やはり俺がシンフォギアの世界にいるのは間違っている   作:にゃにゃにゃす

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第18話

《こンの、ゴミぃちゃんッ!また1人でお父さんの墓参り行ったでしょッ!》

「えー…開口1番が罵倒って……。」

 

久しぶりの小町からの着信に、心をワックワックさせてたらコレだよ。小町の盛大な怒鳴り声で、ソファーにて寛いでたクリスが驚いて小さく跳ねた。目をパチクリさせてます。俺の妹がゴメンね。

 

《今年は一緒に行くって約束してたでしょッ!?》

「母ちゃんに伝えてたろ?今、忙しくて時間合わせるの難しいんだよ。」

《またそれぇ!?小町その言い訳聞き飽きたよ!もうぉ〜、お正月も帰ってこないし。小町、2年もお兄ちゃんに会ってないんだよ!?》

「お、なんだ?寂しかったのか?」

《〜ッ!?馬鹿、ボケナス、八幡!》

「待て、八幡は悪口じゃないだろ!?」

 

そっか……寂しかったのか。いやいや、ごめんよ。お兄ちゃんマジで忙しいんだよ。俺だって小町に……小町に会いたいッ!!

 

よし、決めた。絶対休みを捥ぎ取るッ!全ては小町への愛の為にッ!

 

「夏休みには帰れるようにするから。」

《本当にぃ〜?》

「本当に本当だって。なんならマジで。」

《あ、そう。…ん、お母さんに代わるから。》

 

 

急にあっさりし過ぎだからね?あっさりなのは人間関係だけで良いのよ。

 

《もしもし。八幡、元気してる?》

「久しぶり。超〜元気。」

《本当に?アンタ、元気なくても元気があっても、あるのかないのか解らないから母さん心配だわ。》

「根暗って、遠回しに言わないで良いからね…。」

 

実の親に根暗呼ばわりとか辛いわぁ〜…。しかも、気を利かせて遠回しに言うのが、心にくるわ。ストレートで言われても嫌だけどな。

 

《……最近、東京でノイズによる被害が多発してるらしいじゃない。アンタは大丈夫なの?無理、してない?》

 

本音はソレか。……心配してくれてるんだな。

 

「あぁ大丈夫だ。」

《そう…。小町、寂しがってるし、お盆くらいは帰ってこれないの?》

 

通話の向こうで、小町の焦った喚きが聞こえたけど大丈夫。お兄ちゃん、ちゃーんと寂しかったって分かってるから。俺も寂しかったし、相思相愛でよろしいかと。

 

「ん、夏休みは休暇貰って帰るよ。会わせたいヤツもいるし。」

 

我が家のソファーで胡座かいてる奴をね。

……あ、それ俺のアイスッ!!

 

《あら…あらあらあら!もしかして彼女……なわけないわよね。八幡ですものね。》

「うん、そうだね違うね。なんせ俺だもんね。」

 

母からの信頼が絶大過ぎて、八幡泣きそうだよ。

 

《あまり無茶したらダメだからね?さて、夜遅くに悪かったわね。…おやすみなさい、八幡。響ちゃんと未来ちゃんにもよろしく言っといてね。》

「あいよ。おやすみ。」

 

親子揃って、マジ俺に失礼だと思う。……過去を振り返ってみたら、身から出た錆でした、てへッ。

 

「やけに騒がしい電話だったな。」

「まぁ久しぶりの家族との会話だしな。あと、それ俺のアイスなんだけど?」

「今日の戦闘報酬だ。安いもんだろ?」

「えー……。」

 

それを言われちゃうと何にも言えなくなるじゃん。あぁ…俺のアイスちゃんが……。

 

「家族…か。仲良いんだな。」

「離れて暮らしてるから喧嘩のしようがないじゃん?」

「そう言う意味じゃねぇよ。」

 

"羨ましい"

クリスの眼差しが、そう言っている気がした。…やっちまった…無神経だった。クリスは両親を亡くしてるのに……配慮が足りなかった。

 

「なぁ、八幡。人から戦争を無くすにはどうしたらいいと思う?」

 

急にまた…。だが、話題を変えるチャンスだし、乗っかりますか。

 

「ん〜……お互いが妥協し合うしかないだろうよ。争いの基本は奪い合いだ。利権に富など言い出したらキリがないがな。だから、妥協するしかねぇんじゃねぇの?」

 

じゃないと争いは絶えない。人は欲深い生き物だ。隣の芝が青いと思えば、力があれば奪いにかかる。だが奪われまいと応戦すれば、最後に待つのは、片方または両者の滅びだけだ。

 

「妥協ねぇ……。アタシは違う。戦う意思と力を持つ奴等を片っ端から潰していけば良いと思ってる。それが1番合理的で現実的だ。」

「その果てに待つのは平和だと?」

「そうだ。平和だ。なのに…いい大人が歌で平和にするだの言ってやがった。」

 

憎しみ。悲しみ。そう言う彼女から感じとれた。

なんだ…何が言いたいんだ?

 

「アタシの両親さ。とんだ夢想家で臆病者だ。……戦地で難民救済?歌で世界を救う?イイ大人が夢みてんじゃねぇよッ!」

 

拳をテーブルに叩きつける。彼女の瞳は憎悪の炎を灯していた。打つけた箇所が赤くなったクリスの拳をそっと掴み、優しく摩る。

あーぁ、赤く腫れてんじゃんか。

 

「お前、両親を憎んでるのか?」

「あぁ……アタシはパパもママも大っ嫌いだッ!2人だけじゃない、大人はみんな大嫌いだ!戦争して、アタシに酷い事して、全部大人がそうしてきた!」

「……そうか。それで戦争の火種を消す、か。…クリス、お前のやり方は間違ってる。」

「ッ!?」

 

腕を振り解こうとクリスが力を入れるが、させない。至近距離で睨まれるが、負けじとこちらも睨み返す。

しばし、時計の針が進む音だけが部屋を包む中、先に口を開いたのは俺だった。

 

 

「力を持つ者を潰した所で、また別の奴が現れる。また潰しても、その繰り返しだ。その先に待つのは平和じゃない。…泥沼だけだ。」

「だったら、お前の言う妥協が正しいと…?そう言いたいのか!?」

「さぁな。正解なんて俺にもわかんねぇよ。でもよ…お前の両親が間違ってるとも思えない。」

「はぁッ!?」

「歌で世界を平和にする…確かに無茶で無謀な話しだ。でもよ、雅律さんもソネットさんも臆病者なんかじゃない。本当に臆病者なら戦地なんて地獄に自ら望んで行ったりやしない。」

 

不足している食料は強者に奪われる。民を顧みない戦火の拡大。家も街も何もかもが戦争によって焼けていく。殺して、殺されて。

クリスの捜索途中で、この目で見たから分かる。地獄と呼べてしまう程に、戦地は悲惨だった。

臆病者なら絶対に脚を踏み入れる事のない領域だ。

 

「お前の両親はただ夢を見るために行ったわけでもない。叶えようと実行していた。……力と力を打つける命の奪い合いではなく、歌で手と手を取り合おうとする。正しいとは言えないが、間違えているとも思えない。」

「……。」

「2人はさ、叶えられるって信じてたんだよ。歌で世界を平和にできるって夢を。」

 

あの人達は世界的に有名だった。それはトップアイドルと呼ばれる姉さん以上に。

滑らかで優しくも激しい旋律を奏でる雅律さんのヴァイオリンを聴き、俺は鳥肌がたった。その隣りで歌うソネットさんの歌声が重なった時、ガキながら心と身体が震えたのは今でも鮮明に覚えてる。

生きていれば、本当に世界を歌で救っていたのかも知れない。そう思うよ。

 

「そして、その夢を叶える瞬間をお前に見せたかったんだろうさ。」

「なんで…そんな事を…。」

「そんなの決まってんだろ?2人がお前の事を大好きだからだろうが。…子どもは親の背中を見て育つもんだ。だから歌で平和を勝ち取る瞬間を…夢は叶えられるって事をお前に見せたかったんだろうよ。子どもを愛する親としてさ。」

「あ……くっ…。」

 

俺は先代安倍晴明、つまり親父を見て育った。陰陽師としての生き様や振る舞いを間近で見てきた。厳しい躾や、修業。でも、それは俺が生き残る為にした行いだ。

だからこそ、確かにそこに家族としての愛を感じていた。

こんな俺ですら感じた親の愛情を、クリスが分からないはずがない。

 

涙を流すまいと唇を噛み締める彼女。口ではあぁ言ってたけど、やっぱり今でも両親が大好きなのだろう。

俺が言うのも烏滸がましいが、コイツも相当な捻くれ者な気がする。だから、素直になれない。言えない。

 

「クリス。泣ける時に泣いとけ。」

 

ついに両手で顔を覆い、流れる涙を見せまいとするクリス。だから、俺はそれ以上は何も語らずにただ優しく頭を撫でる。

悲鳴のように泣き声を出すクリスの側で只管、頭を撫で続けた。

 

泣き止んだのは、それから10分後だった。

目は赤く充血し、鼻も少々赤い。ちょっと睨まないでくれない?俺、何も悪くなくない?

 

「…また八幡に泣かされた。」

「人聞きの悪い事言わないで下さい。」

 

そんな性悪男子みたいな。…別に良くもないけど。

 

「再会したあの日、お前は歌が大っ嫌いと言ってたよな。今はどうだ?」

「ア、アタシは…。」

 

顔を真っ赤にして、モジモジとするクリス。

あ、恥ずかしいんだよね?トイレ…じゃないよね?

まぁいいや。

 

「俺は好きだぞ?お前の歌。」

「なッ!?何こっ恥ずかしいコト言ってやがる!!」

 

い、痛い!そんなペシペシと叩いてこないで!

別に、素直な感想言っただけなのに……。

 

「…なぁ、アタシは今まで間違いだらけだったのかもしれない。いや、たぶんきっとそうだ。だったら、今度は正しく前に進みたい。」

「正しくなくても、間違ってもいいんじゃね?俺らはまだ成人も迎えてないガキだ。だったら、間違って、迷って、悩んで進めばいい。正しく前に進むなんて、まるで機械みたいじゃん?」

「…それはアタシへのフォローのつもりかぁ?伝わりにくい事この上ないぞ。」

「違う。昔、先生に言われたんだ。"正しさだけじゃ駄目だ。間違って、悩み、傷つき、躓きながら進むといい。その先には何事にも折れない強さを手にした君がいるだろう。なぁに、悪い事をしたら叱ってやるから安心したまえ。それが大人の勤めだ。"…だってさ。」

「そっか…いい先生だな。」

 

あぁ。いい先生で、カッコいいんだぜ?強くて、優しくて、男気溢れてて。でも、それが災いして男に逃げられるんだけどね。

 

「アタシは、ただフィーネの言う事を信じて従ってきた。でも、それは間違いだった。裏切られて傷ついた。だから、ここに来て沢山悩んだ。…考えが纏まらないで躓いた。でも、決めた。だから次は進むんだ。その為にも、フィーネと決着をつけなきゃならない。」

「…1人で、か?」

 

ゆっくりと首を横に振るクリスは、俺に手を差し出してきた。

 

「一緒にヤツのアジトまで来て欲しい。頼めるか?」

「あいよ、任せろ。」

 

彼女の手を取る事に迷いはない。頼られるのが、寧ろ嬉しい。

やがて手を離し、俺は心を落ち着かせながら写真立てを手にとった。

 

それをテーブルに置くと、クリスを手招きする。

 

「ここに写っている人達は全て、俺にとって大切な人だ。……なぁ、クリス。この中に緋維音……フィーネはいるか?」

 

居ないと言って欲しい。これが俺の心からの願いだった。

でも、やはりと言うか……世界は俺に優しくはなかった。

 

「……あぁ。いる。」

「ッ…そいつは誰だ?」

 

スッ…と細いその指の先には、1年前に撮った写真。クリスは指を指したまま写真に近づき、その人物を告げた。

 

「この女が、アタシの決着をつけなきゃいけない…フィーネだ。」

「ッ!!?……。そっ…か。すまん、助かった。」

 

悔しさ一色に染まる心。視線を逸らしたくなるほどの残酷な真実に心臓が締め付けられたように痛む。

違って欲しかった。この中には居ないと言って欲しかった。二課にいても、別の人であれば幾ばくかマシだった。

 

「…この人が緋維音……ははっ、マジかよ。」

 

初代・安倍晴明より子孫へ伝わる願い。罪無き人びとを守護し、緋維音の暴挙を止めて欲しい。

その願いは何代移り変わろうと伝承し、叶えられてきた。

 

「アンタのやろうとしている事、止めますよ。……了子さん。」

 

クリスの指先には、笑顔で写る了子さんがいた。

 

 

 

 

 

そして物語は収束に向かい、動き始める。

 

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