やはり俺がシンフォギアの世界にいるのは間違っている   作:にゃにゃにゃす

8 / 42
第5話

司令室のモニターには、ノイズを殲滅はしていく俺と姉さん、そして半泣きで逃げ惑う響の映像が流れていた。

 

「1ヶ月経っても噛み合わんか…。」

「弦十郎君、後ろ後ろ。」

「…?…あぁ……八幡、お疲れ様だな。」

 

司令達の真後ろでは真っ白に燃え尽き、項垂れている俺がいた。

1ヶ月経っても姉さんが響と仲良くできるわけもなく、2人のフォローに戦闘で疲労が溜まる溜まる。

響はアームドギア解放までまともに戦えないしで、そのフォローが大変なうえ、そっちに行ったら姉さんが不機嫌になるわで……

 

カマクラ……いや、カマラッシュ……もう僕、疲れたよ……。

 

 

「し、しかし、最近ノイズの出現頻度が凄まじいな。これは…。」

「何らかの作為が働いてる…わよね。」

「……作為ね…。やはり誰かが…ッ!!」

 

『八幡。物語を読んでやろう!…は?なにぃ、聞き飽きただぁ!?これは陰陽師、安倍家に連なる者達に引き継がれている大事な物語だぞ!』

 

 

「…杖…。」

「ん?何か言ったかしら?」

「いえ。…今日はもう上がりますね。失礼します。」

「おう!気をつけて帰れよ。」

「じゃ〜ねぇん。」

 

司令室を出ると足早でエレベーターに乗り込み、通信機を取り出す。

 

 

 

 

 

 

 

「で?さっき別れたはずなのに、何故俺は此処にいるんだ?」

「何故、また自分も呼ばれたのでしょうか?」

「いや呼ばれた理由は、1番俺がわかりません。」

「八幡、アイス食べるわよ。」

 

 

現在、我が部屋にて二課男組み+姉さんがいる。

今回、俺が招集したのは司令と緒川さんに藤尭さんの3人である。

姉さん?今は勝手に冷蔵庫を漁ってるよ。

 

「今日は急にすいません。どうしても人手が必要でして。…現在起きているノイズの異常発生についてです。」

「何かわかったのか!」

「えぇ。続きはこの部屋の中で。」

「分かりました。では、失礼し……?ふんッ!」

「緒川さん?どうなさったんです?」

「いえ…あの八幡さん。扉が開かないのですが……。」

「あ、その部屋の扉は秘術で閉ざしてますから……解ッ!どうぞ。」

 

扉を開くと中には、ビッシリとファイルが収まっている大きな本棚と、いくつも札を貼られた武具がいくつかあった。

 

 

「ここには、初代様から現在までの安倍晴明が記した文献があります。あ、誰も武具に触れないでくださいね。呪われますんで。」

「さらっと恐ろし事をおっしゃいますね。」

「え、じゃこの文献って国宝級の代物じゃないか!?」

「で?ここで我々は何をしたら良いんだ?」

「とあるモノが封印されている場所が記された文献を探して欲しいんです。名前は"空門ノ杖"です。」

「空門ノ杖?…聞いたこともないな。」

「それが今回のノイズ異常発生に関与しているんですね?」

「えぇ。まずは代々俺たち安倍晴明に連なる者に伝わる物語があります。それは、この初代様の書いた2冊目がモチーフにされたものです。どうぞ、見てください。」

 

 

男4人で、1冊の本を囲うように見る。

むさ苦しいのは、この際気にしないで置こう。

 

そして、俺は語り出した。

我々に伝わる物語を……

 

 

 

 

 

安倍晴明は白狐の血をその身に宿していた。

その血の力を人の世の為に使う。

夏の終わりに、朝廷の使者が参る。名を玉藻。

彼女はとある国にて多くの妖が現れていると宣った。

安倍晴明は玉藻に頼まれ、妖の討伐に向う。

道中に現れた妖は全て、玉藻の霊刀・白雪ノ華が斬り裂いた。

彼女は言った。身体に九尾の化け狐を封印していると。

故に使者になったと。

旅の先にて、とある村に訪れそこで巫女に出会う。

巫女の名は緋維音。

緋維音は言った。

「大臣が彼の国で妖を操り、謀反を起こそうとしている。操るそれを空門ノ杖と呼ぶ。」

巫女は妖に触れてはいけないと言う。

妖に触れれば、たちまち炭になってしまうと。

どうしたものかと思っていると巫女は鎧を作れば大丈夫だと言い、彼女の指導の元、3つの戦鎧が造られた。

白狐の血の清明には、漆黒の鎧を。

九尾を封印された玉藻には、白銀の鎧を。

そして緋維音は、真紅の鎧を。

それぞれが持ち得る特別な力を込めて造られた。

決戦の日、空に亀裂が入り時空の門が開く。

門から妖が流れ出てくるが、3人の前で悉く散り逝く。

3人は力を合わせて悪しき大臣を倒し、空門ノ杖を手にいれる。

世は平和へ導かれた。

 

 

「まずは、こんな所ですね。」

「人が触れれば灰になる…ノイズの特徴と一致しますね。」

「時空の門か…。よくわからないが、その空門ノ杖とやらは実在するのか?」

「しかし、物語に出てくる白雪ノ華と漆黒の鎧は、八幡君が実際身につけてますよ。しかし、玉藻と九尾って…まさかとは思うけど玉藻前だったり?」

「藤尭さん正解です。所詮、現代につたわる伝承なんて事実とかけ離れていたりするんですよ。…では、本題に戻ります。そもそも、この3人の関係はここで終わりじゃないんです。そして、それはよりにもよってバッドエンドなんです。」

 

 

そうこのままハッピーエンドなら良かったのだ。

共に戦い、この後も交流が続き3人旅をしたりする。

だがある日、玉藻にある嫌疑がかけられた。

それは上皇暗殺未遂という事実無根の嫌疑。

 

清明並びに緋維音は、ありもしない罪を玉藻に押し付けた人物を暴き出した。

其奴はかつて3人で力を合わして倒した大臣の息子だった。

これで嫌疑が晴れる……筈だった。

 

罠だったのだ。

敵の真の狙いは、犯人探しで2人が玉藻の側から離れることだった。

 

2人が暗殺未遂の真犯人を引き連れ都に戻ると、九尾の化け狐が暴れていた。

建物は燃え盛り、民衆の阿鼻叫喚でまさに地獄だった。

兵舎に向かい、2人は真実を知る事になる。

 

とある貴族が藤原氏に反旗を翻し、勝つ為に玉藻の中にいた九尾の封印を解いたのだ。

玉藻の必死の抵抗虚しく九尾は復活。

制御不能な化けモノは暴れまくり、首謀者を始め多くの被害者が出ていた。

清明は人々を守る為に九尾と戦い、辛うじて勝利した。

だが、九尾復活を阻止しようと力を使い果たした玉藻は息を引き取っていたのだ。

 

これに憤怒したのが緋維音。

彼女は言った。元はこの世にかけられた呪いを解く為に月を破壊するつもりだったと。

だが玉藻と言う友が出来て、呪いは解かずとも人は分かり合えるのだと思い、月の破壊を留まっていたのだ。

 

しかし、その友が無惨にも殺されたのだ。

緋維音は月を破壊し、世界を1つにし自身を神とすると言った。

清明に手を貸すように要請するが、人々を守る使命がある彼は拒否をした。

 

結果、空門ノ杖を使って妖を操る緋維音と清明は戦う事になった。

結論だけを言うと清明に軍配が上がった。

緋維音は死ぬ間際にこう言ったらしい。

 

 

「私は何度でも蘇る。永遠に存在し続ける巫女だ、ゆめゆめ忘れるな!ってね。つまり、緋維音は転生し続けているんです。そして、転生した緋維音の暴挙を止めることが、初代様からの俺達子孫への願いなんです。……そして現在のノイズ異常発生は空門ノ杖が原因で、犯人は今生に転生した緋維音と言うのが俺の仮説です。」

「ふむ…緋維音か。巫女であるからには女性なのだろうが…。」

「なるほど、だから我々男が呼ばれたのですね。もし、転生していた場合は女性ですから。」

「つまり緒川さんは私が女ではない…と?」

 

ピシッと擬音が聴こえそうな程、緒川さんは氷つきました。

そりゃ今の発言は駄目ですよ…姉さんいるの忘れてたのか?

まぁ確かに、今の今まで居なかったけど。

 

「ねぇ八幡……私のアイスが見当たらないのだけど?」

「……。」

「……。」

「……ぬかった!」

「…空門ノ杖の封印場所がわかり次第、全力で買いに行きなさい。」

「ひっ!?ひゃい!!

 

恐ろしくて悲鳴が出てしまった。

だって笑顔なのに目が笑ってなかった!

美人なのが更に恐怖を倍増させる。

 

クソ……昨日食ったの忘れてた……不覚!

 

「それで、一応!…女である私まで呼ばれたのは何故かしら?」

「翼さん…。」

 

この姉、根に持ってやがる。

 

「許してやれよ…。別に姉さんが女じゃないって言ってるわけじゃない。単純に緋維音の転生者じゃたいと判断したまでだ。」

「あら、信用してくれてるのね。」

「……言わせないでくれない?」

 

先と違い、嬉しそうに笑みを零す姉さんだが、俺は恥ずかしくて少々顔が熱くなる。

 

「も、もし封印が破られてた場合、間違いなく空門ノ杖が原因で緋維音が転生していると思いますんで策が練れるようになるかと。なんにせよ、一度は確認しにいく必要があります。」

「ならば早く探すとするか。しっかし、凄い量の文献だなぁ…増援呼ぶか?」

「いえ、それは……。正直言いますと、俺は二課でも信用に足る人物だけを呼んだつもりです。了子さんや友里さんの事も信用してますが女性ですので…。」

「ほっほう…デレたな。」

「信用していただいて、僕も嬉しいですね。」

「ま、ここまで言われちゃ頑張んないといけませんね。」

 

ニコニコと笑顔で文献に手をつけていく3人の後ろでは、恥ずかしさ一杯で両手で顔を覆う人がいた。

……俺なんだけどね。

 

今回呼んだ3人の事は本気で信用している。

2年間一緒になって戦ってきた大切な仲間だ。

そこで、ふと思う。

姉さん達と出会って、まだ2年しか経ってないのか、と。

 

 

 

 

あれから5時間が経過し、pm9時を過ぎました。

さて、進捗はと言うと…

 

 

「えっと…また東の山かよ!だから東の山って何処なんだよ!?」

「4代目様は…南の山と記してますね…。」

「おいおい。12代目は、また東の山と書いてるぞ?」

 

はい。この有様です。

代ごとの文献だけで数十冊ある上に、封印場所を記してるのは東西南北と山オンリー。

 

「…八幡、貴方の先代様達は何故具体的に書いてないのかしら?」

「もし敵に読まれても封印場所が知られない為だな。元は口頭で伝えてたんだろうが、親父その前に居なくなってるし。でも、皆さんのお陰でだいぶ絞れましたよ。」

「…日本地図?この印は何かしら?」

「文献に乗ってる先代様達の住んでた場所。だいたいが京都か奈良で、偶に他県付近に住んでたみたいだな。…緒川さん16代目様は何と?」

「…西の山と記されています。」

「西の山……。確か16代目様は江戸住まいだったはずだから……。こうして、印から先代様達が記した場所へ線を引くと…………ビンゴだ。」

 

各印から線を引いていくと、ある一箇所付近で線が交わっていた。

皆が地図を覗き込み、小さく歓声を上げる。

しかし、山と記されてはいたが……これ、封印場所探すのも一苦労だぞ?

なんせ、この山でか過ぎなんですが?

 

霊峰富士。

ここが、空門ノ杖の封印されし場所で間違いなさそうだ。

 

 

「では、明日から富士の封印場所の調査に行ってきます。」

「うむ…ヘリは用意しておく。それから誰か付き添いを連れて行け。いくら八幡でも1人では危険だ。」

「……それなら緒川さんが適任かと思います。緒川さん、八幡に同行してもらえます?」

「え、しかしライブの打ち合わせ等が…。」

「そこは代理人を立てれば良いかと。八幡が信用していて、かつ実力派の者など、私やおじ様を除けば緒川さんだけです。」

「…了解致しました。では、八幡さん明日からお願い致します。」

「こちらこそ、お願いします。」

 

あとは明日からの探索準備と対策を練り、気づけば日付は変わっていた。

そして、今後起こりうる事態についての話し合いもついでに行った。

 

明日から俺がリディアンを離れる事は本部の人間に話すが、何をするかは極秘とすること。

しかし、場所が場所なだけに数日はかかる予定の為、ヘリは近場にて待機。

もし、俺が不在の間に大規模なノイズ襲撃または、何らかの予期せぬ事態が発生した場合は敵の内通者が確実にいる事。

そして、不測の事態が起きた場合は即座に緒川さんへ連絡する事。

これは調査組みの俺たちも同様である。

 

「これくらいだな。八幡、緒川。命令はただ一つだけだ。無事に帰ってこい。」

「了解。」

「了解致しました。」

 

さて、ここで解散となったのだが、当たり前の様に姉さんは風呂に入り、今は布団をリビングに敷いている。

若い男女がひとつ屋根の下で、しかも男の部屋にも関わらずだ。

 

大人は誰も止めないし……。

いや、泊まる事にはもう慣れてはいるのだけどね。

 

普通、若い男女なら夜にアレやコレやと口に出せない状況になるだろうが、俺たちには無縁であった。

確かに姉さんは美人でスタイルもいい。

だが、俺が彼女に抱く感情は小町と同じ家族愛であって、恋愛のそれではないのである。

それは姉さんも同じである。

 

「姉さん…俺が戻るまで響の事を頼みます。」

「……。」

 

既に布団に潜った姉さんの顔は見えない。

もう寝たのか、それとも単に無視しているのかは分からない。

大きなため息が、漏れリビングの電気のスイッチ切った時だった。

 

「善処する。帰ってきたらアイス買いに行きなさいよ。」

「…わかった。ありがとう。……おやすみ。」

「おやすみなさい、八幡。」

俺も寝る為に寝室へ向かいベッドに潜った。

疲れてたので睡魔が直ぐに訪れ、抗うことなく深い眠りに落ちていった……。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。