京子さんが、ALOを始めた経緯はマザロザif 外伝5をご覧下さい。
「あの...キョーコさん。ステータスとか異常はないですか?モンスターに囲まれてた訳ですし、状態異常とか確認した方が良いですよ?」
「え、ええ...」
アスナさんのパーティーメンバーと思われる男性のプレイヤーの言葉を聞いた私は、慌てて確認したが特に異常は無さそうだった...
でも...
アスナさんを見た時の衝撃で忘れていたが、モンスターに囲まれた時の恐怖を思い出すと、正直ゾッとした。
教えてもらった戦い方も出来ず、パニックになってしまった...
あのSAOでは、その恐怖の上、更に本物の死と言う恐怖まで加わってくるのね...
良くあの娘は、そんな世界で二年以上も生き延びて来れたものだわ...
「とにかく、無事で良かったですよ。俺はキリト、こっちは俺のプライベートピクシーでユイと言います。よろしくキョーコさん。」
「ユイです。よろしくお願いします。キョーコさん。、」
そう言えば、名前を聞いてなかったわね。
それに、ユイちゃん...か。確か、プライベートピクシーはAIで動いているのよね?
それにしては、随分と自然に会話をするわね。
まるで、本当に生きているみたいだわ。
ん?キリト?
何故かしら...どこかで聞いたことがあるような気がするのだけれど...
どこだったか...
私は、ゲーム事態これが初めてだし、ゲームで聞いた名前では無いわよね...
...ダメだわ...思い出せない...
何か、重要な意味を持っていた気がするのだけれど...
「キョーコさん。良ければシルフ領まで送っていきましょうか?」
私が『キリト』について思い出そうとしていると
キリト君がそう提案してくれた。
「ありがとう。お願いできるかしら。」
私は、その提案を受け入れた。
ただ、何故かこの二人ともう少し一緒にプレイをしてみたい...そんな衝動に狩られた。
おそらく、明日奈と同じ顔をしたアスナさんに、もう二度と会えない明日奈を重ねてしまっているのだろう...
私は、二人と交流を続けるために、考えたことを口にした。
「その...図々しいお願いだとは思うのだけど...少しの間で良いから、このゲームについてレクチャーをお願いできないかしら?見たところ、二人とも随分とこのゲームに慣れているように見えるわ?」
私は、事情を説明した。家族でこのゲームを始めること。
先行して、私がこのゲームに慣れ、後から来る二人に教えなければならないこと。
「キョーコさん。私たちは、事情があって週に一度...それも日曜日にしかログインできないんです。それでも構いませんか?」
週に一度...社会人なのかしら...仕事に支障を来さないようにするのは立派なことよね...
私は、構わない旨を二人に伝えた。
二人は、何故か苦笑の表情を浮かべる。
どうしたのか?
私の疑問を察したのだろう...キリト君が答えた。
「ああ...すみません。実は、半年位前にも似たよう事があったもので...」
「あら。そうなの?」
「そうなんですよ。聞いてくださいキョーコさん。その時は二人のシルフの女の子を助けたんですけど...二人ともキリト君に特別な感情を持っちゃって大変なんです。私と言うものがありながら...」
「そんな事無いだろう?二人とも、危ないところを助けてもらって感謝しているだけさ。」
「ハァ...キリト君鈍いから...」
「処置無しです...」
「ちょっ...ユイまで...」
「あはははははははっ」
三人の口論を聞いていたら、私は何故だか笑いが堪えられなかった。
気が付いた時には、モンスターに襲われたときの恐怖なんて完全に忘れていた。
これなんだ...明日奈があの世界で見て来たことは...
例え、この体が作り物なんだとしても、私たちの思いは現実の私が感じている本物...た
私は、改めて二人...いえ、三人にお願いした。
「キリト君、アスナさん、ユイちゃん。これからよろしくね。」
私はその夜、食事の場で夫の彰三に今日ALOであったこと、感じたこと、そして、出会いについて話した。
息子は、今日は仕事でトラブルがあったらしく遅くなる為、二人での食事となっている。
「そんなことがあったのか...」
「ええ、貴方もダイブしたらモンスターには気を付けた方が良いわよ?」
「はははははっ。なぁに、モンスターなんて私にかかれば一捻りさ。」
そんな冗談を交わしたあと...
「それにしても...明日奈に似た容姿のアスナと言うプレイヤーか...」
「ええ...はじめて見たときは驚いたわ。本当にそっくりなんだもの。でも、少し嬉しかったわ。あの子の動いている姿を見ているようで...それに...とても楽しそうだったわ...」
「そう言えば、もう一人いたと言っていたな?」
「一人と...プライベートピクシーの子の三人ね?名前はキリトとユイって言ってたわ。」
私の言葉に、夫は驚いて立ち上がった...
「なんだって?キリト...そう名乗ったのか?」
「え、ええ...どこかで聞いた名前だと思うのだけど...思い出せないのよね...」
夫は、少し間を置いたあとに話し出した。
「...キリトと言うのは、フルダイブ型のゲームに置いてはなかば伝説になりつつあるプレイヤーの名前だ。」
「ALOにおいては、数々のシステム外スキルを編みだし、最強格のプレイヤーとして名前が残っている。GGOにおいては、コンバートしてすぐに大きな大会で優勝しているそうだ。そして...SAOにおいては、茅場晶彦を倒しクリアに導いた英雄...」
私は、その言葉にようやく思い出した。
キリト...それは明日奈の思い人... 桐ヶ谷和人君のゲームでの名前...
「こんな偶然...あるのかしら。」
私は、呆然としながら...なかば独り言のように呟いた。
「わからん...明日、会社に行ったら二人のログイン履歴を調べてみよう。」
結果から言えば、二人がログインした形跡は無かった。
つまり、あの二人は桐ヶ谷和人君と明日奈では無いと言うことだ...
普通に考えれば当然だ。二人とも、既にこの世にはいないのだから...
でも、私は何故かあの子は明日奈だと思ってしまう。
私の母親としての勘が、あの子を明日奈だと伝えている。
昔の私なら、そんな非理論的なこと一笑にするところなのだけれど...
幸い、次に会う予定は取り付けている。
そこで、確かめるのだ。自分自身で...
そして、日曜日。
「お待たせしました...」
キリト君たちが、待ち合わせ場所にやって来た。
何故だか、かなりの大人数になっていた。
「すみません。キョーコさんの話をしたら、私たちの仲間が是非遭いたいと言ってきたもので...」
アスナさんが、申し訳なさそうに謝ってきた。
「構いませんよ。私は教えを請う立場ですから...私はキョーコです。よろしく皆さん。」
お互いに自己紹介を済ませると、早速初心者向けのレクチャーを受けた。
このゲームを始めた時に、シルフ領で先輩プレイヤーに少し教わったがキリト君たちのレクチャーは、具体的でとても分かりやすいものだった。
今日一日で、私は随分と上達したと思う。 ただ、自分でお願いしておいてなんだが、今日はもっと、大きな目的がある。
私は、休憩の時間を利用してアスナさんに声をかけて、二人で話をすることにした。
「今日は、本当にありがとうアスナさん。貴方たちのおかげで、随分と上達したわ。」
「いえ、そんなこと無いですよ。キョーコさん、とても飲み込みが早いから私たちの方こそビックリです。」
「ふふっ。お世辞でも嬉しいわ。」
さて...ここからだ...
「貴方とキリト君は、随分と仲が良いわね。どうやって知り合ったの?」
「えっ?その...突然ですね。」
私の問いかけに、驚くアスナさん。
ちょっと早すぎたかしら...冷静にならないと...
「ちょっと気になってね...子供までいる私からしても、貴方達は恋人と言うより夫婦みたいだったから...」
「そ、そうですか...えへへ...ありがとうございます。」
真っ赤になりながら照れるアスナさん。
「そうですね...私たちは、あるゲームの中で出会いました。詳しくは言いませんが...私は、そのとき絶望していました。そんな私を救ってくれたのがキリト君なんです。」
SAOの名前こそ出していないけれど、その内容は、明日奈が生前に、良く言っていた内容に酷似している。
でも、確定的ではない。だったら...
「そうなの...羨ましいわね。実は、私にも娘がいたのよ...」
「そうなんですか...」
「でも、その娘はね、もういないの。恋人が事故で亡くなって...後を追って自殺してしまった。」
「.........」
アスナさんは、顔を青ざめているようだった。
「私の話を聴いてくれる?」
そう言って、私はアスナさんの返事も待たずに話し出した...
「私はね、子供の頃から努力して、大学で教授にまで上り詰めたの。そして、名家の男性と結婚して、子供も二人に恵まれた。特に娘の方は、親の私が言うのもなんだけど、才色兼備全てを備えたような子だった。私は娘に、幸せになって貰いたくて、幼い頃から英才教育を施したわ。」
「でもある時、順風満帆な娘の人生に転機が訪れたの...SAOと言うゲームに娘は囚われてしまった...。なんとか娘は生還を果たしたけど、周りの人達からは取り残されてしまった...私は焦ったわ。このままでは、娘の人生はダメになってしまう。その思いが娘を追い詰めてしまった。」
「気が付いた時には、もう手遅れだったわ。娘は、明日奈は...桐ヶ谷君に救いを求めて、死んでしまった桐ヶ谷君の後を追ってしまった...。」
一呼吸した後、私はそれを口にする。
「貴方は、明日奈ね?」
「お...母...さん...。」
アスナは驚愕の表情で、私を見つめた。