この素晴らしいキリアスに祝福を!完結   作:アーク1

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リーファ視点


対決! 黒の剣士VS黒の絶剣士!

「お、お兄ちゃん...なの?」

 

私は、目の前のプレイヤーに、絶対にあり得ない人物の名前で呼び掛けた...

 

ほとんど、無意識に近い呟きにも似た呼び掛けだったと思う。

 

「ああ...俺だよ。和人だ。スグ...わかるか?」

 

「ウソ...そんなのウソだよ。だって...お兄ちゃんは...もう...貴方がお兄ちゃんであるハズがない...」

 

自分で呼び掛けておきながら、私は彼を否定した。

 

そうだ...『桐ヶ谷和人』は死んだ。

 

だから、目の前のプレイヤーが『キリト』であるハズがない。

 

自分の中の、現実的な思考は彼を否定している。

でも、感覚的な思考が彼をキリトと認めていた。

 

でも、それを認める訳には行かない。

 

もし、それで...やはり騙していたとわかったら...

そうなったら...私は、もう立ち直れないだろう...

 

その恐怖が、彼をキリトとして認める事を拒んでいるのだ。

 

「そう...だよな...信じられるハズ無いよな...」

 

その人は、とても悲しそうな表情で私の言葉を肯定すると続けて、

 

「悪かった。もう二度と...君の前に姿を見せないと誓うよ。」

 

そう言った。

 

そんな...この人をキリトと認めるのも怖いけど、このままお別れなのも嫌だ...

 

どうしたら良いの?

私は、どうしたいの?

 

「それじゃあ、リーファ。俺たちはもう行くよ。」

 

「キリト君、良いの?」

「良いんだ...」

 

キリト君は、結論を出して、ここを去ろうとした。

アスナさんは、そんなキリト君を気遣いながらも、キリト君に従う。

 

残りの二人も一緒だ。

 

ああ...キリト君とアスナさんが...

二人が行ってしまう...

 

「待って...」

 

気が付くと、私は二人を呼び止めていた。

 

もう、考えるのは止めよう。

自分の心のままに、言葉を紡ぐのだ。

 

「ねえ、キリト君。私とデュエルしよう。」

 

そう、私が彼をキリトと認識した最大の理由は、彼の強さ。

 

だったら、彼と戦い...自分を納得させる。

 

きっと、この人が本当にお兄ちゃんなのか、私には結論を出せない。

 

でも、キリト君なら、この戦いで私を納得させてくれる...

 

そう信じる...。

 

「貴方が本当に本物のキリト君なのか、私にはわからない。だから、このデュエルで証明してみせて。貴方が本当に『黒の剣士』キリトだと。本気の力で...」

 

キリト君は、一度目を瞑る。

そして、目を開くと、ニヤリと笑って

 

「わかった。」

 

「キリト君。ダメだよ。そんなの。」

 

アスナさんが、止めようとする。

 

「ママ。ここは二人を信じましょう。」

 

なんだ...ユイちゃんも、一緒にいたんだね。

 

キリト君は、システムウィンドウを操作する。

その次の瞬間、彼の背にもう一本の剣が現れた。

 

エクスキャリバーでは無いが、そのもう一本の剣も、かなりの力を持っているように感じた。

 

そう、黒の剣士の本気の戦闘モード。

彼の代名詞とも呼べる二刀流。

 

このALOでは、未だに実装こそされないスキルだが、お兄ちゃんは試行錯誤の末、システムに頼らずに二刀流のソードスキルを再現する事に成功していたし、システム外スキルのスキルコネクトなんてものまで開発していた。

 

私は、二本の剣を背負った彼を見て思った。

 

本気のキリト君と戦える。

 

今の私が、どこまで強くなれたのか...

見てもらうんだ、彼に。

 

私は、自分の剣を抜くと中段に構えた。

彼も二本の剣を抜き放ち、構える。

 

ワクワクする。こんな気持ちになるのは、本当に久しぶりだ。

 

思えば、この二年半の間...ただただ最強の称号を得るために義務感から戦い続けていた。

 

そこに、楽しいなんて感情は何一つ感じなかった。

 

「リーファとこうして真剣に戦うのは、アスナを助けるためにログインして、グランドクエストに挑む前の...あの時以来だな...」

 

「そうだね。あの時は、中断しちゃったけど、今回は...最後まで行くよ?」

 

「ああ。本気で行くぞ?スグ?」

 

「私も、本気で行くよ?お兄ちゃん。」

 

もう、わかっていた。この人はお兄ちゃんだ。

理屈なんてわからないけど、目の前のこの人はお兄ちゃん。

 

でも、けじめは必要だ...

だから、全力で戦う。

 

私は、正面から突っ込んだ。

 

キリト君が恐るべき反応速度で迎撃する。

 

キリト君は、二本の剣を巧みに使い、私の剣をことごとく弾いた。

 

くっ...なんて強いの?

二年以上もブランクがあるハズなのに...

 

でも、私だってこの二年半の間、ずっと強くなるために戦ってきたのだ。

 

簡単に、負けるものか...

 

攻防を繰り返す私たち。

 

「強いな。スグ。」

「お兄ちゃんもね。」

 

いつまでも、こうしてお兄ちゃんと戦っていたい。

そんな気分だった。でも...終わらせないとね...

 

「そろそろ決着をつけようか。スグ。」

「そうだね。」

 

お兄ちゃんが、構え直す。

 

私にも、切り札がある。

 

『絶剣』のユウキから受け継いだ、最強のソードスキル...

 

あれから二年以上経つが、未だにこれを超えるオリジナルソードスキルを開発したプレイヤーは現れていない。

 

マザーズロザリオ...

 

「ハアアアアアアアアッ!!!!」

 

総数11回にも上る剣戟がお兄ちゃんを襲う。

 

これを防ぐのは、どんな人間にも不可能だ。

 

そう、確信していた...

 

でも、その全ての斬撃は、彼の持った二本の剣により打ち落とされた...

 

「そんな...」

 

「今度はこっちの番だ。いくぜ...リーファ。『スターバースト・ストリーム』」

 

スターバースト・ストリーム...以前お兄ちゃんが練習していたのを見たことがある。

 

二本の剣による16連撃。

 

でも、これはシステムによりちゃんとアシストされている。

 

いつの間に、二刀流は実装されたのだろうか...

 

考えている時間はない。

お兄ちゃんは、私の『マザーズロザリオ』を防いだのだ。私だって、この技を防いで見せる。

 

「くっ」

 

予想以上に、速くて重い...

 

私は、十撃目の攻撃を防いだ時に剣を弾かれて、その攻撃を身体に受ける。

 

私の...負けだね...

 

気が付くと、私は大地に横たわっていた。

 

アスナさんが蘇生魔法をかけてくれたようだ。

 

「大丈夫か?スグ。」

 

お兄ちゃんが、心配そうな顔で私を覗きこんでいる。

 

「大丈夫だよ。」

 

私は、立ち上がると改めてその顔を見つめた。

 

そして...

 

「お兄ちゃん...なんだね?本当に...」

 

「あぁ。そうだよ。...スグ。信じてもらえないかもしれないけど...」

 

「信じるよ。私は信じる。おかえりなさい。お兄ちゃん。」

 

「ただいま。」

 

私たちは、泣きながら抱き締めあった。

 

ああ、神様。

奇跡をありがとうございます。

 

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