UMP9は如何にして本当の家族を得たか   作:瑞雲さん

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ふっと沸いたので続きを書くことにしまs……あれ、きみどこ行くのー……?


UMP45の気持ちはうれしいのだけれど

ベッドの上で右にごろり。

 

「むー……」

 

ベッドの上で左にごろり。

 

「……うぇへへへへ」

 

ベッドの上でうつ伏せにごろり。

 

「……うむーん……」

 

端的に言おう。UMP9は不機嫌だった。

 

 

話は数日前に遡る。

UMP9に、家族が出来た。

UMP9は自律人形である。さらに言えば、それらを戦闘用に改装した戦術人形というものだ。

Important Operation Prototype manufacturing(自律人形の大家であるI.O.P社)からグリフィン&クルーガー(懇意にしているPMCのG&K社)に対して

雇用という形で貸与された商品なのだ。

だから、家族というものはそうと()()()()()姉妹機だとか、現地で紡いだ()()だとか()だとか

あえて無下に言ってしまえば、つまりは、あくまでも仮初の関係だった。

 

だが、UMP9には家族が出来た。

I.O.P社からG&K社へ雇用されたとき、配属先である某地区にてその指揮官に見出されたのだ。

そして親元であるI.O.P社にはそれをよしとするだけの度量と寛容(契約プラン)があった。

 

誓約指輪。

今のUMP9の左薬指に嵌まっている、機能拡張、制限開放のための装置。

雇用主が人形に対しより大きな権限を持たせ、それを運用するために必要とする。

そんな方便の下に用意された、人形を身請けするための代物である。

 

ベッドの上で仰向けにごろり。

 

「うーん……むむむ……」

 

冒頭に戻ろう。UMP9(わたし)は不機嫌だった。

何故、と言われれば。先ほどから眺め続けてて、百面相の理由になっている指輪だ。

 

指輪は良い。普段は着けているグローブを外し、白い素肌で尚白く輝くそれは素晴らしいものだ。

だけれど、過程がひどい。あんまりにもあんまりだって断言せざるを得なかった。

 

「ああ、居た!9(ないん)、ちょっといいか!」

「丁度よかったわ、9(ないん)。とりあえずこれにサインして頂戴」

「お前にこれを貰ってほしい。45(よんごー)にも渡してある」

9(ないん)。これで貴女も本当の家族よ」

 

指輪をもらった時の内容である。

どういうことだ。

ちょっといいか、から始まるのはよい。そんな始まり、よくあるって聞いたことがある。

丁度よかったって何さ。そんな二人して畳みかけるようにって。

45(よんごー)姉にも指輪が渡されたというのは、譲っていい。だって()()()から()()になれたのだ。

これで貴女も本当の家族よ。やだ、うれしい。嬉しいが、私の台詞じゃあないかなそれ。

 

いや、不満だ。不満だが、よいのだ。

なんだかんだ思うことはあっても嬉しいことは素直に嬉しいのだ。だが――

 

「なんで指輪を渡してきたのが45姉(UMP45)なの……?」

 

そういうことだぞ。

 

 

「と、いうわけで! 指揮官、45(よんごー)姉!私は誓約のやり直しを要求します!」

「んん?」

 

指揮官として基地運営を日常とする、ある日のことだった。

朝起きて、UMP45と合流して、後方幕寮と今日の予定を軽く打ち合わせして、仕事に入る。

仕事に入ろうとした、その矢先にUMP9がぷくりと不満を膨らませてやってきた。

 

9(ないん)。その、指揮官との誓約がそんなに嫌だったの……?」

「そこじゃないよ45(よんごー)姉! まずあんな通り魔みたいな誓約の仕方、おかしいって思わないの?」

 

45(よんごー)、俺が嫌ってお前何て言い草を。

しかし、通り魔みたい。通り魔、みたいかあ……。

 

――えっ? ……えっ、これって誓やく

――えっ

――えっ

――えっ

 

そういえばやり取りの途中から「えっ」としか言ってなかった気がする。

なるほど、通り魔じゃねーの……。

 

あの時、俺は45(よんごー)と誓約をした後に二つ目の指輪の扱いに困っていた。

実際のところ、I.O.P主任から譲り受けた(が物資に混ぜ込んできた)指輪はそっと机にしまって良かったはずなのだが

その時に45(よんごー)が言ったのだ。

「家族がたくさんほしい」と。

 

結局、45(よんごー)からどうしてああも迫るようなことをしたのかは聞けなかった。

想像は着く。UMP45は電子戦に強く調整されている。

それが今は戦闘に活かされることは無くとも、間違いなく大きな武器の一つである。

UMP45やUMP9、他に二名。今はいずれも基地に配属されている人形だが

彼女たちには"オリジナル"がいるという。

その普段使いに難しい大鉈で、UMP45は何かを掴んだのだろう。

だから、誓約という形でUMP45は縁を求めた。

 

何を言うでもなく、45(よんごー)9(ないん)に指輪を渡した理由である。

……その、9(ないん)には悪いのだが、UMP45()が、UMP9()に指輪を渡したがったのだ。

俺は、その。うん、いつか殴られても仕方がない気がするが。今は考えたくない。

 

「いいわ、9(ないん)。誓約、やりなおしましょう。そしてもっと家族を増やすの。G11も、416も」

「えっ」

えっ。

 

「ここが私たちの場所。そう、皆家族よ……!」

 

「えっ」

えっ。

 

 

 

後日。

「じゃあ、誓約したら今までよりももっと寝れる? 無理? じゃあいいや」

「私はここにきてまだ日が浅いわ。でも、それくらい簡単にわかるわよ」

 

「「そんなことしたって野暮にしかならないから(シスター・ダーリン・サンドで満足しとけよ)」」




わたしはUMP40とも誓約することを我慢できませんでした。

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