やはり俺がシンフォギアの世界にいるのは間違っている   作:にゃにゃにゃす

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第13話

眼前には全人類共通の災害、ノイズの群れ。

その数は時間と共に増えて、今では俺とクリスを全方位から囲っている。

俺とクリスは互いを背中合わせに武器を構え、ノイズからの攻撃を警戒する。

 

「…なんでお前が居んだよ。邪魔だ、とっとと消えやがれ。」

「はっ、ヤダね。やっと見つけたんだ。それに、俺はお前に話したい事が山程あるんだ。逃がしゃしねーよ。」

「アタシは話しなんざねぇんだよ。…なんならノイズ共と纏めて風穴あけてやろうか?」

「……それで、お前の気が済むなら構わない。」

 

構えを解き、クリスの方へ向き直る。

そして白雪ノ華を地に刺し、両手を広げる。

無防備で無抵抗な俺にクロスボウ型のアームドギアを向けるクリス。

 

光の矢が放たれれば、いくら漆黒の鎧とは言え大怪我は免れないだろう。

だがこちらとて引く気がは毛頭ない。

 

「……本気かよ。」

「あぁ、本気だ。好きなだけ嬲れ。……ただし、その後に俺と話しをするのが条件だ。」

「…チッ!何が話しだ!人との約束破って、楽しい人生送ってた奴なんかと話す事なんかねぇんだよッ!」

「…!クリスを守れ、白雪ノ華ッ!!」

 

地に刺さった白雪ノ華が淡い輝きで応え、クリスの背後から飛び掛かってきた3体のノイズを氷の槍で貫いた。

 

「なっ…余計なお世話だ!」

「ッ!伏せろッ!」

「チィッ!!」

 

怒鳴るわりに、クリスは素直に地に伏せた。

舌打ちが聞こえた気がしたけど気のせいだと思うな、うん。

 

伏せたクリスをノイズ共が飛び越え、その先に待つのは俺。

響の真似ではなく、その上を行く格闘術で迫るノイズを迎撃しますか。

 

1体目は下から天に向へ拳を振り抜き、2体目は振り上げた拳で叩きつける。

3体目は上段蹴りで粉砕し、4体目は地に踏み付けそのまま潰す。

 

久々にやったが身体は動きを覚えていた。

 

「……フン、礼は言わねぇからな。」

「いらねぇよ。俺が勝手にやってるだけだからな。……んで、どうすんの?風穴、開けるなら早く開けてくれ。んで、さっさと話したい。」

「……あーもうっ!訳わかんねぇんだよお前は!そんでもって、テメェ等も鬱陶しいんだよ!」

 

【BILLION MAIDEN】

 

むしゃくしゃしてるクリスのアームドギアがガトリング砲を形成し、一斉掃射。

次から次へとノイズの身体に風穴を開けていく。

流れるような乱れ撃ちである。

多対1が基本になるノイズ戦においてクリスのギアは最有効とも言える。

俺や姉さんは大技で距離のあるノイズを倒せはするが、クリスの様に効率の良くはないからな。

 

おっと……考えるのはここまでだな。

 

地に刺したままの白雪ノ華を引き抜き、クリスを狙うノイズを片っ端から斬り刻む。

 

にしても、また数増えてね?

 

「チィッ、数が多すぎんだよ!」

「クリス、上からだ!」

「わかってんだよ!」

 

呪符を頭上に展開し、上空から迫るノイズを屠る。

クソ、こちとらバリバリの地上戦特化型だってのに!

 

ホルスター内にある、残りの呪符も心許ない。

 

「うおりゃぁぁあ!」

 

【CUT IN CUT OUT】

 

クリスは腰部のアーマーを展開し、空を漂うノイズへ向け小型ミサイルを放った。

ミサイルは回避行動をとったノイズを追尾し、爆発と共に消し炭にした。

上空は、中遠距離に特化したシンフォギアを纏うクリスが適任。

だったら……

 

「上空は任せた。俺は斬り込む。」

「はぁ?誰がお前の指示な、って人の話しを聞きやがれ!」

 

どうせ拒否するのは分かっている。

だから俺は開き直って地上のノイズの群れへ突っ込んだ。

 

「おぉぉぉおッ!」

 

【閃光業雷】

 

袈裟斬りで、雷の刃が白雪ノ華から飛んでいき一気に敵を炭へと変えた。

数が数だけに止まれば押されるのは、目に見えている。

だったら初っ端から全力全開。

 

「白雪ノ華ッ!」

 

【氷槍天昇】

 

踏み付けたノイズを地面ごと白雪ノ華で突き刺し、そのまま一層深く刺し、一気に神通力を流す。

 

無数の氷の槍が地面から飛び出し、多くのノイズを串刺しにした。

それでも、まだまだ残数は多い。

 

くそ…1年前を思い出す。

 

「だらぁぁぁあ!」

 

【MEGA DETH PARTY】

 

雄叫びを上げて、空中のノイズを一気にミサイルで消し去るクリス。

数体の飛行ノイズはクリスの攻撃から難を逃れ、空から彼女を攻撃を始めた。

 

体を槍状にし、降り注ぐノイズ達だったが、残念ながら進行方向には氷の槍が待ち構えていた。

そのまま餌食となり炭へ早変わりした。

 

「チィッ!」

「ヒィッ!!?」

 

ギロリとクリスが俺を睨む。

たぶん余計な事はするなと言いたいんだと思うが、これだけは言わせてほしい。

 

睨まないで怖いから。

 

そこから相互不干渉のまま、好き勝手に戦ってノイズを殲滅した。

……嘘です。クリスにめっさ睨まれるくらいに俺が干渉しました。

 

周囲にノイズがいない事を確認し、白雪ノ華と鎧を解除し、彼女に向き直る。

彼女はギアを解除することなく、俺を睨んだままだった。

 

「…なんで、髪と目が黒くなってんだよ。」

「ありゃ戦闘時だけだ。こっちが普通なんだよ。」

「意味わかんねぇよ。」

 

俺の説明に不服そうなクリスだが、1から説明するには時間がかかるんですけど。

て言うかギアを解いて欲しい。

 

「まずはギアを解いてくれ。一課と二課の連中が事後処理に来る前に逃げなきゃならねぇだろ?」

「はっ…解除したらアタシを拘束するつもりだろ?」

 

君、人の話し聞いてた?

聞いてないよね?

 

「はぁ…しねぇよ。一緒に逃げるって言ってんの…ってヤバい!クリス、急げ!」

 

数台の装甲車と見覚えのあり過ぎる黒いセダンが左右から迫ってきていた。

……もし、クリスを発見されたら彼女がどうなるかわからない。

 

自分の置かれている状況を悟ったクリスは、苛立った面持ちでギアを解除した。

 

「…もう来やがったのか!?」

「急いで離れるぞ!」

「あっ、ちょっ、離せッ!」

 

クリスの手を掴んで細い路地へと走った。

喚いている彼女の意思は無視し、急いでその場から離れて行く。

 

どうか見つかりませんように……そう願い、迷路のような路地を只管走る。

 

「手を離せ!」

「叫ぶなって。見つかったらどうすんの。」

「そう言うならさっさと逃げればいいだろ!」

「…監視カメラがない場所を探してんだよ。お前、緋維音に狙われてんだろ?」

「……緋維音じゃないくてフィーネだ。」

 

弱々しく訂正を入れてくるクリス。

しかし、俺は敢えてヤツを緋維音と呼ぶ。

だってあの女、緋維音と呼ばれるの嫌がってたし。

 

……マズイな。

大通りに出たいが住人が避難した後だ。

人が居なさ過ぎて、モロに監視カメラに映っちまう。

せめて人混みに紛れれば良かったんだが……

 

と思っていたら、目の前に黒いセダンが急ストップした。

マジか!?

焦って引き返そうとしたが、開いた窓の向こうに見えた顔に安堵した。

この人、有能すぎてMAXリスペクトだよ。

 

「八幡さん、急いで乗ってください。この場を離れます。」

「緒川さん!ありがとうございます。クリス、乗るぞ。」

「はっ、ヤダね。アタシは誰も信用しない。だいたいアタシはお前だって信用してないんだ。」

「…俺を信じろとは言わん。だけど、今は非常事態だ。頼む。」

「お前、何しようとしてんだよ?」

「……土下座をしようかと。」

「お前にプライドはないのか!?」

 

ないです。

生憎とそんなものは、生まれる前に母親の中に置いてきてしまってるんでね。

 

 

……ふむ、奥義・土下座を封じられた今、俺が取れる手段はなんだろうか?

 

………。

 

……あれ、無くね?

 

積んだ……!?

 

「……チィッ!わかったよ、乗ればいいんだろ。乗れば!」

 

痺れを切らしたクリスが乗り込んだので、続いて俺も乗る。

 

俺たちが乗り込んだのを確認して、緒川さんは車を発進させた。

 

「クリス、頭下げててくれ。正面の監視カメラに映ったら意味がねぇから。」

「ハイハイ、分かったよ。」

「八幡さん、彼女にこの帽子を。」

「流石は緒川さん。頼りになります。」

 

もう…本当マジ大好き。

俺が女だったら絶対惚れてる。

 

……今度、お礼にマックスコーヒーを箱で進呈しよう。

じゃないと俺の気が済まん。

 

 

「司令の指示ですよ。たぶん、八幡さんなら彼女と一緒に逃げるだろうからって。この事は僕と司令しか知りませんので安心してください。」

「司令って…?」

「さっきの赤シャツのオッさんだ。」

「はぁ!?あのロリコン野郎が!!?」

「……えっ?…ろ、ロリコン?司令が??……ロリコン?」

 

 

げぇっとなるクリスと、司令がまさかの特殊性癖持ちでショックを受ける緒川さん。

 

恐ろしいものだな…こうして誤解は広がって行くのか…。

兎にも角にも、クリスの頭に麦わら帽を被せて念の為に周囲を警戒しておく。

 

……誤解を解いた方がいいかな?

まぁ、直ぐに違うってわかんだろ。

 

 

……わかるよね?

 

 

「ところで、行き先はどちらに?」

「八幡さんの部屋です。あそこが一番人目に付かず安全かと……。」

「わかりました。」

「お前ら……アタシを連れ込んでどうするつもりだ!」

 

 

耳元で怒鳴るなよ!八幡の耳痛いでしょーが!

至近距離の大音声に、キーンっとなる耳だったが

 

 

きゅるるる…

 

聴こえたよ。

可愛らしい、空腹を知らせる合図が八幡聴こえたよ。

 

顔を真っ赤にし、慌ててお腹を抑えるクリス。

あらやだ、可愛いい。

睨んでるけど、うん…可愛いい。

 

「とりあえずメシだな、うん。」

 

ぐうの音もでないクリスだったが、可愛らしいお腹の音が再び鳴るのだった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

帰宅早々にリゾットと即席でスープにサラダを作れる俺って、やはり主夫になれると思うんだよね。

夢の専業主婦……あ、無理だわ。俺、陰陽師だもん。二課に就職してるもん。

 

「……ご馳走様。」

「はい、お粗末様。」

 

響並みかそれ以上にガッツいたクリスの顔には、米やら何やらが付着している。

て言うか、テーブルマナーがなって無さ過ぎ。

よく見なくても、テーブルは汚れてる。

なのに、皿は洗ったの?ってくらいに綺麗に完食。

 

……俺は怒ればいいの?それとも喜べばいいの?

 

 

「ほれ、茶だ。あと濡れタオル。顔、拭きな。」

「……薬ー」

「入れてねぇよ。入れるんならメシの方に入れた方が、味で誤魔化せと効率いいだろ。ま、どっちにも入れてないけど。」

 

 

そもそも盛る薬を持ってない。

政府直属の二課にいるとはいえ、俺は所詮ただの未成年。

そんなもんを手にする機会もルートもありゃしない。

 

「…っで、アタシを連れ込んでどうするつもりだ?」

「どうもこうも…お前、緋維音に命狙われてんだろ?大方、色々と知り過ぎたクリスを口封じの為に抹殺しようとしてるってところか。だから、とりあえずは保護だな。ここならバレない様に移動したし、安全だろ。」

「保護だぁ?……何を今更…。今更優しくされても嬉しくもなんともねぇんだよ!」

 

 

椅子を倒し、上から威嚇するクリス。

だが、あの再会を果たした日と同じく、その目尻には涙が溜まっていて、今にも流れ出しそうだった。

 

「パパもママも殺されて……今まで散々な目にあってきたんだ!お前を信じて待ってる間に沢山……沢山、酷い目にあったんだ!…なのに約束を忘れて楽しい人生送ってたヤツが同情?保護?ふざけんじゃねぇッ!!」

 

憎悪。憤怒。

負の感情を向けるクリスに俺は何を言えばいいのだろうか?

 

俺が今までしてきた事を言うか?

……ダメだ、口だけじゃ人は信じない。

どうしたらー

 

 

 

 

 

「ハイハイ、そこまで。外まで聞こえちまうぞ。」

 

悩みの渦は司令の登場で霧散した。

 

…どうやって入った?

 

「ほれ、合鍵。翼に返しといてくれ。」

「自分で返して下さい。」

 

てか、何しにきたんだよ司令。

結構な修羅場なんすけど。

 

「八幡、悪いがクリス君と話しがしたい。席外してくれ。」

「いや、でもー」

「なぁに悪い話しじゃないさ。」

「…クリスの身の安全を保障してくれるのであるば。」

「当たり前だ。その為にも話しをしにきた。」

「……了解しました。例の部屋に居ますので何か有れば呼んでください。」

 

尚も睨み続けるクリスの脇を取り抜け、俺は文献やらを保管している部屋へ移動した。

 

いいや。逃げたのだった。

 

 

 

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