ナザリックが暗黒大陸に転移しました。【H×H+OVERLOAD】 作:平坂美羽
暗黒大陸調査隊がセバスと名乗る男と接触してから一週間がたった。
ついに、約束の日である。
時間を特に指定されず、一週間後とだけ言われた為、約束の日の前日から、調査隊+ネテロ、パリストン、ジンはセバスと接触した場所にテントを張って張り込んでいた。
セバスが来た時に誰もいなくてすみませんでしたは、間抜けすぎる。
最悪、怒った相手に殺されかねない。なにしろ、相手には約束を反故にされたという大義名分があるからだ。それだけの事で、と思うかもしれないが、こちらの常識があちらと同じとは限らない。むしろ、常に最悪を想定して動くのが懸命だろう。
「わぁ!?」
「どうした?!」
「くっ・・・黒い穴が!!」
仲間が、指を指した方を見ると、確かに黒い穴のようなものがあった。
(なんだ?)
黒い穴から気配を感じて、穴を見つめる。すると、穴の中から、セバスが出てきて、出てきたあと黒い穴はなくなった。まるで、時空の歪みに吸い込まれたようだった。
「皆さま、お待たせしてすみません。」
セバスがそう言いながらお辞儀をして、俺たちも慌ててお辞儀をする。全然待ってないから大丈夫ですよ!等と、言いながら。
「ところで、こちらの方々は?」
と、セバスは3人(ネテロ、パリストン、ジン)を指さす。
「その方達は、私たちの上司・・・主です!今回、対話をされるということで、調査隊の私たちだけでは、不安がありましたので・・・。」
申し訳ないと、俺は頭を下げた。
「大丈夫ですよ、主は様々な方との対話を望まれておりますから」
そうセバスに優しく笑いかけられ胸を撫で下ろした。
「セバス殿、1つ質問なんじゃが、先程セバス殿が出てきた黒い穴はなんじゃ?」
ネテロが聞くと、セバスは何でもないと言うふうに平然と答えた。
「あぁ、あれは
《ゲート/異界門》です。私は使えませんので、仲間にここまで送ってもらったんですよ」
「それはその仲間の念能力なのか?」
と、ジンが横から会話に入ってきた。
「念?何ですか?それは??あれは、魔法ですよ」
「・・・・・・」
我々は言葉を失った。この世界には魔法は存在しない。いや、存在しないと思っていた。お伽噺の中だけの話だと、そう思っていたのだ。けれど、彼らの仲間には魔法を使えるものが多く存在し、なんでも、セバスさんの主は偉大なる魔法使いらしい。
「魔法使い!なんだかワクワクしますねぇ」
「そうじゃの、まだまだわしが知らぬだけで世界は広かったということじゃな」
「そうだな、爺さん。俺も不甲斐なく驚いちまった」
パリストン、ネテロ、ジンは一見、未知との遭遇に興奮しているようだったが、内心は焦っていた。
(魔法って・・・そんなのありかよ・・・)
ジンは心の中で呟いた。
念であれば、まだ対処ができたかもしれない。
けれど、どんな力を秘めているのか未知数の魔法では、あらかじめ予測を立てて行動することが出来ないのだ。
(慎重にいかないとマジでやべぇかも)
▷▶︎▷
「アインズ様、セバスから《伝言/メッセージ》が届きました。どうやら、お相手は自分より上位の者を連れてきたようです。」
「・・・そうか」
この一週間、様々なことがあった。
ナザリックが転移した場所から5kmまでをセバスに探らせた。
どうやらナザリックの周辺はジャングルのようで、変な生物とかもいたりして、デスナイトのように言葉は話せないが、命令を聞くことは出来るようだったので、絶望のオーラを出して従わせた。
それらは、アウラの配下となった。
まぁ、配下といってもナザリック外の配下ということだが。
それから、5キロ圏内の荒地を整えたり、一般メイド達が、対話の相手を迎えるにあたってナザリック内を掃除したりしていた。まあ、俺は報告書を読んだり書類に判子を押すだけの仕事だったが。
そして、モモンガは自身をアインズ・ウール・ゴウンと名乗ることに決めた。
ギルド名を背負ってこの地に居続けることに決めたのだ。
全てはこの世界のどこかに居るかもしれない仲間たちの目印になるように、アインズ・ウール・ゴウンを不変の伝説とするために。
「デミウルゴスよ、対話をするにあたって何か、注意点はあるか?」
「いえ、全てはアインズ様の御心のままに。謁見の手筈は整えてありますので、アインズ様はナザリック地下大墳墓の絶対なる支配者としてお相手されて下さい。」
「そっそうか・・・」
(苦手なんだよな〜人前で話すの。リアルでのプレゼンでどれほど緊張したことか。しかも今回の相手は社会的地位の高い人なんだろうし・・・)
(あぁ〜でも子供たち(NPC)に情けない姿を見せるわけにもいかないし、期待に応える為にも頑張らねば!)
こうして、アインズは約束の日を迎えることとなった。