やはり俺がシンフォギアの世界にいるのは間違っている   作:にゃにゃにゃす

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第3話

昨夜のノイズ戦から一夜明けた本日。

私、風鳴翼はパートナーの奏に呼ばれて櫻井女史の研究室を訪れている。

 

「それで、私を何で呼んだの?」

「単刀直入に言う。翼、ハチと仲良くしな。」

 

何となくだけど、予想していた内容に少し嫌気がした。

二課に比企谷八幡が加わってからと言うもの、司令も櫻井女史も彼と友好的になれといってくるし…。

 

 

「…いくら奏の言う事でも、それは頷く事はできない。私は剣。力を持つ者として人々をノイズから守る防人。あんな金で動く者と仲良くなど、できない。」

「……そう言うと思ったさ。了子さん、後はお願いするよ。」

「はいはーい。翼ちゃん、こっちに来て〜。」

 

対面の椅子に座るよう即され、私はとりあえず座る。

櫻井女史はキーボードを軽快な動きで叩いていき、やがて1人の個人情報がモニターに開示された。

 

これは見てはいけないヤツなのでは?

彼女はニコリと微笑みながら、モニターを指差す。

 

「本当はぁ〜閲覧できない機密内容なんだとけど、今の翼ちゃんには必要だと判断して情報を開示しているわ。て言うか、翼ちゃんが八幡くんにビンタして出て行った後に彼が話してくれた内容なのよね、こ〜れ。」

「もちろん、私も弦十郎の旦那も知ってるぜ。」

 

 

そう…あの後に…。

別に、彼には興味はないし見たくもないってのが、私の本心だ。

ただ、2人の圧に見なければならないんだと悟り、ため息を一つ漏らし、一通り彼の情報に目を通す事にした。

 

氏名、比企谷八幡。14歳。

誕生日8月8日。

……誕生日はゾロ目なのね。

 

身長や体重など、身体的特徴に続き家族構成や経歴などに目を通していく。

 

そうして行く内に、私はだんだんと彼の情報にのめり込んでいった。

読みとっていくスピードは徐々に上がっていき、それに比例し、焦りと後悔が私に訪れた。

 

読み終わった私は、とてつもなく己を殴りたくなった。

勝手な自己解釈と判断をした自身が恥ずかしかった。

 

 

「…さて、翼はこれを見てどうする?」

 

どうしたら良いのだろうか?

謝罪は確かに必要だ。

でも、それよりも、彼にはもっと必要な事がある。

 

その為にも、私はー

 

「奏、私の我儘を聞いてほしい。」

「おう。なんだ?」

「比企谷八幡を野外演習場に連れてきて欲しい。」

 

 

 

ーー……

 

 

さて…今現在、俺は野外演習場にいた。

いや、なんでだよ。

 

 

メディカルチェックでリディアン音楽院の地下、二課本部に居たら奏さんに首根っこ捕まれた。

 

抵抗したら、黒服さん2名に両腕を掴まれて連行されかけ、更に抵抗。

 

トドメは司令により羽交い締めにされて、今に至る。

 

なんでこうなった?

 

 

「連行しなくても、話してくれれば素直に従ってましたよ?」

 

たぶん。

 

「捻くれハチが素直に言うこと聞くもんかよ。だから強制連行だ。」

 

チッ…この人、なかなか俺の事わかってらっしゃる。

八幡検定三級を進呈しよう。

 

…いらないだろうけど。

 

 

「それで?何でここに連れられたんスかね?」

「私が奏に頼んだのよ。

ーImyuteus amenohabakiri tron」

 

俺を呼んだと宣う彼女は、シンフォギア・天羽々斬を起動し、俺と対面した。

 

刀の切っ先をこちらに向けて。

 

人に刃を向けちゃいけません!って親に習わなかったのか?

 

「…どう言うつもりっスか?」

「私と戦いなさい、比企谷八幡。話しはそれからよ。」

 

いやはや、意味不明なんですけど。

逆だよね。

話してから戦うのが普通だよね。

 

「…戦う理由がないんですが?」

「貴方には無くとも私にはある。剣を抜きなさい。」

「遠慮します。」

「無礼講よ。遠慮はいらない。」

「日本語は正しく使いましょうよ。」

 

これってアレだよ……

説得しても意味のないやつだよ

つまり、ここで俺が取るべき手段は一つしかない。

脱兎の如くー

 

瞬間、エルギー体の短刀が数十本ほど、俺の周囲を囲うように地に突き刺さる。

 

 

「逃がさないわよ?」

「…やだな〜。そんな事するわけないじゃないですか〜。」

 

 

図星を突かれ誤魔化すそうとしたら、自然とあざとい後輩の真似をしてしまった。

 

空気が凍てつきましたよ、えぇ。

 

 

「…無礼を承知で言わせともらうが、気持ち悪いわ。」

「無礼講ですもんね…。」

 

無礼講って、そう言う意味だったの?

トップアーティストに気持ち悪いって言われるのも、中々くるものがありますね。

ドの付いたMさんなら泣いて喜ぶだろう。

 

…泣いても良いかな?

喜びではなく、主に悲しみで。

 

 

「ハァ…早く剣を抜きなさい。そして戦いなさい。」

「…わかりました。」

 

溜息を吐きたいのは俺の方だ。

この人は、急にビンタしてくるわ、無視するわ、挙句の果てには戦いを強要してくるわで、理不尽を極めてる。

あの部長様でさえ、ここまで理不尽ではなかった…と思う。

 

嫌々とは言え、戦うと返事してしまった故に、殺生石で白狐の血を覚醒させ、白雪の華と戦鎧を身に纏う。

なんか、オォ!って声が聴こえたと思ったら…いつの間にかギャラリーがめっちゃ増えてる。

 

「ハチがわざと負けるにジュース一本。」

「ならば、翼がそれを看破し激怒するにレンタルビデオ一本だ。」

 

……未来予知みたいな賭け事は辞めて下さい。

なんなら八幡検定二級を進呈するから黙っててほしい。

ほぉら、風鳴さんの眼光が鋭くなっちゃったよ…。

 

「それでは両者構え!」

 

司令の号令に風鳴さんは、霞の構えを、俺は八相の構えをとる。

 

静寂が訪れ、空気が張り詰めた。

風鳴さんは鋭い眼光を放つも、俺は怯むことなくただ静かに構えていた。

 

「勝敗は大事だが、大きな怪我をしないように気をつける事。いいな、2人とも?……では、始めッ!」

 

 

《去りなさい!無想に猛る炎〜》

 

風鳴さんは歌と共に駆け出した。

初撃は牽制の為、軽く放つ予定だったが風鳴さんの剣が想定より遥かに速かった。

 

「ハァッ!」

「うぐっ!?」

 

横薙ぎに迫る彼女のアームドギアを白雪ノ華で受け止めるも、威力が凄まじく、身体が右側へ大きく浮いてしまう。

 

なんつぅ馬鹿力してんだよッ!

 

好機を逃すまいと、彼女は剣を止める事なく攻めてきた。

俺は急ぎ体制を立て直し、迫る剣を受け流し、躱し、そして距離をとる。

 

「貴方の実力はその程度なの?ハッキリ言ってガッカリだわ。」

「そりゃどうも。こちとら、対人試合は久々なもんで。」

「戦さ場でそんな言葉は通じないわ。敵はノイズだけとは限らないのよ。……そんな実力じゃ、貴方に剣を教えた人物も大した事は無さそうね。」

 

 

 

「…黙れ。」

 

 

次の瞬間、俺の一撃が彼女を後方へ吹き飛ばした。

 

「くっ…!」

 

コイツ、今…なんと言った?

俺の悪口なら構わないし、別に良い。

今更何を言われようが慣れている。

 

だが、コイツは今、馬鹿にしてはいけない人達を馬鹿にした。

 

それは、許せない。

それだけは、許せない…許せない…………

 

もう遠慮なんてしない。

無礼講?上等だ。

斬り刻んで、蹂躙し、あの口を黙らせる。

 

「…斬る。」

「やってみろ!」

 

一瞬で懐へ飛び込んできた俺に、彼女は上段から剣を振り落とす。

彼女の剣が目の前にきたが、峰を白雪ノ華で叩きつけ己が右側へ軌道を逸らした。

 

「なに!?」

「貰った!」

 

直ぐ様、手首を返して白雪の華を下から、首目掛けて斬撃を放つも、彼女は脚部のブレードを展開し、白雪ノ華を蹴る様に弾く。

 

二撃、三撃と脚部のブレードで攻めてくるも、全て躱しきる。

 

「ハァァアッ!」

【蒼ノ一閃】

 

続いて、大型化したアームドギアから蒼いエネルギー刃が放たれる。

地を這いながら飛んできたそれを、左足を軸に回ることで回避する。

 

同時に白雪ノ華へ神通力を流し込み、一瞬の間に極限まで溜め込む。

 

刀身からは稲妻が迸り、放たれるのを今か今かと待ちわびている。

 

 

「お返しだ!」

【閃光業雷】

 

振り上げ、放つは稲妻の刃。

風鳴さんの【蒼ノ一閃】を模倣し、俺流にアレンジした技。

 

「ーッ!」

 

彼女の表情が驚きに染まる。

だが、一瞬で冷静になり、稲妻の刃に向け駆け出す。

紙一重で横をすり抜け、こちらに斬りかかって来た。

 

そこからは、激しく速い剣撃の応酬だった。

斬りかかり、防ぎ、跳び上がり、回避する。

高速で行われた、攻防に両者ともに息が上がってきた頃に、互いに距離をとった。

 

「やるわね。それが貴方の本気のようね。」

「今更褒めようが関係ない。アンタを斬る。」

 

白雪ノ華を構え直し、次の攻撃に備える。

にも、関わらず風鳴さんは剣を下ろし真っ直ぐに俺を見据えている。

その瞳に闘志も何もなく、ただただ俺を捉えていた。

どう言うつもりだ?

 

「……。一つだけ、言わせてもらいたい事がある。」

「なんです?怖気付きました?」

「…ごめんなさい。」

 

これには驚いた。

棚からぼた餅。……違うか。

 

兎にも角にも、戦いの最中にも関わらず、頭を下げた綺麗な90度の姿勢に、呆気に取られた。

 

風鳴翼と言う人物はプライドが高く、頭が堅く真面目で、そして己が正義を絶対だと信じているタイプだと思っていた。

そんな人が、何かに対して謝罪を述べ、頭を垂れたのだ。

 

……話しを聞く必要はあるか。

 

「それは何に対しての謝罪ですか?」

「全てよ。この間の言葉にビンタ。そして、先程の貴方の師への侮辱。その全てに対して謝罪したい。」

 

 

『比企谷。相手の眼を見る癖をつけろ。戦いでも、私生活でもそれは大切な事さ。何せ眼は口程に物を言うって言葉があるくらいだからな。』

 

 

不意に先生の言葉が脳裏を過る。

…そうでしたね、先生。忘れてました。

 

風鳴さんの瞳は一見、強気に見えるものどこか後悔と不安な色を醸している。

 

つまり、あれだ。

この人、マジで謝ってるわ。

 

 

「はぁー…。仰りたいことはわかりました。そもそも、別に前に言われた事は気にしていません。貴女には貴女の思いや考え、正義がある。それと同じく、俺には俺の思い、考え、正義があります。ただ、それだけです。」

「そうね。その通りだと思う。だから、私はその自身の正義を貫く為に謝りたかった。」

 

正直に申します。

この人、真面目過ぎだ。

そして不器用のようだ。

何に対しても、真っ直ぐで己が正義を貫く…か。

 

「…謝罪の言葉、確かに受け取りました。」

 

構えを解き、謝罪を受け入れる。

先生への侮辱は許せるものではないが、冷静になった今ならなんとなく分かる。

アレは、俺に本気を出させる為の行動だったのだと。

俺がここ最近知った風鳴翼と言う人物は、無闇に人を侮辱したりしない。

 

元を辿れば、適当に戦って負けようとした俺が悪いしな。

 

「許してもらえるの?」

「えぇ。なので…ね?」

 

もう戦う必要はない。

そう心で、言葉にする。

 

視線が交わり、俺の思いが伝わったのか、風鳴さんは優しく微笑んだ。

 

 

「えぇ、そうね。続きをしましょう。」

 

…おっと、微塵も伝わってなかった。

まぁアレだ。アレ。

 

眼は口程に物を言うが、言いたい事はハッキリと口にする必要があるってことだ。

 

「いざ、推して参る!」

 

どこか嬉しそうな表情で突っ込んでくる彼女に何故か逆らえず、俺は今一度、白雪ノ華を握り直したのだった。

 

 

 

ーー……

 

 

 

 

風鳴さんとの模擬戦と言う名の本気試合を終え、学院の屋上で夜風に当たっていた。

マジでキツイ。疲れた。

あの後、なんやかんや言いながら戦いが楽しくなってきて、激闘を繰り広げた。

結果は勝負着かずに、引き分け。

 

「ほら、飲みなさい。」

「どうも。」

 

風鳴さんから黄色い缶を受け取る。

MAXコーヒーとは、良いセンスをしている。

風呂上がりと戦いの後にはマッ缶だな、うん。

尚、異論反論は認めない物とする。

 

「これ、好きなんすよ。」

「知ってるわ。貴方の個人情報見たもの。」

 

…本人の預かり知らぬ所で何してんの、この人?

 

「だから、謝りたかった。貴方がお金を必要とした理由や、これまでの事を知ってしまったから。…貴方の父親、小学5年生の頃にノイズに殺されていたのね。」

「正確には戦って死んだんスけどね。殉職っスよ。」

「母子家庭になり、貴方は中学生になってから直ぐにアルバイトを始めた。成績も学年上位をキープしながら鍛錬も欠かさず。」

「家族の為です。高校、できれば特待生で入っておきたかったんで。」

「…そんな折、1年前には師事していた方を対ノイズ戦で失い、現在に至る。大まかにはこんな所だったわね。」

 

本当にこの人は俺の個人情報を閲覧したのね。

 

 

「私は君を尊敬するわ。」

「何スかいきなり。いい病院紹介しますよ?」

「茶化さないの。…まったく。君は苦難から逃げなかった。全て受け止め、最善で且つ己に険しい道を取ってみせた。その歳で、そんな事できる者など、そうは居ない。だから君に敬意を抱くのは間違いではないと思う。」

 

 

ちょっと顔上げれないですね。

なんか目が霞んでるし…疲れてんだな、うん。

 

「…重かったわね。父と師の事を背負うのは。辛かったよね?誰にも言えずに1人で抱えるのは。…だからと言って私が半分背負うなど出来やしないし、してやれない。ならば、せめてーー」

 

風鳴さんが、俺の事を理解してくれてる事が堪らなく嬉しいと思えた。

いつもなら他人が知った様な事を!などと、何か捻くれたことを言い返すのに、それができない。

 

やっぱ疲れてんだなぁ…!

なんか目から出てきたし。

 

 

 

 

 

「決めた。私は君の姉になろう!」

「なんでそうなったんスか!?」

 

何、斜め上な事を力強く言ってんの?

出てきた涙が一瞬で引っ込んだわ。

 

「ん?そうすれば、一緒に居て君を支えてあげられるだろう?それに…ほら、こうやって涙を拭いてあげることができる。」

「いやいやいやいや。別にそこは、先輩後輩でも仲間でもいいでしょ?」

「照れなくて良い。さ、私の事はお姉ちゃんと呼びなさい。」

「照れてないです…。仮に言うとしても、この歳で男がお姉ちゃん呼びは気持ち悪いでしょ!?」

「うむ。ならば、姉さんと呼べば良い。ほら、呼んでみなさい。」

 

 

うっわ、この人マジだよ。

期待のこもった目は爛々と輝きを放ち、接近してくる。

 

 

「何か楽しそうな話ししてるじゃねぇか。私も混ぜろぉ!」

「ぬぉッ!?」

「キャッ!か、奏!?」

 

突如現れた天羽さんに、2人そろって抱きしめられた。

ヤバイ、美人が近過ぎる!良い匂い!って、だから違う!

 

「ハチ。お前さんは偉いよ。私と違って復讐じゃなく、守る事を選んだ。頼る大人も仲間も居なかった。でもよ…我慢も独りで堪える事も、独りで頑張る必要も、もうねぇよ。…だってアンタは、もう独りボッチじゃない。私らがいる。戦うのだって、3人一緒だ!」

「そうよ。だから…今はそのまま流しなさい。」

 

 

一度は止まった涙が溢れて出した。

ボッチに誇りを持った気でいたが、ただの捻くれの強がりだったみたいだ。

独りで戦う恐怖。

大切な人を喪う悲しみ。

それは、本当に辛く険しい道のりだった。

 

天羽さんの過去は本人から聞いてる。

だから、彼女の言葉は素直に嬉しくて涙が止まらなかった。

 

親父、先生。

俺、独りじゃなくなったよ。

 

「あ、ありがどゔ。」

「泣き虫だなぁ。翼と一緒だ。」

「ちょっ、奏!?私の事、泣き虫だと思ってたの!?」

「くっ…ふっ…くくっ…!」

「八幡!姉を笑いものにするとは、この不届き者め!」

「んん?何で翼が姉ちゃんなんだ?」

 

 

 

 

俺はこの日、姉と仲間が出来た。

これから先は、独りじゃない。

 

「八幡、私は貴方を絶対に独りボッチにはしないわ。だから、安心しなさい。」

「…うス。」

 

 

やがて、復帰した奏さんと3人で出撃を何度もした。

互いをフォローしながらの戦闘は新鮮だった。

危機的状況に追い込まれても、3人で切り抜けてきた。

 

そうして時は経っていった。

絆だって深まって、風鳴さんを姉と呼ぶことが自然で、躊躇しなくなっていた。

俺が求めた本物と言える関係を手に入れた…気がした。

 

男女共立校となったリディアン音楽院に俺が入学した数週間後。

全国に衝撃が走るニュースが流れた。

 

 

認定特異災害ノイズの襲撃に巻き込まれ、天羽奏が死亡。

 

15歳の春、俺はまた大切な人を失った。

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