やはり俺がシンフォギアの世界にいるのは間違っている   作:にゃにゃにゃす

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第4話

野外演習場。

かつて姉さんとガチバトルを繰り広げたこの場所。

演習場の中央には赤いシャツのオッさんが仁王立ちしていた。

 

「遅いぞ、八幡!もっと稲妻の如くやってこないか!」

「言ってる事が一切理解できません。」

 

この人言ったよね…先に行って暫く待ってろって言ったよね?

なのにどうして俺たちより先に来てスタンバってるわけ?

おかしいだろ……。

あれか?瞬間移動つかったのか?

やっぱり、この人野菜の名前をした戦闘民族だと思う。

 

 

「それで?ここで一体何をするつもりなんだ?」

「言った通りっスよ。響に試験を与えてやるんです……よっと。」

 

右脚を軸に、人間コンパスとなり自身を囲うように円を描き、その中心に立つ。

 

 

「司令、ここから10メートル先で3人横並びになってもらえます?」

「やはり良くわからんが分かった。オーイ、2人とも並んでくれ。」

「あの…八幡さん、何故僕まで呼ばれたのでしょう?」

「今にわかりますよ。ほら、緒川さんも2人の隣へ。」

「わかりました。では。」

 

 

これにて準備完了。

右から、司令に響と緒川さんの順序で並んでいる。

 

「響、対ノイズ戦は遊びなんかじゃない。そこんとこ分かってるのか?」

「そんなの分かってるよ。でも、私決めたの。この力で誰かを助けられるなら助けたい!」

「…ならその覚悟試してやる。ルールは簡単だ。時間は無制限。この円の中にいる俺に触れたら認めてやるし、怒った理由も特別に教えてやる。どうだ?」

「…わかった。やる。」

「司令と緒川さんもついでに参加でお願いします。司令は開始の合図もお願いしますね。」

「絶対に、我々は"ついで"ではないぞ。」

「えぇ、そのようですね。」

 

3人が駆け出す体勢になった所で、俺は視界を遮断した。

心を落ち着かせ、する事はたった1つのイメージ。

吹く風が心地よく感じた時

 

「始めッ!」

 

司令の合図が聴こえた。

刹那、閉ざした瞳を限界まで解放して思い浮かべたイメージを強く意識した。

それだけで空気が鋭く、震え、重くなる。

 

「あ……あっ……あぁ…」

「ムッ!?」

「ッ!!」

 

 

たったそれだけの事で、響は腰を抜かし呼吸もままならない。

対して司令は怯みつつも、拳を俺の眼前で止めてる。

緒川さんは緒川さんで、懐から黒光りを放つ拳銃を構えていた。

 

……やり過ぎたっぽいな。

ため息を吐くと、俺からの重圧が霧散し、ハッとなった響が忙しなく首を触り始めた。

何度も何度も、まるでくっ付いてるのを確認するように触り続けた。

 

 

「いきなり殺気を放つヤツがいるか、馬鹿者。」

「いやはや強烈でした。すいません、つい銃口を向けてしまいました。」

「謝るのは俺の方です。すいません、やり過ぎました。」

「…首…繋がってる…あれ?え?」

「響くんはガッツリ死のイメージにやられたみたいだな。さっきのは八幡の放った殺気に脳が死を感知し、死の幻覚を見たのさ。実際、我々も首をはねられ幻覚を見た…と言うか感じた?」

「殺気…。」

 

俺がしたイメージとは白雪ノ華で3人の首を斬り落とす事だ。

そのイメージをもったまま殺気を解放したのである。

 

しかし、拳銃で撃たれなくてよかったぁ…。

流石に生身の棒立ちじゃ身体に風穴ができちまう。

ま、緒川さんだから大丈夫だと思ってたけど。

 

……。

 

……本当だよ?八幡嘘吐かない。

 

さて、そろそろ妹に現実を叩きつけてやりますかね。

 

 

「戦さ場じゃ、今のイメージが実現する可能性がある。……いいか?俺や姉さんは幼少期から鍛えて今の実力なんだ。自分で言うのもアレだけどよ…運の良いことに才能にも恵まれている。そんな俺でさえ何度も死を覚悟した瞬間があった。なのに、ただギアを手に入れただけの一般人のお前に何ができる?」

「…人助けを…。」

「自分を守ることすら出来ない奴には到底無理な話しだな。司令や緒川さんは、俺の殺気に直ぐに対応したぞ。座り込んだお前じゃハッキリ言って俺たちの足手まといだ。」

 

自分で言ってて、心底最悪な気分だ。

最低で酷くて辛い言葉の数々。

並みの人間ならば、ここまで言われれば憤慨、或いは心が折れ泣き出す。

 

だが、響はどちらでもなかった。

 

「……これから、頑張る。頑張って強くなって見せる!絶対に奏さんの代わりになってみせる!」

 

それは先程とは比べるのも烏滸がましい程までに、濃密な重圧。

俺の殺気に空気でさえ揺れに揺れて、空気の波を起こしていた。

ガダガタと身体が震える響は、怯えた瞳で俺を見つめている。

 

「これ程までとは…。恐れ入りますね。」

「ギャラリーなしの理由の1つだな、こりゃ。」

 

対して大人2人は、若干余裕があるのか雑談中。

何もお咎めもないって事は、好きにして良いと解釈させてもらいましょうかね。

こっからはもっと容赦しない。

 

 

「…例えば未来が死んだとする。」

「なっ!?…いくらハチ君でも、その例えは許さないよ!」

 

生まれたての子鹿のように、響が震えながらゆっくりと立ち上がる。

未だに消してない俺の殺気に怒気で乗り切ろうとしている。

ま、本人はそんな気これっぽっちもないだろうけど。

 

「1年くらいに経った頃に、未来の事を一切知らない女の子が嬉々とした顔で、お前にこう言ったらどうする?"一生懸命頑張って未来の代わりになる"ってな。」

「そんなの…未来は未来だけだ。代わりなんて居ない!」

「そうだろうな。なら問題だ。知らない女の子役をお前に、響役を風鳴翼に、未来役を天羽奏にしたらどうなるよ?」

「ッ!!?」

 

ここまで言って漸く理解できたみたいだが、気付くの遅過ぎだ。

本人は顔を青ざめ、頭を抱えて座り込む。

 

「俺たちにとってはな…奏さんの代わりなんて居やしないんだよ。お前がどんなに一生懸命頑張って強くなろうが奏さんにはなれない。響…お前の真っ直ぐな所は長所だが、同時に短所でもある。行動する前に少しだけでいい、頭で考えろ。」

 

立花響。

俺の知ってる彼女は、いつも真っ直ぐで明るい優しく、心根は強く何事からも逃げない強さを持った女の子だ。

彼女の明るさは、いつどんな時も周囲を温かくしてくれる。

今回、響が悪意があって発言したわけではないと始めから解ってはいた。

ただ真っ直ぐなだけなのだ。

 

…考えなしだと言えばそれまでなんだけどね。

 

「私…最低だ。……ハチ君、ごめんなさい。本当にごめんなさい…!」

 

間違えてしまったのなら、正しい方へ。

反省と繰り返さない努力の自覚。

俺にできる事は今回はここまでなのだろう。

頭を下げて謝罪する彼女の頭に手を乗せる。

 

「わかったなら、それでいいさ。許す。俺も大人気なかったし、ビンタしちまったし。それとな…響は響なんだ。もうあんな事言うなよ?特に奏さん絡みは結構、心にくるもんがあるから。」

「ごめんなさい…。」

 

殺気を消し去り、響の頭を撫でる。

久々にするが、少し気恥ずかしいのか響の頬が少々赤みを帯びていた。

 

奏さん関連でのいざこざは、これにて閉幕としよう。

だが、次は別の問題があったりする。

それは…

 

「ただな、響。俺はお前が戦いに参加する事には納得できてない。できるわけがない。お前は普通の女の子なんだから。」

「でも…私、この力で役に立ちたい。困ってる人がいるなら助けてあげたい。」

 

 

説得は無理か…。

そうそうに諦めるのは早過ぎると思うだろうが、残念ながら長年の付き合いから、そう判断せざるを得ないのである。

やると決めたら諦めず突き進むのが立花響なのである。

マジ、戦いに出て欲しくないんだけどね…。

 

「…シンフォギアをその身に纏った。その時点でお前は戦士にならなくちゃいけなくなった。それは運命じゃない。宿命だ。その命が続く限り戦いに身を投じなければならない。…例え半人前だろうがな。ま、今の響は半人前以下なわけだが…」

「うぅ…これから頑張る。」

「そうかよ…。ま、俺が何を言おうが政府に…国の意向には逆らえない。響が戦さ場に出なければならないのであれば、俺が守ってやるよ。」

「ハチ君!」

「…たぶんな。うん。」

「ハチ君……。」

 

 

もう失いたくない。

大切なモノは全て、失いたくない。

もうあんな思いしたくないし、誰にもさせたくない。

傲慢だと思う。

でも、この手が…刃が届く範囲の大切な人達くらいは守りたい。

そう思うのは…願うのは間違いなどではないはずだから。

 

 

「ねぇ、ハチ君。私、翼さんに会って謝りたい。」

「あ?あ〜…うん、そうだな。」

 

歯切れの悪い俺に響が、首を傾ける。

彼女の後方では、司令は肩をすかして、緒川さんは苦笑い。

つまり、アレなんですよ。

 

「長期戦になるが……頑張れよ。」

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

アレからノイズの襲撃も無く、平和で穏やかな時間が流れた。

そして…本日、俺と姉さんは学院を休み、とある場所へとやってきていた。

並ぶは墓標。

持つは花々。

 

天羽奏と彫られたお墓の前に俺たちは立っていた。

 

「奏…中々来れなくてごめんなさい。」

「俺は偶に一人で来てるけどな。」

「……通りでお墓が綺麗なわけね。全く、行くときは誘いなさい。」

「いや、ほら、姉さんには聞かれたくない話しだったりするじゃん?」

「なるほど…つまりは愚痴ね。」

「勝手にアイス食ったくらいで大人気ないとかね。」

「貴方、食べた自分を棚に上げてよく言うわね。……さ、無駄話しはここまで。まずは花を添えましょう。」

「あいよ。」

 

以前俺が添えた古い花を抜き取り、水を替えてから花を添え直す。

その間に姉さんが線香などをバックから出していた。

2人揃って線香に火を灯す。

 

合掌し、視界を閉ざす。

 

 

 

天羽奏はあの日、俺たちを庇い、死んだ。

大量の沸いたノイズ。

斬っても斬っても数は減らず、何故か増加していた。

ようやく敵の殲滅が見えてきたのは、戦闘を開始して6時間は経った頃だった。

過度の戦闘と精神の消耗で、先行していた俺と姉さんは限界を迎えてしまい身動きすら覚束ない状態だった。

呪符は全て無くなり、神通力さえ上手く制御できなくなったのだ。

 

そんな折に、制御薬LiNKERの効果が切れ離脱したはずの奏さんが戦線復帰。

LiNKERを再度摂取するという危険で無茶をし、最期はーー

 

 

 

 

「八幡、もう良いかしら?」

「…あぁ。奏さん、また姉の愚痴を言いにきますね。」

「なら私は弟の愚痴を言いに訪れるわね。」

 

実にくだらない言葉のドッチボール。

でも、2人とも目が合うと僅かに微笑みを浮かべる。

 

…奏さん、俺たちは仲良く元気にやってますよ。

なんで…もうちょっとだけ、そっちに行くのは待っていてください。

 

 

 

しかし、姉さんは積もる話しがあって長居すると思ったが、意外と早く終わった。

と思ったら

 

「おや、2人揃ってとは珍しいね。いつもバラバラによく来るから。」

 

と寺の住職さんに言われて分かった。

この姉、俺に内緒で来てやがったな。

 

「…何が通りで綺麗なわけね、だ。自分も来てるじゃねぇか。」

「べ、別に内緒にしてたわけじゃないわ。言う機会が無かっただけよ。」

 

不毛な言い争いは、住職さんに爆笑されて終わりを迎えるまで続いた。

緒川さんの車に乗り込む2人の顔は真っ赤だったと言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「1ヶ月経っても噛み合わんか…。」

 

響が加入して1ヶ月。

司令室では、風鳴弦十郎が呆れていた。

 

 

 

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