いよいよ、結婚式当日となった。
アクセルの街にある教会にて、カズマ達を筆頭に、本日の主役の登場を今か今かと待ちわびていた。
否...世界を救った勇者の結婚式を一目見ようと世界中の人々が見守っていた...
この日の為に、ゆんゆんが開発した月光鏡の魔法を受信する魔道具を各国の城や城下町の広場などに設置していたのだ。
そして、その時は訪れた...
司祭役のアクアが誓いの間中央に立つ。
ちなみに、アクアが今着ているのは、やや上等な司祭服だ。
例の特注品は既に売り払われて、アクアの手元にはない...
その事でかなり揉めたが、カズマお得意の口八丁で、現在の司祭服に落ち着いた。
「それでは、これより新郎キリトと新婦アスナの結婚の儀式を執り行います。」
厳かな雰囲気のもと、アクアが宣言する。
「それでは、新郎キリト...入場...」
扉から、白のタキシードを来たキリトが入場する。
「おお...あれが魔王を倒した、黒の勇者キリトか。」
「カッコいい~」
「素敵~」
「...黒くないじゃん...」
キリトの姿を写した魔道具を見た人々は様々な感想を口にした。
その殆どは好意的なものだ。
「続いて、新婦アスナの入場です。」
ウェディングドレスを来たアスナが姿を表す。その目には、既にうっすらと涙が煌めいていた。
「.........美しい...」
どうやら、本当に美しい物を見た人々は、無口になるようだ。
「本来であれば、新婦には父親が付き新郎に引き渡すと言う流れがありますが、皆さんも知っての通り、この二人は異世界より神が遣わした存在。この世界に身寄りはありません。ですから、私...アクアがアスナの父親の代理として、キリトを夫と認め、引き渡しましょう。」
ギョッとするカズマ。実はこの台詞、アクアのオリジナルだったりする。
しかも、リハーサルでもやっていない...
「ありがとうございます。アクア様。貴方の言葉に恥じぬよう、精一杯アスナを幸せにして見せます。」
キリトは、アドリブで返す。
「期待していますよ。」
アクアが微笑む。
「それでは、私から言葉を送ります。」
カズマは冷や汗を掻いていた...
そう言えば、この世界に聖歌や聖書なんて無いよな...何を言う気だ?
まさか...
「アクシズ教教義から...迷った末に出した答えは、どちらを選んでも後悔するもの...どうせ後悔するのなら、今が楽チンな方を選びなさい。汝、老後を恐れるなかれ。未来の貴方が笑っているか、それは神ですらもわからない。ならば今だけでも笑いなさい。もし、あなた達が、迷い...苦しんだ時にはこの言葉を思い出しなさい。きっと、その時に光となります。」
よかった...マシなやつだった。
もし、アクシズ教徒たちはやれば出来る。出来る子達なのだから、上手くいかないのは貴方のせいじゃない...上手くいかないのは世間が悪い。嫌なことからは逃げれば良い。逃げるのは負けじゃない...逃げるが勝ちと言う言葉があるのだから...
なんて言い出したら...本気で狙撃して黙らそうかと思っていた所だ...
ホッと一息付くカズマ。
「それでは、続いて誓いの儀式に移ります。」
アクアは、厳かに二人に問う。
汝、キリトは、この女、アスナを妻とし、
良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、
病める時も健やかなる時も、
共に歩み、他の者に依らず、
死が二人を分かつまで、
愛を誓い、妻を想い、妻のみに添うことを、
神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?
「誓います。」
キリトが答える。
汝、アスナは、この男、キリトを夫とし、
良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、
病める時も健やかなる時も、共に歩み、
他の者に依らず、死が二人を分かつまで、
愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、
神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?
「誓います。」
アスナも答える。
皆さん、お二人の上に神の祝福を願い、
結婚の絆によって結ばれた このお二人を
神が慈しみ深く守り、助けてくださるよう
祈りましょう。
世界中の人々が、二人の為に祈る...
その時、女神アクアの像が光輝いた...
『女神アクアの名の元に、その祷りを聞き届けました。二人の新たな絆に祝福を...』
その言葉と共に、キリトとアスナの体も同じ輝きに包まれた。
周りがざわめきだす。
「おい...見たか?そして聴こえたか?」
「ああ、俺にも聴こえた...」
「私も...」
「女神様自らが降臨なされたんだ...二人を祝福するために...」
「さすがは世界を誘った勇者様だ。」
カズマは思った...
やりやがったな、あのバカ...
実は、これ...アクアの自演だったりする。
特注衣装を諦めさせるため、カズマが言った言葉...
ー司祭として目立つより、女神として目立つべきだろう?後で、二人を導いた女神だって周りに言ってやるからー
その言葉で、アクアはこれを思い付いたらしい...
幸い、好意的に見られてるが...もし失敗してたら恐ろしいことになる所だ...
カズマが冷や汗を掻きながら見守るなか、式は続いていく...
「それでは、指輪の交換を...」
この指輪は、ユイが二人のために選んだものだった。
ユイは二人の式の前に、不安そうな顔をしていた...
キリトもアスナも、ユイを心配して声をかけた...
ユイは良い辛そうにしながら、理由を答えた。
「私は、お二人の本当の子供ではありません...パパ達が正式にで夫婦になり...本当の子供が出来たら...私の居場所は無くなるんじゃないかって...最近そんな事を考えてしまうんです...ご免なさい...パパ達が幸せになることは良いことなのに...私は、それが怖くて...」
キリトもアスナも後悔した...
二人の結婚が決まってからと言うもの、その事にばかり考えがいって、ユイの事を見ていなかった...
ユイがここまで自分を追い詰める前に、気がつけたら...
「ユイ...ゴメンな...お前がそんな悩みを抱いてるのに気づけなくて...」
「ユイちゃん...誰がなんと言おうと、貴方は私たちの子供だよ?」
二人はユイを抱き締めて、謝りながら伝える。自分達の関係は、いつまでも変わらないことを...
「ハイ...パパ、ママ...私も...いつまでも二人の子供でいたいです。」
ユイは改めて、キリトたちの子供でありたいと願うのだった。
「ユイ...これからもヨロシクな。」
「私もね。」
それに答えるキリトとアスナ。
そして、アスナは続ける。
「それにね...私たちに子供ができたら、ユイちゃんはお姉ちゃんになるんだよ?妹か弟かはわからないけど...ユイちゃんも可愛がってくれないとね?」
「わ、私がお姉ちゃんですか?」
ユイは、その言葉に驚いた。そして、姉となった自分を想像する...
「エヘヘ...なんか恥ずかしいような...嬉しいような...不思議な気持ちです...」
「パパ、ママ...私、早くお姉ちゃんになりたいです。だから頑張ってくださいね。」
キリトはひきつった顔で頷くしかなかった...
その翌日、三人で出かけた帰りに、ユイが見つけた宝石店でユイが選んだ結婚指輪を購入したのだった。
二人は互いに指輪を手に取ると、お互いの指にはめた。
「それでは...誓いのキスを...」
キリトがアスナのべールを上げる。
そして...キスを交わす二人...
アクアは、二人の手を取ると、その手を重ねて宣言する。
「今ここに、二人の結婚は成立しました。」
『うおおおおおおおおおおお』
『おめでとう』
『お幸せに』
『末長く爆発しろ』
世界中が歓声を上げた。
「キリト君...これで私たち...本当の夫婦になれたんだね...」
「ああ...これからもよろしくな、アスナ。」
「ハイ...ふつつかものですが...末長く...ううん...いつまでも、よろしくお願いします。」
「愛してるよ。アスナ。」
「私も...愛しています。キリト君。」
アスナは涙を拭うこと無く、キリトに抱きつく。
アスナは思った。
この世界に来られて本当に良かった...
この素晴らしい世界に感謝を...