やはり俺がシンフォギアの世界にいるのは間違っている 作:にゃにゃにゃす
ーー10年前ーー
夏休み。
長期に渡り休みのあるこの時期、俺と小町に両親、そして両親の親友である雪音家と共に海外のリドート地へ訪れていた。
何でも雪音家の持っている別荘らしく、両家揃って楽しい時間を過ごした。
そして、そこで出会ったのが雪音クリス。
雪音家の長女で、同じ歳。
第一印象は歌が上手で可愛い女の子。
歳も同じと言うこともあり、仲良くなるのにそう時間はかからなかった。
……嘘です。
ザ・人見知りスキルを発動した俺にクリスが構う形で仲良くなるまで5日はかかったさ。
そして、あっという間に楽しかった日々は駆け抜け、気づけば帰国する日。
クリスが俺の帰国に泣き出してしまった。
両家の親が何を言おうとイヤイヤと首を横に振り、俺の腕を掴んで離さなかった。
駄々をこねるクリスに何故かホッコリする両家の親達。
何でもクリスが我が儘を言うのが珍しいらしい。
「八幡がアタシの家に住めばいいもん!」
「それは無理なんだよ、クリスちゃん。ね、八幡も学校があるから。」
「だったらアタシの学校にいけばいい!」
「…クリス、来週からまたパパとママで海外回る約束でしょ?八幡くんは連れていけないのよ?」
「嫌ぁぁ!!」
また首をブンブンと振るクリス。
……あのぅ、爪が食い込んで痛いんですが?
とうとう泣き出してしまったクリスに困惑する俺は、1つ彼女と約束を交わしたのだった。
それがー
どこに居ても探して見つけて、会いに行く!!
音楽界において有名な雪音家の両親は世界各国を巡っていた。
ならば、その都度探して会いに行く。
俺は本気でそうしようと思ってたんだ……
そして現在。
俺は約束を果たすことのできなかった少女、雪音クリスと再開した。
互いの手には武器を持ったままだった。
第11話
「本当に…八幡なのか?」
クリスの問いかけに俺は頷く。
唐突の再開。
まさかの現状から極度の緊張に陥り、声1つ発生ずにいた。
一方でクリスは驚愕の表情を出した後に俯き、表情を伺えなくなってしまった。
そしてまた、しばしの間沈黙が支配する。
俺と彼女のおかれている状況が分からない響は、不安げに俺とクリスを交互に見ていた。
「…そっか。…本物の八幡なんだな…。」
「クリス…俺はー」
後の言葉は続かない。
顔を上げた彼女を見て、理解して、何も言えなくなってしまった。
「こンの…大嘘付き野郎ぉぉおおッ!!」
「ッ!!」
目尻に涙を溜め、憤怒の雄叫びは周囲に反響した。
反響するクリスの叫びが耳に残り、怪我もしてないのにズキリッと胸に痛みが走った。
俺を映す彼女の瞳には憎悪の炎が灯り、俺への怒りがヒシヒシと伝わる。
クリスの怒りに動揺している間に、彼女は両手にクロスボウを形成したアームドギアが握り、その矛先を俺へと向けた。
そして、一切躊躇せずに光の矢を数本放ってきた。
あまりの展開速度に思考が追いついていけない。
放心してしまい俺は動けず矢の軌道を静かに見つめていた。
ーあれ?俺、クリスに攻撃されてるのか?
「なっー避けてハチ君!」
「ハッ!?ーくぅッ!」
響の叫びで我に返り、間一髪で回避する。
矢が当たった場所で爆発音がし、地を抉っていた。
「信じてたのに…待ってたのにぃ!!……ー傷ごとエグれば 忘れられるって事だろう!」
クリスは歌に続いて、連続で矢を放ってきた。
その矛先は響にも向けられ、次々と矢を放ってくる。
「ちょっ!!話をー」
「うわっ…わわっ!」
動揺からいつものように上手く立ち回れず、回避で精一杯になる。
「イイ子ちゃんなんて正義なんて 剥がしてやろうかぁ」
だから気づくのが遅れた。
響が矢の回避に追われ、誘導されている事に気づけなかった。
「響ーがぁッ!?」
「あぅっ!」
響の前に飛び出し、彼女が気づいた時には2人纏めてクリスに蹴り飛ばされていた。
彼女を庇い、身体を入れ替えて衝撃の後に地を削った。
「痛っ…クリス、頼む話しをー」
「HaHa!さぁIt's show time 火山の殺伐Rain!」
俺の声は彼女に届かず、歌は止まなかった。
【BILLION MAIDEN】
アームドギアがクロスボウから4門の3連ガトリング砲へと変形し、俺たち2人へむけ一斉掃射される。
「クソ…。」
「うっ…あわわ!」
初めて味わう弾丸の雨に慌てふためく響の手を取り、クリスから距離を取る為駆け出す。
木々を盾にし、次々に迫る弾丸から逃げながら全力で走る。
…ふと、一瞬だけ銃声が止んだ。
【MEGA DETH PARTY】
顔だけ振り返ると、クリスが腰部アーマーから小型ミサイルを容赦なく一斉に発射するのが見えた。
ははは…マジかよ。
そこまで俺が憎いかよ?……いや、憎いよな。
約束守らない最低野郎なんてよ……。
追尾する小型ミサイルから逃れる術はあれど、間に合わない。
ガトリング砲もまた放たれ始めた。
……これは罰なのだろう。
約束を違えた俺へ下された罰。
なら、受けるのは俺だけでいい。
響は関係ないのだから。
そう思い、響に覆いかぶり地に伏せた。
「ハチ君!?…ッ!ダメぇぇ!」
「さぁお前等なぁーど 全部全部全部全部全部ぅぅ 否定してやる! そう否定してやるぅッ!」
目に前にいる響の叫びよりも、クリスの歌の方が耳に入ってきた。
彼女の歌は拒絶だった。
全てを拒絶し、否定する。
クリスが俺へと向けた歌だと思えた。
そして……爆発が俺たちを包み込む
ことはなかった。
「相変わらず自分より他者優先ね。本当に無茶する子なんだから。」
「……は?」
そんな声がした。
弾丸も小型ミサイルも、何一つとして俺たちに届かなかった。
爆裂音は俺たちの後方で起きて、煙りが風に乗り視界を奪い去る。
聞き間違いじゃない。
2年間ずっと一緒にいたんだ、聞き間違う筈もない。
「盾…?」
煙りが晴れた時、俺たちとクリスを遮る物があった。
それを見たクリスから疑問の声が出た。
違う。
盾じゃない。それは巨大な
「剣だッ!」
声の発信源はその真上から。
空を見上げた先には、そよ風に靡く長い髪。
握る刀が夕陽を反射し、その姿をより一層凛々しく見せていた。
「……なんで、姉さん?」
まさか病院を抜け出してきたのか……!?
なんつぅ無茶を!
「手の掛かる弟と仲間を持つのも大変ね。でも…悪くない。…とは言え私も十全ではない。力を貸してほしい。」
「は、はい!」
「……。」
フッと笑みを浮かべる姉さん。
響へ向けていた冷たさは鳴りを潜め、いつもの優しさを感じる雰囲気を醸し出していた。
ただ、俺は姉さんの手伝いに返事が出来なかった。
俺は…どうしたらいいんだ?
クリスに攻撃なんてできない。
そんな俺に何ができる?
何がしたい?……話がしたい。
何を?どうやって?
わからない……何が正解なんだ…?
何をしたらいいのか分からない……。
纏まらない思考が更に俺を混乱へと導く。
「どいつもこいつもウザってぇ…弟?姉?嘘ついてんじゃねぇ!ソイツには妹しかいない!…………ーはんっ、そうかよ。仲良しごっこに夢中でアタシとの約束何て忘れてたってか?」
「…違う。八幡は貴女との約束を忘れてなどいない。」
「チッ、関係ないヤツが口を挟むんじゃねぇぇ!」
クリスのガトリング砲が火を吹き、姉さんに向かい高速の弾丸が飛んでいく。
「慟哭に吠え立つ修羅ぁ〜」
巨大な剣から飛び降り、歌いながらヒラリヒラリと宙を舞う木の葉の様な動きで、迫る弾丸を華麗に躱して降りていく。
着地と同時にクリスへ鋭く速い剣撃を見舞う。
クリスは剣を躱し、弾丸を放つも姉さんは宙を舞い、振り向き様横薙ぎの閃光を放った。
「くぅっ!」
頭を前に倒す事で迫る刃は回避できたが、それはつまり姉さんを見失ったと同義だった。
そこを見逃す姉ではなかった。
鋭い眼光がその隙を居抜き、クリスのガトリング砲を柄で弾く。
バランスを崩したクリスに更なる追い討ちが迫る。
背後から刀が現れ、顔の真横に突きつけられた。
焦燥に駆られるクリスと背中合わせのまま、姉は剣を肩に担ぐ様に構えてる。
(この女…以前とは動きがまるでー)
「姉さん、待ってくれ!そいつは「わかっている。写真の娘だ。」
言葉は遮られど、姉は優しく微笑む。
それだけで、何故か俺は安心してしまった。
姉さんはクリスを傷つけない。理由はわからないけど、そう確信を持てた。
不意にクリスが姉さんの剣を弾き、互いに向かい合った。
「どぉりゃぁあ!」
今また、ガトリング砲から弾丸が放たれんとした瞬間
ーキィンッ!
あの気配を感知した。
そして、それはよりにもよってー
「クリス、姉さん!真上だ!」
「はぁ?…なっ!!?」
飛行型のノイズ2体が急降下し、クリスの両腕のガトリング砲を砕いた。
「ーなに!?」
だが、それで終わりではなかった。
3体目のノイズがクリスを捉えて、強襲してきた。
「危ねぇ!ーゔッ!!」
「八幡!?」
馬鹿だと思う。
クリスが攻撃されて冷静じゃなかった。
いつもなら白雪ノ華で斬り裂いて終い。なのに、俺は今彼女を庇い背中からノイズの体当たりを受けてしまった。
「ハチ君!?てやぁあ!」
ノイズは響の回し蹴りで粉砕し消滅。
敵襲に姉さんは俺を庇うように前へ出て、アームドギアを構える。
超痛ってぇ……あ、やべ…意識が遠のきそう。
「お前、何やってんだ!」
「…仕様がないだろ。身体が勝手に動いたんだ…から。」
「よ、余計なお節介だ!」
強気な発言していながら、クリスは俺を抱きとめたまま……泣きそうな顔をしている……気がする。
あ、マジでヤバイ。
視界がグラつき始めたんだけど……。
《命じた事もできないなんて…貴女はどこまで私を失望させるのかしら。》
……ードックンッ
一度だけ心臓が大きく跳ねた。
まるで冷水をかけられかの様……その声が耳に入った瞬間、意識が覚醒した。
クリスから離れ、白雪ノ華と呪符を数枚構える。
なんだ…この感じ。
……懐かしい…?
そんな感覚がする。
だが、それと同等に殺意が湧くのは何故だ?
ーキィンッ!
「そこかぁ!」
感じた場所へ向け4枚の呪符を投げつける。
飛んでいった先は海を一望できる展望台。
夕陽をバックに、サングラスをかけた金髪黒づくめの女が立っていた。
こちらに見向きもせず、海を眺めたままで…。
そしてその手に、例の杖を持ちながら。
《ナメるな、陰陽師。》
「なにっ!?」
呪符は女に届く前に、飛行型ノイズが自らぶつかってきた。
ノイズとの接触で、呪符は空気の爆発を起こし消滅した。
コイツ今、ノイズを操りやがった!
間違いねぇ…あの手に持つ杖はー……それに、この血が騒ぐ感じ。
絶対に見覚えがないのに、あの女を知っている。
まるで身体が使命を果たせと言わんばかりだ。
つまり、アイツは!
「空門ノ杖…いや、ソロモンの杖だったか?……そうだろ、緋維音!」
《その名で私を呼ぶなッ!忌々しい陰陽師風情が…その名で呼んで良いのは、たった1人の友だけだ!!……チッ、まぁいい。どの道お前程度の陰陽師…いや、寧ろその程度の能力しか持たぬお前が陰陽師を名乗るのは片腹痛いな。安倍晴明の名も地に落ちたものだな。》
「……。」
「貴様…!私の弟への侮辱はそこまでにしてもらおうか!」
「 ハチ君の事を悪く言わないで!」
何故だろう。
屈辱的な言葉の数々を言われて尚、黒づくめの女に対して殺意よりも懐かしさが勝っていた。
あの暴言。
不遜な態度。
なのに何故だ?
…別に俺、ドMじゃないから嬉しくはないけどね。
「緋維音…?陰陽師…?テメェ等わけわかんねぇ事言ってんじゃねぇ!おい、フィーネ!あんなオレンジ色が居なくたって私1人で戦争の火種くらい消してやる。そうすればアンタの言うように人は呪いから解放されて、バラバラになった世界は元に戻るんだろ!?」
フィーネだと?……意味するのは、終わり?
《ハァ〜…貴女にもう用は無いわ。》
「は?…なんだよ、それ!?」
緋維音の言い分に白雪ノ華を握る手に力が入る。
まさかこの女、クリスを切り捨てるつもりか…!
いや、元より使い捨ての駒だった…?
この野郎……
「お前…ふざけんじゃねぇ!!白雪ノ華ッ!!」
女の真下からアスファルトを砕き飛び出したのは、4本の氷の鎖。
先端は人を貫くのも容易な程に鋭利だった。
「縛り付けろッ!」
鎖は命令通り女を拘束しようと襲いかかる。
絶対に逃がすものか!
…ニヤリと女がいやらしい笑みを浮かべた。
杖を傾け、こちらを挑発するように真正面を向く。
氷の鎖は、またしても操られたノイズにより粉砕された。
と、ここで女の手が怪しい輝きを放った。
……おい、まさか!
身に覚えのあるそれを見て、焦って周囲を見渡すと四方に飛び散っていたネフシュタンの鎧が女の手の輝きに呼応していた。
「ーさせるか!」
右手を伸ばし、女と同様に手が輝き始める。
《遅い。だからお前程度が陰陽師と名乗るのは片腹痛いと言ったのだ。》
しかし、一歩どころか三歩ほど遅かった。
ネフシュタンの鎧は女の体内に回収されてしまった。
「テメェ…陰陽師の術を何故!?」
《応える義務などない。》
操られたノイズ供が俺たちへと向かい飛んでくる。
高速回転しながら飛んできたそれを斬り落としている間に、女は遥かに遠くへ跳んで行く。
「待てよ…フィーネッ!」
「クリス!待て…あ……。」
緋維音の後を追うクリスを止めようと手を伸ばした矢先、急に視界が暗転した。
……え?何で急に?
もしかして…あの女がいなくなったからか…?
「クリ…ス…」
「八幡!」
「ハチ君しっかりして!ハチ君!」
心配する2人の声をBGMに俺は今度こそ、気を失ったのであった。
読んでいただきありがとうございます。
ではまた次回で。