やはり俺がシンフォギアの世界にいるのは間違っている   作:にゃにゃにゃす

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第2話

二課本部のとある一室。

2年前にここへ初めて入った時の事は鮮明に覚えている。

入室と同時に鳴らされたクラッカーの音や、視界いっぱいに飾られた色とりどりの花々。

多くの人達が俺を出迎えてくれた、あの日。

 

今、俺が踏み込んだ部屋は、あの日と同じ様な状態だった。

違うのは奏さんが居ない事。

そして、居るはずのない響がいる事だ。

 

「響…?」

「ぅえッ!?ハチ君…何で!?」

 

入室してきた俺に驚く彼女だが…。

何で……それは俺の台詞だ。

何で、ここに響がいる?

あの熱烈歓迎!立花響さま書かれた横断幕はなんだ?

 

 

「…どういうつもりですか?」

 

いつもより明らかに低い声が出た。

握るは白雪ノ華、滲み出るは電流。

抜刀した俺をみて室内には静寂が訪れ、非戦闘員の者達は恐怖に震える。

 

……これは明確な怒りだ。

身体は俺の感情に呼応し、僅かに雷が放出している。

仲間と思っている人達に、初めて抱いたドス黒く醜い感情だった。

 

「落ち着きなさい、八幡。」

 

姉さんは力強い眼差しで、俺を見ていた。

咎めているのではなく、ただ落ち着けと彼女の瞳がそう言っていた。

その瞳に何故か弱い俺は、一旦落ち着く為に乱れ気味の呼吸を整え、白雪ノ華を消す。

 

 

「司令、八幡には私が説明しますので。ほら、行くわよ。」

 

姉さんは誰にも有無言わさない言動をとる。

俺は手を掴まれ、部屋から強制退出。

廊下に設立された休憩時に利用する、テーブル席に座らされた。

俺にMAXコーヒーを渡した姉さんは壁に背を当て、普通の缶コーヒーを煽る。

 

「貴方が戦闘してから数分後に、司令室でコード・ガングニールを検知したわ。」

「はぁッ!?ガングニール!?」

 

これには驚きを隠せず、柄にもなく叫んでしまった。

だって…あり得ないのだから。

ガングニールは奏さんの纏っていたシンフォギアだ。

その奏さんだって、今はもう居ない。

なのに……

 

「私が現場へ急行。そこにはあの立花響って子が居たわ。シンフォギアを纏った姿でね。」

 

忌々しげに、まるで吐き捨てるように説明する。

彼女の双眼からは怒りと憎しみがチラチラと姿を見せていた。

 

「そんな…。有り得ねぇ。響は一般人だ。それにギアペンダントだって持ち合わせていなかったはずだ。」

 

そう…可笑しいのだ。

了子さんの造ったシンフォギア。

通常はペンダント状態にあり、またこれは国家機密の代物だ。

一般人である響が偶然でも手に入れることなど有りはしない。

 

「そうね…。だから今から彼女のメディカルチェックを行うはずよ。原因を調べるために。……だが原因が何にせよ、彼女は二課預所になるでしょうね。理由はわかってるわね?」

「機密保持、並びに響と響に関わる人々を守る為…だろ?んなこと言われなくてても解ってる。」

そう…原因が何にせよシンフォギアを纏った事実は変わらない。

ならば俺が言った通りの理由により、響は二課所属は免れない。

それは響の身を守る為である。

解っている……解っているのだが、この苛立ちは抑えておけない。

 

 

「八幡。貴方、今日はもう帰宅なさい。一度、冷静になる必要があるわ。」

「…それは姉さんもだろ。目、メッチャ怖いんだけど?」

「えぇ…そうね。だから私も帰らせてもらうわ。貴方の言う通り、私も冷静で居られそうにないから。」

 

そう言って去って行く姉さんの後ろ姿は、いつもより小さく弱々しく見えた。

残っているマッカンを飲み干し、苛立ちをぶつけるようにゴミ箱へ投げつける。

この日は、戦いで疲れたはずなのに中々寝付けなかった。

 

 

翌日はいつもの学生生活を送るはずだったのだが……

授業を受けても、昨日の事が頭を過るため全く勉強に身が入らない。

放課後になって直ぐに中央党のエレベーターで二課本部へ。

司令室に入ると、俺の姿を見た職員数人が固まる。

昨日のドスが今だに効いてるみたいだな…。

 

…はい、滅茶苦茶気不味い。

しかも司令はいないし。

 

とりあえず司令室を出て昨夜の休憩所へ向かう。

そこには先客がいて二課の情報処理担当の友里あおいさんと、藤尭朔也さんがコーヒーを啜っていた。

 

「あら、八幡君。お疲れ様。」

「お疲れ様。何か飲むかい?って言ってもMAXコーヒーだろうけど。……はい、どうぞ。」

「ありがとうございます。流石、藤尭さん。」

「2年もの間サポートしてるんだ。好物くらい把握してるさ。」

 

二課所属になって2年。

藤尭さんの言った事とは逆に、俺だってここの人達の事は色々と知っているつもりだ。

藤尭さんは何だかんだボヤきながらも仕事は速い。

友里さんは、何故かよく前線まで出てきたりしている。

何より2人は戦時のサポートを良くしてくれる頼れる存在で、仲間だと思っている。

 

そんな人達が沢山いたにも関わらず、俺の昨日の態度は良くなかった。

いや、最悪と言っていい。

なのに2人は、今も昨日の事など無かったかのように話しをしてくれている。

 

 

「あの…昨日はすいませんでした。」

「…謝らないで。響ちゃん…妹みたいな存在だって言ってたのを知っていたから。だから、昨日の八幡君の態度は仕方ないなって。」

「俺も同意意見。兄貴として当然だろうさ。寧ろ、知っていながらあの歓迎会を行なった我々が悪いさ。」

「……ありがとうございます。少し、気が楽になりました。」

 

二課の人々は皆、優しく暖かい。

子どもじみた事をした俺を受け止め、その思いを考え、肯定してくれる。

普通なら否定し、拒絶されてもおかしくないのに…。

柄にもなく感傷に浸っているとーー

 

 

 

 

 

《ーー何でぇぇぇぇええ!?》

 

 

……なんか聴こえた。

しかも、聴き覚えが有りすぎる絶叫なんですけど。

 

2人も少々驚いた顔してるし、聴き間違えじゃなさそうだな。

ふと、友里さんの通信機が着信を伝える。

内容は俺を連れて、とある一室へこいとの事だった。

 

俺に直接言えばいいのに…

 

ってなわけで、3人仲良く入室すると司令に了子さん、姉さんと響が既にいた。

響が何か言いたげだったが、とりあえず定位置となっている姉さんの隣りへ行く。

そんな中で俺は気になる物を発見した。

 

……テーブルに置かれた超重量級のゴツい手錠である。

嫌でも目につくんだけど。

ゴリラでも捕獲したのか?

 

「はい。役者が揃って所で…昨日の響ちゃんのメディカルチェックの結果発表〜。初体験の負荷は若干残っているものの、異常はほぼ見られませんでしたぁ〜。」

「ほぼ、ですか。」

 

手首をサスサスと撫でる響を見て確信。

捕獲されたゴリラとは俺の幼馴染みだったようだ。

 

「ん…そうね。貴女が聴きたいのはこんな事じゃないわよね。」

「教えて下さい。あの力はなんなのか……。」

 

ここからは響の知りたかった国家機密の情報開示だった。

聖遺物の僅かに残った力を歌で、エネルギーに還元し、鎧とする。

しかし、誰でもシンフォギアを起動出来るわけではない。

姉さんや響の様に起動できる人物を適合者と呼ぶ。

簡単に説明するならこれでいい。

なんせ、響は只の一般人だ。

それに二課の情報網なら響の頭事情を知っているはずだろうし。

 

ここまで思った時点でフラグだったわ。

 

 

「ー貴女に目覚めた力について、少しは理解して貰えたかしら?質問はどしどし受けるつけるわよ。」

「あのッ!」

「はい、どうぞ響ちゃん。」

 

響は真剣な面持ちでの一拍後

 

「……全然分かりません。」

 

そう宣いやがった。

 

「だろうな。」

「だろうね。」

「だろうとも。」

 

姉さん以外の俺たち外野の素直な感想だった。

だって、一般人に特定振幅の波動っていって伝わるか?

もっと掻い摘んだ説明をするべきだったと八幡は思うよ。

 

「…はぁ〜。響、後で俺が響やアホの子でも分かる説明をしてやるから安心しろ。」

「ありがとう、ハチ君。……ん?今、馬鹿にしたよね!?」

「はっはっは。そうだぞ。」

「否定しないの!?だいたい、私だって少しは理解できたんだからね!……あの、了子さん。私は聖遺物なんて持っていません。」

 

 

そう。ここなのだ。

例え響が適合者であろうと、ギアペンダント或いは聖遺物の欠片の一つ持ってないとおかしい。

 

響の質問を待ってましたと言わんばかりに、スクリーンが切り替わった。

映し出されたのは、胸部をレントゲン撮影した画像。

 

「これがなんなのか、君になら分かるはずだ。」

「はい…。2年前の怪我です。あそこに私もいたんです。」

 

姉さんは、2年前で気付いたみたいだ。

あの惨劇の日、1人の少女を奏さんが守り俺が傷を再生させた。

 

「……八幡。あの子、もしかして。」

「あぁ。2年前のライブ会場にいた。奏さんが守った女の子は響だよ。」

「…あの子の怪我に血箋華を使ったのね?」

「ご明察。でも、あの時は死なない程度まで再生させて終わってたからな…。その後を知らない」

「そう…。」

「しかし、何でこの写真がーー」

「…八幡?」

 

 

あー嫌だ。

自分の頭の回転の速さが疎ましい。

この画像が最後のピースだったのだ。

 

写るのは心臓付近に散らばった異物の破片。

2年前のライブ会場で起きたノイズ襲撃と、そこで負った怪我。

辿り着いたのは一つの仮説だった。

 

「心臓付近に複雑に食い込んでるため、手術でも摘出不可能な無数の破片。……調査の結果、この影はかつて奏ちゃんが身に纏っていた第3号線聖遺物ガングニールの砕けた破片である事が判明しました。…奏ちゃんの置き土産ね……。」

「…ッ!」

「……。」

 

 

絶望の答え合わせだった。

ショックで足から力が抜け背中を壁に打ち付けた。

今はもう居ないかつての大切な仲間。

その彼女が身に纏っていたガングニールを響が身に宿している。

 

 

「はっ…はっ……ふぅっ…ふっ…はっ…」

 

姉さんは俺以上にショックを受けていた。

呼吸は乱れ、倒れまいと手で身体を支え、フラつきながら退室した。

 

その間にも司令がシンフォギアについては秘匿する様に説明していた。

 

 

「人類ではノイズに打ち勝てない。例外があるとしたら、それはシンフォギアを身に纏った戦姫。そして古来より戦ってきた陰陽師の一族だけだ。」

「陰陽師…ですか?」

「俺の事だ。」

 

目をまん丸にし、正しく鳩が豆鉄砲を食ったような顔である。

よもや幼馴染みの俺が陰陽師だとは思わなかったのだろう。

 

「ハチ君が陰陽師?でも、だってハチ君は普通の人だよね。いつも一緒にいたし、古来から戦ってた一族だなんて…。」

「俺はお前らに会う前から……いや、生まれ落ちたその時から陰陽師なんだよ。」

「……そんな…じゃ、やっぱり。2年前に私の怪我を治してくれたのはハチ君だったんだよね?アレは見間違いじゃなかったんだよね?」

「そうだ。誤魔化した理由…今ならわかるだろ?」

「私を守る為…だよね。」

「…司令、了子さん。悪いっスけど、俺についての説明やらはお願いします。」

 

響への説明は司令達に任せて、退室。

響には悪いが今は他に一番心配な人がいるんでな。

直ぐ其処にある休憩所に目的の人物を見つける。

パッと見は落ち着きを取り戻した様に見えるが……たぶん、今は苛立っている。

 

「姉さん…。」

「私は認めない…!あれは……あのギアは奏のモノだ!血反吐を吐き、挫けず、諦めずに努力を続けた。その果てに手にした槍だ!あんな、何の努力もせずに…偶々で手に入れて良い力などでは断じてない!」

「そう…だな。でもよ、俺も姉さんも偶然で力を手にした。してしまった。だから響にどうこう言えねぇんじゃねーの?」

「……理解はできたとて納得はできない!八幡も知っているでしょ!?奏の過去を…血の滲む努力を!」

 

あぁ知っているさ。

両親を目の前でノイズに殺され、復讐の為に力を求めた。

薬物投与に血の滲む努力。

本人達から直接聞いたのだから、忘れるはずもない。

 

「だからって響にそれを求めても意味ないだろ?」

「……。」

 

先程、姉さんは理解はしているが納得できないと言った。

…たぶん、響がガングニールではないシンフォギアであれば、姉さんはここまで憤慨する事は無かった。

奏さんの努力を間近で見て、長年パートナーとして戦場を駆けた姉さんにとって、あのギアは特別な存在。

だから納得は出来ないし、したくないのだ。

 

しかし、響は彼女の力を手に入れてしまっている。

シンフォギアと言う力を手にした以上、響は対ノイズ戦に駆り出される。

妹だと思っている一般人の娘が戦場に出るんだぞ…。

姉さんとは違い、俺はそこに納得はできてなどいない。

 

「……どうしたら良いんだろうな。」

「……。」

 

それっきり、俺たちは黙ってしまう。

正しい答えなんてモノを求めているわけではない。

例え、それを手にしたとて納得できないだろうし。

だから困ってしまうのだ。

正しいじゃない、全員が納得できる答えなんうたないのだろうから。

 

沈黙して数分後、ドタバタと足音をたてながら響が近づいてきた。

 

 

「私、戦います!」

「「……。」」

 

この子は何て空気を読めてないのでしょう。

戦うだ?

 

「慣れない身でありますが、頑張ります!一緒に戦えればと思います。」

 

そう言って姉さんに握手してを求めるが、勿論姉さんは苛立ちを浮かべ視線を逸らした。

無視され戸惑う響だったが、手は差し出したままであった。

なので

 

「…断る。」

 

遠慮なく弾かせていただきました。

苛立ちが顔に出ていたのか、響の身体がビクついた。

 

ーーキィンッ

 

 

「ッ!姉さん、ノイズが出る!二箇所だ!」

「なんだと!?」

 

そう言った直後に本部内にアラート音が鳴り響いた。

姉さんと共に司令室へと急ぐ。

 

「ノイズ出現位置を特定、座標出ます。……ハッ!リディアンより北に距離200と東に距離1000!」

 

友里さんから驚きの声があがる。

…こんな近場に出現したのは初めてだな。

とは言え、出現場所は二箇所ならば…

 

「司令、俺のバイクまだ此処にあります?」

「あぁ。格納庫にあるが…頼めるか?」

「了解。鍵とメットの準備を。」

「では、私は迎え撃ちます。」

 

 

悩んでいた事は一旦忘れ、俺は戦さ場に向かう。

いや、忘れれそうにないので苛立ちと鬱憤をノイズどもにぶつけよう。

そう決めて、バイクを発進させたのだった。

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