やはり俺がシンフォギアの世界にいるのは間違っている 作:にゃにゃにゃす
何故こんな事になってしまったんだろ?
腹部は熱と確かなる重み、そして痛みを宿していた。
驚愕し、狼狽え、焦った響が俺へと近づいてくる。
来るなッ!
そう言いたいのに声が出ず、耐えきれなくなった身体は前へと倒れていく。
ハハッ……ホント、情けねぇったらありゃしねぇ……。
ーー冒頭の1日前ーー
午前5時。
ここ数日は響の特訓に費やしていたが今日は違う。
まだ朝日も登り切っていないこんな時間から、リディアンの正門に俺と響に二課の黒服さん達は横一列に並んでいた。
「名付けて、天下の往来独り占め作戦♡」
先日、広木防衛大臣を殺害され、今回はその犯人を謙虚する名目で配備された検問を一気に走り抜け、記憶の遺跡へ向かう。
前に司令が言っていたデュランダル移送計画が実行される。
それが、了子さんの言った天下の往来独り占め作戦である。
……作戦名の変更って役所でできたりするかな?
「それでは、各員乗り込め。」
司令の合図で黒服さん達は黒光りのセダンへと乗り込んでいく。
司令はヘリへ乗り込み、早々に空へと登っていった。
「ハチ君、私頑張るからね!」
「元気なのは良いが空回るなよ。それから前に言った通りネフシュタンが居たら「ハチ君に知らせる!」…わかってるなら良い。」
鼻息を荒くする程までに気合いの入った響。
なんか…興奮した猪に見えてきた。
「じゃ気をつけろよ。」
「ハチ君もね。」
響は了子さんのピンクのコンパクトカーINデュランダルに乗り込むの見送ってから、俺はバイクに跨りエンジンを回した。
《カウント開始。5…4…3…2…1…作戦スタートだ!》
司令の合図で、了子さんの車を囲う陣形を維持しながら発車した。
俺は了子さんの車左後方にマークし、周囲を警戒しながら走行する。
今のところ問題なく進んで行き、有料道路に乗り込んだ。
空からは司令達が進路に問題ないか確認している。
何も言ってこないのなら、モーマンタイなのだろう。
海の上に架かる道路を法定速度を超過したスピードで一気に走り抜けていた。
そんな時だった。
《このまま何も起きなければ良いね。》
「馬っ鹿!お前、それフラグだろ!?」
響がフラグを立てやがりました。
そしてー
ーキィンッ!
例の嫌な気配を察知しました。
フラグ回収早過ぎぃ!
「司令に了子さん!ノイズがくる!」
《何だとぉ!?》
《八幡君、出現場所は!?》
「場所はーッ!?」
おい………おいおいおいおーいッ!!
嘘でしょ!?そんなの反則だろ!
「俺たちの真下だ!」
《何ですって!?》
進行方向の道路一部に亀裂が入り崩壊。崩れ落ちていった。
《り、了子さん!》
響の焦った声がスピーカー越しに聞こえた。
了子さんドラテクなら大丈夫だ。
間違いなく、黒服のお兄様方よりも上手い。
ほら、躱した。
と思ったらセダンが1台落ちていった。
ここから、より一層スピードを上げる。
市街地へと入ってからもそれは変わらず一瞬で景色が切り替わっていく。
その街の風景に異様なモノが混じった。
空飛ぶセダンである。
下水道から噴き出した水の水圧で、高々と空へと打ち上げられたのだ。
そして、また1台セダンが犠牲になった。
だが、お陰様でノイズの居場所が特定できた。
《敵は下水道だ!》
「俺がやります!了子さんは一気に駆け抜けてください!」
《…無茶したらダメよ?》
《ハ、ハチ君、私も一緒に「ダメだ。お前はデュランダルとついでに了子さんを守るんだ。」
《え、私がハンバーガーじゃなくてオモチャなの!?》
何で例えがハッピーセットなんですか…。
状況はアンハッピーだろうに。
「こい白雪ノ華!」
疾走するバイクに跨ったまま、白雪ノ華と漆黒の戦鎧を身に待とう。
白雪ノ華を地に刺しながら走る。
「地を抉れ、白雪ノ華!」
俺の命に白雪ノ華が呼応し、地面を衝撃波で吹き飛ばした。
そのままバイクで下水道に飛び込むと、ワラワラと蠢く大量のノイズがいた。
氷で道を作りながら走行し、ノイズの先頭を追い抜きバイクを止める。
【閃光業雷】
雷の刃が迫り来るノイズを次々と切り裂き、炭へと変えていく。
しかし、凄まじい量のノイズだな。
まだまだ沢山いらっしゃる…と?
「この数は面倒だな…。」
こんな閉鎖空間では、あの量を相手に近接戦闘は悪手。
何せ、斬っても斬っても次から次へとノイズが迫ってきてしまうと押されてしまう。
……運のいいことに此処には人も監視カメラもない。
しかも一本道で、低脳なノイズが迫ってくるだけ。
ならばー
「奴らを喰え、白雪ノ華!」
【氷喰絶】
天に向けた白雪ノ華が淡く発光した時、ノイズ共は次々に凍りつき始めた。
やがてノイズ全てを氷人形となった。
そして、砕け散り、跡形もなく無へ帰った。
否、文字通り白雪ノ華がその命を喰った。
これは俺が唯一使える、対ノイズ戦の為に玉藻が編み出した技の1つである。
……奇人で有名な三代目様が残した書物に記されてた秘技。
ちなみに三代目様が、馬鹿な裏切り者の陰陽師を相手に使ったら、ただ凍りついただけだったらしい。
いや、それでも十分ヤベェよと思った。まぁ氷人形になるまでに時間かかるから、人間なら逃げれるだろうし。
「さて、合流するか。」
ーキィンッ!
「ーッ!?またかよ!場所は……地上か!」
バイクを発進させ、これまた白雪ノ華で地上目掛けデッカイ風穴を開けて飛び出した。
《ハチ君、ネフシュタンの鎧が!》
「なにっ!?場所は!」
《薬品工場だよ!……くぅッ!?やぁ!》
「響、お前…戦ってるのか!?直ぐに行くから無茶はすんな!」
響には間違いなく天賦の才がある。
しかし、どれだけ才があろうが鍛え始めてまだ数週間。
年単位ですらないアイツに、姉さんを追い詰めたネフシュタンと戦うなんて無謀だ。
焦り、気持ちが迅る。
そんな時、奇妙な感覚がした。
何かが弾かれたような、そんな感覚に身体が反応したり
その一瞬だった。
「何だ…あれは!?」
天へと光の柱が伸びているのが見え、数秒後に薬品工場の一部が爆発した。
◇◇◇◇◇
「光の柱の正体はデュランダルの覚醒。で、そのデュランダルの力で薬品工場の一部を爆破したらしい。…覚醒させた響本人は記憶が曖昧。もしかしたらデュランダルに振り回されていたのかも知れねぇってさ。」
「つまりは暴走した、と?完全聖遺物だものね…それについては櫻井女史が調べてくれるでしょ。」
「みたいだな。原因さえ判れば対策取れんだろうし。」
病院内でも、最高級な個室を充てがわれてる姉さんの元を訪れ、作戦の事の顛末を伝えている。
室内はゴミ1つ落ちてなく綺麗だったので、たぶん誰かが掃除してくれたのだろう。
何日もつやら……3日かな?
「今、失礼な事考えてたわね?」
「…何のことやら?」
「ハァ…。あの子…立花は頑張ってるみたいね。今朝もグラウンドを走っていたのを見かけたわ。」
「毎朝5時から頑張ってるよ。守られるんじゃなくて、守りたいんだと。」
「報告書は見てる。…私の抜けた穴を埋めてくれてるみたいね。それにあのデュランダルを偶然とは言え目覚めさせるとは…………にしても、貴方がまんまと敵の陽動に引っかかるなんてらしくないわね。しかも地下に潜っては、直ぐに地上と連携取れないのだから気をつけなさい。」
「……もっと褒めてくれても良くない?」
八幡だって頑張ってるよ?
響の修行に付き合ったり、修行に付き合ったり、修行に付き合ったり。
「以前、褒めた時にノイズの群れへ突入したお馬鹿さんがいたのよ。それで奏と2人でそのお馬鹿さんを救出した事があったのよね。」
「……何の話しかわからないな〜。」
「褒められる事に慣れてなくて、調子に乗ってしまったんでしょ?わかってるわ。」
「みなまで言わなくていいから…。」
マジ止めてください。
もうこれ以上、八幡の黒歴史を掘り起こさないで!!
さっき病院に入った時もそうだ。
看護師さん達からだけではなく、いつもは鉄仮面の医師までもが生暖かい目で俺を見てきたんだよね。
理由がわからず首を傾げてたら、八幡言われたの。
「翼さん、目が覚めて良かったね。」って、なにもかも包み込むような優しく温かな目で言われたの。
どうやら病院内に、八幡号泣事件が知れ渡ってるみたいだった。
新たな黒歴史が刻まれた瞬間でしたよ、はい。
ついつい、トイレに十分程引きこもっちまったじゃねぇか。
「では、八幡をいじるのはここまでにするとしてー」
「その時間必要あった?なかったよね?」
「細かい男はモテないわよ。」
「モテないので細かい男のままでいいです。」
(この子、自分が学園で人気だって気づいてないのかしら?……気づいてなさそうね。八幡だものね。)
「急に可哀想なモノを見るような目をしないでくれない?」
「可哀想に…。」
「口に出さないでいいから。」
なんなの?
そんなに八幡虐めて楽しいの?…あ、楽しいのか。
……でも、良かった。
また、こんなくだらないく些細な会話が姉さんとできている。
そんな当たり前の事が堪らなく嬉しいと思えた。
だって、失くしてしまうんじゃないかって気が気じゃなかったから…。
失くしてからじゃ遅い。
だから、必死で戦うしかない。
この当たり前を失わない為にも……
「急に黙って、どうかしたの?」
「別に何でもない。…さてと、響の修行に付き合う約束があるし、そろそろ帰るわ。」
「あら、そう…。」
「…また明日来てもいいか?」
「えぇ。本の差し入れありがとうね。」
「暇つぶしには丁度いいだろ。じゃ、また明日。」
「また明日。」
姉さんの病院を出ると、看護師さんと目が合った。
慈愛に満ちた瞳で俺を捉えていたので、足早で病院から脱しました。
……なんか、急に明日行きたくなくなってきたわ。
黒歴史がフラッシュバックした瞬間、恥ずかしさが忍耐ゲージを振り切ったので全力疾走。
で、そのまま風鳴邸までやってきました。
バイクより速かったんじゃね?
…なわけないか。
「…ウーッス。」
「お、八幡来たか。…何で汗だくなんだ?」
「己が恥を吹き飛ばすが為に、です。」
「よくわからんが…取り敢えず着替えてこい。」
「はい。」
てなわけで、運動着にチェーンジッ!してから再び広大な庭へ。
「ハチ君、手合わせお願いします!」
「え、あぁ。…少し休憩してからにしない?」
なんか、この娘メッチャやる気満々なんですけど。
「大丈夫だよ。さ、やろう!」
「わかった。じゃ、やるか。司令。」
「ほらよ。木刀。」
司令が投げた木刀を受け取り、いつも通りに型をとらずに立つ。
一方、響はエラく気合いが入っている様子で、いつもと違う手首を返した構えをしていた。
「行くよ…ヤァッ!」
真っ直ぐ突進してくるかと思いきや、右に左にステップを踏みながら近づいてくる。
「フゥンッ!」
「…?」フイッ
「やぁッ!」
「…??」ぺしっ
「まだまだぁッ!」
「…。」スッスッ…ゴンッ!
「あ痛ぃ〜!!?」
最後はやはりと言うか木刀で頭部を一撃でした。
少々強めに振り落としたので、響は頭を抑えて唸ってる。
つーかよ、どしたのコイツ?
今の動きを簡単に説明しよう。
正拳突きを半身で回避。
後方回し蹴りを手で軽く弾く。
最後は手足の連撃を体を少しずらて回避と同時に頭にゴンッ!だ。
動きにキレがないし、見え見え。
……作戦前の方が動きが良かったんですけど?
「もう一度お願い。」
「いや待て待て。お前、おかしいぞ?」
「…。別にいつも通りだよ。」
「ハァ〜…。なーに焦ってんの?お前。」
「ッ!!?」
図星かよ。
悔しげに歯ぎしりをし、それでも構えをとかない響。
「デュランダルの暴走はお前のせいじゃねぇよ。」
「ーッ!……違う。そうじゃないよ、ハチ君。私がいつまでも弱いばっかりに……。」
「……なるほど、要は怖いんだろう?暴走した力そのものじゃなくて、躊躇いも迷いもなく力を敵にぶっ放したのが。」
「そうだよ…。だから、強くならなくちゃいけないんだ!私は…私はゴールで終わっちゃ駄目なんだ!もっと強く、その先へ、遠くへ行かないといけないんだぁッ!」
拳を握ったまま突っ込んできた響。
狙いは鳩尾で、フェイントもなんにもない。
ただただ真っ直ぐに一直線。
避けるなんて朝飯前レベルの攻撃だが、あえて俺は受け止めてやる。
「ごふぅッ!!」
「……え、え……えッ!?」
「あー……超痛てぇー…。」
やべぇ…意外と力強いし、重いしで八幡ピンチ。
しかも何故、鳩尾ではなく胃に軌道変更して、ぶつけて来たん?
腹筋緩んでたんですけど!?
格好つけないで、防げば良かった…まぁ、あとの祭りなんで痛みに耐えるしかないんだけどね。
あ……ヤバイ、何かが口から出てきそうな気配が…。
「な、何で避けなかったの!?いつもなら…!」
「響、聴け……力の使い方を知ると言うことは……強くなるって言う事はな、それだけ人としての生き方から遠ざかる事はなんだよ。お前にその覚悟はあんのか?」
「覚悟…?」
「俺はとっくに覚悟が決まっている。だから迷いも躊躇いもない。俺は守り…………!?」
「ハ、ハチ君??」
「オボロロロォウエェエ!」
「う、うわぁぁあ!だだだだ大丈夫!?」
そして物語は冒頭へと還帰る。
この日、格好つけたが為に幼馴染みの目の前で嘔吐する馬鹿がいたらしい。
いや、まぁ、俺の事なんだけど。
こうして追加された1ページ。
比企谷八幡 創世の書に新たなる黒歴史が今記された。
消したい過去がまた増えてしまった……。
「まったく、締まらないし格好悪いわで最悪だぞ?八幡。」
ショック過ぎてフラフラ状態なまま、その日は吐瀉物を処理して帰りました。
吐いた時に見えた、司令の顔は今までに見たことが無いくらい冷めていた気がした。
お気に入りにしてくれてる方々や、しおりを挟んでくれてる方々、本当にありがとうございます。
次回、例の彼女が登場!……すると思います。