やはり俺がシンフォギアの世界にいるのは間違っている   作:にゃにゃにゃす

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第2話

『八幡君、真実を知りたければ生きて戻りなさい。』

『八幡君、君の父親と師匠の仇は了子さんではない。別の第三勢力が2人を殺害した可能性が極めて高いんだ』

 

了子さんが最期に残した言葉の意味はよーく分かった。

 

『テ…テメェがぁぁ!!殺す…殺してやるッ!』

 

了子さんに敗れ、つけ付けられた真実を知った時に俺は一瞬で憎悪に呑まれた。

殺生石に残る九尾の残滓に唆されて、憎しみに仮立たれ未熟な自分。

 

 

『了子さんの残した日誌やデータによると、ノイズの災害に紛れて何者かが2人に手をかけた可能性があります。……残念ながら、その犯人及び容疑者すらも了子さんにも分からなかったようです。」

 

 

本当の仇をいざ前にした時、俺は俺でいられるのだろうか?

真実を知ったあの日から2か月が経った今も、不安は拭えなかった。

 

 

第2話

 

 

「おい、八幡!聴いているのか!?」

「ッ!……すいません…。」

 

司令の声にハッと我に帰る。二課仮説本部にてブリーフィングの最中で、しばしば呆然とする弟が心配になる。

父と師について新たな真実を知ったあの日から度々、八幡がボーッと別の場所へと意識がいってしまう事が増えた。

 

とは言え戦場では問題もなく、日常生活においても頻度は目に見えて減ってきていたのだが……今日は一段と酷い。

ブリーフィングが始まって既に3回も咎められているのだから立花も雪音も心配し、それが表情に出てしまっている。

 

 

「…はぁ。では、もう一度説明するぞ。明後日0400にサクリストSの電撃移送作戦を実行する。選抜メンバーは2人だ。」

「……師匠その日は翼さんのライブの日ですよ?」

「知っているとも。翼はライブの為、本作戦から外すと予め決めているさ。あとは念の為に輸送作戦の同行者2名と待機を翼ともう1名だ。」

「留守番は八幡で決まりだな。」

「だね。前日から小町ちゃんがお泊りするし。」

「おい、ちょっと待て。別に小町の相手くらいお前等でもいいだろ?俺が行く。」

 

 

2人に異を唱えるが……無駄だ。

立花と雪音が昨日からおじ様と話していたからな。無論、私もだ。

斜め下の反論も含めた八幡への対策はかなりの完成度だ。

幼馴染みの立花と小日向が協力してくれだから抜かりは無い。

つまり、これはブリーフィングと言う名の出来レースなのである。

 

「却下だ。ブリーフィング中にぼんやりしてる奴に背中預けられるかよ。」

「それどころか、ハチ君は私達より出撃回数が明らかに多いよね?」

「皆さんのここ1ヶ月の出撃回数をグラフにしてモニターに出します。」

 

藤尭さんが出したグラフを見た八幡は言葉を詰まらせる。勿論、彼も共犯者の1人だ。

 

今、モニターに出された私達のグラフの中で抜き出た者がいる。語らずとも、それが誰かはわかるだろ?

 

しかし、この子の頭の回転は異様に早い。減らず口の塊だ。だったら…と小日向はこう言っていた。

 

言葉を詰まらせたら、畳みかければ良いと。

 

……意外と彼女は容赦無いな。

 

「それにぃ〜…誰だったかなぁ〜?翼さんの復帰ライブの日に私に内緒で出撃したのは?」

「ぅぐッ…。」

「今回くらいは翼さんもライブに来てもらいたいですよね?」

「ふむ…そうだな。八幡は中々ライブに来てくれないからな。悲しくないと言えば嘘になる。」

「だ、そうだ。だいたい小町は口に出さねぇだけで、寂しがってるんだ。偶にはお兄ちゃんしてやれよ。」

「……あぁ〜ッもう!わかったよ。ハァ〜…2人とも気をつけるんだぞ?」

「はぁい!…ねね、クリスちゃん。オヤツは幾らまでかな?」

「あ?オヤツぅぅ!?遊びじゃねぇんだぞ!?」

「邪魔にならない程度までだな。」

「オッサンも認めるのかよ!?…この突起物にはまともな奴はいないのか!?」

 

失礼な。私はまともだ。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

翌日。

授業が終わると響とクリスは本部に直行。作戦の最終確認などをして、そのまま泊まるらしい。

夜に小町が来るまで暇な俺は、家に居てもあの事が脳裏を駆け巡る為、何をするでもなくプラプラと街を彷徨っていた。

 

ふと、クリスの言われた言葉を思い出した。

偶には、お兄ちゃんしますかね……。確か、駅近に話題の持ち帰りスイーツの店があったはず。

 

そう思い歩き出した矢先、街角の電気屋のテレビには明日のQUEENS of MUSICについての情報が流れていたのに気づく。

 

歩きながらチラッとテレビを見たのがいけなかった。

ドタドタと足音が前方から近づいている事に気付いた時には尻餅をついていた。

 

「痛てッ…。」

「痛ッたぁい…。君、大丈夫?」

 

見知らぬ女性と衝突。しかも、何故かアワアワと焦っている。

 

「大丈「何処に行った!?」

「あっちに走って行ったわ!」

 

何やら前方の方がやけに騒がしい。何事だ?

いや、誰か探しているのは会話でわかったけど。

 

「チッ…もう見つかったの!?」

 

舌打ちの発したのは目の前の女性でした。

 

うん……追われてるのアンタかよ!

 

騒がしい方を見てみると怪しい黒服さん……ではなく今時の若者たちが騒いでいるのを確認できた。

 

あー…なるほど。

 

俺はこの状況に見覚えがあり過ぎた。

サングラス装着で深く帽子を被った彼女を見てさらに確信。

 

ヒントは、姉さんと奏さんと一緒に買い物した時である。

 

普段の俺なら面倒事なんて、関わり合いを持ちたくないから無視するのだが……女性の姿が姉を彷彿とさせた。

 

 

「おい、アンタ。こっちだ。」

「あ、ちょっと!」

 

女性の腕を掴み、向かいの大通りに繋がる路地へとダッシュ。

彼女がついてこられるであろう速度で。

 

路地の入口を素通りしていく若者達が見えたのか、女性は安堵の溜息を漏らしていた。

 

「ほい、ここから向かいの大通りに出られますから。」

「ありがとう。…でも何故、見ず知らずの私を助けてくれたのかしら?もしかしたら、私は犯罪者で警察に追われてたのかもしれないのよ?」

「流石に一般人と警察の見分けくらいつきますから。それに身内に有名人がいまして……昔、あの馬鹿達と一緒にファンに追いかけ回された過去がね…。」

 

 

変装は眼鏡とサングラスオンリー。大丈夫だと言い切る奏さんを信じて街に出たら、1時間もしない内にファン達との鬼ごっこが一方的に開始。

目が血走ったファンが追いかけてくる様は、異様な恐怖を与えてくださいましたよ。

 

「あら身内にいるの?」

「えぇ。なので経験上、貴女の状況を理解できました。さ、また見つかる前に行ってください。」

「優しいのね…。ところで申し訳ないのだけど……此処はどこなのかしら?ファンから夢中で逃げてたから、自分のいる場所がわからないのよ。」

 

更に面倒事が増えた瞬間でした。

勘弁していただきたい。

 

「はぁ…駅までで大丈夫ですか?」

「いえ…実はこのお店に行きたいの。」

 

彼女が見せてきたスマホには件の持ち帰りスイーツ店が映ってました。

ねぇ、コレってドッキリ?ドッキリなの?

 

目的地は同じとか……マジかよ。

 

「そこ、俺も行くとこだったんで案内しますよ。ただ、その前に…。」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「待たせたわね。」

「いえ。…問題なく被れてますね。」

「えぇ。偶に仕事で付けるからね。」

 

化粧室から出てきた彼女は、茶髪のセミロングに変身していた。

変身て言うか変装だな。俺の案により、ウィッグを購入したのである。

 

ウィッグって超便利だよね。前に姉さん達との逃走中に、俺が買いに行かされたのを思い出したよ。

 

「重ね重ねありがとう。え〜っと……貴方、名前は?」

「比企谷です。」

「変わったファーストネームなのね。」

「いや、ファーストネームは八幡です。」

「八幡ね。私は……そうね、セレナと呼んで頂戴。」

「了解です、セレナさん。俺は比企谷でお願いします。」

「あら、距離を取りたがるなんて良くない。八幡と呼ばせてもらう。それに敬語もいらないわ。」

 

グイグイと、身体的にも精神的にも近づくセレナさんから結構な圧が掛かる。

やべぇ…あの時の姉さんみたいだ。つまり、アレか?

抵抗するだけ無駄だと?

 

「わかりま…わかった、セレナ。」

「よろしい。では、エスコートをお願いするわ。」

「あ、はい。」

 

てなわけで、例のスイーツ店へゴーなのだが…セレナが無言にさせてくれません。

距離近いし……。

 

元ボッチのパーソナルスペースは広いので是非とも配慮願いたい。

 

「八幡は学生なの?」

「そうだ。セレナは海外から来たのか?」

「えぇ、今回は仕事でね。私ってそれなりに名前が売れてるから…まさか日本でファンに追いかけられるとは思わなかったわ。」

「有名人も大変だな。あ、ここだ。」

「話していると、あっという間だ。にして…日本人は本当に並ぶのが好きなのね。」

「別に好きなわけじゃないからね。習性みたいなモンだよ。」

「海外では、こうまで綺麗に並ぶのは珍しいわよ。」

 

あー確か、コミケの尋常じゃない程の人が綺麗に並んでるのは凄いって前に海外のニュースで流れてたな……まさか、アレが基準になってないよね?

 

「君は甘いものが好きなの?」

「そこまでは、程々に好きくらいだな。」

「あら?では、何故ここに?」

「妹へ買ってやろうかと思って。」

「……そう、妹がいるの。仲は良いのかしら?」

「まぁ普通の兄妹よりは。ウチの妹さんは世界一可愛いからな。」

「シスコン?」

「違う。」

 

何故だろ?皆して俺をシスコンだと言ってくる。

ただ妹が可愛いくて、愛しているだけなのだが?

 

「羨ましいわ……。」

「セレナ??」

 

サングラスで目元は見えないが、哀しげに垂れた眉。

……もしかして地雷踏んじまったか?

 

「セ、セレナは甘いものが好きなのか?」

 

絶望した……!

自分の話題の振り方が下手過ぎて絶望した!

 

 

「貴方と同じく程々に。妹、みたいな子たちに食べさせたくてね。」

「ほぉ。優しいんだな。」

「それは君だ。見ず知らずの他人を助ける。そして面倒としか思えない道案内。しかも相手の詮索もしない。」

「ついでだついで。他意はねぇよ。」

「八幡は変わっている。…君のように誰もが誰かに優しくできたていたら、世界はもう少しまともだったかも知れないわね。」

 

ん?

つまり、俺みたいなのが世界に沢山いたら良いと?

……世界が捻くれちまうぞ?

あとボッチだらけになるな。

相互不干渉な人類文明の始まり……何それ超生きやすそう。

 

 

「…順番が回ってきたわね。」

 

てなわけで御目当ての品をそれぞれ購入しようとしたわけだが……

 

 

「…え…えぇッ!?さ、財布が……ない…!」

「セレナ呪われてんの?運なさすぎない?御祓い行く?」

「御祓いに行っても納めるお金がないわよ!…どうしよう。」

 

確かに。

 

大方、ウィッグを買いに行った店に置き忘れたんだろうが……。

はぁ〜……もう、どうにでもなれ。

 

「すいません、会計を一緒で」

「ちょッ、八幡!?」

「はい、畏まりました。」

 

セレナの正体が誰かは知らないし知りたくないが、正体がバレてしまえば鬼ごっこ再開は待ったなし。

一箇所に長時間滞在してしまうとファンに気取られる可能性が高くなるからな。

 

故にさっさと代金を払い店を後にした。

 

「八幡、待ちなさいッ!」

「ん?あ、はいコレ。」

「ありがとう。じゃなくて!」

「ウィッグを購入した店に戻るぞ。たぶん、財布を落としたのならそこだろうよ。」

 

尚も何か言ってくるセレナを宥めながら店にUターンすると、案の定あったので無事回収。

心底安堵するセレナは財布から代金を返そうとしてきたので、つっぱねる。

 

「日本のファンが迷惑かけたからな。詫びとして受け取ってくんない?」

「だが君は私を助けてくれた。今もそうだ。だから本来なら私が礼として払うべきでしょう?!だから……!」

「あーハイハイ。じゃ、また会えた時に飯でも奢ってくれ。」

「君は…私が海外出身だと知って、それを言うのか?」

「ん〜……生きてりゃまた会えるだろ。」

「……本当に君は変わっている。」

「そうでもないさ……生きてさえいれば…また。」

 

 

会いたくても会えない人達がいる。

永遠に2度と巡り合えない、大切で大好きだった人達。

 

『誰か…誰か父ちゃんを助けてぇッ!だれかぁぁああ!』

 

 

『先生ッ!嫌だ…先生、目を開けて下さいッ!』

 

 

『奏…さん?…嫌だ…嫌だ嫌だ…嫌だッ!!嫌だぁぁぁあッ!』

 

 

3人の死際。その記憶達がフラッシュし、蘇った。

喉から腹下までが、凍える様に冷たく感じた。

 

「君はもしや……いや、詮索は無礼だな。では八幡、約束よ。私から君に必ず会いに行く。だから、その時はキチンと礼をさせてもらう。いいわね?」

「あ、あぁ。せいぜい見つけてくれ。」

「あら、それは挑発なの?だったら受けて立つまで!…覚悟して待ってなさい。」

「礼って、お礼参りじゃないよね?」

 

ありがとう、って殴りかかって来ないよね?

そんなお礼なら全力で拒否させていただきます。

 

……お、スマホがバイブしてらぁ。

メッセージは案の定、我が愛しき絶対美少女……その名も小町からだった。

 

「お……そろそろ到着か。さて、今度こそ駅まで送るよ。妹を迎えに行くついでに。」

「ありがとう。でも帰りはタクシー使うから大丈夫。」

「ん?此処らはタクシーあまり通らないぞ?駅前のタクシー乗り場からのほうが早い気が……ま、頑張れよ。」

「ちょっと、待て待て待ちなさい!…え、ここまで来て見捨てるの??」

「だって、お別れみたいな流れだったじゃん。」

「あんな言い方されれば駅に向かう他ないじゃない!本当に…君は変わってる。」

 

 

そんな何回も変わってるって言わないで欲しい。

変わってるのは二課にいる人達だ。……あ、俺も二課所属だったわ……。

 

まぁ、結局と言うか何と言いますか、セレナを駅まで連れて行く羽目になった。

そして、やはり彼女は距離が近い且つ、無言を許してはくれませぬ。

 

「妹のお迎えなんて優しいのね。」

「なんせ妹がコッチ来るの初めてだからな。」

「んん?コッチ??」

「俺、地元から離れた此処らへんに一人暮らしで学校に通ってんの。そんでもって、妹が初めてコッチに泊まり来るわけ。明日ライブが開催されるのは知ってるか?」

 

 

そう言うとあからさまにセレナが狼狽始めた。ワタワタと慌てているが……

 

「……オッホンッ!」

 

あ、持ち直した。

 

「え、えぇ、知っている。QUEENS of MUSIC、歌姫2人による夢のコラボレーション。世界中に中継されるくらいに話題だもの。でも、明日のライブと君の妹と何の関係が?」

「俺と妹と友人達と行くんだよ。偶然、チケットが手に入ってな。」

 

もう直ぐタクシー乗り場なのに、不意にセレナの歩みが止まった。

何だ?と思い彼女を見てみると身体を強張らせて固まっていた。

 

会話に変なところもなかったし……さっきからどうした?

 

 

「…八幡、明日のライブは行かない方がいい。」

「は?え、何で??」

「……女の感よ。行けば酷い目に遭うかもしれない。」

「セレナって占い師か何かなの?」

「忠告はしたわ。…今日はありがとう。じゃ、必ずまた会いましょう。」

 

 

足早で人混みに紛れたセレナの後姿が見えなくなる。

 

酷い目に遭うかも…ね。

冗談を言っている様には見えなかったしな……。

 

 

「…一応、色々常備していくか。」

 

空を見上げると、欠けた月が嫌でも目に入ってきた。

 

 

 

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