やはり俺がシンフォギアの世界にいるのは間違っている 作:にゃにゃにゃす
12月は亀になってしまいます…
「流石はマリア・カデンツァヴナ・イヴ!生の迫力は違うねぇ〜!」
「全米チャートに出て、まだ2ヶ月なのにこの貫禄はナイスです。」
「わっはぁー!最ッ高!!」
星々と欠けた月夜の下。
とあるライブ会場、その2階スペシャルシート……まぁ特別個室タイプに俺たちはいた。
会場内の観客達はこぞってサイリウムを振ったり、歌に合わせて飛び跳ねたりしている姿がチラホラ見られた。
ちなみにライブ中は真横で、変な薬をキめたとしか思えないテンションがハイな板場と可愛い小町がサイリウム乱舞をしていました。
今は人気急上昇中のマリア……マリア…………マリア・荷電粒子砲がステージにて歌い輝き、彼女の熱が伝わってくるほどに力強さを感じた。
さて、今回のライブに小町がくる事は後輩3人と林に伝える段階で、とある約束をしてもらった。
俺が陰陽師である事は知らないので会話に出さない。姉さんの事も秘密などなど。ま、ぶっちゃけ口を滑らしそうなのは板場くらいなので、彼女だけに気をつけておけば大丈夫だろうと踏んでいる。
……あれ?これフラグ??
ま、今は小町も楽しそうにしてるし良きかな良きかな。
ただし、気になる事が一点。
本来であれば、既にここにいる筈の2人がまだ到着していない。
一抹の不安が胸をザワつかせ、未来も他者に悟られない程度に落ち着きがなかった。
「すまん、ちょい電話。」
まだクリスと響が来ていないのは、作戦上で何か異常事態が起きたのでは?と考えてしまう。
観客席から室内通路に出て、二課本部(仮)に連絡を入れる。
「八幡です。…クリスと響がまだ来てない件についてですが……。」
《…あぁ…道中、ノイズの襲撃があってな……だが2人は怪我もなく無事に任務を遂行したさ。ただなー…』
司令が言うには2人は無事。この知らせには、つい安堵の溜息が溢れた。
移送先は計画通り岩国の米軍基地へ。だが到着した後にその基地に突如ノイズが大量に姿を見せた。
敵は既に殲滅したが、サクリストSーソロモンの杖が消え、受取人のウェル博士が行方不明になっているとの事だった。
非常事態以外の何物でもねぇじゃないか。
現在は二課のエージェントによるウェル博士とソロモンの杖の捜索が行われているとの事だった。
「了解。俺も今から本部へ《来なくていい。今話した内容以外に何も判っちゃいないんだ。来るだけ無駄だ。2人を今からそちらにヘリで送る。何かあれば直ぐに連絡をするさ。それまでは、そこで待機だ。……いいな?》
「……はい。」
有無言わせたくない。そう言いたげな声色に渋々返事をし、通信を切る。
やっぱり俺も移送作戦に行くべきだった。そう本気で思う。
ノイズの出現する瞬間がわかる俺が行っていれば、状況だって変わっていたかもしれないのに…。
「とは言え、済んだことを気にしてばかりいるのもな……。」
過ぎた事をボヤくよりも先の一手を。
それが最善ではあるが手掛かりもないし、司令からは待機命令を仰せつけられた。
……出来れば早期解決。そんで何事もなければ良いけどな……。
「…ハチ君。響とクリスについて何かわかった?」
席に戻るなり高速でコソコソと未来がそう言ってきたのだが……
君、さっき迄前方にいる小町の隣りをキープしてたよね?
一瞬、視線切ったら目の前に来てたんですが?
速い、未来さん速いッ!
「あぁ……無事。ヘリで今、此処に向かってるってよ。」
「よかった…でも、残念。折角のスペシャルユニットに間に合いそうにないね。」
「およよ?…あっれ〜、相変わらず2人はお熱いですね〜。もう秋なのに小町熱いなぁ〜。」
「「いや、無いから。」」
小町の要らぬ茶化しを真顔で答える俺達に、周囲の連中は慣れたのか一瞥すらしない。
自分の思い描いた状況と違う今に、小町は不服そうに舌打ちしやがった。
ちょっと〜、小町ちゃん舌打ちは駄目よ。
「小町、揶揄うのは駄目だよ?じゃないと…ね?」
「ヒィゥッ!?ご、ごめんね未来ちゃーん!」
ガバァッと未来に抱きつき、ウルウルした瞳で見上げる小町超可愛い。
今なら論文200枚は書けそうだ。題はうちの妹の可愛さについて。
「よしよし。…もう駄目だからね?」
「ピャッ!!?……ふぁいッ!」
目が笑ってない……!
……恐い、未来さん超恐い。
触らぬ未来に祟りなし。無視だ無視。
見ないのが1番の対処だよね。
「比企谷……あ、兄の方。」
「林、ハウス。」
「話しかけただけで扱い酷くね!?」
「ハウス。」
「帰れと!?俺に帰れと言うのか!?」
「まさか。……っで何?」
「……ハァ。いや、始まるぞと言いたかっただけだ。」
瞬間、会場中のライトが消えた。
騒音は光と共に消え、静寂が支配した。
だが、それもほんの少しだけの事だった。
姿を見せた歌姫2人に会場のヴォルテージは急上昇。
あらま、小町まで飛び跳ねながらサイリウムを振ってるし。
目があった未来と一緒に苦笑を漏らしながら、ステージへと視線を移す。
3
2
1
Ready go!
Fly!
そして始まった一夜限りのスペシャルユニット。
その美声、美貌、力強さと透き通るような歌声は鼓膜を刺激し、全神経が自然と目と耳に集中した。
ステージでは火が昇り、姉さんとマリア・荷電粒子砲が花道を駆け抜けて、中央ステージへと移動。
魅力され白熱する観客。
やがて一曲目の不死鳥のフラメンコは終わりを迎えた。
「「歌え Phoenix song〜!!」」
「きゃーッ!もう…あ〜……小町、生きてて良かった。」
「んな大袈裟な。」
「大袈裟じゃないよ!…あの人達の歌を聴いてると力が湧くんだよ。キツくても頑張ろうって思える。」
「そっか。じゃ、明日からまた勉強頑張れるか?」
「もちのろん!」
ブイッとサインを無邪気にする小町の頭を撫で、ステージに目をやると姉さん達が観客に向けて手を振って……
アレ?今、目があったの気のせいか??
いや、ウィンクしたし間違いなく目が合いましたね……。
俺もだが、姉さんも大概だと思うよ。
「なぁ、比企谷。今絶対にこっち見てたよな?」
「……お前の視力も大概だな。」
居たよ。俺達並みに目が良い奴が。
ステージでは、姉さん達が互いの歌を褒め称え握手をしていた。
神々しくもある光景に、観客達の黄色い声が更に大きくなった。
《私達が世界に伝えて行かなくちゃね…歌には力がある事を》
《それは世界を変えていける力だ。》
《そして…もう一つ。》
それは何時も唐突で突発。
予期せぬタイミングにも限度があると毎度思っていた。
ーキィンッ!
あの不快な感覚が、不意に脳内を稲妻のように駆け巡った。
よりにもよって感知した出現場所は、自身らの真下。
全身の毛が逆立つような感覚がした。
「ノイズが…来る!」
「何だって!?」
俺の声に林が狼狽て立ち上がる。
視線の先では、ステージからマリアが何やら合図を送り……
そして、それは現れた。
1階席の観客達の眼前に大量のノイズが出現。
楽しかったライブが一変して地獄と化した。
歓声は悲鳴へ変わり、観客達が我先にと逃げようと騒ぎ、会場内は混乱している。
ヤバイ……ヤバイッ!
脳裏に蘇ったのは2年前の惨劇だった。
混乱の渦の真っ只中では、観客全員を救うなど不可能。
シャツの中に隠していた殺生石のペンダントを取り出して身構える。
ペンダントを握る手が焦りからか力む。
いつでも飛び出せるように…と意気込むも召喚されたノイズに動きが見られない。
なんだ……?直立不動なままピクリともしやがらねぇ…。
「アニメじゃないのよ!?」
「何でまた…こんなことに!」
「お前ら落ちつけ。」
「お兄ちゃん……。」
「大丈夫だ。大丈夫。」
胸の中で震える小町の頭を優しく撫でて落ち着かせる。
未来にアイコンタクトすると、言いたい事を察した未来は小町を抱きしめて出口付近へ移動した。
《…るな……狼狽えるなッ!》
マリアの叫びに会場中で上がっていた悲鳴が消えた。
まったく、どの口がいいやがるんだろうね……。
林と並んで上半身を投げ出して、ステージを見ると姉さんとマリアが何やら会話しているのが見えた。
余裕を醸し出したマリアと相対し、険しい顔つきの姉さん。
何だ……何を話している?
せめてマイク越しならば聞こえるのに。
やがてマリアが観客の方へと向き直り、その強い信念を感じる目つきでマイクに向かい叫んだ。
《私達はノイズを操る力を持ってして、この星の全ての国家に要求するッ!》
「おいおいおい!コイツはまるで…。」
「宣戦布告!?世界を相手に!?」
明確な力を示してからの要求など……脅迫の間違いだろ。
しかも全ての国家に喧嘩売るなんてまともじゃねぇ。
《そして……
Granzizel bilfen gungnir zizzl…》
紡がれた歌に思考が刹那に停止した。
おい…今、ガングニールって……!
そして、マリアは纏った。
黒をメインカラーとしたシンフォギアを…。
世界中に映像配信されているにも関わらず、最高機密のシンフォギアを起動しやがった。
見覚えのあり過ぎた、その姿。
大切な仲間が纏っていたガングニール。
今は響が引き継いだガングニール。
ガングニール…奏さんのかつて身に纏っていたそれをこんなテロ紛いに使うなんて……しかも宣戦布告した後にだぞ……
「許せねぇ…ッ!」
激昂せずにはいられなかった。今すぐに麒麟を纏い、白雪ノ華で斬り刻みたい衝動に駆られた。
自分でも酷く醜い顔をしているのがわかる。
血が怒りで滾り、殺意の熱を生む。
だけど……
《私は…私達はフィーネ。そう、終わりの名を持つ者だ!》
世界各国に生中継される中、マリアは堂々とそう言い切った瞬間から内に生まれた熱が急速に冷めた。
怒りは沸くのに静かで冷たさだけが心を蝕み、支配した。
《我ら武装組織フィーネは各国政府に要求する。……そうだな、差しあたっては国土の割譲を求めようか。》
「…ハハッ。」
「ひ、比企谷?」
乾いた笑いが出てしまった。
フィーネ…だって?人を舐めるのも良い加減にしてもらえませんかね?
「そうかい。姉さんのライブを無茶苦茶にした上にノイズで脅迫するわ、ガングニールをテロ紛いに使うわ……止めにゃ〜フィーネだぁ?……よっぽど斬り刻まれたいと見た。」
いいぜ?御望み通りに斬ってやらぁ。
一般人を巻き込むは、妹達を恐がらせるわ……。
俺が怒りの渦の中にいる尚も彼女は続けた。
24時間以内に要求を果たされなければ、首都をノイズで襲うと。
「そんな馬鹿げた要求が通る訳ないだろ!?」
「落ち着け〜林。…あー言う奴は大体、別に狙いがあるってのが鉄板だ。フヒッ……あぁ〜…マジ、どうしてくれようか?」
ステージに残された姉さんと、また会話をしているが…
《会場のオーディエンス諸君を解放する。速やかにお引き取り願おうか。》
……はい?