やはり俺がシンフォギアの世界にいるのは間違っている 作:にゃにゃにゃす
では本編へ。
「自分の動きを相手に合わせるな。」」
「くぅ…はぁッ!」
「モーションが大き過ぎで、先が見え見えだ。。」
「このぉお!」
まだ薄暗い空の下で、俺の怒号と響の気合いの入った声が反響する。
風鳴邸の広すぎる庭で交差する2つの影。
絶賛模擬戦の真っ只中です、はい。
木刀を持ったまま動かない俺へに痺れを切らした響が猛突進。
うん、速さもあるしパワーもある。でもやることが猪並みだよね。
響には、ミス猪突猛進の称号を進呈してやろう。
後ろへと大きく振りかぶられた拳が放たれる前に、響の懐に潜り込んで背中で体当たりをする。
元々バランスが悪くなっていた彼女は後ろへと倒れてしまった。
「ぐへぇッ!」
まるで蛙が潰れたかのような声があがる。
……うら若き華の女子高生が出していい声じゃないからね?
早朝5時より行われた彼女の修行。
最後は模擬戦を行ったのだが、俺に一撃も入れられないまま終わりを迎えようとしていた。
響の眼前に木刀の先を突き付けると、悔しそうに俺を見てきた。
「しっかし、容赦ないな。意外とスパルタで驚いたぞ。」
模擬戦を静観していた司令にそう言われたが、そんなに意外じゃありませんけど?
「命懸けの戦いに出るんです。この位、普通ですよ。俺なんて師に昼夜問わず襲われる生活を半年体験しましたし。」
マジであれは辛かった。
メシ食っていようが寝ていようが、見境なく殴りかかってくるからな。
しかも、姿はおろか気配も完全遮断してるから、いつ襲われるか分からなくて気が気じゃなかった。
…修行の甲斐あって人の気配や視線に敏感になったんだけど。
「いや、お前と一般人を比べるな。」
え?ダメなの?
とは言え、響が生きる確率を上げる為なら、俺は鬼になってでも彼女を鍛えるまでだ。
「痛たたた…1回も当てれなかった……。」
「そりゃ踏んだ場数が違うからな。響の動きは単調過ぎだ。フェイントを組み込ませてから手数で押せ。それから先手を取りたきゃ相手の動きを予想できるくらいに眼を鍛えろ。」
「あぅ…頑張る…。」
「それから、お前の持ち味は瞬間的なパワーと瞬発力だ。これを武器にして戦うんだな。」
「ムムム…ハチ君、もう一度だけお願いします!」
立ち上がり、構えをとる響。
「時間も時間だからな。次でラストだ。…こいッ!」
「やぁッ!」
先程と同じく真っ直ぐに正拳突きを放つ響に、俺は木刀で防ごうとした。
その瞬間響の眼が怪しく光る。
「そっこだぁぁ!」
「ん!?」
迫る拳は解かれ手首から内に巻かれた。
深く腰を落としながら木刀を手の甲で上へと弾き、そのまま流れる様に一層深く腰を落としながら肘打ちをしてきた。
狙いは鳩尾で完璧と言える様な流れでの攻撃だ。
…だが、まだ甘い。
マッカンでケーキバイキングに興じるくらい甘い!
「ほいっと。」
「なッ!?あたぁッ!!?」
空いてる左手で見事なキャッチングを披露すると、あからさまに驚愕する響だが更に追い討ちとして、打ち上げられた木刀でコツンと頭部に一撃。
「痛ぁいよぉ…。」
「いい流れだったな。あの肘打ちの更に先を考えれれば尚良し。」
「ふぁ〜い…。」
頭をサスサスする響を見て少々驚いていたりする。
先程の助言をした直後から、あんな技を決めようとできるあたり天賦の才能を感じられる。
正拳突きは当たればおの字。
防がれそうになれば、敵の防御を崩しながらの重い一撃へと切り替える。
素人がするには見事過ぎだと思う。
「ひょっとしたら短期で化けるかもしれないな…。」
「化ける?お化け?」
「…君はもう少しだけ頭も鍛えようね。」
ちょっとこの子の頭も鍛えた方がいいかしらん?
◇◇◇◇◇
授業終了のチャイムが学院に鳴り響く。
皆が待ちに待った昼休みが訪れ、周囲は騒々しくなる。
本日は弁当を持参しているので、どこか人気の無い場所へと行きましょうかね。
と、校舎からかなり離れた木々の下で弁当を広げていると…
「お、比企谷は弁当か。一緒食おうぜ!」
キラリンと白い歯を輝かしながらサムズアップする男子生徒が姿を見せた。
…何故、ここがわかった?
彼は日本人離れした容姿をしており、髪は金で瞳は蒼穹。
聞いた話しでは、母がイギリス出身らしい。
無駄に長身で、足も無駄に長く、無駄にイケメン。
無駄の化身!!その名も……
「林か…。」
「いや、"こ"と濁点抜かないで。俺の名前は小林だからな。」
「…失礼、噛みました。」
「違う、ワザとだ。」
「かみまみた。」
「ワザとじゃない!?」
何よりの特徴。
それは、この小林はクラスで唯一のアニメネタが通じる希少な人物であること。
なので、小林と居るとこう言ったアホな会話が度々発生する。
颯爽、いそいそと隣りで弁当を広げ始めた小林。
あ、一緒に食べるのは確定してたのね。
「ハチ君?」
「あ、本当だ。こんな所で食べてたんだ?」
「お?響と未来か。それとこの間の…。」
「安藤創世です。よろしくお願いしますハッチ先輩。」
「は、ハッチ??」
ハッチ先輩だと?
いや、ヒッキーじゃなくて良かったけどさ。
「私は寺島詩織と言います。」
あら、綺麗なお辞儀ですこと。
ついついこちらもお辞儀仕返しちゃったじゃないの。
「板場弓美です。あの、さっきのやり取りは…もしかしてお2人はアニメが好きだったりしますか?」
「まぁ観るな。最近は忙しくてそれどころじゃないけど。」
「俺も。最近はコンクールの練習で観れてない。…早く終わらせたい。」
「とか言いながら、また優勝掻っ攫うんだろ?林の癖に。」
「だから、"こ"と濁「失礼、噛みました。」言わせてすらもらえない!?」
ガガーンと言う音が聴こえそうな程ショックを受けた演技をする林…じゃなくて小林だった。
そんなやり取りを見ていた幼馴染みーズが、大きな目を何度もパチクリさせていた。
「…ハッ!?ハチ君の偽物!?」
「おい、何でそうなった。」
「ハチ君がボッチだったからじゃないの?」
「馬っ鹿、戸塚とか戸塚とか戸塚がいただろ。」
「全部同一人物だよ、ハチ君。」
「つまり、その隣りにいる…………は、林?先輩と仲良くしているから偽物だ!」
シラフの眠りのオッさんよりも、響の推理は酷い。
名探偵ではなく、正しく迷探偵である。
もちろん、迷惑且つ迷走と言う意味で。
「あの俺、小林なんだけど?小林亜咲。」
「相変わらず女みてぇな名前だな。」
「コンプレックスだからな!つーか前から思ってたけど、比企谷って俺にだけ当たり強くね!?」
たぶん、外見はリア充イケメンだが中身がなーんとなく材…材……材なんとかと似ているからだ。
ついつい材…津?と同じ扱いになってしまう。
つまり、俺は悪くない!
「気にすんな林。」
「小林だから。」
「…許せ林、これで最後だ。」
「……嘘だッ!!!」
「わぁー!ナルトにひぐらしネタですね!?小林先輩の鬼気迫る表情、最高です!」
板場はキラキラと輝いた顔で興奮状態に近い。
あと距離も近い。
と、ここで小林の顔つきが鋭く険しくなる。
……え?なにどったの?
「…もう、ゴールしてもいいよね?」
「……。」
コイツ!何つう顔で名台詞吐いてんの!?
と思ったら板場の眼がカッと開かれた。
だよね、怒ってるよね?
あの感動の名シーンをあんな顔で言われたら腹立つよな。
「アカン、これからや!」
乗っかりやがった。
この娘、全力で乗っかりやがりました。
その台詞の掛け合いのタイミングは若干ズレてるし、何よりそんな表情で言ったらアカン!
「Angel Beats」
「天使ちゃんマジ天使。」
「リトルバスターズ!」
「筋肉イェイイェイ!」
まて、リトバスはもっと何かあっただろ。
何故それをチョイスしたの?
そして、その掛け合いはなんなの……
何でKey作品なん?
何を確認し合ってるわけ?
「「CLANNAD」」
そう同時に言ってから小林と板場の鋭い視線が俺へと向けられる。
やれやれ、まったく。
コイツ等は何がしたいんだか…。
「「「人生。」」」
重なる声。
気づけば3人で熱い握手を交わしていました。
◇◇◇◇◇
フワフワと宙に浮いてるような不思議な感覚。
瞳に映るのは何もない薄暗い空間。
自身はギアを纏った姿だし、辺りには誰の姿も見えない。
ここは何処なのだろうか?
「無茶が過ぎるんじゃないか?翼。」
「ー!?」
後ろから不意に暖かい何かに抱きしめられた。
私は知っている。
この暖かさと私を呼ぶ優しい声。
忘れるはずがない。
後ろを振り返る。
……私は嬉しくて笑顔がこぼれた。
「翼。翼はどうしたかったんだ?」
「どう……?私は奏とずっと一緒に歌を歌いたい。」
「そいつは無理かな?私はもう居ない。」
そうだ、もう奏は居ない…。
あの日、私を助けたが為に儚くもその命を散らした。
でも…でも、私は……!
「嫌だよ…!私は奏と居たい!戦いでも奏が居ないと…片翼では!…飛べない…歌えない…戦えない…。」
「違うよ。翼は独りじゃない。片翼なんかじゃないさ。そうだろ?お姉ちゃん。」
「ーッ!!」
「翼には、捻くれ度合いの凄い片翼があるさ。…アイツとの約束、破ったら駄目だぞ。」
約束?
……何だっけ?
私は……一体…何を……
『八幡、私は貴方を絶対に独りボッチにはしないわ。だから、安心しなさい。』
『…うス。』
…ーあぁ、そうだった。
私はあの日、あの子をもう独りにしないと約束したんだ。
大切な人達を失い、それを幼き頃より背負いながら戦っていた。
誰にも頼れず、ひたすらに己を鍛え抜き、孤独に耐え忍び、たった独りで戦ってきたあの子…。
…死ねない。
私を背負わせない。
それだけは、させちゃいけない。
もう、あの子を孤独にさせたくない。
「私は…まだ死ねないんだね。」
「そうさ。私は居ないけどさ…翼は飛べるよ。歌えるし、戦える。そうだろ?……まぁ、もう泣き虫2人が見れないのは残念で仕方ないけどな。」
「奏は意地悪だ。…だけど、私に意地悪な奏はもう居ないんだよね…」
「私がそばにいるか遠くにいるかは翼が決めることさ。」
「私が…?だったら私はー!」
「さ、もう夢はお終いだ。起きな、翼。ハチが待ってる。」
暗闇の中にいる私を眩い輝きが包み込んだ……。
機械の電子信号が聴こえる。
目覚めた私を見て医者達が慌ただしく動き始めた。
寝起きで頭が回らないと思ったが、瞬時に自分が置かれた状況を理解できた。
「先生ッ!患者の意識が…。」
「各部のメディカルチェックだ。急げ!」
「は、はい!」
私を取り囲むガラス。
繋がれたら管の数々。
……絶唱を歌ったあの日から何日が経過したのだろうか?
ふと視線を横へズラすと窓の外は綺麗な青空が見えた。
空が綺麗なんて思ったのはいつ振りだろう?
「…ちょ、貴方何をして!」
看護師の慌てた声がした。
ーバンッ!
「ー?」
私の全身を包み込んだ医療カプセルが、一瞬大きな音が鳴り続いて軽い衝撃に揺れた。
驚き、音源地である右側を見てみると大きな掌が2つ、カプセルに張り付いていた。
犯人と私とで視線が交わる。
普段では決して開かれたる事のない大きさまで目を開き、やがて歪まる顔面。
クシャクシャになった顔で止まる事なく涙を流し始めてしまった。
…実に困った。
この子に、こんな顔をさせたくなど無かった。
馬鹿で不甲斐ない姉だと心から反省しなければならない。
……でも、私は嬉しいとも思った。
私を思い、流れる涙に嬉しさが溢れてくる。
……そっか、私がこの子を大切だと思っていると同じく、この子も私を大切だと思ってくれていたのね。
今もなお泣き続ける八幡に、私は色々な感情が混ざってしまいどんな顔をしたらいいのか分からず困る。
試しに微笑んでみせるも、呼吸器が邪魔で上手く笑えなかった。
泣き虫め。
そう言ってやりたいが声が出なかった。
代わりに一筋の涙が流れたのだった。
「……あぁああぁぁッ!!!」
とあるマンションのリビングで顔を真っ赤にし、身悶えている少年がいた。
昼過ぎの出来事がリフレインし、また苦しみの篭った低い雄叫びをあげながら床を右に左に何度も転がりまくっていた。
何してんの、俺!?
いくら姉さんが目を覚ましたのが嬉しいからって人前で号泣とか…
「ぬぉぉおおぇぁあ!」
何がまだ泣かないだよ……
何が泣くのは全てが終わった時だよ!
泣いてんじゃんか!
しかも人前で!!
俺、馬っ鹿じゃねぇの!?
馬ー鹿、馬ー鹿、馬ぁぁ鹿ぁぁあ!!
他者が目撃すれば、血が出てしまうのでないかと疑うほどに頭を何度も床に打ち付ける。
やがてそれも止まり、ただ時を刻む針の音だけが室内に流れる。
「消えたい。本当に…なんて言うか……そう、消えてしまいたい。」
結局この後は眠る前まで長時間身悶えて、奇声を上げてしまう八幡であった。
せめてもの救いは、マンションの1階であり完全防音であったことだろう。
新のオリキャラ初登場でした。
林……じゃなくて小林亜咲(こばやし あさ)
弄りがいがある材木座の臨時いじられ役でしたね。
チョイチョイと彼は小出ししていく予定です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。