やはり俺がシンフォギアの世界にいるのは間違っている 作:にゃにゃにゃす
俺は珍しく人混みで溢れてる場所へ赴いていた。
クリスを引き連れやってきたのは巨大なショッピングモール。
親子や友達、恋人などで賑わうこの場所で、俺は周囲を警戒し、細心の注意を払いながら進んでいる。
サングラスを装着し、一眼で発見され辛いようにしている。
クリスも帽子に伊達眼鏡装着である。
何故かって?
今日ここに姉さんと響と未来がいるからだよ。
昨夜の響からのグループデートのお誘いは、任務疲れの名目で断っている。
その手前、クリスを引き連れてるのを見られた日には、警察の取り調べの如く詰め寄られるのは目に見えてるからな。
それにクリスは敵対していた存在だ。
もしバレたらあの姉が黙ってないだろうし。
余談ではあるが……宇宙人や怪獣から地球を守る巨人に変身するように、「デュァッ!」っとサングラスを装着したのをクリスに見られて超引かれた。
朝からブロークンハートだよ。
「……まずはここだな。」
「ここって……服か?」
まず、最初に訪れたのはレディースの店。
そして、俺がやることはただ一つ。
「すいません。この子に合う服を見繕って貰えませんか?あ、お代は気にせず3日分ほど。」
「ちょっ!八幡!?」
「あらあら〜。お任せください。では彼女さん、お借りしますねぇ〜。」
「か、彼女じゃねぇ!!」
店員さんに丸投げである。
だって俺、女性のファッションとかわかんねぇもんよ。
喚き、俺を恨めしそうに睨むクリスは店員に引きつられ、更衣室に投げ込まれた。
存外、客の扱いが雑だな…。
さてさて、俺はそこらで休憩で…もぉおおぉぉっ!!?
「翼さん、次は映画観に行きませんか!?」
「ふむ…映画か。」
「もう響ったら、ハシャギ過ぎだよ?……ん?」
「…未来?」
「ううん、何でもない。気のせいだったみたい。なんか特徴的なアホ毛が見えた気がしただけ。」
「あはは、それハチ君じゃん。」
「アホ毛だけで案外わかるモノなのね。不思議だ。」
遠ざかっていく声に安堵する。
何ちゅうタイミングで来るんだよ!めっちゃ焦ったわ!
……しっかし、サングラスだけじゃダメだったのか…アホ毛対策で帽子買うかな。
ぴょんぴょんと跳ねるアホ毛が憎らしい。
「あ、あの〜お客様?」
「ひ、ひゃい!?」
「あはは…お連れ様のお召し物の準備が出来ましたので…。」
「あ、はい。」
やっちまったよ…。
急に声掛けられて悲鳴が…。
と悲しみに染まった俺だったが、それも直ぐに吹っ飛んだ。
何故なら、クリスのファッションショーが始まったから。
我ながら単純である。
所詮は俺も男って事か……ヘタレだけど。
ともあれ、結論だけ言おう。
恥ずかしがるクリス、マジ天使。
気づいたらメッチャ買ってたし。俺が。
ついでに寝巻きも、爛々と目を輝かせた店員さんが別の店から持ってきてくれた。
……有難いのだが、目が若干血走ってて2人ともちょっと引いた。
そして現在、隣りを歩くクリスの格好は
オフショルダーで、胸元にフリルがついた黒いシャツ。
赤のロングスカートにヒールのサンダル。
髪は店員さんがしたらしく、シニヨン?八幡よくわかんない。
キャメルのベレー帽に赤縁の伊達眼鏡。
…滅茶苦茶大人っぽいんですけど。
え、俺釣り合い取れてなくない??
…そう思うのは仕方ないと思うんだよね。
だって、クリスを見た周囲の雄共がみんな鼻の下伸ばしてやがるのでね。
それから俺睨むし。超理不尽。
つーかクリスを見るんじゃねぇよ!目潰してやろうか?
「なんか、目つき悪くねぇか?」
「別に…。さて次はここだな。…頼むから1人で行ってきてくれ。流石に無理だ。」
「わ、わかってるよ!」
次のお店は、男子が入り辛い店No.1。
女性様の下着です、はい。
「さて…俺は今のうちに帽子でも買ってくるかね……。」
と帽子を購入し、例の店に戻るとなんかのクリスが2人組みの男に絡まれるんすけど…。
ナンパか?
……あ、クリスの腕掴んだ。
クリスは…うん、メッチャ威嚇して1人を蹴り飛ばした。
目立つのは嫌いだが、今回ばかりは問答無用で悪速斬。
足早で近づいて、クリスの腕を掴んでる男の頭を鷲掴み。
そのまま、上に持ち上げていくと、あーら不思議。
大の男が宙ぶらりんですわ。
連れは顔面蒼白。
クリスは引き攣った顔。
「痛だだだだ!!?」
「次は握り潰すからね?」
パッと手を離すと、尻餅をつき悪魔を見るような目で悲鳴を上げる。
失礼な奴だな。
「「ひっひぃ〜ッ!!」
「うわ…ダッセ。」
悲鳴を上げ逃げるナンパ共に容赦なく感想を言うクリス。
ま、たしかにダサい…のか?
「また絡まれたら面倒だから……仕方なくだからな、仕方なく!」
「は?ちょ、おま…えぇ…。」
本人曰くナンパ対策らしいですよ、この絡まった腕。
近い、いい匂い、可愛い、柔らかい……はっ!?
煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退散煩悩退さぁぁああああぁあんッ!!
「…写経でもしてみようかな。」
「急にどうした!?」
煩悩は、メイド服を着た小林を妄想する事で退けた。
……正直気持ち悪くなった。
明日、林は蹴る絶対。
この後はメシ食ったり、クリスにスマホを買い与えたり、クリスが気になった店に入ったりと、クリス中心に店を周り帰宅した。
そして、寝る前に今は使ってないタンスに買ってきたクリスの衣類を片し、あっという間に1日が終了した。
例の部屋にベッドがある為、クリスにはリビングに姉さんの布団で寝てもらっている。
睡魔がやってきて、眠りに落ちる瞬間思った。
あれ?今日のってデートじゃね?……と。
◇◇◇◇◇
翌日、クリスには部屋で留守番を頼み、リディアンに来てる。
平日だしな。そりゃ、授業だってありますよ。
「林、上段蹴りと後ろ回し蹴りどっちを受けたい?」
「どっちも嫌だけど!?会って早々なに!?」
「いや、気にするな。選んで。」
「選ぶかッ!それと俺は小林だッ!」
何この林?
必死だな。
「久しぶりに学校に来たと思ったら…まったく。」
「ひ、比企谷君おはよう!小林君も!」
「綾野か…おはよう。」
「おはよう、綾野さん。」
「2人とも仲良いんだね。あの、比企谷君が休んでいた間の授業のノートなんだけど、良かった使って。」
クラスメイトの綾野が数冊のノートを渡して……いや、そんなに押さえつけないでも大丈夫だからね?
「あ、有難いんだけど授業終わってから借りるわ。今日、現文も日本史もあるし…それないと綾野が困るだろ?」
「えッ…あ、そうだった!じ、じゃ放課後貸すよ?」
「サンキュー。助かる。」
「うん!またね!」
朝から元気の宜しい事で。
地球よ、オラに元気を分けてくれぇぇ!
……アレって悟空のせいで地球の元気無くなったりしたらどうなるんだろか?
惑星崩壊かな?だったら、地球を守る攻撃手段としては意味なしじゃね?
「どう思う?林。」
「なにが?綾野さんの事?だったら良かったですねモテ男くん。」
「自己紹介どうも。俺はモテないし、そんな事言ったら綾野に失礼だろ。」
「鏡見てこい、鏡を。…ところで、俺のコンテストは誰か誘ったのか?」
……あ、やべ。
「……。」
「……?」
「忘れてたかも。」
「かもッ!?…え、どう言う事!?」
だって、ここ最近は色々立て込んでて……
響の二課所属から始まり、
姉さん、絶唱で危篤。
ネフシュタンの鎧はまさかのクリス。
クリスの誤解からの和解。
色々とあり過ぎじゃね?
「いざとなったら、姉さん連れてくし大丈夫だろ。」
「会場が大丈夫じゃなくなるから絶対辞めてください。トップアイドルが急にきたら騒ぎだけじゃ済まないからね?」
「チィッ…注文の多いハヤシ店だな。だったら、響か未来を連れてくし。これなら問題ないだろ?」
ー…ピシリッ
刹那、教室の空気が凍りついた。
ユラァ〜……と室内の女生徒が一斉に立ち上がる。
「「ヒィッ!?」」
林と揃って悲鳴がでた。
だって、みんな一斉にコッチ見たと思ったら、目が輝きを失ってるんだもの。
え、怖い……!
謎の恐怖に陥り、心なしか室内の空気も重く淀んでる気がする。
「あ、あぁっ!俺、姉さんに呼ばれてるんだったぁ!」
「お、俺は自販機にでも行こうかな!?」
棒読みの猿芝居の後に、震える身体にムチを打ちって教室から2人で飛び出した。
廊下は走ってはいけないが、今日だけは許して神様!
なんか…わかんねぇけど怖いんですッ!
なんだったんだ?
自販機前で時間潰しをして、授業始まるギリギリに教室に戻ったらいつもの雰囲気に戻っていてホッとした。
が、放課後にノートを貸してくれた綾野の目は真っ黒な闇を孕んでいました。
……夢に出そうで怖かった。
「って事があったんだわ。」
「そうかい。んで?そうなっちまった原因ってなんなんだ?」
「分かれば苦労しねぇよ。……うっし、写し終わり!」
自宅にて、クリスと駄弁りながら借りたノートを写し終わり解放感に包まれる。
いくら任務があるとは言え、成績落としたくないからな。
勉強時間が不足気味だけど、騒動が治ればまた時間確保できるし、それまでの我慢だな。
「なぁ…教えて欲しい事があるんだけどよ。」
「なんだ、藪から棒に。」
「八幡は陰陽師なんだよな?…あの時、フィーネが言ってた。八幡が陰陽師を名乗るのは片腹痛いって。……なんでなんだ?」
あー…あれか。
言われたわ、確かに。
新妻に対する姑の嫌味並みに棘があったよね。
「俺は確かに陰陽師…それも安倍晴明を名乗ってる。でもそれは俺が世界最後の陰陽師だからだ。…つまり、だ。俺は歴代最弱の安倍晴明なんだよね。」
「あれでかッ!?完全聖遺物を相手にアレだけ立ち回ったのに…」
「いや、あれ完全に不意打ちだしな…。本来、陰陽師は師から術やらを教わるんだが……親父も先生も死んじまったからな。文献を読んで試行錯誤しながら我流で鍛えた。過去の陰陽師達は火、水、風、雷の力に加えて式神を自在に使役するんだ。ここまではOK?」
「なんとなくな。」
「ならばよし。…あー…俺な、雷しかまともに使えないんだわ。理由は親父が早くに死んだのが原因だ。先生は元々、親父の弟子なんだけど……術は全部使えたが肉弾戦に富んでいて術の修行は後回しにされたんだよね……。結果的に剣の腕は達人レベルまでいったが……術はからっきしだ。」
悲惨すぎるわ。
漆黒の鎧に付与してる時空干渉術式を、親父が1番最初に教えてくれてたから良かったけど。
アレ知らなかったらノイズをこちらの世界に存在固定できなくて戦えなかったからね。
先生は一に剣、二に剣。三も剣で四にも剣。
あと同等に格闘術。
確かにノイズ戦でも大いに役立ってるよ?でも、陰陽師としての術は何にも教えられてないんだけど!!
「どんなゴリラなオッさんに鍛えられたんだよ……。ん?お前、氷の術使ってたろ。」
「アレは陰陽師の能力じゃなくて、使っている妖刀の能力だ。あと先生はゴリラでもオッさんでもない。……女だ。」
「……女捨ててんな。」
だよね?
悩みは結婚したいのに、彼氏ができない事だった。
婚活パーティーで惨敗した日には、死にも勝る苦しい修行で俺に八つ当たり。
……そんな事してたから、彼氏できなかったんだよーだ。
「じゃーさ、どうやってー……」
続くクリスからの質問の嵐に、ついつい苦笑してしまう。
なんやかんやで、ずっと気になってたんだろうな。
だから一つ一つ丁寧に説明していく。
穏やかで優しい時間が流れる。
満たされた気持ちに違和感を覚えながらも、俺は会話を楽しむのだった。
◇◇◇◇◇
「はい、これ。」
「あん?…ライブのチケット?」
「そ、私の復帰ライブよ。昨日、既に立花と小日向には渡してあるわ。」
昼休み。
リディアンの屋上に呼び出されたて行ってみれば、「ほらよ」と副音声が聞こえそうな程に偉そうにライブチケットを渡された。
…受け取り拒否しようかな?
したら、したで盛大に落ち込むのは、既に立証済みである。
…緒川さんに迷惑が掛かるので渋々受け取る。
「ふーん……なぁ、この会場ってー」
「えぇ。2年前のアノ会場よ。」
「…リベンジ、だな。」
「ー!…えぇ、そして乗り越えて、過去から未来へ羽ばたく。」
強気の笑みに、こちらも釣られて笑ってしまう。
過去の惨劇。
全ては2年前のあの日から始まった。
ノイズ襲撃。
あの日、俺は姉さん達と出会い、響は胸にガングニールを宿した。
響は前へと真っ直ぐ突き進んでいる。
姉さんは前へ歩みだした。
だから、俺も前へ進みたい。
変わる。変わりたい。
「あ、そうそう。私は八幡より奏が隣りにいた方が良いなどと思ってないから。…だから、次にそんな事を言ったら許さないわよ。」
「…司令め、余計な事を。」
アレか?ロリコンって言った仕返しだろ絶対。
「余計な事じゃないでしょ。…貴方の父君も師も、もちろん奏だって、貴方に不幸になって欲しいだなんて思っていない筈だ。だから八幡、幸せになりなさい。これは姉としてのお願いよ。……聞いてくれるわね?」
「……ありがとう、姉さん。」
優しい人だ。
幼少期から家族愛を知らずに育ったと、司令から前に聞いた。
なのに、血の繋がりもない俺を弟と言ってくれる。
支えてくれる。怒ってくれる。認めてくれる。背中を押してくれる。
なにより…隣りにいてくれる。
だから、俺はこの姉を心から尊敬してるし、大好きだ。もちろん姉として。
……羞恥心から声に出せないけど。
「八幡、私は奏を亡くしたあの日からただ戦う為に歌ってきた。…でも、そうじゃなかった。私は歌が好きだ。だから戦う為じゃない、好きだから歌いたい。今はそう思っているわ。」
「そっか…。」
「奏に言われた気がしたのよ。好きな事をやればいいって。だからってわけではないけれど、貴方も好きな事やりなさい。何かやりたい事をはないの?」
「好きなこと…やりたい事を…。」
……。
…………?
……あっれぇ?可笑しいな…昔はやりたい事が沢山あったはずなのに。
すぐに思いつかない。
なんだろう?俺って何がやりたいのだろう…。
「悩んでるのなら良かった。拒否しないあたり、貴方は前に進んでいる。だから、焦らないでいい。ゆっくりで構わない。うんと考えなさい。自分が一番やりたい事は何かを。……つまりは将来の夢ってやつね。」
「…わかった。」
また、見つけられるだろうか…。
好きな事や、やりたい事。
将来の夢。
あ。
「……あったわ。将来の夢とやら。」
「そう。何かしら?」
「専業主婦。」
「……。」
絶対零度の眼差しが俺の体温を奪っている気がする。
俺の姉はどうやらコキュートスだったらしい。
…あ、冗談です…やめて……そんな目で俺を見ないで。
「はぁ…私の弟はもうダメかも知れないわね。」
「そんな余命僅かみたいなこと言わないでくれない?冗談だし。」
「何割が冗談なの?」
「2割!」
「ふんッ!」
「あだぁッ!!」
い、痛い……拳骨とか先生以来だわぁ……あ、涙出そう…
「貴方は真っ直ぐ前に進めないの?」
「痛てて……人生は曲がりくねった方がより充実するだろ。」
「曲がりくねってるのは貴方の性格でしょ。」
「……ぐう。」
「ぐうの音なら出るって?ふんッ!」
「ぐほっ!?…2発目…だと……?」
ちょっとした冗談のつもりが、とんだ大惨事だよ。
安西先生…頭が……痛いです……。
痛いついでに八幡の頭がパッカーンってご開帳しそうだよ…。
「本当に世話の焼ける。」
「…そりゃお互い様だろ。」
「ん?」
「ひぃッ!?いしゅもお世話になっておりましゅッ!」
俺の姉さん恐ろしや。
次ふざけたら斬られるかもしれない。
ま、実際は専業主婦なんて冗談。
それは姉さんだって分かっているだろう。…分かってるよね?
やりたい事かぁ……。
将来の夢なんて数年前に捨ててしまっていた。
人は叶えたい夢を抱く。だが、俺は一度全てを諦めた。だから、もう一度夢を抱くところから始めなければならない。
まだ見ぬ幸せを目指してー……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
時間は遡り、八幡と亜咲が逃げ出した教室内。
目に光を失った女生徒達はぞろぞろと密集する。
「響と未来って誰かしら?」
「今年リディアンに入学した幼馴染みだそうよ!」
「立花響と小日向未来ね。……比企谷君曰く、妹だそうよ。前にそう言ってるのをしかと聞いたわ。」
「両者共に、それぞれ例のクレープ屋に比企谷君と行っていると言う情報が!」
「な、なんですって!!?」
「しかしながら、両者ミックスベリーでは無く…ただし、仲良く食べさせあいをしていたと証言が……!」
《う、羨ましい!》
「立花響は、同級生に忘れ物を貸してあげたり、迷子の子を道案内してあげてるみたい。あと、この間は木から降りれなくなった子猫を助けてた!」
「小日向未来は怪我した同級生の手当や、勉強を教えてあげたりしているみたい。」
「2人とも、メッチャ良い子じゃん!?」
この日、女生徒達の話しの結論はこうだ。
立花響と小日向未来は様子を見よう。
何故なら良い子達だから!!である。
彼女達と幼馴染みが会合を果たした時、果たして何が起こるのだろうか?それはまだ、誰にも分からない!
ーーつづく…?