キリト君と結婚してから3年の月日が流れた...
今、私たちは私の実家である結城家の家の前にいる。
そう...ようやく、現実の世界に来ることが出来るよになったのだ...
ただし、ALOへのログイン以上に制約が強いのだけど...
私は、エリス様の言葉を思い出していた。
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「キリトさん...アスナさん...大変遅くなってゴメンナサイ。ようやく、向こうの世界に行くメドが立ちました。」
「本当ですか?エリス様...」
キリト君が、突然のエリス様の降臨と言葉に驚きながら聞き返した。
「はい。遅くなりましたが、向こうとの調整も済みました。と言うよりも、向こうの世界の神々があなた方なら問題ないと判断したのですけどね。ALOでのあなた達の行動、そして、制約を守ってログインしていたからこそ、許可が降りたのです。」
そうか...あのALOにだけ、ログイン出来るようになったのには、神々の規定以外に、私たちを見極める試験的な意味合いとあったんだね...
エリス様の話はまだ続く。
「とは言え、現実世界への行き来に関しては、当然ALO以上の制約が課せられます。」
「と言うと?」
「年に一度...24時間限りの訪問となります。そして、行き来できるのはキリトさんのこの世界での家族のみとなります。」
「つまり、今、ここにいる者達以外...カズマ達を連れていくことは出来ないと言うことですか?」
キリト君の言葉に頷くエリス様。
「あの...ユイちゃんは向こうの世界に連れていけるんですか?」
私は、それが気になった。もともとユイちゃんはデータの存在だ。向こうに肉体なんてない。ユイちゃんを一人だけ残していくのは...
「もちろん行けますよ...と言うより肉体云々の話ならキリトさん達の向こうの肉体だって、既にお墓の中なんですよ?」
エリス様が、私の考えていた事を読んだのだろう...そう答えた。
そう言えばそうだよね...
ハハハハハ...
「制約が大きい理由も、そこにあります。あなた方は、今の肉体で向こうに行き来することになります。知っての通り、この世界の人間の肉体能力は、向こうの人たちより遥かに強い。ましてや、英雄と呼ばれるあなた方の力は、向こうでは英雄どころか神人と呼ばれてもおかしくないレベルでしょう。」
「つまり、力を使うな...と言うことですか?」
キリト君が確認する。
「そう言うことです。特に魔法などはもっての他でしょう。まあ、魔法など使わなくとも、今のキリトさん達なら大抵の事は危機にもならないと思いますよ?」
私たちが、その言葉を理解したのは、この世界に来て、私の家へ移動中の事だった。
キリト君が、電車のキップを買いに(お金はエリス様から貰っている)行っている間に、軟派男達に私達が囲まれたのだ。
正直、今の私の状況を見て軟派するような男がいるとは思っていなかったので、対応が遅れてしまったのだ。
男達がニヤニヤした顔で囲いを狭めてくる。
...軟派...と言うより、別の目的なのかもしれない。
とは言え、私は強引に突発することは、とある事情により出来ない...
ユイちゃんが、私を庇うように前に立った。
そう言えば、人間形体のユイちゃんは、向こうに行ってからの5年間で成長して、今では中学生から高校生と言った見た目となっている。
当然、美少女よ?
私たちの娘だからね。
え?なんでそんなに余裕あるのかって?
だって、ほら...キリト君が近くまで来てるもの...
「俺の嫁さんに何か用か?」
キャー(>_<)俺の嫁だって...
ああ...何度聞いても良い響きだよね。
「ちっ、もう戻ってきやがった。アイツラ、足止めしとけって言っといたのに。」
リーダー格の男が呟いた。
どうやら、キリト君の方にも男達の仲間が行っていたようだ。
「良いからすっこんで...ぐはっ」
男が言い終わる前に、キリト君のデコピンで後ろに倒れる男。
周りの男達も唖然としていた...
ああ、これがエリス様の言っていたことか...
「おい...こいつ何しやがった...」
「デコピンで人がぶっ飛んだぞ?」
「ヤバくねぇか?」
「逃げるぞ...」
男達は退散していった。
「大丈夫か?お姫さま方?」
キリト君が冗談混じりに言ってくる。
「ええ、大丈夫ですよ?勇者様。」
「パパ...かっこ良かったですよ?」
周りから拍手が聴こえる。
そう言えば、公衆の面前だった...
恥ずかしくなった私たちは、その場を退散した。
...それにしても...あんな公衆の面前で犯罪紛いの行為をするなんて、あの男達...何考えていたのかしら?
...どうやら、魔法を使わずに切り抜けた様ですね。力もほとんど使っていませんし...
これなら問題ないでしょう...
どこからか、そんな声が聞こえた。
余談だが、この男達はこの後逮捕される事になるのだが、全員揃って記憶がないと答えるのだった。
だが男達は他にも強姦など余罪は多く、結局、刑務所に送られる事となる。
そして、私たちは今、結城邸の前まで来ている。
私は、緊張してなかなかインターフォンを、押すことが出来ないでいた...
私は、一度...自らこの家の住人としての自分を捨てた...
ALOで、既に家族と和解しているとは言え、家に着いた途端、身体が硬直したように動かなくなってしまった...
キリト君は、ずっと待っていてくれている。
この家に...良い思い出なんて無かった...
そう思っていた...
でも、こうして数年ぶり見た結城邸を見て、この家にも、ちゃんと楽しい思い出はあった...と...思い出した...
勉強して、良い点を取って帰ってきた時、両親が誉めてくれて嬉しかった...
兄さんが、私に構って遊んでくれた時、楽しかった...
私は、自然と涙が溢れてくる...
その暖かさが、私の身体の硬直をゆっくりとほぐしていってくれた...
そして私は、インターフォンを押した。
『はい。どちら様?』
お母さんが出た。
私は、とある事情によりALOにしばらくログインしていなかった為、本当に久しぶりに母の声を聞いた。
一応、キリト君から事前に私たちの両親に、今日帰郷することを伝えてある。
両家の家族は、今日の夜この家に集まる事になっている。
「えっと.........明日奈です。」
私は、まだ緊張が完全に溶けていないようで、小さい声で、それしか言えなかった。
それでも...
扉が開いた...
お母さんが...お母さんが目の前にいる。
私の姿を見たお母さんは、勢い良く私に抱きついた。
「明日奈...明日奈...良かった。本当に良かった。お帰りなさい。」
お母さんが私を抱き締めて泣いている...
「お母さん..ごめんなさい...お母さん...うわああああああ。」
私は、お母さんの腕の中で子供のように泣いてしまった。
お母さんの姿を久しぶりに見て...あの強かったお母さんの涙を見て...私は、罪悪感に押し潰されそうになりながら、ひたすらお母さんに謝り続けた。
私が落ち着いた頃...お母さんが改めて声をかける。
「改めて...お帰りなさい。明日奈。」
「...ただいま...お母さん。」
ようやく、言えた...
ただいま...私の家...