やはり俺がシンフォギアの世界にいるのは間違っている 作:にゃにゃにゃす
ハーイこちら、富士の樹海を彷徨ってる八幡です。
いや、ヤバイくらいに草木が生い茂ってますね。
地面もなんか少々ぬかるんでますし、足を取られて危うく2、3度転んでしまう所でした。
はっはっは!
……はい、普通の登山客の順路から懸け離れた位置に、俺と緒川さんはいる。
空元気にも程があったわ。
「八幡さん。こちらの道?で本当によろしいのですか?」
「えぇ、たぶん。こちら側から僅かに神通力を感じますので。」
獣道もない場所を草を分けながら進んでいく。
進むにつれ、受ける神通力の波動が大きくなっているので、正解だと思う。
てか思いたい。
そうじゃないと困る!
マーキングしながら動いてるけど、前後左右同じ景色なんだよ…。
しかも、霧が出てきたし、霊的なモノが出てきそうな雰囲気で、ちょっぴり恐い。
まだ、昼過だよ?
なのに何でこんなに雰囲気出てるかなぁ!!?
最初は楽しげに会話しながら歩いてたのに、口数へっちゃったじゃん!……俺の口数が。
……ん?
「止まってください!」
「ッ!!」
……なんだこれ?
空気が揺ら揺ら揺らめいてるんですけど……。
え、なんも出ないよね?
出ないよ…ねッ!?
「あの…どうかしましたか?」
「……へ?緒川さんには、これ見えないんですか?」
「いえ…特に何も見当たらりませんが?」
「…ここの空間が揺らめいてるんスけど……。」
「……。やはり僕には見えません。と言うことは……。」
「ここが封印場所…でしょうね。この揺らぎは結界の印か……。初日で見つけれたのはラッキーです。…念の為に俺が先行しますので待っていて下さい。」
「わかりました。お気をつけて。」
念の為に白雪ノ華と戦鎧を身に纏い、揺らぐその先へ足を踏み入れる。
すると、踏み込んだ足先が視界に映らなくなった。
感覚はある。ならば、間違いない。
「八幡さん!」
「…大丈夫です。では……一気に!」
そして、空門ノ杖の封印場所へと俺は身を投げ出した。
「なんじゃこりゃ…。」
揺らぎのその先。
そこには、異様で異常な光景が広がっていた。
クレーターがいくつもできた地面。
鳥居は倒壊しており、封印に使われた石は五芒星の陣を描くために並べられたのだろうが、〆縄が切れまくっていた。
トドメに陣の真ん中には、まるで爆弾が投下されたかのように穴がデカデカと空けられていた。
元いた場所へと戻る為、結界の外へと飛び出した。
「八幡さん!良かった…長い間戻られないので心配しましたよ。通信機も反応しませんし。」
「……え?俺、1分も結界内に居ませんでしたよ。」
「ですが、八幡さんが中に入って20分は経ってましたよ。」
「ふぁっ!?……すいません、変な声が出ました。……つまり、結界内の時間は外の時間より遅いと。俺の感覚では20秒くらいでしたので……60倍も!?」
先程とはまた違った恐怖に陥る。
つまり、1分後が1時間、1時間が2日半。
笑えねえよ。
なんつうヤバイ結界作ってんの!?
「緒川さん、この先は間違いなく空門ノ杖の封印場所でしたが…封印が破られてました。あちこち破壊されてます。」
「では、司令に連絡を。」
「お願いします。それと今から1日と6時間は連絡がとれなくなるとも伝えてください。…30分だけ結界内の探索をしましょう。」
「わかりました。では、そのように伝えておきます。」
司令との通信後、俺たちは結界内に踏み込んだ。
その惨状に緒川さんは顔を歪めるも、すぐに探索を開始。
時間は限られている。何か空門ノ杖に関する情報を掴む為にも、急ぐ必要がある。
そんな中で、破壊された古い木箱を発見した。
呪符を大量に貼られたそれは、中身は空でしかし僅かに神通力を帯びていた。
……やられた、間違いない。
空門ノ杖は奪取されてる。
そして、緋維音は復活している。
他に目星いものも無く30分を知らせるアラームにより、一時退却。
日が昇っていた空は、薄く暗くなっており60倍の時間差に、嫌な汗が流れた。
「しかし、恐ろしくも凄い結界ですね。」
「…たぶん侵入者が封印を解いてる間に、何らかの対策を取るために時間を歪めた結界を張ってるんでしょうけど…何も知らずに入ったらヤバイ代物でした。」
「そうですね…。もし何も知らずに半日ほど探索してしまった場合は1ヶ月も日にちが変わってますからね。……っと迎えが到着したようですね。」
真上からプロペラ音がしたと思ったらロープが落ちてきた。
それを器用に登り、無事ヘリに乗り込む。
「初日で見つけれたのは幸いでした。…あ、皆さんからしたら1日は経ってるんでしたね。」
「そっスね。しかし、嫌な報告をしなければいけませんからね。…事態は最悪です。敵はやろうと思えば今すぐにでも、大量のノイズで俺たちを襲えるんですから。」
だが、そうしないのは何故だろう?
推測はできる。
もしかしたら空門ノ杖を扱いきれていない。または、使用に制限があった。
他にも、身を隠す必要がある為に派手に動けない等言い始めたらきりが無い。
ヘリに乗り、そのまま1時間が過ぎた頃だった。
「通信?…司令からですね。はい、緒川です。」
《緒川!八幡を連れて指定の場所に向かってくれ!今、翼と響くんが戦闘に入った。敵は…ネフシュタンの鎧を纏ってノイズを操っている。俺も現場に向かう!》
「ネフシュタンの鎧を!?…了解しました。では、現場へ急行します。では……八幡さん!」
「聞こえました。クソ……ノイズを操っているなら、空門ノ杖を……!それに2年前に行方知れずになった完全聖遺物まで。……過去の亡霊が今更!!」
歯痒さと苛立ちが俺の感情を支配する。
……白雪ノ華の妖刀としての力がまた作用したのか…。
深呼吸をし、昂ぶった精神を落ち着かせる。
「緒川さん、指定したポイントまでは?」
「最速で向かってますが、恐らく10分はかかるかと…。」
「到着次第、俺は飛び降りますので準備をお願いします。」
「かしこまりました。」
そのまま夜空を飛び、そろそろポイントに着く間際。
「歌が聞こえる…。」
直後だった。
膨大なエネルギー爆発を感じた時、ヘリは激しく揺れた。
今のそれは2度感じた事がある。それも1年前と2年前にだ。
慌てて窓にへばり付くと、下には特大のクレーターができていた。
「おいおい…冗談だろッ!まさか、絶唱を…?緒川さん!!」
「了解です!」
放たれたドアから俺は空へ飛び出した。
白雪ノ華と戦鎧を身に纏い、脚部のブースター全開でクレーターのど真ん中へ滑空。
…できれば違って欲しいと、心からそう願う。
俺の勘違いであって欲しかった。
でも、やはり世界は俺に優しくなどなかった。
遠目から見た中央で佇んでいる人物は、こちらに背を向けたまま動かない。
特徴的なサイドテールで、凛とした後ろ姿。
歯軋りがなった。
握る拳は、力が加わりすぎて小刻みに震えている。
「無事か、翼!?」
先に着いた司令が車から降りて、姉さんへ問いかける。
無事じゃない……無事なんかじゃない!
俺は視えるし、感じられるから分かる。
姉さんの生命の活動エネルギーが低下している。
「私とて人類守護の務めを果たす防人……こんな所で折れる剣ではありません。」
全身から血の気が引いた。
寒いわけでもないのに唇が震え、身体中から嫌な汗が溢れてくる。
振り返った風鳴翼は、その身を鮮血に染めながらも笑っていたのだ。
夥しい血涙と吐血。
止まることを忘れたかのように紅い血は流れ出て、姉さんの足元に溜まっていた。
「姉さんッ!!」
「…八幡……ぁ…。」
俺が着地した瞬間、姉さんは全身の力が抜け、地に伏した。
司令と共に駆け寄り、抱き上げる。
ーボロボロだった。
ギアも身体も何もかもがボロボロになっていた。
「……ッ!」
「待て、八幡!」
左手を姉さんの真上に翳した途端に、司令に白雪ノ華ごと手を掴まれた。
「離して下さい……。時間がないんです。」
「駄目だ。直ぐにヘリで搬送する。」
「そんな悠長な…!今すぐにでも治さないとマズイってわかるだろ!!俺にまた失えと言うんですか!?」
「翼は絶対に死なん!…それに今それを使ったとて翼は直ぐに現場復帰はできん。君も数日動けない。そうなった時、響君1人で戦う事になるんだぞ!」
「ーッ!……くうぅ……クソッタレがぁぁあ!!」
叩きつけた拳が、地を割る。
……何もかもが最悪だった。
血箋華を使えば、姉さんは確実に助かる。
代償は俺が数日動けなくなる。つまり、響が1人で戦わなくてはならない。
敵はノイズだけじゃなく、ネフシュタンの鎧をも使っている。
ましてや空門ノ杖すらも奪われている為、いつノイズの襲撃があるかわからない。
だから今、それは最良の選択ではない。
逆に血箋華を使わなければ、姉さんは助かるかわからない。
死ぬ可能性だってある。
それでも、今からの敵に対して比企谷八幡という戦力を使える。
心の支えである、大切な姉を切り捨てる。
今取らなければならないのは、この最悪な選択だった。
……違うな。
最悪なのは俺自身だ。
「あぁ……また俺は…何もできない……無力……。」
俺はいつまで何も出来ないままなんだ…?
いつになれば何も失わずに済む?
ただ、血を流す姉を抱きしめる事しか出来なかった。
◇◇◇◇
救急治療室。
その医療カプセルの中で姉さんは眠っていた。
結論から言えば、一命は取り留めた。
だが危篤状態に変わりなく、予断は許されない。
そんな姉を俺は窓越しに見守る事しかできない。
「すまん…。君にまた辛い選択をさせてしまった。」
「司令…。」
横のベンチに腰掛け、司令はそう言った。
俺も腰を下ろし、司令の隣へ座る。
「今回の敵はネフシュタンの鎧を纏い、そしてノイズを操る杖を持っていた。…やはり空門ノ杖は奪われていたか。」
「…はい。調査内容は緒川さんが後で纏めて提出するそうです。……司令、姉さんは絶唱を歌ったんですね…。」
「あぁ。…装者の負荷を厭わずシンフォギアの限界以上の力を解き放つ…諸刃の剣だ。翼は冷静ではなかった。2年前に奪われたネフシュタンの鎧を相手にいつものアイツではいられなかった。」
「終いには絶唱でネフシュタンを撃退ですか……。司令、次ヤツが現れたら至急連絡を下さい。響じゃ相手にならんでしょう。それに……。」
「冷静に判断できていないなら任せられないぞ?」
「やだな…俺は戦いでは常に冷静ですよ。」
「八幡、お前ッ!?」
俺は後に知ることとなる。
殺生石を使っていないにも関わらず、今の眼は深紅の血の色をしていたこと。
それが如何に危険で、悍ましいて知るのはまだ先の事だった……。
病院から離れ、リディアン地下本部へと向かう。
今は少しでもいい、敵の情報が欲しかった。
「…響?緒川さんまで…。」
いつもの休憩所に2人が座っていた。
緒川さんは俺を見るとマッカンを買い、渡してきたので、とりあえず座ることにした。
響は悲しげに俯いており、緒川さんは終始冷静な顔つきだった。
「……御2人が気に病む必要はありませんよ。翼さんは自ら望み、絶唱を歌ったのですから。」
「……違います。俺の所為です……。俺がいつまでたっても弱くて、頼りなくて…結局、いつも支えてもらってばかりで……。」
「ハチ君…。」
ハッとなる。
何してんだ俺は…。
響が真横にいるのに弱音なんか吐いて…。
「…響さんは翼さんが以前ツインヴォーカルユニットを組んでいた事は知っていますか?」
「ツヴァイウイング…ですよね。」
「その時のパートナーが天羽奏さん。今は貴女の胸な宿るシンフォギア装者でした。……一年前の事です。今までに無いノイズの大群勢がとある街を襲い、約7時間を超える戦闘の末にノイズを殲滅します。…奏さんという犠牲の上に我々は勝利を手にしました。」
「違います。アレは勝ってなどいません……。」
あれは勝利などではない。
勝利には代償が余りにも大き過ぎた。
「…ノイズの大群勢を相手に翼さんは最終手段とし絶唱を歌い結果、一度ノイズを殲滅せしめました。八幡さんは翼さんに血箋華を使い翼さんを治療しました。血箋華は八幡さんの力を大量に使い過度の戦闘後だっため、身動きがとれなくなりました。……その直後です、ノイズがまた現れたのは。1度帰投していた奏さんは制御薬LiNKERを摂取し再出撃し、御2人を救出した後にノイズを今度こそ殲滅……しかし、動けない御2人がいた場所へビルが倒壊し始めたんです。」
「結果は見ての通りだ。…奏さんは、俺たちを遠くにいる一課の連中に投げ捨て自分はビルの倒壊に巻き込まれた。」
そうして、無惨にも奏さんは命を散らした。
倒壊したビルの瓦礫をどかし、奏さんの救出が即行われたが、そこにあったのは夥しい血痕と彼女が纏っていたギアの一部だけだった。
了子さん曰く、LiNKERの過剰摂取により身体の細胞組織が破壊され、塵になったのだと。
「奏さんの殉職。ツヴァイウイングは解散。それでも、翼さんは1人じゃありませんでした。八幡さん、貴方が居たからです。…確かに翼さんはあれからがむしゃらに戦ってきました。同じ世代の女の子が知って然りべき、恋愛や遊びも覚えず……でも、貴方と言う支えが居たから今日まで戦ってこれたんです。翼さんは僕によく貴方の話しばかりされます。それはどんな時でも最後は笑っていらっしゃいました。
《弟を守るは姉の務め。そして、あの子がいるから私は守護の剣でいられます。…今まだまだですけど、八幡が守護の剣として全てを任せれる様になった時、私は剣としての使命を果たします。絶望を希望へ変えれる絶唱を歌う覚悟は、もうできていますから。》
翼さん、前にそう仰ってましたよ。八幡さん、貴方は翼さんの支えでした。今だってそうです。そして八幡さんが自分を認めてなくとも翼さんは、とっくに認めていたいました。……今日、絶唱を歌ったのはそう言う意味だと僕は思いますよ。」
泣いては駄目だ。
俺はまだ涙を流してはいけない。
震える唇を噛み締め、立ち上がる。
「ひっく……私……グスッ……何にも知らないのに…翼さんの覚悟も知らないで……私は一緒に戦うって……奏さんの代わりになるだなんて……。」
堪えきれなくなった涙は、響が流してくれた。
彼女は風鳴翼の過去も覚悟も知った。
その涙は人を思いやり、人の為に流す優しい涙だ。
後悔もある。だけど、響は前へと真っ直ぐに進むだろう。
だって、それが立花響なのだから。
「響、姉さんの事嫌いにならないでやってくれ。あの人はただ生き方が不器用なだけで、本当は優しい人なんだ。」
「……グスッ…嫌いになんてなれないよ。翼さんは、私の命の恩人で憧れなんだから。」
「そっか…。」
それが聞けただけで、安心した。
さてと……
まだ俺は泣かない。
泣くのは…全てが終わった時だ。
そして、俺の覚悟も決まった。
「響、ネフシュタンの鎧が出てきたら俺を呼べ。ヤツは……俺が斬る。」
例えこの手を汚そうとも、姉さんの歌った希望は俺が明日へ繋いでみせる。
だって俺は人類守護の陰陽師で、剣なのだから。
最後まで読んでいただきありごとうございます。
お陰様でUAが7000を突破してました。
これからも宜しくお願い致します。