ベッドの上で右にごろり。
「むー……」
ベッドの上で左にごろり。
「……うぇへへへへ」
ベッドの上でうつ伏せにごろり。
「……うむーん……」
端的に言おう。UMP9は不機嫌だった。
話は数日前に遡る。
UMP9に、家族が出来た。
UMP9は自律人形である。さらに言えば、それらを戦闘用に改装した戦術人形というものだ。
雇用という形で貸与された商品なのだ。
だから、家族というものはそうと
あえて無下に言ってしまえば、つまりは、あくまでも仮初の関係だった。
だが、UMP9には家族が出来た。
I.O.P社からG&K社へ雇用されたとき、配属先である某地区にてその指揮官に見出されたのだ。
そして親元であるI.O.P社にはそれをよしとするだけの
誓約指輪。
今のUMP9の左薬指に嵌まっている、機能拡張、制限開放のための装置。
雇用主が人形に対しより大きな権限を持たせ、それを運用するために必要とする。
そんな方便の下に用意された、人形を身請けするための代物である。
ベッドの上で仰向けにごろり。
「うーん……むむむ……」
冒頭に戻ろう。
何故、と言われれば。先ほどから眺め続けてて、百面相の理由になっている指輪だ。
指輪は良い。普段は着けているグローブを外し、白い素肌で尚白く輝くそれは素晴らしいものだ。
だけれど、過程がひどい。あんまりにもあんまりだって断言せざるを得なかった。
「ああ、居た!
「丁度よかったわ、
「お前にこれを貰ってほしい。
「
指輪をもらった時の内容である。
どういうことだ。
ちょっといいか、から始まるのはよい。そんな始まり、よくあるって聞いたことがある。
丁度よかったって何さ。そんな二人して畳みかけるようにって。
これで貴女も本当の家族よ。やだ、うれしい。嬉しいが、私の台詞じゃあないかなそれ。
いや、不満だ。不満だが、よいのだ。
なんだかんだ思うことはあっても嬉しいことは素直に嬉しいのだ。だが――
「なんで指輪を渡してきたのが
そういうことだぞ。
「と、いうわけで! 指揮官、
「んん?」
指揮官として基地運営を日常とする、ある日のことだった。
朝起きて、UMP45と合流して、後方幕寮と今日の予定を軽く打ち合わせして、仕事に入る。
仕事に入ろうとした、その矢先にUMP9がぷくりと不満を膨らませてやってきた。
「
「そこじゃないよ
しかし、通り魔みたい。通り魔、みたいかあ……。
――えっ? ……えっ、これって誓やく
――えっ
――えっ
――えっ
そういえばやり取りの途中から「えっ」としか言ってなかった気がする。
なるほど、通り魔じゃねーの……。
あの時、俺は
実際のところ、I.O.P主任
その時に
「家族がたくさんほしい」と。
結局、
想像は着く。UMP45は電子戦に強く調整されている。
それが今は戦闘に活かされることは無くとも、間違いなく大きな武器の一つである。
UMP45やUMP9、他に二名。今はいずれも基地に配属されている人形だが
彼女たちには"オリジナル"がいるという。
その普段使いに難しい大鉈で、UMP45は何かを掴んだのだろう。
だから、誓約という形でUMP45は縁を求めた。
何を言うでもなく、
……その、
俺は、その。うん、いつか殴られても仕方がない気がするが。今は考えたくない。
「いいわ、
「えっ」
えっ。
「ここが私たちの場所。そう、皆家族よ……!」
「えっ」
えっ。
後日。
「じゃあ、誓約したら今までよりももっと寝れる? 無理? じゃあいいや」
「私はここにきてまだ日が浅いわ。でも、それくらい簡単にわかるわよ」
「「
わたしはUMP40とも誓約することを我慢できませんでした。