この素晴らしいキリアスに祝福を!完結   作:アーク1

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久しぶりのキリト一人称


明日へ

結城家に足を踏み入れた俺たちを出迎えたのは、スグだった。

 

「お兄ちゃん...お兄ちゃんだ。ホンモノだよね?」

 

そう言って、抱きついてくるスグ。

 

「ああ...俺だよ。スグ...ようやく帰って来れたんだ。この世界に。」

 

「ウン...ウン...」

 

スグは、そのまま俺の腕の中で泣いていた。

 

「それはそうと、スグ...学校は良いのか?」

 

スグが落ち着いた頃、疑問に思っていた事を聞いてみた。

 

「お兄ちゃん...私、もう大学生だよ?講義も自分で選んでるんだし、一日位休んだって大丈夫だよ。」

 

「なるほど...って結局休んでるんじゃないか。」

 

「えへへ。でも、私だけじゃ無いんだよ?」

 

「えっ?」

 

「やっほー、和人。」

 

「母さん...あんたもか...」

 

「あら、私はちゃんと有給取ったわよ?スグと違ってズル休みした訳じゃないんだからね。」

 

「ちょっとお母さん酷いよ。」

 

「事実でしょうが。それに、京子さんだけに歓迎会の準備をさせとくわけには行かないでしょ?」

 

まあ、確かにその通りだよな...

 

「それより和人...京子さんが抱いてる子...」

 

「あ、ああ。あの子が俺たちの子供のキリアスだよ。」

 

「キャー、可愛い。京子さん、私にも抱かせて下さいな。」

 

「キリアスちゃん。おばあちゃんですよ。」

 

「むっ。お母さん。私も抱っこしたい。」

 

女性には赤ん坊ってのは人気だな...やっぱり。

 

だが、この認識は甘かった...

このあと、彰三氏が帰ってきた時の溺愛っぷりは女性陣遥かに超えていたのだった。

 

「あ、お兄ちゃん。リズさんたちから伝言預かってるよ?今回の帰郷は家族だけで過ごしなさいって。」

 

「そうか...気を使わせたみたいだな...」

「そうだね。リズたちにも会いたかったけど...」

 

「また、来年には来れるんでしょ?その時は、しっかりスケジュール組んで会いましょうってさ。」

 

リズらしいな...

 

「うん。そうだね...」

 

アスナは、やはり残念そうだった...

ALOにダイブもしてなかったからな...

寂しいんだろう...

 

「アスナ...向こうに戻ったら、またALOで会いに行こう。」

「うん。」

 

俺は、そう言ってアスナを慰めた。

 

そして、その夜...

 

彰三氏と浩一郎さんついでに父さんが帰ってきた。

 

「明日奈~。ホンモノの明日奈だ。お帰り。明日奈。」

「お父さん...」

 

相変わらず熱い人だな...

と言うかリアクションがスグにそっくりなような...

 

「ハハ...まあ、勘弁してあげてくれよ。和人君。今日の為に無理して仕事を切り上げて来たんだ。」

 

浩一郎さんが声をかけてきた。

 

「ええ。こうして生身で再会するのは、6年ぶりですものね...当然だと思います。」

 

「そう言ってもらえると助かるよ。和人君...妹を、よろしく頼むよ?」

 

「はい。」

 

会話が終わるのを見計らって、父さんも話しかけてきた...

 

「元気そうだな。和人。」

「うん。」

 

父さんは、それだけ言って離れていった。

相変わらず無口な人だな...

 

気がつくと、彰三氏はターゲットをキリアスに変えていた...が泣かれてユイに慰められていた...

 

フットワークの軽い人だ...

何となくアスナを見ると目があって苦笑した。

 

そして時間は進み、結城邸には桐ヶ谷家と結城家が集まり、俺たちの帰郷を祝う宴会が催されていた。

 

キリアスは布団でお休み中だ。

 

「それにしても...よく戻ってきたな...和人...」

 

父さんが、そう言って俺の肩に手を置いた。

 

「うん。でも...」

 

俺には少し気がかりがあった。

 

「どうした和人?」

 

「いや...今の俺は二人の子供の『桐ヶ谷和人』と呼べる存在なのかなって...」

 

「どういう事だ?」

 

「うん。この世界の『桐ヶ谷和人』は事故で亡くなってる...埋葬もされてるし戸籍も死亡扱いだろ?」

 

「...ああ。」

 

その時の事を思い出したのか...父さんは少しトーンの落ちた声で返事をした。

 

「今の俺は、肉体的には向こうの世界の物質で作られてるし、向こうの俺は『桐ヶ谷和人』ではなくて『キリト』なんだよ。だから...」

 

そう...俺もアスナも、この世界にとってはもう存在しない人間だ。

 

だったら、今の俺はこの世界において、何者なのだろう。本当に『桐ヶ谷和人』と胸を張って言えるのか...

 

「和人...」

「お兄ちゃん...」

 

母さんやスグも心配そうに見ている...

折角、こうして戻ってきたのに、家族を心配させるなんて...ダメだな...俺は...

 

「和人...これは俺の持論になるが聴いてくれ。」

 

俺の悩みを聴いた父さんは、そう言って話し出した。

 

「個人を認識するものはなんだと思う?名前か?見た目か?その人間の考え方か?」

 

どうなのだろう?自分でさえ自信を持って自分だと言えない...

 

「俺はな、周りの人間との関わり...思い出だと思う。和人が俺たちの子供になった日...俺は忘れていない。和人が自分で自作のパソコンを組んだと聞かされた時は驚いたよ。それに、和人がどこからか戸籍を調べて俺たちの本当の子供じゃないと知って距離を置くようになったのも、SAOに囚われ戻って来てから、人付き合いが良くなったのも...」

 

「俺がお前を和人と認識するのは、その時の思い出や気持ちを覚えているからだ。お前にはその思い出が無いのか?」

 

俺は首を振った。

覚えてる...桐ヶ谷家で過ごしてきた思い出を...

 

そうか...だから俺はこの人を父さん...『桐ヶ谷峯嵩』と認識しているのか...

 

「だったら、お前は『桐ヶ谷和人』だ。向こうの世界では『キリト』なのだとしても、俺にとっては、手のかかる息子の『桐ヶ谷和人』さ。」

 

「...ありがとう...父さん...」

 

面と向かって言うのは恥ずかしくて、俯きながら、俺はそう言うだけで精一杯だった。

 

「そう言えば、ALOなのだがね...結婚式イベントが見事に当たって、ログイン数が20%も上がったのだよ。」

 

しんみりした場を変えようと、彰三氏が話を変えるために、言ってきた。

 

「へえ、それは凄いですね。」

 

アスナの妊娠、出産であまりログイン出来てなかったからなぁ...

 

「うむ。あの後少し仕様を変更してな、初心者でもこなせるクエストを達成することで、結婚式を挙げられるようにしたのだよ。」

 

「金銭的に、結婚式を挙げられない若者をターゲットにしても、結婚式だけ挙げて、後は放置ではつまらんからな。結婚式を挙げる為のクエストを行うことでALOの楽しさを知って貰えば、長期的なユーザーの取り込みにもなるしな。ハッハッハ...」

 

「なるほど...良い考えです。」

 

「でも、それだと現実世界の結婚式場とかの売り上げが落ちて、何か言われないかしら?」

 

アスナが心配して聞いた。

 

「それが、そうでもないのだよ。ALOで結婚式を挙げたプレイヤーたちは、むしろ現実世界でも結婚式を挙げたいと思う者が多くてね、むしろ現実世界でも結婚式を挙げる人は増えているのだよ。」

 

「それなら良かった。」

 

「それにしても...出来ることなら、現実世界でもお前たちの結婚式をしたいものだよ...戸籍も無く、年に一日しか来れないのでは無理だがね...残念だ...」

 

彰三氏が寂しそうに話す。ALOで結婚式ん挙げて貰った俺達だけど、現実世界でも、祝いたかった...そう思ってくれているのだろう...

 

「お父さん...」

 

アスナが心配そうに声をかける。

 

「せめて、向こうの世界の結婚式に出席...いや見ることが出来たらな...」

 

「出来ますよ?」

 

彰三氏の語りに、以外な答えを返したのはユイだった。

 

「本当かね。ユイ君。」

 

「はい。お爺ちゃん。知っての通り、私は向こうの世界にALOでの私の能力を持っていっています。その中には録画機能もありますから。」

 

「そ、そうなのか?ユイ。」

 

「ハイ、パパ。向こうでは録画した映像を再生する媒体が無いため、あまり意味の無い機能ですが、この世界には再生器機がたくさんありますから...」

 

「ユイ君。頼むよ。」

「わかりました。」

 

俺達の...拷問が始まった...

 

「うわぁ...アスナさん綺麗...ALOとはまた違った美しさね。」

 

「うぅ...恥ずかしい...」

 

「おぉ。和人君も立派にスピーチしておるな。」

 

誰か...この拷問を止めてくれ...

家族の前で、自分達の結婚式を見せられらなんて...恥ずかしさで死んでしまう...

 

「いやぁ。堪能した。世界中の人々が明日奈たちの結婚式を祝ってくれたのだな。嬉しい限りだ。」

 

「それにしても、向こうの世界って本当にゲームの世界みたいだね。エルフにドワーフに獣人まで...」

 

各々が感想を言っていく...

ようやく、解放された...そう思ったのだが...

 

「おお、そうだユイ君。ALOの結婚式の録画はないのかね?」

 

「あります。」

 

まだ、終わっていなかった...

 

そして、結婚式鑑賞会と言う、俺達にとっての地獄が終わった頃、

 

「ユイ君。このALOの結婚式、ダビングは可能かね?」

「ハイ。可能です。」

 

「和人君。このALOの結婚式の映像を宣伝で使いたいんだ。構わないかな?」

 

「ええ!?」

「ちょっとお父さん...」

 

「あら、良いわね。これだけ感動する映像なんだもの。良い宣伝になるわ。」

 

京子さんも賛成のようだ...

 

「...ハイ。どうぞお好きに使ってください...」

 

「おお、そうか。それじゃあ早速広報部に回そう。」

 

義理の両親に逆らえるほど俺の心は強くない...

それにどうせ、それを見る機会も無いんだ...大丈夫だろう。

 

...このあと、ALOで会ったリズたちに、散々からかわれるのを、この時の俺は知らなかった...

 

そうして、夜は更けていった...

 

次の日、俺と明日奈、ユイ、キリアスは俺の本当の両親の墓の前に来ていた。

 

同行してくれたのは、母さん、スグ、それと京子さんだ。

 

「この墓の中に、俺を生んだ父さんと母さんがいるんだな...」

 

何となく呟いた...

 

「和人も入ってるわよ?」

 

.........そうだった...でも、いくらなんでもブラックユーモアが過ぎませんかね...母さんや...

 

微妙に引きつった顔をしつつ、お参りを済ませる...

 

父さん、母さん...

俺は、桐ヶ谷家に引き取られて、ちゃんと幸せになったよ。

この世界では長生き出来なかったけど、こうして最高の奥さんと、子供にも恵まれて今はとても幸せなんだ...

 

だから安心して下さい...

 

『和人...幸せにな。』

『私たちは、見守っているわ。』

 

幻聴なのか...そんな声が聴こえた気がした...

それでも...

 

ありがとう...俺、頑張るよ...父さん、母さん。

 

そうこうしていると、俺達の身体が光だした。

...時間のようだ...

 

「お別れみたいだ...」

 

「和人、元気でね。またALOで会いましょう。」

 

「ああ。」

 

「お兄ちゃん...」

 

「スグも元気でな。」

 

「うん。」

 

「和人君。明日奈の事...よろしくね。それに、子供も出来たんだから、あまり無茶はしないようにね...」

 

「ハイ。肝に命じて起きます。」

 

「それじゃあ、皆...またALOで会おう。」

「私も、もう少し落ち着いたらログインします。」

「皆さん、お元気で。」

「ダー。」

 

キリアスも何かを感じたのか挨拶を交わしたようだ。

 

そうして、俺達は異世界に戻ってきた...

 

きっと、まだまだいろいろな事があるだろう。

それでも、俺達はこの世界で生きていく。

アスナと一緒になれたこの世界で。

 

アスナとユイとキリアスと家族皆で...

 

明日に向かって...

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