BanG Dream!リレー小説   作:ぽぽろ

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前の2人で迷惑を被ったサラ☆シナさん。
脅威の文字数で、これを纏めてくれました。
ほんと感謝やで~
あと2人いるけどね


白鷺千聖リレー小説 サラ☆シナVer.

 

 

 

1

 

 

 

 

 

『更に私に付き合ってもらうわよ』……、そう言われてから幾程の時が経っただろうか。

 

待ち合わせをしていた時には高く照りつけていた太陽も今は高さが落ち、その顔は茜色の残照に染まっている。闇の帳が太陽を放射状にジワジワと囲み、街には既に夜の気配が迫っていた。

 

 

「…………………」

「…………………」

 

 

昼間のハプニングの際の一言の後、花音さんを自宅へ帰して何処かに案内するかのように僕の前を歩く白鷺さん。結構な時間を歩いたが、未だに何処に向かっているかは分からない。

 

やっぱり……怒ってるんだろうな……

 

陰鬱な雰囲気が俺と白鷺さん、二人の間に広がる。彼女が何処に向かっているのか分からなくても、それでも今の彼女の機嫌が悪いことくらいは分かった。

後ろからではその顔は見えないけど、白鷺さんがどんな表情をしているかは想像するに難くない。

 

 

「何年……かしらね」

 

 

すると唐突に、僕が心中で後ろめたいため息をついていると、前方の白鷺さんがポツリと約半刻ぶりに言葉を発した。

僕はそれを聞き、重たいため息を漏らす。………何年、か……。

 

 

「3年以下の懲役、又は禁錮ってところですかね」

「?、なんの話をしているの?」

 

 

え?懲役の年数じゃないんですか?公猥の。

絶望な未来を直視して顔を覆いながら返すと、白鷺さんは訝しげな表情と声で此方に振り向いた。

 

 

「……何を勘違いしてるのか知らないけれど、私が言ってるのは私たちが出会って何年かってことよ」

「あ、あーなるほどそういう……僕はてっきり」

「?、てっきり?」

「い、いえ何でもないです。気にしないでください」

 

 

な、なんだ昼の事じゃなかったのか……。

てっきりその事だと思って腹を括ったけど、当の白鷺さんはどうやら気にしている様子ではなかった。再び前に向き直り歩を進める。

 

 

「……怪しいわね。何か後ろめたいことでもあるの?」

「いや?ないですよ」

「ほんとに?」

「ほ、ほんとです。僕嘘ついたことない……しょ、正直者なんで」

 

 

気にしてないなら余計な波風はたてまい。

僕は額に汗を垂らしながら下手くそな愛想笑いを浮かべ、彼女に着いていく。

 

 

「正直者……そうね、それはそうかもしれないわ」

「あはは……」

「人目を気にせずいっつも花音といちゃいちゃいちゃいちゃ、見てるこっちの身にもなって欲しいわね」

「あーその……すみません」

「……私とは違うわ」

「はい?」

「……羨ましい」

「?、白鷺さん?」

「……いえ、なんでもないわ」

 

 

ぽつりと言った白鷺さんの言葉に反応する。その尻すぼみになっていく小さな呟きは実に彼女らしくない。どこかいつもの調子がないように思える。

気の所為か言葉だけではなく、一瞬だけ見えた表情にも影が差していたような気がした。

 

 

「アレ……私が一体“どういう気分”で見てると思う?」

「え?な、なんです急に」

「いいから」

「えぇ……えーと、まあ、呆れてそうですよね」

「呆れ……そう、ね。そうかもしれないわ」

「ん……んん……?」

 

 

気の所為ではなく、話している内にどんどん覇気が無くなる白鷺さんに首を捻る。

先程からの質問や応答に要領が掴めない。

 

 

「……着いたわよ」

「……え?」

 

 

些細な違和感に眉をひそめていると、白鷺さんが歩を止める。

それを見て自分もハッとして歩を止めた。

どれくらい歩いたのだろうか。そしてここは……。

 

 

「ここ……もしかして……」

「あら、覚えてるのね」

 

 

着いたという白鷺さんの言葉に周りを見渡す。

もう殆ど太陽も沈み、陽光は既に暗い世界に溶けている。街灯の無機質な光が暗いさざ波に揺らめき闇の水面が仄かな煌めきを放っていた。

 

 

「えぇ。もちろんですよ」

 

 

そして髪にふわり絡みつく潮風と、特有のの匂い。

 

 

「ここで白鷺さん、そして松原先輩と出会ったんです」

 

 

そこは海に隣接する公園、所謂海浜公園だった。

まぁ海浜公園と言っても、そこまで大規模なものでは無いんだけど。正直公園と言えるかどうかも怪しい。

海に隣接し、ちょっとした広場と花園があるだけの、本当に小規模な場所。

 

 

「なんてこともない、小さな広場だけどね」

「だけど大事な場所ですよ。僕にとっては」

 

 

それでも、自分にとっては大切な場所だった。松原先輩と白鷺さん、この二人と出会うことのできた思い出の場所。

街灯と一体化している、金属柱で組み合わされた手すりに身をあずけ感慨に浸る。

 

 

「始まりの場所です」

「なるほどね」

「かっこよく言えば開闢の地ですね」

「ダサイわね」

「え?」

「ダサいわよ」

「……白鷺さん、もしかしてセンスな」

「は?」

「い、いやなんでもないです……そ、そう言えばなんで今日はここに?」

「……そうね」

 

 

隣に来た白鷺さんにギロりと睨まれる。ふぇぇ怖いよぉ……。

これ以上刺激するのは良くないと判断し、露骨に話を逸らす。すると白鷺さんはフッと、目線を地に落とした。

 

 

「……さっきあなたが言った通り、ここは私たちの始まりの場所よ」

「?、ですね」

「……そう……だからここしかないのよ」

 

 

口を開きぽつりと呟く。ゆっくりと、陰鬱そうに。

既に沈み切った太陽とは入れ違いに月が昇っているが、満月のはずのその月は分厚い雲に隠れている。故に、彼女の表情は読み取れない。

 

 

「私たちの終わりも……ここしかない」

「………………え?」

 

 

だけど、その発せられた言葉は聞き取ることが出来た。耳を疑うそれに、思わず素っ頓狂な声が出る。

 

 

「あの……今なんて……」

「悠斗君は、花音のことが好きなのよね」

 

 

どこか様子のおかしい白鷺さんに聞き返す。が、彼女はそれには反応せず、また唐突な問いを掛けてくる。

 

 

「え?……えぇまぁ好きかどうかと言われれば勿論嫌いじゃない……好きですけど……」

「そう……そうよね。見てたらわかるもの。あなた達」

 

 

わけも分からずその問いに答える。……やっぱり、わからない。

僕には白鷺さんの意図が読めないでいた。なんだろう……さっきから……終わりがなんたら言った時から彼女の言わんとしてることが理解できない。要領が掴めない。

 

 

「お似合いだわ」

「そ、そうですかね……」

「えぇ。私から見ても……いい感じだと思うもの」

「そ、それは嬉しいですけど……でも僕は──」

「いっ……た……」

「…………!?」

 

 

尚も彼女の真意がわからず、白鷺さんと話す……その時だった。

 

 

「!、白鷺さん?ど、どうしたんですか?」

 

 

突然白鷺さんが、お腹を抑えてうずくまった。

痛烈な声漏れる。少ない街灯の、薄暗い視界の中、膝を崩し、ガクンとその華奢な姿が崩れ落ちる。

 

 

「な、なんでもないわ……」

「な、なんでもないってこと」

「なんでもないって言ってるのよ!触らないで!」

「…………!」

 

僕は慌てて彼女に駆け寄る。しかし白鷺さんはうずくまり俯いたまま拒絶の意を叫んだ。

 

 

「……すいません……」

「……いえ……私こそ……ごめんなさい……」

 

 

大丈夫と彼女は言うが、とてもそうには見えない。明らかにつらそうだ。

……わからない。確かに白鷺さんからは時折辛辣な言葉を貰うが、それでもここまでの拒絶は初めてだ。

僕は未だ胸に引っかかるわだかまりを溜めたまま、腰を落として白鷺さんの背中を手で支えて立ち上がるのを手伝う。

 

 

「なんで──……」

「…………え?」

 

 

肩と背中を支えながら共に立ち上がる途中、突然彼女はそう言った。

 

 

「なんで……花音なのよ……」

 

 

それは、搾り出したような声だった。

 

 

「なんで……!花音、なの……」

「え?あぁそれは以前花音さんが名前呼びの方がいいって。でも──」

「そんなことを言ってるんじゃないのよ!」

「っ!?」

 

 

再び白鷺さんが声を荒らげる。唐突な絶叫に思わずたじろいだ。

すぐ隣の彼女を見る。そして思わず、目を見開く。

満月を隠していた雲が離れ、月明かりが街灯の少ない公園に降り注そそいでいく。

故に今度は彼女の表情が良く見えた。

 

 

「あ、あの……」

「………馬鹿らしい」

「白……鷺さん?」

「ほんと、馬鹿みたい……とんだピエロだわ」

 

 

夜の世界の空を照らす、大きく丸い十六夜の月。

その絢爛な月光は彼女の髪と同じ色。反射する典麗で豪奢な御髪は、闇の世界を優美に彩る。

 

 

「あなたが花音をどう思ってるのか、そんなこと聞かなくたって分かってる……」

「白、鷺さん……?」

「なら……私は?」

 

 

だけどその双眸は……、彼女の瞳は、そうではなかった。

いつも見る度に綺麗だと思わせた、アメジスト宝石のような鮮やかなすみれ色。けれど今の彼女は、その色とはほど遠い。

無意識に後ずさる。正面に向き合った白鷺さんの、その瞳……

 

 

「私のことは……どう思ってるのかしら」

「───…………!?」

 

 

それは……、黒くて黒い──……ドス黒い。

その奥にはふつふつと燃える、真っ黒な深淵が佇んでいた。

 

 

「あなたは少し大袈裟なところがあるし……天才子役?演技派女優?どうせそんなところじゃないかしら」

「白鷺さん ……どうしたんですさっきから……」

「……笑わせるわね」

「は、はい?」

「ただ、嘘つきなだけよ」

「白鷺……さん?」

「自分の“恋”にすら演技して、素直になれない性根の悪い女……」

 

 

彼女のあまりにもの変わり様に唖然とする。

フラリと身体を揺らす白鷺さん。手すりに身体を預け自棄的に、自嘲的に笑う。

 

 

「それが、私よ」

「さ、さっきから何言って……どうしたんです……か?」

「悠斗君、これ」

 

 

十六夜の満月の下、淀んだ瞳を此方に向けて逆三日月に口角を上げる白鷺さん。そんな彼女は困惑する僕をよそに、4つ折りにされたA4サイズの紙をハンドバックから取り出した。

 

 

「なんだと思う?」

 

 

それを、此方に渡す。

 

 

「……?、なんですかこ──……れ……!?」

「……びっくりしたかしら」

 

 

そして僕はその手渡された紙を見て言葉を止めた。否、止めさせられたという方が正しいか。

書かれている大量の文字群が、渋滞を起こして視界に飛び込んでくる。なんだ……なんなんだこれ……。

そこに書いている内容をすぐさま理解することは出来なかったけど、その紙が何を意味したものなのかは瞬時に分かった。

紙を持つ手が震えじんわりと湿る。それとは対照に瞳孔は開き、どんどんと乾いていく。

僕は目を見開いて明らかな動揺を表に出していた。

 

 

「ぇ…………?」

 

 

その紙はドラマなんかではよく見る、けれど実際の生活ではまずお目にかけないものだった。

 

 

「十二指腸潰瘍なんですって」

 

 

彼女の、病状の診断書だった。

 

 

「じゅ……十二指腸潰瘍……?」

「えぇ。結構深刻らしいわ」

「なんで……」

「医者が言うには……過度なストレス」

「スト、レス……?」

 

 

ぼろぼろと言葉崩す。

そんな狼狽する自分とは裏腹に彼女はあっけらかんと答えた。

些事のように、他人事のように……まるで諦めたかのように彼女は笑う。

 

 

「もう……ダメかもしれないわね」

「ストレスって、やっぱり仕事が……」

 

 

分からない……全然わからない。なんで十二指腸潰瘍なんて……。

確か十二指腸潰瘍は胃潰瘍と同じく、粘膜による防御の働きと胃酸による攻撃とのバランスが崩れることで発症する病。原因は遺伝的要因も関わっていることもあるけれど、大方はストレスが要因になることが多いと言われている筈だ。

 

 

「お仕事は関係ないわ。女優業もパスパレも、やりがいがあるもの」

「な……っ」

 

 

だから仕事……学生と女優業を両立している面からの疲れが要因かと思っていた。

けれど、彼女はそれを否定する。

仕事じゃないなら……一体何にストレスを……。

 

 

「じゃあいったい、何が……」

「………………………」

 

 

僕は必死に頭を回す。足りない頭を、彼女の為に。

 

 

「…………分からないの?」

「…………え?」

 

 

そんなふうに思案して、原因究明に没頭していた、その時だった。

 

 

「…………そう。ここまでは言っても“あなた”はわからないのね……」

「…………は?」

 

 

白鷺さんがまた声を掛けてきた。それに対して我とはな無しに間抜けな声が漏れる。彼女の言葉に耳を疑った。

 

 

「いや………え………?」

 

 

別に白鷺さんの言葉を聴き逃した訳では無い。短く区切られた一言は確かに耳朶に届いた。

けれど、発せられたその声は、びっくりするくらい冷たく、そして低い。

本当に彼女が出したものなのかと、僕はそれが信じられなかった。背中に汗が流れる。まだ夏にはなっていない筈なのに、涼しい夜の筈なのに、僕の身体は冷たい雨にうたれたように冷えていく。

 

 

『ここまでは言っても“あなた”はわからないのね』

 

 

つい先程の白鷺さんの言葉を反芻する。

彼女は確かにそう言った。……まるで、僕に原因があるかのように……。

 

 

「本当に……呆れるわ……」

 

 

白鷺さんは、そう言ってゆっくりと右手を前に上げる。頭を僅かに右に傾ける。

正面に立っている彼女の伸ばされた人差し指は真っ直ぐに此方を指していた。

 

 

「私が……いったい“どんな気分”で──」

「────…………っ」

 

 

風の音も波の音も聞こえない。潮の香りも匂わない。目の前の、彼女以外の情報は全てシャットアウトされていた。

月明かりの下で風が髪を揺らす。白鷺さんの金色の前髪が揺れる。

 

 

「私──、」

 

 

揺れる髪の下で、瞳が姿を覗かせる。昏く……淀んだ、その瞳を。

 

 

「私、あなたのこと……悠斗君のこと、好きなのよ」

「……………………………………………………は?」

 

 

その昏い宝石は僕の姿を、瞳を、一心に捉えていた。

 

 

全ての、始まりの海浜公園。

 

 

僕はその場所で、白鷺さんから告白を受けた。

 

 

 

 

 

 

2

 

 

 

 

 

「この身体が朽ちるくらい、私はあなたを愛してる」

「ちょ、ちょっと待ってください……?」

 

 

世界が止まったのではないかと錯覚した。白鷺さんを捉えた視界が、ぐらりと歪む。頭を鈍器か何かでぶん殴られたのではないか。

 

 

「なんで──」

 

 

ぶつり、ぶつりと途切れさせながら拙く言葉を紡ぐ。

 

 

「なんで僕を……」

「……おかしいかしら」

「だって僕は千聖さんに好かれるようなことなんて──」

「……理屈じゃないのよ」

 

突然の告白に狼狽する。憧れの先輩に……ずっと焦がれていた人に告白されたのに、脳内を占めていた感情は喜悦とは違っていたら。

白鷺さんは……僕を邪険にしていたんじゃなかったのか。そもそもなんで十二指腸潰瘍なんて。

 

 

「理性でも……、理屈でもないの」

 

 

なんで……そんな目をしているのか。

白鷺さんはそんな困惑する僕が想定内だったのか、ひどく落ち着いたように言葉を紡ぎながら一歩ずつ此方に歩み寄る。

すぐ近くまで……吐息が触れ合うまで近づくと、彼女は僕の背中に手を回して力強く抱きしめる。

 

 

「これで分かるかしら?」

「どうして……」

「仕方ないじゃない。好きなのよ」

 

 

これも一種の病なのかもしれないわね……そう呟きながら僕の胸に顔を埋める。華奢な身体から伝わる温度はあまりに冷たい。

 

 

「胸がきゅうって熱くなって、顔が火照って……悟られないよう私はあなたの前で素っ気ない態度をとるしかなった」

 

 

けれど、布数枚だけの、薄い境界線から伝わる鼓動は確かに熱く脈動していた。

鼻腔をくすぐるシャンプーの香りと密着して伝わる心音に、再びくらりと理性と視界が揺れる。

 

 

「でも幸せだったわ。内心、子供みたいにはしゃいでたもの」

「……………………」

「これが初恋何だって。無邪気にね」

「初恋……僕が……」

「ええ。でもそんな幸せな心地は長くは続かなかったわ」

「え?」

「……花音よ」

「!」

 

 

突然出てきた松原先輩の名前に心臓が飛び跳ねる。白鷺さんも背中に回していた腕に込める力が強くなった。

 

 

「分かってるわ……自己中な事を言ってるのなんて。けど……“どんな気分だったと思う?”」

「──…………っ!」

 

 

胸の中で小さくか細い悲痛な声が漏れる。

そして僕はそれを聞いてやっと理解した。

 

 

「あなたのことは好き。けど花音のことも大切……」

 

 

そう……だったんだ……。

唇を噛み締める。血が滲んでいくのにも構わず、己の浅はかさを悔いた。

本当に、僕はこの人の事を何も知らない。演技のためとはいえ、仮にも彼氏なのに。

 

 

「私が不器用で、素直になれなくて、それで勝手に自滅して……」

「……もういいですよ」

 

 

なんでここまで言われなくちゃ分からないのか。少なくとも告白された時点できづくべきだった。

 

 

「妬んで、嫉んで、恨んで……」

「……白鷺さん……もう、やめましょう」

 

 

さっきの言葉も十二指腸潰瘍の原因も全て、この──

 

 

「でも友達だから……思い治そうとして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

けど……結局、最後まで嫉妬したわ」

 

 

友人の……松原先輩への“嫉妬心”だったのだと。

 

 

「白鷺さん……」

「ねぇ…私はどうすれば良かったの?」

 

 

身体を蝕んでいた毒にも似た恋情。白鷺さんは松原先輩との友情と板挟みになって、ずっと苛まれていたのだ。それは自らの身体を壊すほどに。

 

 

「教えてちょうだい……私は.......私は、どうすれば良かったの.......?」

「───────……………」

 

 

いつの間にか嗚咽が聞こえていた。

ふと目線を下に落とす。白鷺さんの淀んだ瞳からは涙が溢れ、頬を濡らしていた。

僕はそれを見ても何も言えなかった。出来なかった。涙を拭うともできず、ただ彼女の悲痛で静かな慟哭が、黒い海に吸い込まれるように消えていく。

 

 

「ねぇ、最後に……私のお願いを聞いてくれないかしら……」

「……最後?」

 

 

そしてやっと口が開いた。我に返る。

 

 

「なんで最後なんですか……」

「悠斗君も私と付き合ったままじゃ嫌でしょう?」

「そ、そんなこと──」

「明日からは、私は“女優”の白鷺千聖に戻る」

 

 

彼女の言った言葉の意味を噛み締め反芻する。ようやく意味がわかった僕は、目を見開き聞きかえす。

いつの間にか白鷺さんは僕の背中から手を離し、半歩ほど離れていた。

 

 

「だけど今日は……今夜だけは……“貴方だけの”白鷺千聖でいたい……」

 

 

淡い月明かりに照らされた2人の影が、地面に伸びて交差する。ゆっくり、ゆっくりと、涙ながらに宣告した。

 

 

「貴方が本当は花音のことが好きなのは知ってるわ……」

 

 

そして、また彼女は無理に笑う。嗚咽混じりの、掠れた声で。

細めた目じりからは水滴が溢れる。月光に反射した一雫の涙が冷たい石畳の上に落ちて、消えた。

 

 

「でも今夜だけは、一緒にいて欲しい……」

 

 

僕達の間に、冷たい一陣の風が通り抜ける。

 

 

「それで、もう……諦めれるから……」

 

 

その風は、僕らを分かつ、悪魔からの(いざな)いのようだった。

 

 

 

 

 

3

 

 

 

 

 

 

涙ながらの、彼女の告白。最後の言葉。

 

 

「…………………………」

 

 

僕は、それをどんな顔をで聞いていたのだろうか。正直わからない。

最初は確かに愕然として聞いていたのだろう。ただ今はどうかと聞かれれば、どうなのだろう。ぐるぐると色々な感情が錯綜する。

 

 

『それで、もう……諦めれるから……』

 

 

それでも、その最後の言葉を聞いた時、ふと1番に頭を席巻したのは──

 

 

「──白鷺さん」

「な、に……かしら」

 

 

──ちょっとした、怒りだった。

 

 

僕が名前を呼ぶと、収まってない嗚咽と共に返事が返ってくる。

ならば、彼女は吹っ切ったのか。本当に?覚悟を決めたのか。本当に?ならば本当に、これでもとの白鷺さんに戻るのか?最後?何が最後なのか?

 

 

「僕……言いましたよね。さっき……」

 

 

彼女は自分のことを自己中だと言っていたけれど、言い得て妙だ。……人の気も知らないで、本当に自分勝手な人である。

 

 

「僕は……嘘ついたことない、正直者だって」

 

 

顔を上げる。そこには深い悲愴に囚われた、僕が憧れたひとりの少女。

 

 

 

 

 

 

 

終焉に(いざな)う悪魔にも、覚悟を決めた白鷺さんにも悪いけど、

 

 

 

 

 

 

 

それでも……、それでも僕は────。

 

 

 

 

 

 




次書く人大変そう…
次は松原悠斗!どれだけ、とっても!最高に!エクセレントな!話を書くのかwktkですわ~
次のリレーは3グループに分けるのですが、ぽぽろが3グループ分書かないと行けないので、読者さん誰が手伝って…Twitterかこれのメッセージに送ってほちい…


参加者
メログレさん
https://syosetu.org/?mode=user&uid=268660

キズカナさん
https://syosetu.org/?mode=user&uid=243404

サラ☆シナさん
https://syosetu.org/?mode=user&uid=163034

白露型月音さん
https://syosetu.org/?mode=user&uid=222811

松原修造(松原悠斗)さん
https://syosetu.org/?mode=user&uid=253778

ぽぽろ (Twitter)
https://twitter.com/poporo0820?s=09

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