やはり俺がシンフォギアの世界にいるのは間違っている 作:にゃにゃにゃす
優しく、温く見守っていただけると嬉しいです。
やはり俺がライブに行くのは間違っている
ーーどこに居ても探して見つけて、会いに行く!!
それは幼かった俺が彼女と交わした約束。
初恋だった。
たぶん今でも好きなのだろう。
彼女が好きだった。
彼女の笑顔が、優しさが……
そして歌が大好きだった。
ーーどこに居ても探して見つけて、会いに行く!!
俺こと比企谷八幡は、彼女とした約束を未だに果たせずにいる。
君は今、どこにいるんだ?
「ハチ君、おーきーてー!」
「……ぅん?ひゃっ!!」
「わひゃぁ!?」
俺の悲鳴に彼女は驚き、悲鳴の二重奏が車内に響き渡る。
他の乗客から冷ややかな視線が俺たちへ集中する。
……やばい、恥ずかしい。
いや、だって起きたら目と鼻の先に美少女の顔だぞ?
そら悲鳴だって上げるだろ?
「ちょっと2人とも電車の中だよ!」
実に情けない。
この場で1番年下の妹の小町に小声で叱られてしまった。
しかも、小町が恥ずかしいよ〜。と言われて尚申し訳ない気持ちになっちゃいました。
小町、すまん!!そして、俺も恥ずかしい!
でも恥ずかしがる小町が超可愛い。
あ、嘘です。
だから、そんなゴミを見るような目でお兄ちゃんを見ないで。
さて、先ほどの美少女こと立花響は、俺の隣りで困った様に笑っていた。
「あはは……小町ちゃん、ごめぇ〜ん。寝る前にハチ君が下車する二駅前で起こしてって言ってたから……。」
「いやいや、響ちゃんは悪くないよ。まったく!ゴミぃちゃんが気持ち悪…変な声出すからいけないんだよ?小町的にポイント低い!」
「ちょっと小町ちゃん。言い直す前は何を言おうとしたのかな?」
え?マジで?マジなの?
愛する妹に気持ち悪いって言われたんですけど?
超傷つくんだけど……
「大丈夫だよ!ハチ君の声はイケメン?ボイスだよ!幼馴染みの私が保証するよ。」
「おい何故に疑問系になった?イケメンの直後に疑問系になったよね?ね?」
「……いやぁ〜気ぃのせいだよ。ほら、それよりも…ほらほら!会場が見えてきたよ!」
元気いっぱいわくわくモードの響に即され窓の向こうに目を向ける。
景色が流れていく中で、一際目立つ大きなドーム状の建物が見えた。
先ほどの響が言っていた会場とは、このドームの事であり俺達3人の目的地だったりする。
本日は話題沸騰、人気絶頂、知らない人はいないであろう。
天羽奏と風鳴翼のツインボーカルユニット、通称ツヴァイウィングのライブ公演日なのである。
人気絶頂と言われてるだけあって、会場付近の駅も道も人、人、人。
マジでどんだけ人気なんだよ…。
「……人がゴミの様だ。」
「バルス!」
流石は幼馴染み。
俺のくだんない言葉に即座に反応してくれるとは。
「ちょっと2人ともホント小町恥ずかしいから止めて!……絶対に未来ちゃんに言いつけてやる。」
「「ごめんなさい。それだけは勘弁してください。」」
2人同時の謝罪に小町はため息を大きく吐いた。
だって、小町を困らせたなんてアイツに知られたら……
うん、正座で説教されている姿が鮮明に浮かぶ。
「まったく…。でも、未来ちゃん来れなくて残念だね。」
「うん。本当は未来も観たかったと思うんだけどね…。」
「婆ちゃんが怪我したんなら仕様がねぇよ。それになんだかんだアイツは優しいからな。怪我人放置してまで遊ぶなんてできないだろ。」
「ふぅ〜ん……。」
ん?何で響さん不機嫌気味なの?
「ほっほ〜ん…。」
そんで小町はムフフッと笑ってるんですけど…なんなの?
って、ヤバイ!人の流れがこちらに!
咄嗟に2人の手を握り歩きはじめる。
「2人とも俺から手を離すなよ!あっという間に人混みに流されちまうぞ!」
「お、お兄ちゃんがお兄ちゃんしてる!今のは小町的にポイント高い。」
「響的にもポイント高いよ、ハチ君!」
そのポイント制は一体なんなの?
ポイント貯まったらどうなるの?
など、1人思いながらも視線は辺りを見渡していた。
視線はいつも何処でも、1人の少女を探してしまう。
人が多い場所でならば尚更、探してしまうと言う所謂癖である。
この癖も自然なモノとなってしまったかぁ……。
依然と視線は周囲に向けてまま歩いていくこと数十分。
会場に到着した。
が、やはりと言うか周囲は人だらけ。
はぁ……。
「……帰りたい。」
「まだライブ始まってすらないよっ!?」
「やっぱりゴミィちゃんだ…。もう、未来ちゃんの分まで楽しまないとだよ。」
そうなんだけどさ……。
人混みから妹達を守る為に体張った俺のライフはゼロなのよ……。
しかしながら、2人のテンションは時間が経つにつれて上昇していく。
そりゃ、そうだわな。
だって時間が経てば経つ程ライブ開演に近づくのだから。
そして、皆が待ち望んだ時がきた。
空から片翼の天使達が音楽と共に舞い降りのだ。
その姿は男の俺から見ても凛々しくて格好良く、また可憐で美しかった。
つい見惚れてしまった……。
歌は圧倒的な迫力に驚いた。
CDでは聴いていた彼女達の歌声は綺麗と言う印象だったのに、生では力強さの方が勝っていた。
小町と響は、姿を見せたツヴァイウィングの2人を惚けて見ていたが、いざ歌が始まると楽しそうにサイリウムを振り回していた。
てか、俺の分はないの?
小町ちゃん、なんで4本も振り回してんの?
……まぁいっか…楽しそうだし。
響なんて目がキッラキラに輝いてる……のに、なんかこの子モジモジしてるんですけど。
ふと視線が合うと彼女は口パクで告げてきた。
トイレ……と。
ライブ前に行っとけよと思いながらも無言で頷く事しかできなかった。
ステージに視線を戻すとキレのあるダンスと圧倒的歌唱力で観客を魅了していた。
実際、ライブはボッチの俺でも楽しく感じた。
ツヴァイウィングの2人の歌が会場を支配しているのではなく、歌で観客と一体化している様な感覚になる。
《見ぃ〜た事なぁい世界の果てへ〜…♪》
突如ドームがの天井が開放された。
うぉっ!?夕陽が眩しい!
ライブの盛り上がりはスタートから徐々に上がっていき、最高潮まで達すると言うタイミングで
ーーゾクッ!
背筋が冷え、嫌な汗か流れてた。
…知っている。
この感覚を俺は知っている!
目に意識を集中し、奴らの出現地ポイントを特定する。
俺は素早く小町の腕を掴み会場の出口へ駆け出した。
いち早く最愛の妹を安全な場所へ避難させる為にー
「ちょっとお兄ちゃん!何をー」
「いいから走れ!くそっ…頼む出てくれ!」
携帯で響に電話するが中々繋がらない。
嫌な汗が頬を伝う。
頼む出てくれ……頼むからっ!!
「只今、お繋ぎすることがー」
くそったれ!
会場の出入り口付近に着いた。
俺は小町に俺の財布を押し付け、停車中のタクシーに押し込む。
「ねぇ!お兄ちゃ「小町、黙って聞け!ノイズが出る!おれの財布は預けるからタクシーで駅方面へ向かえ!俺は響を探してー!?」
それは凄まじい爆発音だった。
ライブ会場での爆発音は、空を震わせ、地を揺らした。
続いて悲鳴や雄叫びが背後から聞こえてきた。
振り返ると空に向かって灰色の煙が舞っていた。
間違いなく会場内は地獄と化しているであろう。
何が起きているのか、まるで理解できてない小町とタクシードライバーは口を開いて呆けていた。
「運転手さん駅まで!早く!」
「え?…あ、あぁっ!」
俺の叫びに反応し、運転手はタクシーを発進させた。
これで、小町は安全だ。
あとは……
「響…今、行くからなっ!」
歓声は悲鳴に、音楽は破壊音に成り果てたライブ会場。
そんな地獄と化した場所へと俺は駆け出した。
ーー……
ライブ開演30分前
私は誰と話すでも無く、物陰に隠れるように蹲っていた。
この時間は正直苦手だ。
スタッフは本番前の最終確認しているし、だからって私ができることがない。
リハーサルは完璧だった。
やれる事はやったつもりだ。
なのに不安はいつも開演前にやってきて、私を緊張させる。
フードで顔を隠して緊張しているのが、知られない様に……。
「間が持たないって言うかなんて言うかさ…開演するまでのこの時間が苦手なんだよね〜。」
そう言って目の前で脚を組み、座ったのは私のパートナー、天羽奏だった。
この時間が苦手な事は同意だ。
ただ、奏は私と違っていつもの彼女だった。
つまり緊張など一切していない。
「こちとらさっさと大暴れしたいのに…そいつもままならねぇ。」
「そう…だね…」
私の返事に奏は怪訝な表情に。
しかし、それは一瞬でいつもの意地悪な表情になる。
「もしかして翼…緊張しちゃったり?」
「-ッ!あ、当たり前でしょ!…櫻井女史も今日は大事だってー」
ペチンッと額に軽い衝撃が…。
いきなりの事に驚き、言葉が止まる。
「かぁー!真面目が過ぎるねぇ〜。」
「奏、翼。ここに居たのか。」
「司令…」
「これまた源十郎の旦那。」
私たちに話しかけて来たのは、特異災害対策機動部二課の司令官である風鳴弦十郎。
私の叔父様だ。
「分かっていると思うが今日は「大事だって言いたいんだろ?解ってるから大丈夫だって。」
ヒラヒラと手を振り、まるで緊張感のない奏に司令は優しい笑みを浮かべる。
しかし、直ぐに厳格のある表情で釘を刺して来た。
そう。今日は大事な日だ。
完全聖遺物ネフシュタンの鎧、これの起動実験の日でもある。
もし、起動に成功すれば人類は大きな一歩を踏み出す……はずである。
起動に私たちの歌が必要なのが、緊張に拍車を掛けてるのである。
「それより旦那。昨日、ノイズを殲滅した奴はわかったのか?」
奏の真剣な表情になり、叔父様に質問をする。
「…一課の連中から得られた情報だと[黒鬼]のコードで呼ばれる人物だろう。シンフォギアを持たず、ノイズを撃退。しかしシンフォギアに似たような外見。武装は純白の刀身の太刀に黒い鬼の仮面。白髪。…わかってるのはこれくらいだ。」
「チッ…また黒鬼って奴かよ!なんなんだよアイツ…!」
コード【黒鬼】
最近になって表れた、ノイズをシンフォギアも無しに倒すイレギュラー。
私たちに出動要請が出て現場に向かうと、ノイズがただの炭の塊になっている事案が度々発生している。
先に現場にいた一課の方々が言うには、司令の挙げた特徴をした人物が突如乱入してきてノイズを倒している…らしい。
しかも、ただ闇雲にノイズの相手をするのではなく人命優先の戦い方をしている…らしい。
全ては間接的でのみの事柄である為、らしいとしか言えないのだけれど…。
「黒鬼…。でも敵じゃないんですよね?」
「翼、敵の敵が味方とは限らない。とは言え、もし味方だと言うのであれば正直有り難い。」
「んだよ…私たちだけじゃ不服ってわけか?」
「戦力が多いに越した事はなかろう。実際お前達2人には、いつも無理を強いているのが現状だしな。……おっと櫻井くんか……私だ。……そうか、わかった直ぐに向かおう。」
通信端末で司令が櫻井女史とやり取りをしている。
会話の内容は、わからないが検討はつく。
起動実験の準備が整ったのだろう。
案の定、その通りだった。
そして僅か数分後、私はライブステージの上で奏と2人で踊り歌っていた。
観客の熱気が肌に伝わる。
笑顔で楽しそうに私達と一緒に歌っている。
今、私達は観客と歌で一つになっていると思えた。
楽しい!奏となら何処へだっと飛べる。
そう…両翼のそろったツヴァイウィングなら!
なのに……
突如、観客席が爆発した。
「え…?」
「ーッ!ノイズがくる。」
ハッとなり、空を見上げると飛行型ノイズが急降下し、観客を次々と襲い始めた。
下からもノイズが表れみるみる増えていった。
歌は悲鳴に変わり、会場は地獄と化していた。
「飛ぶぞ翼!この場に槍と剣を携えているのは私達だけだッ!」
「で、でも司令からは何も……奏ッ!?」
奏がステージから飛んだ。
勇ましいその背中が、私から遠ざかる。
「Croitzal ronzell gungnir zizzl」
聖詠。
それはシンフォギア起動する為の歌。
躊躇せずに歌い、シンフェギア【ガングニール】を身にまとった奏はノイズに突っ込んでいった。
私も慌てて【天羽々斬】を身に纏い、奏の元へ駆け出した。
眼前にいる大量のノイズを斬り伏せ、蹴り飛ばし蹂躙する。
なんとか倒せてはいるが、敵の数が尋常じゃない。
「ッ!時限式はここまでかよ…!」
隣にいた奏の動きが止った。
空かさずノイズが攻撃してきた。
アームドギアの槍でガードしたが、奏は後ろに弾き飛ばされた。
その時だった。
「きゃぁあッ!?」
上の観客席が崩れ、逃げ遅れた少女が落ちたのが見えた。
少女に気づいた数体のノイズが、彼女に近づいていく。
「あ…あぁっ!」
「んなぁろう!!」
恐怖で動けなくなった少女の元へ容赦なくノイズが襲いかかるも、間一髪で奏がノイズを槍で切り裂いた。
「駆け出せぇッ!」
「う…はぁはぁ…」
少女は落下した時に脚を痛めていた。
片脚を引きずりながらも懸命に逃げきろうとしていた。
そんな少女に追い討ちがくる。
ノイズが体を細めて彼女目掛けて飛び始めた。
「くぅッ!」
「奏!」
奏が槍を高速で回転させ、ノイズの進行を阻害する。
だが、続いて大型ノイズ2体が液体を噴射した。
「奏!!」
「うぅ…あぁああぁぁッ!!」
苦しげに雄叫びを上げ、プロテクターには亀裂が入る。
それでも奏は少女を守る為に攻撃を防いでいた。
急いで奏の元に行かないと!
「響!」
「ハチ君!」
少し離れた場所に少女の名前を叫ぶ少年がいた。
少女は声の主を見つけると嬉しそうに、彼の名前を呼んだ。
その直後だった。
「え…?」
少女の胸元から鮮血が舞い、その身体は後ろの瓦礫へと叩きつけられた。
「響…?響ぃぃいいぃ!」
少年は悲痛な叫びを上げた。
兄、弟か恋人または友人。
どの関係であれ、今起きてる事態は彼にどっと悪夢そのものだ。
「おい、死ぬな!目を開けてくれ!生きることを諦めるな!」
先に駆け寄った奏が少女を抱きかかえ、必死に言葉をかける。
少年は絶望に顔を歪ませ、奏の腕から彼女を奪う。
血が溢れている箇所に脱いだ上着を押さえつけ、出血を妨げてようする。
だけど、血は溢れ出続けた。