やはり俺がシンフォギアの世界にいるのは間違っている 作:にゃにゃにゃす
顔の一部から神秘の泉的なモノが溢れ出てしまい、兄貴分の尊厳がマッハで崩れ去ってから丸2日経った。
響には昨日、例のクレープ屋のクレープを奢る事で崩れ去った尊厳を再構築した。
しかし、そのクレープ屋で不可解な点があった。
響がイチゴカスタードを注文した後に、俺がバナナブラウニーを頼んだら店員さんにまた驚かれた。
響は響で苦笑いだし。
……なんで?
「比企谷…どうかしたのか?最近、元気の有無が激しくないか?」
「林…。」
放課後、教室で項垂れていると林が上から見下していた。
貴様…!林のくせに頭が高いわ!!
「いや、小林だからな?あと最近、学院休みがちだけど、どうかしたのか?」
「質問多くないか、林?」
「小林な。べ、別に心配してるだけなんだからね!勘違いしてよね!」
「勘違いしていいのかよ。新し過ぎんだろ…。別に、ちょっと色々あっただけだ。心配無用だ小林。」
「だから小ば…あ、合ってるのか。あんまり無理すんなよ?……っと、用はそれだけじゃなくて、はいコレ。」
「…チケット?」
渡されたチケットは、今度林が出演するヴァイオリンのコンクールのチケットだった。
何故俺に?
……なるほど。
「金か?」
「違ぇよ!…暇があれば観に来てくんない?俺って観客席に友達がいた方がやる気出るタイプなんだよね。」
「…林、お前は勘違いをしている。アレとかアレとかアレで忙しいんだよ。」
「ハイハイそうですかぁ〜。2枚あるから誰か誘って来てくれよ。あと小林な。」
俺の言葉を軽く流してから、じゃ!っと言って教室から去っていった林。
え〜……誘う相手いないのに何故、2枚渡して来たんだよ。
新手の嫌がらせか。
…えーと…公演日は3週間後か…。
しっかしー
「友達ね…。」
ヤバイ…ニヤニヤが止まらない。
絶対見られたら引かれるから、机に伏せて顔を見られないようにする。
え、マジで?林って友達だったの?
英語で言うFriendだったん?
拝啓、比企谷小町様
お兄ちゃん、知らない間に友達ができてたよ!
凄くない!?
っと……スマホが震えてらぁ。
上機嫌でスマホを開くと響からのメッセージがあった。
なになに……姉さんの見舞いに付き合ってほしいだぁ?
◇◇◇◇◇
あれから、病院前で響と合流して姉さんの病室を目指していた。
緊張しているのか、響はガチガチで険しい顔のまま病室前に到着。
そういや、その花どうしたの?
わざわざ花なんて持って来なくていいのに……
あの人、すぐ枯らすから。
と言わなかった俺は空気が読めていると思う。
なんたって、と も だ ち ができるくらいだからな。
これくらい朝飯前だぜ!!
「…。」
「…。」
「……。」
「……。」
いや、入れよ。
いつまで病室前で立ってなきゃいけないんだよ。
のび君なの?君は、廊下の守護神のび君なの?
「…すぅ〜……はぁ〜…失礼しまーす。」
ピッピっとドアのロックを解除し、いざご対面〜。
とはならなかった。
何故なら中には誰もおらずー
「翼さーはっ!?…ま、まさか……そんな…!?」
目に飛び込んできた光景に、ついつい手で視界を覆ってしまった。
綺麗な病室は何処へやら…。
室内は魔王の襲撃にあったようだ。
至る所に散乱した衣類や雑誌。
カップは倒れ中身のコーヒーは溢れており、
クスリやサプリメントは蓋すらされておらず、ぶち撒けられていた。
……マジか。2日しか保てなかったんか、あの姉。
この室内の惨状に、響はショックからバッグを落とし固まってしまった…のもつかの間で、慌ただしく再稼働。
「ど、どどどしたら!?は、ハチ君、翼さんがッ!!」
「2人で何を部屋の前で騒いでるの?」
俺たちの真後ろから不機嫌そうな姉さんの声がした。
しかし、姉さんよ。アンタァ勘違いをしてるよ。
「騒いでたのは響だけだ。」
「そ、そんな事より大丈夫ですか!?本当に無事なんですか!?」
「入院患者に無事を聞くって…どいうこと?」
しかも重症で、今もまだ杖を使って歩いてるもんな。
怪我はまぁ良くなってるし…無事っちゃいや無事か?
……響、何を君はそんなに慌ててんのかな?ん?
「だって、これは!?」
響が指先すは、荒れ放題の部屋内。
ーうん、コレは酷い。
あとで説教してやる。
荒らした本人は、口を開いたまま機能停止状態に陥ってるし。
「わ、私…翼さんが誘拐されちゃったんじゃないかと思って!」
俺はフルスピードで2人から顔を逸らした。
響のとんだ勘違いに吹き出しそうになるのを必死で堪える。
ヤバイ…ヤバイ…わ、笑っちゃダメだ八幡。
「二課のみんなが、何処かの国が陰謀を巡らせてるのかもしれないって言ってたし!」
「……。」
「ッ!〜ッ!!」
尚も本気で姉さんの身を案じて、力説する響だが……いや、マジやめて。こ、これ以上は耐えれそうにねぇから!
とうとう肩が小刻みに震え始めた。その時に見えた赤面してる姉さん。
肩の震えが倍速になっちまったよ…。
口を両手で抑えて、耐える。ひたすら耐える。
……小町…助けて……苦しい…。
わ、笑うな…俺、耐えろ……笑ったら……くひっ…こ、殺される…ふひ……。
「えっ?えっ?…あぁ〜…えっと〜え?」
部屋を荒らした犯人が目の前にいる風鳴翼だと理解した響は、気まずそうな顔になった。
それがトドメでしたよ、えぇ。
「ブッハ!!?無理…もう無理ぃぃあははは、ひっひっひぃ!!」
後に八幡は語る。
自分の弁慶の泣きどころへ放たれた、杖での一閃。
今まで観てきた風鳴翼のどの剣より速かった…と。
◇◇◇◇◇
脛を抑えて悶える八幡に飲み物を買ってくる事と、部屋の片付けと清掃を命じてから、私と立花は屋上に来ていた。
人が羞恥心に呑まれているのを爆笑するとは……許せん。
今度、あの子の耳元でこれまでの恥やら何やらを永遠に唱えてやろう。うん、そうしよう。
後ろには、不安そうに私を伺う立花。
できれば、部屋の惨状は忘れてくれないかしら?
「……報告書は読んでるわ。八幡からも聞いている。貴女が私の抜けた穴をよく埋めているということもね。」
「そ、そんな事全然ありません!いつもハチ君や二課の皆に助けてもらってばかりで!」
慌てて手を振る立花。
それでも、照れて笑う立花を見ていると私まで微笑みを浮かべしまった。
「う、嬉しいです。翼さんにそう言って貰えて。」
「…でも、だからこそ聞かせて欲しいの。貴女の戦う理由を。ノイズとの戦いは遊びではない。…それは今日まで死線を越えてきた貴女ならわかるでしょ?」
「……よくわかりません。私、人助けが趣味みたいなもので……あははは……。」
「……。」
「…きっかけは…きっかけはやっぱりあの事件かもしれません。2年前のあの日、私は奏さんに命を守られました。ハチ君に命を救われました。そうして、私は今も生きています。でもあの日、沢山亡くなられた人の中に同じクラスの男の子がいました。」
そして、語られたのは立花響の過去だった。
◇◇◇◇◇
あの日、私は助けられて、生き残った。
両親も未来も小町ちゃんも、皆んな私の無事を心から喜んでくれた。
なのに
復帰した学校で待っていたのは私への迫害だった。
将来有望で次期サッカー部の部長とも言われていたクラスメイトがあの日、ライブ会場で亡くなっていた。
なのに何ら特技もない私が生き残った事が、何人かの生徒にとって許せなかったのだそうだ。
『アイツじゃなくてお前が死ねば良かったんだ!』
『ねぇ、何で生きてんのあんた?』
心許ない罵倒の数々。
それは日々エスカレートしていき、気づけば周りに味方は未来と小町ちゃんと生徒会長のいろはの3人だけだった。
いろはが生徒会長権限でどうにかしようとしてくれたけど、所詮は中学生で…
『ごめんなさい……何もできなかった…!先輩なら…どうにかできたのに…私は……!』
いろはを泣かせてしまった。
どんどん追い込まれて、心が悲鳴を上げそうになった。
しまいには、帰る家にまで悪戯や無言電話が鳴り響く始末。
焦燥する両親を前に私は泣くこともできなかった。
何度も願った。
遠い街へ、いった彼に助けてほしいと。……電話しよう。
その度に思った。
ダメだ。彼は家の為、働くために家を出たんだからっと。
忙しい彼に頼ってはダメだ。
最終手段として、先生に相談した。だけど、相手にすらされなかった。
この酷い現実に、私は絶望した。
それから2ヶ月、耐え忍びながら学校に行った。
そんな日々の中で、折れそうになる心。
あの日も罵倒され、嘲笑われていた。
急に行われた全校集会で皆んなが体育館に集まった。
私は何故か未来といろはと小町ちゃんにに連れられて2階席へ。
未来と小町ちゃんの2人に挟まれてる形で座った。
体育館の全体を見渡せるここから見えた不思議なもの。
可笑しなことに壇上には私も良く知る3年生の先輩達がいたのだ。
教師は何故か誰も何も話さず、顔を真っ青にしたまま動かなかった。
そして、1人の先輩が口を開いた。
「私は奉仕部部長の3年の雪ノ下雪乃です。……単刀直入にいいましょう。あなた達、立花響さんを虐めて何が楽しいのかしら?ハッキリ言って目障り、耳障りで耐え難いわ。あぁ、あんな低脳な事をする輩ですものね。私の言っている言葉が、まず理解できるかしら?」
しーん……と静まった体育館内。
「うっわ、最初から飛ばすなぁ〜雪ノ下先輩。」
そう言って楽しそうに笑ういろは。
事の始まりから混乱している私に、大丈夫と言って未来と小町ちゃんは私の手を握って笑ってくれた。
握ってくれた手は力強く優しく温かかった。
体育館内は私と雪ノ下先輩への罵倒で凄まじい事になってしまっていた。
見苦しいまでに叫ぶ同級生や後輩達。
3年生の大半は何も言わず、静かなままだった。
「……うるさいわね…。黙りなさいッ!そこの2年生の貴方。キョロキョロしている貴方よ!……貴方は何故、立花さんにひどい事するのかしら?話して頂戴。」
「え……えっと……あの……」
「さっきの罵声の勢いはどうしたのかしら?ほら、早く言いなさい。」
まさかの指名に、男子生徒は狼狽え辺りを見渡す。
しかし、誰も擁護しないし、助けない。
何故なら少しでも関わろうものなら、次に指名されるのが自分になるから。
あの雪ノ下先輩の絶対零度の瞳が今、体育館内を完全支配している。
「雪ノ下先輩らしくないやり方だね。」
「まるで…お兄ちゃんみたい。」
ハッとした。
そうだ、あの自分へ悪意を集めるやり方はハチ君の18番だ。
なのに何故雪ノ下先輩が…?
そんな、特別親しくもないのに…。
「では、あなた達にいい事を教えてあげるわ。まず、あなた達にこの千葉市での未来はないわ。…今回のこの悪質な虐めは許されるモノでは断じてない。だから調べさせてもらったし、証拠も全て揃えたわ。少しでも虐めに加担した人は全てこのリストに証拠と共に記させてもらってる。音声、映像、ネット、指紋に筆記、ありとあらゆる証拠を可能な限りではない。完璧に集めたわ。……雪ノ下の名を舐めないで頂戴。」
雪ノ下先輩の言葉に、体育館内は静寂が訪れた。
……え?
つまり、雪ノ下先輩は実家の力を使ってまで助けてくれてるの?
なんで……?
「あら、静かになったわね。…あとは、葉山君から話しがあるそうよ。」
「……3年、サッカー部部長の葉山隼人です。……今回、俺は君達に残酷な事言う。すまない。」
そして、学校のトップカーストの葉山先輩は前置きの後に告げた。
2年生と1年生の半分、そして3年生の一部が私の虐めに関与している証拠がある。
その証拠とリストは既に弁護士の葉山先輩のお父さんに渡っていると。
騒つく体育館内で、何人かは泣いている。
絶望しているのか、それとも他の何かなのか……私には分からなかった。
後日、教育委員会の人達や生徒達の両親など色んな方々がやってきて、学校は騒然としていた。
こうして、私への虐めは終止符を打たれた。
「私が先輩達に御礼を言ったら"私達は彼に返せなかった恩を貴女に返しただけよ。どうしても礼がしたいと言うのなら、困っている誰かを助けてあげて欲しい。そうやって、助けた誰かがまた他の誰かを助けていく。そんな繋がりのある世界になれば素敵じゃない?"って言われちゃいました。」
「彼って…もしかして。」
「ハチ君です。助けてくれた人は皆んな言ってました。雪乃さんだけじゃありません。結衣さんも早希さんも。優美子さんに姫菜さん。戸塚さんに剣豪さん、葉山さんに戸部さん。他にも多くの助けてくれた人も皆んなハチ君への恩返しだって。結局、私はハチ君に助けてもらったんです。……ハチ君は優しいから。いつも私を助けてくれます。だから、今度は私が助けになりたいんです。守られるんじゃない…守りたいです。一緒に。」
これが私の本音だ。
いつも助けて、守ってくれる優しいハチ君。
でも…守られてばかりは嫌だ。
肩を並べて、一緒に守りたい!
でもー
「なのに…私ってば全然ダメダメでした。デュランダルを手にした時、暗闇に飲み込まれかけて…気づいた時にはあの力を人に向けていました。私がアームドギアを巧く使えていたら、あんな事にもならずに……。」
「力の使い方を知ると言う事は、すなわち戦士になると言う事。それだけ人としての生き方から遠ざかることなのよ……貴女にその覚悟はあるのかしら?」
翼さんの力のこもった瞳が私を捉えた。
はは…ハチ君と同じ事言ってる。翼さんは本当にハチ君のお姉さんみたいだ。
……その仲の良さにちょっと妬けちゃうなぁ〜…なんて。
「ハチ君にも同じ事言われました。だけど……。」
「だけど…何かしら?」
……あれ、言っていいのかな?
ハチ君は知られたくないだろうし……でも、2人は仲良しだし……うーん……
悩んだ末に、姉弟って言うくらい仲良しだしいっか!と、なり包み隠さず、2日前の顛末を伝える。
翼さんはすっごく呆れていたけど、少しだけ笑ってた。
「あの子ったら…いつもは冷静なくせに、偶に特大のお馬鹿さんになるのよね。……まぁ良いわ。立花響、貴女が戦いの中で思っている事はなに?」
そう私に問うその瞳は、やっぱり力強かったけど確かな温かさを感じ取れた。
だから、私は胸の想いをぶつける。
「ノイズに襲われている人がいるなら、1秒でも早く救い出したいです。最短で最速で真っ直ぐに、一直線に駆けつけたい。…そして、もしも相手がノイズじゃなく、誰かなら…どうしても戦わなくちゃいけないのかっていう胸の疑問を、私の想いを届けたいと考えています!」
脳裏をよぎったのは、あのネフシュタンの鎧を身に纏った女の子。
戦いたいわけじゃない。心から話し合いたいと思っている。そう、彼女に伝えたい。
「フフッ…今、貴女の胸にある想いをできるだけハッキリと思い描きなさい。それが貴女の戦う力…立花響のアームドギアに他ならないわ。」
それは、戦さ場に立つ先輩としてのアドバイスだった。
翼さんの言葉を一句たりとも逃す事なく、奏さんのギアを宿すこの胸に刻み込んだ。
◇◇◇◇◇
お好み焼き屋のフラワー目掛け駆けていく響を影から見送ってから、俺は屋上へと足を踏み入れた。
「盗み聞きとはいい度胸をしてるわね。言い訳次第では執行猶予くらいは付けてあげるわよ。」
「執行猶予の時点で有罪じゃねぇか。…俺の話しも出てきたし、気まずいだろうが。」
ブッとんだ裁判長だな。言い訳くらいは聴いてから判決を下してください。
ま、結局は有罪だろうけど。有罪なのかよ…。
「……最速で最短で真っすぐに一直線か…。あれが立花響という人間なのね。」
「本人はあぁ言ってたけど、まだまだだからな。もう暫くは俺が助けて守るよ。」
「あの子の一撃で嘔吐した人物のセリフとは、とてもじゃないけど思えないわね。」
「あんた等、何の話しをしてたわけ!? 」
楽しげに話してたから見守ってたけど、やめときゃよかった!
最悪だ……3本の指に入る知られたくない人物に知られちまったよ…。
って、なんか懐がバイブしてますね。
「ん?通信か。ハイ、比企谷です。」
《八幡、俺だ!ネフシュタンの鎧がリディアンに向かっている!頼めるか!?》
「ッ!…了解。すぐに向かいます。」
「あ、ちょ……八幡ッ!?」
姉さんに背を向け猛ダッシュ。勢いそのままに、背面跳びでフェンスを越える。
そして屋上から飛び降りた。
落下しながら、各階にある外壁の出っ張りに手足を引っかけながら減速し、最後は綺麗に着地。
そのまま、走って指定ポイント付近に着いた。
現場のコンクリの地面は抉られ、車がひしゃげていた。
その歩道の真ん中で、見覚えのありすぎる人物が放心したまま座り込んでいた。
「未来!」
「…ハチ君…?」
振り返る未来は擦り傷と埃だらけになっていた。
怒りで瞬間沸騰する頭。
……ダメだ。
落ち着け…奴を殺るからには冷静にならないと。
遥か先で爆発音が鳴る。
「大丈夫か?」
「ハチ君…響が…響が戦ってたの…。」
「ッ!?……どっちに行った?」
「……あっちへ…。」
未来が示した場所は爆発音のする方角だった。
くそったれ、出遅れた!
「八幡さん!」
黒光りのセダンが現場付近で止まり、中から超頼りになる人が降りてきた。
司令の流石の手際の良さに、脳内の俺がスタンディングオベーション。
「緒川さん!…ナイスなタイミングです。未来を頼みます。俺はネフシュタンを。」
「わかりました。お気をつけて。」
「ー来いっ、白雪ノ華!!」
もはや猶予はない。
響だけじゃ、奴には勝てない。
だから、俺はなりふり構ってなどいられず未来の前で漆黒の鎧を身に纏った。
瞳は血の色に、黒い髪は白くなる。
「ハチ君まで…なんで!?」
「……すまん、後で必ず説明する。緒川さん、頼みます!」
地を蹴り、脚部のバーニアを全開で空へと登っていく。
その時ハッキリと木々が倒れていくのと、吹っ飛ぶオレンジ色が見えた。
おいおい…敵さんは俺を怒らせる天才かよ。
ホルスターから呪符を2枚取り出す。
ネフシュタンが見えた瞬間、呪符は空を切りながら飛んで行った。
「ーなんだっ!?」
接近する呪符に気づいた奴は、鎖状の鞭で呪符を切り裂いたが……
阿呆め。ハナから防御されるのは計算に含まれてんだよ!
切り裂かれた呪符は、木っ端微塵となったがー
「なんだよ…あぁああッ!?」
宿していた五芒星の陣が宙に浮かび上がり、2本の雷がネフシュタンに直撃した。
それでも倒れず、周囲を見渡すネフシュタンだが、残念だったな。
俺は既に背後を獲っている。
「その首が胴体と離れたくないなら動くな。」
「なっ…いつの間にッ!!?」
白雪ノ華の刃を首筋の間近で止め、抵抗させないようにする。
……本当なら、今すぐにでもその首を刎ねてやりたいが生憎と近くに響がいるんでね。
そんな血生臭い所、妹に見せられねぇんだよ。
背後をとられ、戸惑うネフシュタンの鎧。
……つーか、コイツ口が悪いな。
その口調が響に影響を及ぼしたらどうしてくれんだ、あ?
「どいつもコイツも…邪魔してんじゃねぇ!吹っ飛べよ!アーマーパージだッ!」
「なっ!?テメェ!」
ヤツが纏っていたネフシュタンの鎧が四方八方へと吹き飛んでいく。
目の前で、まさかの展開が起き、俺はネフシュタンの鎧の一部ごと響の元まで飛ばされてしまった。
「ハチ君、大丈夫!?」
「…あぁ。白雪ノ華で受け止めていたからノーダメだ。」
一瞬の判断に助けられて、なんとか無傷で済んだ。
そう思っていた時だった。
《Killter Ichaival tron》
「これって!」
「聖詠か!?」
歌が聴こえた。
敵ながら、澄んだ綺麗な歌声だと感じた。
と同時に既視感。
なんだ…こう……聴き覚えがあるのだ。
その歌声に聴き覚えがある、そう胸が叫んでいた。
「クリスちゃん、私達と同じ?」
頭に、鈍器で殴られた様な衝撃が走る。
響の発した言葉が頭の中で反響する。
クリス…だと?
『どこに居ても探して見つけて、会いに行く!!』
『本当っ!?約束だよ!』
『おう!約束だ。』
それは幼い頃に交わした再開の約束。
果たせなかった約束。
あの日の記憶が蘇る。
鼓膜に響く心音がどんどん加速していく。
「クリス…まさかッ!!?」
舞った砂塵が散った時、そこには赤いシンフォギアを身に纏った人物がいた。
母譲りの綺麗な歌声と美しく輝く銀の髪。
成長した彼女は、相変わらず可愛いらしい容姿をしていた。
しかしその顔は今、憎悪に満ち満ちていた。
「……歌わせたな…。アタシに歌を歌わせたな…。教えてやる。アタシは歌が大っ嫌いだッ!!」
叫ぶ少女は響を睨み、続いて忌々しげに俺を視界に捉える。
そして、しばらくの間、静寂が訪れた。
双方なにも言わず、ただ時が流れる。
何を話していいのか解らず黙る俺と違って、彼女は何か考えているような様子だった。
数秒の後、訝しげに俺を見ていた彼女の瞳が徐々に大きく開かれていった。
己が心臓は煩いくらいに鼓動し、身体が熱を帯びる。
「八幡…?比企谷八幡……?」
「…雪音…クリス…なのか?」
俺は、10年前に約束を交わした少女・雪音クリスと最悪な形で再会を果たしたのだった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
やっと、クリスの出番が!…ちょっとだけでしたけど。
次回からバンバン出てくれる……予定です。
では、また次回で。