時間のため、俺たちはログアウトした。
出来ればアスナにもっとゆっくり家族と話をさせてやりたかったんだけどな。
折角、仲直り出来たんだし...
そう、今回のログインでアスナは家族と再会することが出来た。
確執のあった京子さんとも和解することが出来た。
本当に良かった...。
そして...
俺は、アスナの家族からアスナを託された。
だからこそ、言わなければならない言葉がある。
俺は、アスナの方に向き直る。
「アスナ...」
俺がアスナの名前を呼ぶと、アスナが勢い良く抱きついてきた。
「キリト君...ありがとう。キリト君のおかげで、お母さんと仲直り出来た...お父さんや兄さんにも会えた...本当にありがとう...」
アスナは、家族と会えて...お母さんと和解して、感極まっているようだ...
...言うタイミングを逃しちゃったな...
でも、アスナの嬉しそうな顔を見ていたら、まあ、後でも良いか...と思った。
「キリト、アスナ、私たちはそろそろ宿に戻るね?」
アスナが落ち着いた頃、サチがそう告げてきた。
「え?折角だから、夕飯食べていきなよ。今日は、ご馳走作るよ?」
アスナがそう言って引き留める。
余程、今日の事が嬉しかったのだろう。
ご馳走か...楽しみだ...
「パパ...涎が出てますよ...」
ユイが呆れた口調で言ってくる...
マズイ...父親としての威厳が...
「折角だけど、私たちは遠慮するわ。家族水入らずの邪魔をするのは、悪いから...」
「そうですね。今日のところは失礼します。」
ゆんゆんもサチの意見に同意のようだ。
「そう...それじゃあ、サチ、ゆんゆん...今日はありがとう。また明日ね。」
それ以上引き留めるのも悪いと思ったのだろう。
アスナは、サチ達に挨拶を交わした。
「あ、帰る前に、キリト...少し良いかな?」
そう言ってサチは俺を手招きした。
「どうしたんだ?」
俺がサチに近づくと、サチは顔を寄せ、小声で、
「キリト、頑張ってね...」
そう言ってきた...
どうやら、俺の心境はサチ達にはバレバレのようだ...
顔が熱くなるのを懸命に抑えて、
「ああ、頑張るよ。」
なんとか、そう答えた。
「キリト君。サチ...なんだって?」
アスナが聞いてきた。
「あ、ああ...今日はお疲れさまってさ。」
なんとか、誤魔化そうとするが、
「そんなことで、キリト君だけ呼んでわざわざ言わないと思うんだけど...」
アスナに隠し事は難しい...
ジーっと見つめてくるアスナ...レジストしようと頑張る俺...
そんな事を数秒?したあと、
「まあ、良いでしょう。キリト君の隠し事は今に始まった事じゃないしね...」
アスナが折れてくれた...
助かった...そう思ったが...
「その代わり...キリト君の今日の晩御飯...一品抜きね?」
アスナが笑顔で、俺に残酷な事を言ってきた。
「ちょっ!?...それは酷くないか?」
「知りません。キリト君が隠し事するのがいけないんだよ。ねぇ、ユイちゃん。」
「はい。パパは隠し事が多すぎです。それで何度も危険な目に会っているんですから、少しはお灸を据えた方が良いです。」
俺の抗議は、聞き入れてはもらえなかった...
それどころか、ユイから説教まで受けてしまった...
その夜の夕御飯は、本当に豪華だった...
この中から、一品減らされる...
もう、言ってしまおうか...
いやいや、食欲に負けて言ったら絶対に怒られる。
それに、俺にも男としての矜持はあるのだ...
ガマン...ガマンだ...
「アハハッ...キリト君、凄い顔してるよ?...仕方ないなぁ。今日のことは、キリト君のおかげだし、特別に...罰は解除してあげますか。」
「おお...流石はアスナ。サンキュー。
...でも...俺...そんなに凄い顔してたかな?」
「はい。パパったら、それはもう悲しそうな顔をしてましたよ?」
そ...そうなのか...俺...そんな顔をしていたのか...
男の矜持が...父の威厳が...
「ほら、キリト君。早く食べよう?折角ご馳走作ったんだから、冷めたら勿体無いよ。」
そうだよな。これと言うのも、アスナの料理が美味しそうなのが悪いのだ。
だったらせめて、美味しく食べて元を取らねば...
余談だが、俺たちは魔王を倒した報償金で金には困っていない。
それでも、我が家の財布を預かるアスナはしっかりしたもので、あまり贅沢をしない。
普段から贅沢をするも金銭感覚がおかしくなるからだと言っていた。
彼女の家は、かなり裕福なハズなんだけど...
あればあるだけ使ってしまう俺とは偉い違いだ...
まあ、そんなことは後だ。まずは目の前のご馳走を食べなければ...
「「「いただきます。」」」
アスナの料理は...もの凄くおいしかった事を、ここに記す...
時間は更に経って、夜中と言える時間だ。
ユイは先に休んでいる。
今は、アスナと二人で居間で寛いでいる。
「キリト君...改めて...今日は本当にありがとう。」
「俺は、きっかけを作っただけさ。」
「そんなことない。キリト君の願い事のおかげで、私はあの世界に戻れた。キリト君がいたから、お母さんにまた出会えた。キリト君が私の手を取ってくれたから、お母さんと話す勇気を貰えた。全部、キリト君のおかげだよ。」
「まあ...アスナがそう思ってくれるなら、それでも構わないさ。アスナが京子さんと仲直りできて...本当に良かった。」
「うん。私...もう何度思ったか数えられないけど、キリト君と出会えて、本当に良かった。キリト君を好きになれて本当に楽しかった。キリト君と愛し合えて...私は幸せだよ。」
「俺もだよ。アスナに出会っていなければ...きっと俺はSAOの中で絶望のままに死んでいたと思う。アスナが俺を変えてくれたんだ。アスナがいてくれたから、俺は強くなれた。アスナが俺を守ると言ってくれたから、俺は俺のままでいられた。今の俺があるのは、全部アスナのおかげさ。」
「ありがとう、キリト君...私と出会ってくれて...」
「ありがとう。アスナ...俺と出会ってくれて...」
俺たちは、そう言って唇を合わせた。
「アスナ...彰三さんたちが最後に俺に言ったこと、覚えてるか?」
「うん。恥ずかしかったけど...キリト君が私を幸せにするってしっかり答えてくれて、嬉しかったよ。」
「その気持ちは変わらないよ...だからこそ、言わなきゃいけない言葉があるんだ。」
「.........。」
アスナが俺の目を見て続きを待っている...
「アスナ...結婚しよう。」
俺の言葉に、アスナは涙を浮かべながら、これ以上ないと言うような笑顔を浮かべた。
この顔を見るのは2度目だ。
かつてSAOで、アスナにプロポーズした時と、そして今と...
「...はい。キリト君...これからも...いつまでも...よろしくお願いします。」
「もちろんさ。」
俺たちは、もう一度唇を交わした。
アスナ...必ず君を幸せにするよ...
そうして、俺たちは幸せな気分のまま、その夜は更けていった...