ALOから戻ったキリトとアスナは、翌日カズマの屋敷を訪れていた。
「ああ、キリトたちか。どうかしたのか?」
カズマが用件を訊ねる。
「ああ...カズマ...っていうかアクアに頼みごとがあって来たんだ。」
「私に?何かしら?お金なら無いわよ?カズマがお小遣い増やしてくれないから...」
何か勘違いするアクア。
「十分な小遣い渡してるだろ?お前の金遣いが荒いのが問題なんだろうが。金が入るとすぐに、高い酒買ってきたり、アクシズ教のやつらと豪遊したり...って言うかキリト...お前、正気か?アクアに頼みごとなんて...きっととんでもないことやらかすぞ?悪いことは言わないから、別のやつに頼んだ方が良いぞ?」
「喧嘩を売ってるなら買ってあげるわよ?クソニート。」
魔王を倒して、英雄となったカズマたちだが、その関係は変わらない。
「まあ、それは良いとして、キリト。アクアに頼みとはどう言うことなのだ?」
睨み合う二人を無視して、ダクネスが続きを促す。
「うん。実は私たち...近い内に結婚しようと思っているの...」
それに、答えたのはアスナ。
「本当ですか?おめでとうございます。二人とも。」
めぐみんはキラキラした目で、二人を祝う言葉を述べた。
「そうか...。それはめでたい。二人とも、私たちにとっては恩人だ。私からも祝福させてもらおう。」
ダクネスも続く。
「キリト...一発殴らせろ...」
カズマが危ない目をしてキリトに詰め寄る...
返り討ちに会うカズマは放置して、アクアが話を続ける。
「そうなんだ...二人ともおめでとう。それで...私に頼みって何かしら?」
キリトとアスナは互いを見て頷くと、
「実は、アクアに俺たちの結婚式で司祭の役割を努めて貰いたいんだ。」
「私たち二人で相談したんだけど、私たちがこうして、この世界で再会出来たのは、アクアのお陰だから...アクアが女神として、キリト君をこの世界に転生させるきっかけを作ってくれたから、私たちはここにいる。だから、アクアにお願いしたいの。私たちの門出を取り仕切る役を...」
「キリト...アスナ...二人とも...わかったわ。その役目...このアクア様に任せてちょうだい。きっと素敵な結婚式にしてみせるから。」
泣きながら、了承するアクア。
「場所や日にちはまだ決まって無いから、ゆっくり考えてくれ。一応、英雄として各国から招待を受けた手前、結婚の話しは伝えないとマズイから、今ゆんゆんとサチに伝えてもらっているところなんだ。」
「なるほどね。わかったわ。」
「よろしく頼むよアクア。」
「良かったね。キリト君。」
そうして、二人は帰っていった。
「アスナ...幸せそうでしたね...」
「そうだな...」
めぐみんとダクネスは互いに先程のアスナの表情を思い出して呟く。
そして、床で倒れ伏すカズマを見てから、ため息を付くのだった。
一方、ゆんゆんとサチはキリトたちの結婚の報を各国に伝えて回っていた。
「なんと...それはめでたい。我が国としてもお祝いさせて頂こう。...それで場所はどこでやるのかな?この国の城下にある教会は自慢できる立派な物だぞ?きっと、二人の良い思い出になると思うが...」
またか...
ゆんゆんとサチは思った。
行く国行く国で、必ず聞かれる質問と自分の国での結婚式を勧める王たち...
どの国も、勇者であるキリトとアスナに恩を売りたいのだ...あわよくば自分の国に取り込みたいとも考えているのだろう。
「折角ですが陛下、キリトとアスナの両名は自分達の住んでいるアクセルの街に強い思い入れがありまして...そこで結婚式を挙げたいと希望しております。」
「なんと...それでは我が国は、どうやって祝ったら良いか...出来れば、私自ら祝辞を述べさせて頂きたいが...」
サチの言葉に、残念そうにする王に対し、ゆんゆんが答える。
「その事なのですが、陛下...今、私の開発中の魔法が完成すれば間接的にですが、陛下のお言葉を伝える事が可能となります。」
「なんと...そのような魔法があるのか。」
実はゆんゆん...ALOの月光鏡の魔法を見て、この世界でも出来ないかと研究していた。
「はい。陛下。各国の城の謁見の間と城下町の広場にこれから伝える物を設置してもらえますか?それで私が主となる鏡に魔力を送ることで、鏡に映った影像と音声を届ける事ができます。」
「それは凄い。それでゆんゆん殿...その魔法は教えてもらうことは出来ないか?」
この魔法が実用化すれば、この国の情報伝達速度がとてつもなく上がる。
期待する王だったが、
「折角ですが陛下...恐らくは紅魔族の上位クラスにしか使えないでしょう。爆裂魔法にも匹敵する魔力を使いますので...」
そう答えたゆんゆんだったが、実のところ、嘘だった。
そこまでの魔力は使わないのだが、これが実用化した場合、戦争などに使われたときに被害が増えると考え、警戒して遭えて伝えないことにしたのだ。
「そうか...残念だな...」
開発者本人からの話なので疑うこともせず、王は諦めるのだった。
この後、ゆんゆんを巡って各国がスカウト合戦を始めることになるのだが...それは別の話なので割愛する。
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さて、ALOサイドはと言うと...
「さて...じゃあ、キリトたちの結婚式に関して役割を決めるわよ?」
話し合いはリズベットの司会で始まった。
「じゃあ、サクヤさんたちへの報告と繋ぎは私がやりますね。」
リーファが立候補した。確かにALOで最も有名な彼女が行くのが正解だろう。
お互いに面識もあるし、友好的な関係を持っているのも大きい。
「私は、アスナのウェディングドレスとキリトのタキシードの発注をアシュレイさんに依頼するわ。お互いに生産職ってことで仲もそれなりに良いし、多少割引きしてくれると思うわ。」
リズベットが続く。
「私とシノンさんは、式の催し物を考えたいと思います。」
「そうね。」
シリカはシノンを誘って、既に役割を決めていた。
「金銭的なことは、俺に任せてくれ。」
エギルは、金銭面でのフォローだ。
「俺は...」
クラインが何か言う前に、リズベットが被せる。
「クラインは、アシュレイさんに渡す素材を集めて頂戴。」
「......いや...俺は...」
「頑張って下さいねっ。クラインさん。」
「お願いね。クライン。」
「クラインさん。よろしくお願いします。」
「集められなかったら、承知しないわよ?」
「任せたぞ。クライン。」
「.........はい。」
クラインは、泣きそうになりながら了承すると飛び立っていった。
風林火山を召集するつもりなのだろう。
「さて、じゃあ皆、最高の結婚式にするために...頑張ろー。」
「「「「おーーーーっ」」」」
リズベットの号令に、仲間たちは拳を上げて答えるのだった。
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最後に現実サイドは...
「諸君、集まってもらったのは他でもない。実はALOに結婚イベントを追加してもらいたい。」
彰三がALOの開発責任者たちを集めて、提案していた。
「いや...結城元CEO...いきなりその様な事を言われましても...今年度のアップデート計画は既に組み終わってますから...」
抵抗するスタッフ一同。
「やってもらいたい...」
「いえ...ですから...」
「いいから、やりたまえ...」
「......。」
温厚な彰三しか見たことのない職員たちは、鬼気迫る表情の彰三に何も言えなくなる。
「あなた...そんな頭ごなしに言っては、皆さんがかわいそうですよ?」
そこに、京子が登場した。
あまり職場に顔を出さない彰三の妻の登場に驚いたが、職員たちには京子が救いの女神に見えたことだろう。
「皆さん。この話にはちゃんと、メリットがあるのです。」
しかし、京子も彰三の提案を否定はしなかった。
「まず、一つ目は会社のイメージ回復。先の須郷の事件でのレクトのイメージはまだ回復しきっていません。実はこの話のモニターを既に選んでいるのよ。彼らはALOでしか結婚式を挙げられないそうなの。多分メディキュボイドの被験者なのだと思うわ。そんな二人がALO で結婚式を挙げる...素敵な話よね?
「それと、もう一つは集客力ね。結婚式を挙げげたくてもお金が無くて挙げられない...そんな人達は、少なからずいるわ?確かにその人達だけなら数は少ないかもしれない。でも、出席する人達もアミュスフィアを付けなければならないし、それで参加した人達の何割かが継続的なプレイヤーになってくれたら...」
「なるほど...確かに興味深い話です。」
一人が、京子の話に食い付く。
流石に元とは言え、大学で教鞭を振るっていた京子の説明は分かりやすかった。
「わかっていると思うけど、これは他社に先んじて行わなければならないわ。わかるわね?」
「はい。任せてください。結城夫人。皆...これから貫徹でプログラムを組むぞ...」
「マジっすか...」
「ウェーイ」
「おー。」
職員たちは、最終的に了承して退出していった...
「...上手く行ったな京子...」
「予定通りね...あなた。」
今回の流れは、二人の仕組んだものだった様だ。
まず、彰三が有無を言わさない高圧的な態度で、相手の思考能力を奪い、京子が冷静な態度でメリットを説明...
思考能力の低下した職員たちは、とても素晴らしい提案だと思い込み、そのまま了承させてしまおうと言う作戦だった。
他の部署にも伝達する必要はあるが、既に現場スタッフが了承している以上、事後承諾としてどうにでもなる。
何よりも、メリットに関しては事実である以上、レクトの幹部たちも否とは言わないだろう。
かくして、ALOにおいても着々とキリトたちの結婚式の準備は進んでいるのだった。