これで、このニセモノは終わりだ...そう思えるほど、その一撃には力を込めていた。

 

しかし...

 

「なっ!?」

 

「いきなり、斬りかかるなんて、失礼な人だな。」

 

その一撃は、ほとんど不意を突いていたにも関わらず、ニセキリトがいつの間にか抜いていた黒い刀身の片手剣によって止められていた。

 

私は、驚きつつも、言い返す。

 

「ニセモノに言われたくは無いわ。」

 

「ニセモノ?」

 

ニセキリトは、言われている意味がわからないかのように首をかしげた。

 

そこまで、徹底して演技を続けるのか...

 

私は怒りに身を任せ、剣を振り回す。

 

「くっ...」

 

私の怒涛の攻撃に防戦していたニセキリトは、私の一瞬の隙を突いて反撃をしてきた。

 

なんとか、避ける事が出来たその攻撃は、私の頭に巻いていたターバンを掠めた。

 

...私は、その攻撃に冷や汗を掻いた。

 

強い...

 

噂の話だけでも、このニセキリトがかなりの強さなのは想像していた。

 

それでも、ここまでの強さは想定していなかった。

 

ユージーン将軍にも、戦績で勝ち越している今の私と互角?

 

もしかしたら、それ以上かもしれない...

 

まるで、本物のお兄ちゃんを相手にしているようだ。

 

闇雲に攻撃をしても、当たる気がしない。

 

もっと、戦略を練らないと...

 

私は冷静さを取り戻し、仕切り直して相手の隙を伺った。

 

すると、ニセキリトは驚愕の表情を浮かべていた。

 

何をそんなに驚いているのか...

 

そう考えていると...私の頭に巻いていたターバンが先程の攻撃で斬り裂かれたようで、下に落ちているのが見えた。

 

私の素顔に驚いたのか?

何故?

 

その時、ニセキリトが私に向かって、掠れた声で言葉を発した...

 

「リーファ?...スグ...直葉なのか?」

 

え?

 

この男は、今、なんと言ったのか?

 

「リーファ」が「キリト」の妹なのは、ALOでは割りと有名な話だ。

 

レコンのアホが言いふらしていたから...

 

でも、リーファ=直葉と知っている人間は限られている。

 

そして、私をスグと呼ぶ人物は...

そんな人間は、一人しかいない...

 

「お、お兄ちゃん?」

 

私は、その日、二度と会えるハズのない人物と再会を果たすのだった...

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